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「大丈夫ですか?」
アンジェリカは顔を上げ、声の主を確認した。そして制止する。まるで時が止まった様な感覚に陥った。
心臓が煩いくらい高鳴って、頭がぼうっとする。これは…何?
「どこか痛みますか?」
返事をしないアンジェリカに少年は心配そうな表情で覗き込んでくる。
「だ、大丈夫ですっ…」
アンジェリカは我に返り慌てて離れようとしたが、少年が離してくれない…。
「あ、あの。本当に大丈夫ですから、その」
恥ずかし過ぎて早く離れたい。きっと今自分の顔は真っ赤に染まっているだろう。
「顔が赤いですね…体調が優れないのでは」
「へ⁈」
少年は屈んでアンジェリカの額に自分の額をぴったりとくっ付けた。思わず声が上擦り変な声が出てしまう。
「やっぱり…かなり熱い。ダメですよ、こんな体調でで走り回っては」
注意するのはそこなのね…。なんだかこの感覚ロランに似てる気がする…。
「さぁ、此方へ。善は急げですよ」
アンジェリカが考える間も無く少年に抱きかかえられて連れて行かれた。アンジェリカは呆然としながらも未だに顔を赤らめていた。
「申し訳ございません…」
レネーは部屋に戻って来たディルクに深々と頭を下げた。アンジェリカが部屋を飛び出し、直ぐに後を追ったが思った以上に足が早かった…。
しかも門へ向かうかと思いきや、向かう方向が予想不可能な程にめちゃくちゃで途中で見失ってしまった。侍女達にも声を掛け城中探させたが何処にもいない。
念の為門番にも尋ねたが、見ていないと言う。常識的に考えればまだ城の中にいる筈だが、兎に角見当たらない。
「…はぁ。ロラン、君本当に余計な事を言ってくれたね」
ディルクは頭を抱える。そんなディルクを余所にロランもぐもぐと焼き菓子を頬張っていた。それは美味しそうに…。そんなロランの姿を見てディルクはため息しか出ない。
「別に隠していてもいつかはバレるんだから、隠す意味ないよ」
この弟は…。まるで悪びれる事もしない。…ロランの辞書に謝罪と言う文字はない。昔から謝っている姿を見た記憶がなかった。
「そうかも知れないけどね。誤解のない様に、折を見て僕から話すつもりだったんだよ」
当事者でない第3者から話を聞いて誤解をされたくなかった。折角どうにか丸め込んでアンジェリカを城まで連れて来て、1年という期間だけだがディルクの側にいるという事の約束も取り付けた。なのにこれでは台無しだ。
アンジェリカは恐らく城の何処に隠れている筈。門番からの証言では見かけていないと言う。ならば後は外へ出るには塀を越えるしかないが。この城の異様に高い塀を上って脱出するのは無理がある。
「はぁ…」
今侍女や兵達に城中を探させている。そう見つかるのに時間は要さないだろう。だが見つかってからが厄介だ。
今ディルクはアンジェリカからの信用が地に落ちているに違いない。彼女の中でのディルクは多分無類の女好きの節操のない最低な王太子、と言う風な評価だろう…。
1度失った信頼を回復させるのはかなり厳しい。相当な事がない限りは取り戻せないだろう。
やはりあの時ロランを部屋に残して置くべきではなかった。完全に自分の軽率さが招いた結果だ。甘かった…。
「ディルク様?何方へ…」
「僕も探して来るよ。彼女は僕の大切な女性だからね、人任せにはしたくない」
意外なディルクの言葉にレネーは驚いた。あのどこまでも女性に無関心だったディルクが1人の女性の為に苦悩し、心配をしている。アンジェリカへのディルクの想いが本物なのだと感じせざるを得なかった。
アンジェリカは顔を上げ、声の主を確認した。そして制止する。まるで時が止まった様な感覚に陥った。
心臓が煩いくらい高鳴って、頭がぼうっとする。これは…何?
「どこか痛みますか?」
返事をしないアンジェリカに少年は心配そうな表情で覗き込んでくる。
「だ、大丈夫ですっ…」
アンジェリカは我に返り慌てて離れようとしたが、少年が離してくれない…。
「あ、あの。本当に大丈夫ですから、その」
恥ずかし過ぎて早く離れたい。きっと今自分の顔は真っ赤に染まっているだろう。
「顔が赤いですね…体調が優れないのでは」
「へ⁈」
少年は屈んでアンジェリカの額に自分の額をぴったりとくっ付けた。思わず声が上擦り変な声が出てしまう。
「やっぱり…かなり熱い。ダメですよ、こんな体調でで走り回っては」
注意するのはそこなのね…。なんだかこの感覚ロランに似てる気がする…。
「さぁ、此方へ。善は急げですよ」
アンジェリカが考える間も無く少年に抱きかかえられて連れて行かれた。アンジェリカは呆然としながらも未だに顔を赤らめていた。
「申し訳ございません…」
レネーは部屋に戻って来たディルクに深々と頭を下げた。アンジェリカが部屋を飛び出し、直ぐに後を追ったが思った以上に足が早かった…。
しかも門へ向かうかと思いきや、向かう方向が予想不可能な程にめちゃくちゃで途中で見失ってしまった。侍女達にも声を掛け城中探させたが何処にもいない。
念の為門番にも尋ねたが、見ていないと言う。常識的に考えればまだ城の中にいる筈だが、兎に角見当たらない。
「…はぁ。ロラン、君本当に余計な事を言ってくれたね」
ディルクは頭を抱える。そんなディルクを余所にロランもぐもぐと焼き菓子を頬張っていた。それは美味しそうに…。そんなロランの姿を見てディルクはため息しか出ない。
「別に隠していてもいつかはバレるんだから、隠す意味ないよ」
この弟は…。まるで悪びれる事もしない。…ロランの辞書に謝罪と言う文字はない。昔から謝っている姿を見た記憶がなかった。
「そうかも知れないけどね。誤解のない様に、折を見て僕から話すつもりだったんだよ」
当事者でない第3者から話を聞いて誤解をされたくなかった。折角どうにか丸め込んでアンジェリカを城まで連れて来て、1年という期間だけだがディルクの側にいるという事の約束も取り付けた。なのにこれでは台無しだ。
アンジェリカは恐らく城の何処に隠れている筈。門番からの証言では見かけていないと言う。ならば後は外へ出るには塀を越えるしかないが。この城の異様に高い塀を上って脱出するのは無理がある。
「はぁ…」
今侍女や兵達に城中を探させている。そう見つかるのに時間は要さないだろう。だが見つかってからが厄介だ。
今ディルクはアンジェリカからの信用が地に落ちているに違いない。彼女の中でのディルクは多分無類の女好きの節操のない最低な王太子、と言う風な評価だろう…。
1度失った信頼を回復させるのはかなり厳しい。相当な事がない限りは取り戻せないだろう。
やはりあの時ロランを部屋に残して置くべきではなかった。完全に自分の軽率さが招いた結果だ。甘かった…。
「ディルク様?何方へ…」
「僕も探して来るよ。彼女は僕の大切な女性だからね、人任せにはしたくない」
意外なディルクの言葉にレネーは驚いた。あのどこまでも女性に無関心だったディルクが1人の女性の為に苦悩し、心配をしている。アンジェリカへのディルクの想いが本物なのだと感じせざるを得なかった。
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