造花楼園 ◇R-18◇

無欲

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case3.卯衣の場合

07.卯衣、麻薬に侵される◾️

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2階について、身体が妙に火照っていた。

恐怖から神経が昂ぶっているのかと思ったが、それにしたってこの反応はおかしい。酒に酔ったような、それでいて感覚が研ぎ澄まされるような違和感に足元がふらついた。咄嗟に肩を支える鷹臣の手にすら、小さな電流が走る。


「やぁ、あん……ッ」

「おっと……。辛そうだね、半分にしとけばよかった」

「なに、飲ませたのっ……」

「ひとつは避妊薬。宇崎家の跡継ぎはいずれ産んでもらわなきゃだけど、ガキなんて欲しくもないからさ」


また、だ。

また鷹臣の口調が、卯衣を突き放していた。
冷酷で恐ろしいその声は、卯衣に淡々と矛盾した思いを告げる。取り繕うこともなく、相手のことなど一切考慮しない。彼のその部分は、果てしなく暗くて深い。


「どう、して……ほしくない、の?」

「卯衣は欲しいの?  子どもなんて、邪魔なだけじゃない。……愛されなんて、しないのに」


コーヒーにミルクを一滴だけ落としたように、鷹臣の寂しさが、一瞬にじんで闇に消えた。一体いつから、彼はこんなに寂しいのだろう。卯衣の知らない彼の素顔に困惑してばかりだ。


「もう、ひとつは……」

「感覚を昂らせる麻薬。麻薬って言っても軽いやつだから依存性もないし、心配しなくていいよ」


鈍くなる頭の中で、鷹臣の声がやわらかく緩んだことを感じた。拒めばいいのか、抱きしめればいいのかも分からないまま、もはや身体は痺れ、力もうまく入らない。

鷹臣はそんな卯衣の様子を見て嬉しそうに笑い、身体を抱き上げ、広いベッドの上に沈めた。彼自身が覆いかぶさり、腰の線を指でなぞられ、それだけでおかしくなりそうな刺激に身体が勝手にビクビク跳ねる。


「あ、ア、ア」

「卯衣、さっきイけなかったでしょ?  今度はたくさん気持ちよくなってね」

「いや、イヤ……やめて、おみく……やぁああ!」

「……ああ、ダメだね。痛くても感じる?  お仕置きにならないや」


脳天を貫くような悦楽が、一瞬だけ胸の先から与えられる。もっとして欲しくて、でもこんなのおかしいと辛うじて理性が働く。


「やだ、こんなの、こわい……もうやめて……!」

「やめて欲しいの?  こんなに濡れてるのに?」


言いながら、鷹臣の手が蜜壺をかすめる。
頭の先からつま先までを、一気に強い電流が抜けていく。


「アアア!  やだあっ、おみくんんッ!」

「……いいよ分かった。卯衣が言うなら、やめてあげる」


言うや否や、卯衣の蜜壺から鷹臣の手がすっと離れて背を向けた。少し触れられ、そしてすぐ終わったのに、ソコからは大量の愛液と彼の精子があふれ出ているのが分かる。

もどかしく燃える身体が、刺激を求めていた。
熱い。熱くて苦しくて、このままではおかしくなる。その熱を鎮めるための行為を、卯衣は本能で理解していた。


「おみくん、たすけて……苦しい……っ」


この場でたった1人、卯衣の熱をどうにかできるはずの彼は、卯衣の言葉を聞いても背を向けたままだった。ままならない手を動かし、彼の背中に触れる。卯衣の手がおかしいのか、彼の肌は随分冷たいように感じた。


「おねが、おみくん、たすけて……っ」


いくら助けを乞えども、鷹臣は何も言わず、動かない。

きっと、怒っている。でも何故?  なにがいけなかった?  彼を振り向かせるには、彼に触れられるには、どうすればいい?


「っだんなさま、たすけて、だんなさまぁ……!」

「……やっと思い出した?」


鷹臣が振り向き、卯衣の頭をゆっくりと撫であげた。性的でもなんでもないその動作に、卯衣は嬉しくて涙を流す。忘れてた。彼のことは、旦那様と呼ばなくてはいけないんだった。思い出してよかった。きっと、欲しいモノが与えられる。


「卯衣、どうしてほしいの?」

「あ、旦那さま、おねがい、もう……っ」

「舐めてほしいの?  それとも挿れる?  卯衣のおまんこは指がいいの?  おちんちんがいいの?  ほら……ちゃんと言って」


淫猥な言葉で想像ばかりさせて、鷹臣は一切刺激を、快楽を与えてくれない。早く、一番強い刺激が欲しい。熱い身体に急き立てられ、卯衣は叫んだ。


「挿れて、いれてぇ……ッ」

「どこに、何を?」

「ういのおまんこに、旦那さまのおちんちん、ください……っ!」

「……はは、最高」


あまりにも突然、卯衣の全てが満たされた。
ものすごい衝撃に声も上げられず、痙攣しながら鷹臣の肉茎を飲み込む。


「っあア……」

「……ッく……卯衣、イッた?  すごいね、これだけでイくんだ。動いたらどうなるんだろう」


うごいたら……きっと、もっとキモチイイ。

卯衣の腰がゆるく動いた。思っていた通り、突き抜ける悦楽が身体を満たす。もっと、もっと欲しい。それなのに、彼の肉棒は卯衣からずるりと離れてしまった。


「ああっ!  なんで……っ」

「卯衣、動きたいんでしょ、こっちおいで」


胡座をかいて座る鷹臣に言われて、卯衣はのろのろと身体を起こした。腰を掴まれ、誘導されて対面になる。入り口に先端が当たって、卯衣はたまらずそのまま腰を沈めた。


「ああ、あ」

「っこら、勝手に……おちんちん挿れるときは、ちゃんと言わなきゃダメじゃない」

「ああ、ごめんな、さい。だんなさまの、おちんちん挿れさせてください……っ」

「……っいいよ、卯衣。好きに動きな」


許可を得て、卯衣の腰がすりつけるように動く。目の前の鷹臣は一切動かず、ただ卯衣の頭を後ろから抱えてキスをした。舌がからんで、唾液が口の端から垂れると卯衣はまた軽く達した。


「んんうんっ……!」

「……ッはは、こらえるの大変だ、これ」

「旦那さま、おねがい、だんなさまも、動いて……っあん!」


乳房を持ち上げられ、先端に強く吸い付かれる。

まだ足りない。
彼の肉茎で満たされたかのように思えた身体は、しかし際限なく飢えている。
もっと、満たされたい。1階でしたように、獣みたいに貪られたい。そうすればきっと、この熱もおさまってゆく。


「動いてほしいの?  卯衣」

「うん……っ」

「じゃあ今度は後ろからしよっか。いっぱい突いてあげるから、四つん這いになって」


いっぱい突かれる。

卯衣は嬉しくなって、旦那様に白くて丸い尻を向けた。羞恥心も思考力も、今の卯衣は持ち合わせていない。ただこの熱を鎮めてほしいという欲だけで、卯衣は男の言う通りに動いた。

大きな手で尻を撫でられ、揉まれると身体が震えた。パンッ、と叩かれてもなお、気持ちが良かった。


「あゥッ!」

「ボーッとしてないで、卯衣。おねだりは?」

「あ……旦那様、の、おちんちん、挿れてください。卯衣のおまんこ、いっぱい、ついてください」

「いいよ、おれの……俺の卯衣。いっぱいしてあげる」

「あああアッ!」


艶めいた低い声を皮切りに、旦那様は卯衣をめちゃくちゃに責め立てた。獣のような行為に、求めていたものを手にした歓喜に、卯衣はただ喘ぐしかなかった。

身体の中が何度も弾けて、卯衣が気を失うまで。

彼は最後の言葉どおり、幾度も卯衣を絶頂へと突き上げた。


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