冷酷な男爵は家事で惚れさせる!?~その無慈悲さ、料理でほどける~

花霞つばき

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 結婚式の後、披露宴が行われた。グレイヴが念入りに選んだ料理は見事で、シェフと協力しながら味を調整したというフルコースは招待客たちを大いに満足させた。  
 リリアナにとっても、料理が二人を繋いだ象徴だけに、幸せを噛み締めるばかり。華やかなテーブルに囲まれ、繊細な味わいが席を彩っている。

「男爵様、このメインディッシュ、本当に絶品です」

「そうか。少しソースが濃いかと思ったが、気に入ったならよかった」

「はい、これを口にすると、あなたが私のために作ってくれたあのスープを思い出します」

 何度かの乾杯が続き、ハロルド公爵やオズワルドからも祝辞が送られ、会場は和やかな空気に包まれた。かつての“無慈悲の男爵”を知る者たちも、その優しげな態度に驚くばかりだ。

「グレイヴ殿、おめでとう。リリアナ殿と本当にお似合いだ」

「……礼を言う」

「今後は領地と公爵家のさらなる協力体制を築こうじゃないか。お前も人付き合いが苦手とはいえ、もう仲間が増えたんだ」

 グレイヴは頷き、少し照れくさそうにそれを受け止める。リリアナはそんな彼の姿を見て微笑み、心の中で「こうしてみんなに認められていくんだ」と安堵する。  
 披露宴の終盤、ちょっとしたダンスの時間も設けられていた。リリアナはグレイヴと手を取って踊ろうとするが、彼は「踊りは得意ではない」と尻込みする。

「一緒に踊ってくれませんか。最初の頃はあなたに支えられた舞踏会での思い出もありますし」

「……仕方ない。怪我をしないようにしろ」

 その言葉にリリアナは笑い、軽くステップを踏む。グレイヴもぎこちないながらリードをし、二人は狭いスペースでゆったりと回り始める。周囲の人々は温かい眼差しを向け、拍手が自然と湧き起こる。

「男爵様、踊りも上達しましたね」

「練習はした。お前が喜ぶかと思って」

「本当に……嬉しい」

 リリアナの目からは涙が一筋こぼれ、グレイヴは慌てたように顔を覗き込む。

「なぜ泣く」

「わからないけど、幸せすぎて」

「……泣く必要はない」

 そう言いながら、グレイヴはそっと彼女の背に手を回し、静かに支える。涙を拭うように、もう片方の手でリリアナの頬をかすめる。  
 やがて曲が終わり、二人は微笑み合いながらダンスを締めくくる。かつては冷たさの仮面に閉ざされていた男が、今は愛する女性をしっかりと抱き留めている。その姿に招待客も胸を打たれ、温かな拍手が贈られた。  
 披露宴はそのまま和やかに終わり、夜には新郎新婦が男爵邸へ向かう準備をする。これまで乗り越えた苦難を思えば、今の幸福がどれほど尊いか、二人は痛いほど感じ取っている。  
 こうして二人の結婚式は大成功を収め、領地にも明るい話題として伝わった。何より、グレイヴとリリアナが寄り添い合う姿は、周囲に優しい未来を期待させるものとなった。 
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