83 / 134
【陽介さんは怖くない】絶賛アピール実施中1
しおりを挟む
◇◆◇◆◇
「毎日毎日、いい加減にしてください!!」
「すんません!!」
◇◆◇◆◇
【高見陽介side】
俺は今、毎日が薔薇色春爛漫だ。
誰が見ても浮かれてるだろうし、事実浮かれている。
慎さんと晴れて恋人同士になって、一週間と少し。
慎さんは、あの日こそちょっとしおらしくて可愛くて、もしかして結構甘えん坊なんじゃないかと思ったけれど、翌日にはすっかり平常運転だった。
でもあの仏頂面も好きだから、全然構わない。
まったくオッケーだ。
店では当然今まで通り男として仕事をしているので、翔子と浩平には箝口令を布いて絶対に漏らさないよう頼んでおいた。
金曜と土曜は俺が閉店過ぎても店に居られるから二人きりの時間をたくさん取れて、なんとなく解ったのは『怖い』と『怖くない』の境界線だ。
『行為』を思わせるような雰囲気や触れ方がやはり怖いらしい、ということ。
それと、今までは男として接していたから、意識せずに居られたこともあったのかもしれない。
慎さんは気にしているのか隠そうとするけれど、うっかり不意打ちで抱き寄せそうになると身体が強張ったりする。
だけど、宥めるみたいにゆっくり優しく抱き寄せれば、力が抜けてくれる。
つまり、ちょっとずつ、怖くないってことを覚えてもらえれば良いのじゃないだろうか。
そう考えて、ただいま『陽介さんは怖くない』アピール期間実施中だ。
変に意識されたら無意味になるかもしれないので、俺が勝手にやってるだけだけど。(それにふざけた名前を付けるなと怒られそうだし)
毎日ちょっとずつ、顔を見て手だけでもいいから触れ合って、慎さんが怖がることは絶対しない。
正直、他の男が慎さんにどう思われようと構わないが、とにかく『陽介さん』は絶対怖いことも酷いこともしないと、頭と身体でわかってほしい。
そんなわけで、今夜も簡単に飯だけ食って、barプレジスを訪れた。
「こんばんは、慎さん!」
「また来たんですか貴方は!」
「えっ」
今夜の慎さんは、仏頂面どころか本気でお怒りだった。
額に青筋が浮いて見えるのは、気のせいだと思いたい。
くるっと店を見渡せば、今日はまだ誰もいない。
まあ、そうでなければいきなり怒られたりはしないはずだが。
「昨日も言ったはずです、毎日毎日いい加減にしてくださいと!」
「す、すんません!!」
確かに、言われた。
昨日は定休日だったけど、やっぱり仕事上がりに会いたくなって夕方来てみたら慎さんは待っていてくれて。
てっきり俺に会いたくて待っててくれたのかと思ったら、いくらなんでも来すぎだと説教された。
しかも接客中に視線が付きまとい過ぎて仕事がやりにくいと。
確かに言われたが、会いたいものは仕方がない。
そしてここに来れば会えてしまうのに、来るなというのは酷じゃないだろうか。
「仕事上がりに、どうしても顔が見たくなってしまうんすよ……」
俺の言い訳に、彼女はぎゅーっと眉根を寄せ、ぐっと言葉を詰まらせる。
そうして、壁の時計をちらりと見ると、諦めたように溜息を吐いた。
「……ちゃんと、お食事はされたんですか」
「はい! ちゃんと! 食べました!」
「じゃあ、一時間だけ」
そう言って、すっとオシボリを差し出してくれた。
「毎日毎日、いい加減にしてください!!」
「すんません!!」
◇◆◇◆◇
【高見陽介side】
俺は今、毎日が薔薇色春爛漫だ。
誰が見ても浮かれてるだろうし、事実浮かれている。
慎さんと晴れて恋人同士になって、一週間と少し。
慎さんは、あの日こそちょっとしおらしくて可愛くて、もしかして結構甘えん坊なんじゃないかと思ったけれど、翌日にはすっかり平常運転だった。
でもあの仏頂面も好きだから、全然構わない。
まったくオッケーだ。
店では当然今まで通り男として仕事をしているので、翔子と浩平には箝口令を布いて絶対に漏らさないよう頼んでおいた。
金曜と土曜は俺が閉店過ぎても店に居られるから二人きりの時間をたくさん取れて、なんとなく解ったのは『怖い』と『怖くない』の境界線だ。
『行為』を思わせるような雰囲気や触れ方がやはり怖いらしい、ということ。
それと、今までは男として接していたから、意識せずに居られたこともあったのかもしれない。
慎さんは気にしているのか隠そうとするけれど、うっかり不意打ちで抱き寄せそうになると身体が強張ったりする。
だけど、宥めるみたいにゆっくり優しく抱き寄せれば、力が抜けてくれる。
つまり、ちょっとずつ、怖くないってことを覚えてもらえれば良いのじゃないだろうか。
そう考えて、ただいま『陽介さんは怖くない』アピール期間実施中だ。
変に意識されたら無意味になるかもしれないので、俺が勝手にやってるだけだけど。(それにふざけた名前を付けるなと怒られそうだし)
毎日ちょっとずつ、顔を見て手だけでもいいから触れ合って、慎さんが怖がることは絶対しない。
正直、他の男が慎さんにどう思われようと構わないが、とにかく『陽介さん』は絶対怖いことも酷いこともしないと、頭と身体でわかってほしい。
そんなわけで、今夜も簡単に飯だけ食って、barプレジスを訪れた。
「こんばんは、慎さん!」
「また来たんですか貴方は!」
「えっ」
今夜の慎さんは、仏頂面どころか本気でお怒りだった。
額に青筋が浮いて見えるのは、気のせいだと思いたい。
くるっと店を見渡せば、今日はまだ誰もいない。
まあ、そうでなければいきなり怒られたりはしないはずだが。
「昨日も言ったはずです、毎日毎日いい加減にしてくださいと!」
「す、すんません!!」
確かに、言われた。
昨日は定休日だったけど、やっぱり仕事上がりに会いたくなって夕方来てみたら慎さんは待っていてくれて。
てっきり俺に会いたくて待っててくれたのかと思ったら、いくらなんでも来すぎだと説教された。
しかも接客中に視線が付きまとい過ぎて仕事がやりにくいと。
確かに言われたが、会いたいものは仕方がない。
そしてここに来れば会えてしまうのに、来るなというのは酷じゃないだろうか。
「仕事上がりに、どうしても顔が見たくなってしまうんすよ……」
俺の言い訳に、彼女はぎゅーっと眉根を寄せ、ぐっと言葉を詰まらせる。
そうして、壁の時計をちらりと見ると、諦めたように溜息を吐いた。
「……ちゃんと、お食事はされたんですか」
「はい! ちゃんと! 食べました!」
「じゃあ、一時間だけ」
そう言って、すっとオシボリを差し出してくれた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
587
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる