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「眠れない……」
ロゼッタは、昼間侍女のエナから言われた言葉が頭を過り、中々寝付けないでいた。
ー ロゼッタ様の部屋に入られて、そちらのベッドで眠られてました ー
元々よく分からなかったフェルナンドの事が、更に分からなくなる。何故大量の酒を煽り、自分のベッドで眠っていたのか。
自尊心の高い彼の事だから、てっきり怒りに震えているかと思っていたのに……何しろロゼッタは彼の頬を叩いたのだ、しかも公然の場にて。
彼は騎士団の副団長であり、面目は丸潰れである筈だ。
そんな相手のベッドで眠るという心理状態は一体どういう事なのだろうか。
「はぁ……」
ロゼッタはベッドから身を起こすと、カーテンを開けた。空には綺麗に輝く月が見える。その場にしゃがみ込むと、何をするでもなくただ月を眺めた。
「嫌い……あの人の事なんて……大嫌い……」
幾度そう思っただろう。
「でも、どうして……」
どうしてだろう……どうして、嫌いになれないのだろう。あんな酷い人なのに。
嫌いだと思おうとしても、拒絶しても、憎まれ口を叩いても……悲しいくらいに嫌いになれない。
傲慢で女たらしでどこまでも自分本位な人。
『フェルナンドはね、あの人とお義姉さんとの子供なの』
母から聞いた真実。彼はロゼッタの父と叔母との間に出来た子供という事。聞かされた瞬間、驚き過ぎて声も出なかった。そして次に頭を過ぎったのは、自分と彼は異母兄妹という事実だ。
息苦しさを覚えた。悲しくて眩暈と吐き気がしてくる。
彼はこの事を知っているのだろうか……。
どれくらい沈黙が流れただろう……かなりの時間、ロゼッタはその場に立ち尽くしていた。この場から立ち去りたいそんな風に思った時だった。
『ごめんなさい、ロゼッタ。ごめんなさい』
堰を切った様に母が泣き出した。父はまだ黙り込んでいる。
そしてその後に聞かされたもう一つの事実に、ロゼッタ思わず笑った。愉しい訳ではないのに何故だか、無性におかしかった。
……私は、お父様の娘じゃなかった。
確かに昔から自分は、父にはまるで似ていない。だが母の面影は多少ある故に別段気にした事はなかった。
母は伯爵家の一人娘だった。母は父と結婚する前に一度結婚しており前夫とは死別している。その後直ぐに父と再婚したのだが、その時には母のお腹には子が宿っていた。そうそれが……ロゼッタだ。
母との婚姻の条件はお腹の子を父の実の子として育て、母と父との間には子を儲けない事。母は亡き夫を愛していた。いや今でも愛しているのだろう。婚姻を結んでから今日まで二人は愛し合った事は一度たりともない。
伯爵という肩書きを欲しかった父と名目上の夫を欲しかった母は利害が一致した関係に過ぎず、今も尚それは変わらない。
貴族に生まれ愛だの恋だのと下らないと言われる中で、自分の両親は誇らしい程仲睦まじいと信じて疑わなかった……憧れだった。それなのに真実はまるで違ったのだ……。
ロゼッタは、ずっと家族だと思っていたものが、音を立てて崩れていくそんな感覚がする。
父は必死に自分の事を血は繋がらなくとも、本当の娘だと思っていると言ってくれた。だがロゼッタは心が冷えていくのをひしひしと感じる。
貴方の本当の子供は私ではなく……フェルナンドでしょう?本当は血の繋がった子供が欲しかったのではないのですか?だから裏切ったのではないのですか?
そう言ってやりたかった。いやまだまだ言いたい事はある。こんな言葉だけじゃ足らない。
父達の裏切りを母や叔父は容認しているのだろうか……だが、そんなつまらない事を聞いた所でなんの意味はない。
事実を知って、急に父に彼の面影が重なる気がして伸ばされた手をロゼッタは叩いてしまった。父と母、叔父や叔母……彼らの顔を、もう見たくはない。
ロゼッタは瞳を伏せカーテンをキツく握り締める。
「……」
彼に会わなくてはならない。会う事に不安や戸惑い、怖さがある。だが……どこまで知っているのか聞きたい。事実を知った上で自分と結婚したのだろうか……彼は今何を思っている?彼は一体自分をどうしたいのか。
不貞を繰り返す彼と父が重なり、また少し気分が悪くなり吐きたくなる。
ただただ彼の……フェルナンドの気持ちを知りたいと、いや知らなくてはならないと思った。
ロゼッタは、昼間侍女のエナから言われた言葉が頭を過り、中々寝付けないでいた。
ー ロゼッタ様の部屋に入られて、そちらのベッドで眠られてました ー
元々よく分からなかったフェルナンドの事が、更に分からなくなる。何故大量の酒を煽り、自分のベッドで眠っていたのか。
自尊心の高い彼の事だから、てっきり怒りに震えているかと思っていたのに……何しろロゼッタは彼の頬を叩いたのだ、しかも公然の場にて。
彼は騎士団の副団長であり、面目は丸潰れである筈だ。
そんな相手のベッドで眠るという心理状態は一体どういう事なのだろうか。
「はぁ……」
ロゼッタはベッドから身を起こすと、カーテンを開けた。空には綺麗に輝く月が見える。その場にしゃがみ込むと、何をするでもなくただ月を眺めた。
「嫌い……あの人の事なんて……大嫌い……」
幾度そう思っただろう。
「でも、どうして……」
どうしてだろう……どうして、嫌いになれないのだろう。あんな酷い人なのに。
嫌いだと思おうとしても、拒絶しても、憎まれ口を叩いても……悲しいくらいに嫌いになれない。
傲慢で女たらしでどこまでも自分本位な人。
『フェルナンドはね、あの人とお義姉さんとの子供なの』
母から聞いた真実。彼はロゼッタの父と叔母との間に出来た子供という事。聞かされた瞬間、驚き過ぎて声も出なかった。そして次に頭を過ぎったのは、自分と彼は異母兄妹という事実だ。
息苦しさを覚えた。悲しくて眩暈と吐き気がしてくる。
彼はこの事を知っているのだろうか……。
どれくらい沈黙が流れただろう……かなりの時間、ロゼッタはその場に立ち尽くしていた。この場から立ち去りたいそんな風に思った時だった。
『ごめんなさい、ロゼッタ。ごめんなさい』
堰を切った様に母が泣き出した。父はまだ黙り込んでいる。
そしてその後に聞かされたもう一つの事実に、ロゼッタ思わず笑った。愉しい訳ではないのに何故だか、無性におかしかった。
……私は、お父様の娘じゃなかった。
確かに昔から自分は、父にはまるで似ていない。だが母の面影は多少ある故に別段気にした事はなかった。
母は伯爵家の一人娘だった。母は父と結婚する前に一度結婚しており前夫とは死別している。その後直ぐに父と再婚したのだが、その時には母のお腹には子が宿っていた。そうそれが……ロゼッタだ。
母との婚姻の条件はお腹の子を父の実の子として育て、母と父との間には子を儲けない事。母は亡き夫を愛していた。いや今でも愛しているのだろう。婚姻を結んでから今日まで二人は愛し合った事は一度たりともない。
伯爵という肩書きを欲しかった父と名目上の夫を欲しかった母は利害が一致した関係に過ぎず、今も尚それは変わらない。
貴族に生まれ愛だの恋だのと下らないと言われる中で、自分の両親は誇らしい程仲睦まじいと信じて疑わなかった……憧れだった。それなのに真実はまるで違ったのだ……。
ロゼッタは、ずっと家族だと思っていたものが、音を立てて崩れていくそんな感覚がする。
父は必死に自分の事を血は繋がらなくとも、本当の娘だと思っていると言ってくれた。だがロゼッタは心が冷えていくのをひしひしと感じる。
貴方の本当の子供は私ではなく……フェルナンドでしょう?本当は血の繋がった子供が欲しかったのではないのですか?だから裏切ったのではないのですか?
そう言ってやりたかった。いやまだまだ言いたい事はある。こんな言葉だけじゃ足らない。
父達の裏切りを母や叔父は容認しているのだろうか……だが、そんなつまらない事を聞いた所でなんの意味はない。
事実を知って、急に父に彼の面影が重なる気がして伸ばされた手をロゼッタは叩いてしまった。父と母、叔父や叔母……彼らの顔を、もう見たくはない。
ロゼッタは瞳を伏せカーテンをキツく握り締める。
「……」
彼に会わなくてはならない。会う事に不安や戸惑い、怖さがある。だが……どこまで知っているのか聞きたい。事実を知った上で自分と結婚したのだろうか……彼は今何を思っている?彼は一体自分をどうしたいのか。
不貞を繰り返す彼と父が重なり、また少し気分が悪くなり吐きたくなる。
ただただ彼の……フェルナンドの気持ちを知りたいと、いや知らなくてはならないと思った。
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