63 / 96
62話
しおりを挟むいよいよ明日はレンブラントと約束したデートの日だ。
「どうしよう……」
部屋の中は泥棒でも入ったのではないかという程散らかっている。
「絶対、こっちの可愛いドレスが良いに決まってるの!」
「いえ、ティアナ様にはこちらの上品なドレスがお似合いに決まってます!」
かれこれ同じやり取りを一時間は続けているミアとハナに、ティアナはため息を吐く。
デートなどするのは生まれて初めてでどうしたら良いのか分からず、ミアやハナに相談したまでは良かったが今は後悔をしている。
二人はクローゼットをひっくり返し、ティアナが明日着て行くドレスを選び出したが互いに自分の意見を譲らずまるで決まらない。
(こんな時にモニカがいてくれたら……)
『暫くお暇を頂いても宜しいでしょうか』
ユリウスの件で責任を感じたモニカは、あの後屋敷を出て行ってしまった。
『モニカ……帰って来るよね』
『私の帰る場所はこちらしかありませんから……。ただ少し頭を冷やして参ります』
彼女がいなくなり、もう一ヶ月半くらいになる。最年長で纏め役だったモニカがいないとしっかり者のハナでさえ急に頼りなく感じてしまい、元々お調子者のミアは更に拍車が掛かっている。
困ったものだと思うが、それよりもティアナは寂しさを感じていた。
ティアナはもう一度ため息を吐くとスッと立ち上がり、クローゼットの中から自らドレスを手に取った。
「ティアナ様?」
「明日はこれを着て行くから、もうお仕舞い。遅いから私は先に寝るわ。二人はこの散らかった部屋を片付けてから休んでくれるかしら」
笑顔でそう話すと、きょとんとするミアとは対照的にハナは不味いという表情で身を縮こませ「申し訳ございません」と消え入りそうな声で謝罪した。
ーー翌朝。
かなり朝早く起きた筈が、準備に手間取ってしまい時間ギリギリになってしまった。
ミアが寝坊をしたり、ミアが折角締めたコルセットの紐を緩めてしまったり、更にはお茶の入ったカップをミアが落として割ったりと慌ただしかった。幸いドレスには掛からなかったので胸を撫で下ろしたが、出掛ける前から少し疲れてしまった。
「お待たせ、ティアナ。遅くなってすまない」
時間丁度にレンブラントが迎えに来た。
彼は普段とは違いラフな恰好だったが、品があり何時もとはまた違った魅力を感じる。
(控えめに言って格好良過ぎる)
「はい、これ君に似合うと思って選んだんだ」
「ありがとうございます」
赤い薔薇の花束を差し出され、ティアナははにかみながら受け取った。
「さあ、行こうか」
彼はティアナの前に跪き手を取ると、歩き出す。
二人が馬車に乗り込むと、ゆっくりと動き出した。
◆◆◆
何時もの清楚でシンプルなデザインの装いではなく、レースやフリルが施された愛らしいドレスの彼女は控えめに言って世界一可愛い。まあ彼女なら何を着ようが可愛いに決まっている。
ただやはり自分が送った装飾品は身に付けてはいなかった。その事だけは残念でならない。
「何処へ行くんですか」
本当は彼女の隣に座りたい気持ちを抑え込み、向かい側に腰を下ろしたレンブラントをティアナは小首を傾げて見て来る。その愛らしさに、隣所か自分の膝の上に乗せて抱き締めたいと真面目に思う。
「先ずは美術館へ行こう。その後は国立図書館に行ってから、お昼にする予定だよ。午後は買い物に付き合って欲しいんだけど、良いかな?」
クラウディウスからの提案で美術館へ、テオフィルからの提案で国立図書館へ、お昼はヘンリックお勧めの店へと行き、午後はロートレック家御用達の宝石店へと行くプランを立てた。
少し詰め込み過ぎた気もするが、失敗をしたくない。美術館がダメなら図書館、それもダメならお洒落な店で食事と対策はバッチリだ。
「はい、勿論です。私はレンブラント様がご一緒なら何処でも嬉しいです」
「ティアナ……それ分かっててやってるの」
「?」
ほんのりと頬を染め、上目遣いでそんな台詞をサラリと言ってのける。
「いや、何でもないよ」
(ダメだ……可愛過ぎて今日一日耐えらか分からない。悶え死ぬ……)
19
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』
鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」
公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。
だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。
――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの?
何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。
しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。
それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。
そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。
温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。
そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。
「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」
「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」
離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。
そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。
白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』
鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」
華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。
王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。
そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。
レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。
「お願いだ……戻ってきてくれ……」
王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。
「もう遅いわ」
愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。
裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。
これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。
そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
公爵家の秘密の愛娘
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。
過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。
そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。
「パパ……私はあなたの娘です」
名乗り出るアンジェラ。
◇
アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。
この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。
初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。
母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞
🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞
🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇♀️
追放聖女の再就職 〜長年仕えた王家からニセモノと追い出されたわたしですが頑張りますね、魔王さま!〜
三崎ちさ
恋愛
メリアは王宮に勤める聖女、だった。
「真なる聖女はこの世に一人、エミリーのみ! お前はニセモノだ!」
ある日突然いきりたった王子から国外追放、そして婚約破棄もオマケのように言い渡される。
「困ったわ、追放されても生きてはいけるけど、どうやってお金を稼ごうかしら」
メリアには病気の両親がいる。王宮で聖女として働いていたのも両親の治療費のためだった。国の外には魔物がウロウロ、しかし聖女として活躍してきたメリアには魔物は大した脅威ではない。ただ心配なことは『お金の稼ぎ方』だけである。
そんな中、メリアはひょんなことから封印されていたはずの魔族と出会い、魔王のもとで働くことになる。
「頑張りますね、魔王さま!」
「……」(かわいい……)
一方、メリアを独断で追放した王子は父の激昂を招いていた。
「メリアを魔族と引き合わせるわけにはいかん!」
国王はメリアと魔族について、何か秘密があるようで……?
即オチ真面目魔王さまと両親のためにお金を稼ぎたい!ニセモノ疑惑聖女のラブコメです。
※小説家になろうさんにも掲載
「結婚しよう」
まひる
恋愛
私はメルシャ。16歳。黒茶髪、赤茶の瞳。153㎝。マヌサワの貧乏農村出身。朝から夜まで食事処で働いていた特別特徴も特長もない女の子です。でもある日、無駄に見目の良い男性に求婚されました。何でしょうか、これ。
一人の男性との出会いを切っ掛けに、彼女を取り巻く世界が動き出します。様々な体験を経て、彼女達は何処へ辿り着くのでしょうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる