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エピソード0
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しおりを挟む「う……おえぇぇ……っ」
外に出て深呼吸をすれば納まると思った吐き気は、しばらく止まらなかった。とにかく駅までたどり着けばトイレに駆け込もうと思ったのに、結局我慢できずすぐ近くの公園のトイレを目指す。
しかし、間に合わずに側溝に蹲ってしまった。口元を押さえて必死にこらえる。
あの部屋の、情交の匂いがまとわりついているような気がして。そうしたら、ふたりの行為中の声まで耳に蘇ってくる。背中を震わせていると、突然頭上から男の人の声がした。
「大丈夫ですか?」
吐き気で頭がガンガン痛い。
こんなところを、知らない男の人に見られたくないし、構われたくない。「大丈夫です」と擦れた声で答えて立ち上がろうとしたけれど、途中で膝の力が抜けてしまった。
「う……ごめ……すみません……」
「あんまり酒の匂いはしないな……酔って気持ち悪いの?」
小さく首を横に振る。
「じゃあ具合悪い? 救急車呼ぶ?」
今度も、横に振った。具合が悪いといっても病気じゃない。ただ気分の悪いものを見ただけなのに、救急車なんてあまりに申し訳が立たない。
「意識ははっきりしてるね。いっそ吐いた方が気分良いと思うけど」
絶対嫌だと激しく振ったら、余計に嘔吐感が増してくる。じっとしていると、その男の人が近くの自動販売機まで水を買いに行ってくれた。
ありがたい、けれど、今優しくされるのは色々と我慢が出来なくなって、困る。
何がいけなかったのか。心変わりされるようなことに、思い当たらない。単純に私のことが好きじゃなくなって、他に好きな人が出来たというだけのこと?
毎日職場で顔を合わせないといけない、その気まずさよりもあの彼女との付き合いを選んだ。別れ話も面倒なほど、私のことはどうでもよくなったのか。
悪いのは向こうのはずなのに、どうしてか自分の悪かったところを探してしまう。それが見つかれば、私は納得できるのだろうか。
怒っているのか、悲しいのか、自分が不甲斐ないのか、わからない。全部がめちゃくちゃにこんがらがって、また感情が昂ってきてしまう。
「ふ……うぅ……っ」
頭が痛い。胸も痛くて苦しい。吐き気、止まらない。
少し遠くから、駆け戻ってくる足音が聞こえてくる。
零れる涙は吐き気のせい。
そう言い訳出来そうな状況であることが、少しだけありがたかった。
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