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九十一話〜勇士〜
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シュッーー
風を斬る音が聞こえた。
それと同時に目の前の男は地面に崩れ落ちる。
その後ろから現れたのは彼だった。
見慣れた青眼と目が合う。
驚き過ぎて声も出ずに、呆然と見つめるしか出来ない。
死を覚悟した。
どうせ誰も助けてなどくれないと諦めた。
でも彼が私を助けてくれた。
そう、その姿はまるでおとぎ話に登場する勇士のように見えたーー
「リズ」
名前を呼ばれようやく我に返ったエヴェリーナは慌てて立ち上がる。
「セドリック様、危ない所を助けて頂きありがとうございました」
礼を述べて丁寧に頭を下げた。彼の後方を見ればブライスやアルバート、サイラス達の姿もあった。そしてルークが今にも泣き出しそうな顔でこちらを見ている。
無事な姿を確認し胸を撫で下ろす。
経緯は分からないが助けに来てくれたのだろう。
それにしてもセドリック達の気配に全く気付かなかった。緊迫した状況だったので、恐らく無意識に周囲の音を遮断していたのかも知れない。
「セドリック様……?」
無言のまま立ち尽くす彼に内心戸惑う。それに彼だけでなくサイラス達も何も言わずにこちらをただ見ている事に違和感を覚える。
一体どうしたというのだろうか……。
「リズ……無理しなくていいんだ」
「それはどういう意味ですか?」
彼は眉根を寄せ顔を歪ませる。
何故セドリックがそんな顔をするのか分からない。
「震えてるよ」
「っ‼︎ーー」
その言葉に目を見開く。
指摘されるまで気付かなかった。
いつも通り冷静に振る舞えていると思っていたのにーー
自覚した瞬間、手足や身体がどしようもなく震えている事に気付いた。
「も、申し訳ありません、とんだ醜態を……セドリック様⁉︎」
「大丈夫だよ、リズ。……もう怖い事はないから」
彼はこちらへ近付くと、手を伸ばし躊躇う事なくエヴェリーナの身体を抱き締めた。
あまりの出来事に声が上擦る。
何故ならセドリックは女性に触れると発疹が出来て体調も悪くなる。
慌てて離れようと身動ぐが、彼は更にエヴェリーナを抱く腕に力を込めた。
「セドリック様、お離し下さいっ。そうでないと……」
「嫌だ。絶対に離さない」
普段よりも低い声色に言葉を遮られる。
戸惑いながら彼を見るが、その表情は確認出来なかった。
何故なら初めて出会った頃は変わらない背丈だったのに、今は目線は彼の顎辺りになっている。まだ少年らしさを感じていた彼が、急に大人の男性に思えた。
「え、きゃっ!」
暫しなされるがままになっていたが、今度は不意に身体が宙に浮く。
「セドリック様、あのっ」
彼に抱き抱えられると強制的に馬に乗せられた。
「リズ、帰ろう」
「……はい」
射抜くようなセドリックの青眼に見つめられ、エヴェリーナは静かに頷くしか出来ない。
彼は今何を思っているのだろうか……。
暫くしてエヴェリーナ達は無事に屋敷に帰り着いた。
その頃には日が傾き始め辺りは緋色に染まっていた。
「セドリック様、自分で歩けますので……」
「ダメだよ。今回ばかりはリズの意見は却下だ」
有無も言わせない彼は何処か怒っているように見えた。きっと不甲斐ないエヴェリーナに憤りを感じているのかも知れない。
セドリックはエヴェリーナを抱き抱えると屋敷内へと入って行く。
「直ぐに湯浴みと着替えの準備を」
出迎えた侍女に淡々と指示を出すとエヴェリーナは浴室へと連れていかれ、そこで侍女に引き渡された。
風を斬る音が聞こえた。
それと同時に目の前の男は地面に崩れ落ちる。
その後ろから現れたのは彼だった。
見慣れた青眼と目が合う。
驚き過ぎて声も出ずに、呆然と見つめるしか出来ない。
死を覚悟した。
どうせ誰も助けてなどくれないと諦めた。
でも彼が私を助けてくれた。
そう、その姿はまるでおとぎ話に登場する勇士のように見えたーー
「リズ」
名前を呼ばれようやく我に返ったエヴェリーナは慌てて立ち上がる。
「セドリック様、危ない所を助けて頂きありがとうございました」
礼を述べて丁寧に頭を下げた。彼の後方を見ればブライスやアルバート、サイラス達の姿もあった。そしてルークが今にも泣き出しそうな顔でこちらを見ている。
無事な姿を確認し胸を撫で下ろす。
経緯は分からないが助けに来てくれたのだろう。
それにしてもセドリック達の気配に全く気付かなかった。緊迫した状況だったので、恐らく無意識に周囲の音を遮断していたのかも知れない。
「セドリック様……?」
無言のまま立ち尽くす彼に内心戸惑う。それに彼だけでなくサイラス達も何も言わずにこちらをただ見ている事に違和感を覚える。
一体どうしたというのだろうか……。
「リズ……無理しなくていいんだ」
「それはどういう意味ですか?」
彼は眉根を寄せ顔を歪ませる。
何故セドリックがそんな顔をするのか分からない。
「震えてるよ」
「っ‼︎ーー」
その言葉に目を見開く。
指摘されるまで気付かなかった。
いつも通り冷静に振る舞えていると思っていたのにーー
自覚した瞬間、手足や身体がどしようもなく震えている事に気付いた。
「も、申し訳ありません、とんだ醜態を……セドリック様⁉︎」
「大丈夫だよ、リズ。……もう怖い事はないから」
彼はこちらへ近付くと、手を伸ばし躊躇う事なくエヴェリーナの身体を抱き締めた。
あまりの出来事に声が上擦る。
何故ならセドリックは女性に触れると発疹が出来て体調も悪くなる。
慌てて離れようと身動ぐが、彼は更にエヴェリーナを抱く腕に力を込めた。
「セドリック様、お離し下さいっ。そうでないと……」
「嫌だ。絶対に離さない」
普段よりも低い声色に言葉を遮られる。
戸惑いながら彼を見るが、その表情は確認出来なかった。
何故なら初めて出会った頃は変わらない背丈だったのに、今は目線は彼の顎辺りになっている。まだ少年らしさを感じていた彼が、急に大人の男性に思えた。
「え、きゃっ!」
暫しなされるがままになっていたが、今度は不意に身体が宙に浮く。
「セドリック様、あのっ」
彼に抱き抱えられると強制的に馬に乗せられた。
「リズ、帰ろう」
「……はい」
射抜くようなセドリックの青眼に見つめられ、エヴェリーナは静かに頷くしか出来ない。
彼は今何を思っているのだろうか……。
暫くしてエヴェリーナ達は無事に屋敷に帰り着いた。
その頃には日が傾き始め辺りは緋色に染まっていた。
「セドリック様、自分で歩けますので……」
「ダメだよ。今回ばかりはリズの意見は却下だ」
有無も言わせない彼は何処か怒っているように見えた。きっと不甲斐ないエヴェリーナに憤りを感じているのかも知れない。
セドリックはエヴェリーナを抱き抱えると屋敷内へと入って行く。
「直ぐに湯浴みと着替えの準備を」
出迎えた侍女に淡々と指示を出すとエヴェリーナは浴室へと連れていかれ、そこで侍女に引き渡された。
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