有能でイケメンクズな夫は今日も浮気に忙しい〜あら旦那様、もうお戻りですか?〜

秘密 (秘翠ミツキ)

文字の大きさ
83 / 105

八十二話〜三者面談〜





 ブロンダン家の離れの応接間には、今、ユーリウスとエレノラ、面談の一人目である愛人が顔を揃えていた。
 エレノラと愛人はソファーに向き合って座り、少し離れた後ろに一人ぽつんとユーリウスだけ椅子に座らされている。
 一体何が起きているんだと呆気に取られる中、エレノラが口を開いた。


「先ずはフルネームでお名前をお答え下さい」

「ドーリス・オーブリーです」

「年齢とお父上の爵位をお願いします」

「二十五歳で、父は伯爵位を賜っております」

「では手紙で説明をさせて頂いた通り、進路希望をお伺いしますが、その前に最終意思確認をします。今回の件を私に一任されるという事で間違いありませんか? またご両親に承諾は得ておりますか?」

 面接官さながらエレノラは淡々と質問と説明をし手元の書面に記入していく。

「……私は四人の兄姉がいて末の娘です。昔から両親からの関心はなく、忘れられた存在です。今回の事を伝えはしましたが、好きにしなさいと言われています。こんな状況ですので、ユーリウス様から手紙を頂いた時は正直途方に暮れてしまいました。ですが、エレノラ様からお手紙が届いて少し希望が持てたんです。厚顔無恥なのは承知の上ですが、エレノラ様にお任せしたいです」

 その言葉にエレノラは暫し黙った。
 こちらに背を向けているエレノラの表情は確認出来ないが、恐らく彼女の事だ同情して悲しそうな顔をしているに違いないと分かる。
 だがユーリウスはドーリスの説明を聞いても特に何も思わなかった。その理由は別段珍しい話ではないからだ。
 田舎貴族は知らないが、都会の貴族の家はどこもドーリスのような家が多い。
 兄弟姉妹は親から選別され、嫡男や優秀な子供は優遇されるが、それ以外の子供は放置され時間やお金を掛けるのが無駄という傾向にある。
 ある親は自尊心が高く優秀な子供以外は認めないといい、ある親は跡継ぎの嫡男以外には興味はなく、またある親は下級貴族故お金が余りなく優秀な子供に期待を込めて一人だけにお金を掛ける。そういった様々な理由があった。

「……分かりました。では質疑応答を続けます。私から提案させて頂く事は三つです。一つ目は嫁ぎ先を探す、二つ目は働き口を探す、三つ目は修道院を探す以上です。ドーリス様はこの先、どう生きていきたいですか?」

「私は結婚をしたいです」

「ドーリス様の年齢や状況を考えますと、結構な年上の男性や様々な理由で再婚されたい男性、またお相手に子供がいる場合もあるかと思います。正直、好条件は望めません。それでも結婚を希望しますか?」

「それでも結婚がしたいです。一度でいいので心から愛されてみたい……」

 独り言のように呟く姿に、彼女もまた自分と同じなのだと思えて眉根を寄せた。

「では結婚相手の希望条件を伺いますが、初めにどうしてもこれだけは譲れない条件を教えて下さい」

「……誠実な方が、良いです」

 かなり悩んだドーリスは、こちらを一瞥してからポツリとそう言った。なんとなく責められているように思えて居心地が悪い。
 無意識に席を立とうとすると、その事に気付いたエレノラが振り返る事なく「逃げずに自分自身と向き合って下さい」と言った。
 その言葉に歯を噛み締め拳を握る。
 自分の情けなさに羞恥心が込み上げながらも椅子に座り直した。


「ーー分かりました、では質疑応答は以上です。お疲れ様でした。ご希望に添えるかは分かりませんが最善を尽くします」

 面談が終わるとエレノラは立ち上がり頭を下げた。するとドーリスも躊躇いながらも頭を下げる。

「あの、エレノラ様……どうか宜しくお願い致します」

 ドーリスはユーリウスを一瞥する事なく部屋を出て行った。

 その後も面談は休む暇なく次々に行われた。
 その間、ユーリウスはまるで置物と化して見ているしか出来ない。
 
(こんな顔をしていたんだな……)

 入れ替わり立ち替わりやって来る愛人達の様子を見てボンヤリ思う。
 何年も一緒にいたが、こうやって確りと顔を見る事はなかったかも知れない。いや見ていても全て同じようにしか見えていなかった。同じように微笑み同じような仕草をして同じように話す。だからこそ誰でも良かった。

 必死に進路について話す愛人達の姿を見て、これまで自分は一体何をしてきたのだと自嘲した。





感想 210

あなたにおすすめの小説

三度裏切られた私が、四度目で「離婚」を選ぶまで

狛犬
恋愛
三度、夫に裏切られた。 一度目は信じた。 二度目は耐えた。 三度目は――すべてを失った。 そして私は、屋上から身を投げた。 ……はずだった。 目を覚ますと、そこは過去。 すべてが壊れる前の、まだ何も起きていない時間。 ――四度目の人生。 これまでの三度、私は同じ選択を繰り返し、 同じように裏切られ、すべてを失ってきた。 だから今度は、もう決めている。 「もう、陸翔はいらない」 愛していた。 けれど、もう疲れた。 今度こそ―― 自分を守るために、家族を守るために、 私は、自分から手を放す。 これは、三度裏切られた女が、 四度目の人生で「選び直す」物語。

片思いの貴方に何度も告白したけど断られ続けてきた

アリス
恋愛
幼馴染で学生の頃から、ずっと好きだった人。 高校生くらいから何十回も告白した。 全て「好きなの」 「ごめん、断る」 その繰り返しだった。 だけど彼は優しいから、時々、ご飯を食べに行ったり、デートはしてくれる。 紛らわしいと思う。 彼に好きな人がいるわけではない。 まだそれなら諦めがつく。 彼はカイル=クレシア23歳 イケメンでモテる。 私はアリア=ナターシャ20歳 普通で人には可愛い方だと言われた。 そんなある日 私が20歳になった時だった。 両親が見合い話を持ってきた。 最後の告白をしようと思った。 ダメなら見合いをすると言った。 その見合い相手に溺愛される。

私を簡単に捨てられるとでも?―君が望んでも、離さない―

喜雨と悲雨
恋愛
私の名前はミラン。街でしがない薬師をしている。 そして恋人は、王宮騎士団長のルイスだった。 二年前、彼は魔物討伐に向けて遠征に出発。 最初は手紙も返ってきていたのに、 いつからか音信不通に。 あんなにうっとうしいほど構ってきた男が―― なぜ突然、私を無視するの? 不安を抱えながらも待ち続けた私の前に、 突然ルイスが帰還した。 ボロボロの身体。 そして隣には――見知らぬ女。 勝ち誇ったように彼の隣に立つその女を見て、 私の中で何かが壊れた。 混乱、絶望、そして……再起。 すがりつく女は、みっともないだけ。 私は、潔く身を引くと決めた――つもりだったのに。 「私を簡単に捨てられるとでも? ――君が望んでも、離さない」 呪いを自ら解き放ち、 彼は再び、執着の目で私を見つめてきた。 すれ違い、誤解、呪い、執着、 そして狂おしいほどの愛―― 二人の恋のゆくえは、誰にもわからない。 過去に書いた作品を修正しました。再投稿です。

新婚初夜に『白い結婚にしてほしい』と言われたので論理的に詰めたら夫が泣きました

ささい
恋愛
「愛人がいるから、白い結婚にしてほしい」 政略結婚の初夜にそう告げた夫ルーファス。 妻カレンの反応は—— 「それ、契約不履行ですよね?」 「あなたの感情論、論理的に破綻してますよ?」 泣き落としは通じない。 そして初夜の翌朝、夫は泣いていた。 逃げ道は全部塞がれ、気づけば毎日論破されていた。 これは、論破され続けた夫がなぜか幸せになる話。

どなたか私の旦那様、貰って下さいませんか?

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
私の旦那様は毎夜、私の部屋の前で見知らぬ女性と情事に勤しんでいる、だらしなく恥ずかしい人です。わざとしているのは分かってます。私への嫌がらせです……。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 政略結婚で、離縁出来ないけど離縁したい。 無類の女好きの従兄の侯爵令息フェルナンドと伯爵令嬢のロゼッタは、結婚をした。毎晩の様に違う女性を屋敷に連れ込む彼。政略結婚故、愛妾を作るなとは思わないが、せめて本邸に連れ込むのはやめて欲しい……気分が悪い。 彼は所謂美青年で、若くして騎士団副長であり兎に角モテる。結婚してもそれは変わらず……。 ロゼッタが夜会に出れば見知らぬ女から「今直ぐフェルナンド様と別れて‼︎」とワインをかけられ、ただ立っているだけなのに女性達からは終始凄い形相で睨まれる。 居た堪れなくなり、広間の外へ逃げれば元凶の彼が見知らぬ女とお楽しみ中……。 こんな旦那様、いりません! 誰か、私の旦那様を貰って下さい……。

「既読だけだったあなたと別れて、私はちゃんと恋をした」〜言葉を失った私が、もう一度誰かを好きになるまで〜

まさき
恋愛
五年間、私は何も言えなかった。 「ねえ、今日も遅いの?」 そう送ったメッセージに返ってくるのは、いつも“既読”だけ。 仕事に追われる夫・蒼真は、悪い人じゃなかった。 ただ——私を見ていなかった。 笑って送り出して、一人で夕食を食べて、眠れない夜をやり過ごす。 そんな日々を続けるうちに、言葉は少しずつ消えていった。 そしてある夜、私は離婚届を置いて家を出た。 声にできなかった五年分の気持ちを、そのまま残して。 ――もう、何も言わなくていいと思った。 新しい生活。静かすぎる部屋。 誰にも気を遣わなくていいはずなのに、なぜか息がしやすい。 そんなある日、出会ったのは—— ちゃんと話を聞いてくれる人だった。 少しずつ言葉を取り戻していく中で、気づいてしまう。 私はまだ、蒼真のことを忘れられていない。 「今さら、遅いよ」 そう言えるはずだったのに—— これは、何も言えなかった私が、 もう一度“誰かを好きになる”までの物語。 そして最後に選ぶのは、 過去か、それとも——今か。

【完結】「元カノが忘れられないんでしょう?」と身を引いた瞬間、爽やか彼氏の執着スイッチが入りました

恋せよ恋
恋愛
「元カノが忘れられないなら、私が身を引くわくべきよね」 交際一周年、愛するザックに告げた決別の言葉。 でも、彼は悲しむどころか、見たこともない 暗い瞳で私を追い詰めた。 「僕を捨てる? 逃げられると思っているの、アン」 私の知る爽やかな王子の仮面が剥がれ落ち、 隠されていた狂おしいほどの独占欲が牙を剥く。 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

死ぬまでに叶えたい十の願い

木風
恋愛
「あなたを妻として、愛することはない。おそらく、生涯抱くこともないだろう」 三年間の白い結婚——捨て置かれた王太子妃エリアーナに、側妃が『死の呪い』をかけ余命一年を宣告する。 離縁を願うも拒否され、代わりに「死ぬまでに十の願いを叶えて」と契約する—— 二人きりの外出、星空、海…ささやかな願いが王太子の心をほどいていく。