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四十三話〜検問 二〜
しおりを挟む十日後ーー
あれからエヴェリーナは見張り台を何度も訪れていた。
ただセドリックは別の仕事もあるので、毎日同行は出来ない。
エヴェリーナも仕事はあるが、纏めて片付けたり休みを利用して足を運んでいる。
因みに第二部隊と第三部隊、第七部隊に第九部隊が担当の日は入れるようになっているので、予め日程を聞いてある。
詳細は聞かされていないが、騎士団長の命令ではなく他の部隊を動かせるという事は恐らく第二皇子派という事なのだろう。
またセドリックがいなくても、彼から渡されているネックレスを見せるだけですんなりと入れて貰える。
このネックレスの飾りには皇族の証である紋章が刻まれてあり、正直受け取った時は驚愕し一度返した。こんな大切な物を借りる訳にはいかない。
そもそも気軽に人に貸してしまうセドリックに唖然とした。
だがそんな中、彼は譲らず「暫くの間、リズに預ける。これは主人としての命令だ」とまで言い出したので仕方なく受け取った。
今日、エヴェリーナの仕事は休みだ。なので朝から出掛ける事にしたのだが、エントランスでセドリックに声を掛けられ彼が同行出来ない時は行かなくていいと言われたのだが……今、馬車に乗っている。
関わってしまった以上、事件が解決するまでは全力を尽くす。
自分が解決しようなどと烏滸がましい事は言わないが、出来る事があるならするべきだ。
「リズちゃん! 久しぶりっす!」
「イアンさん、お久しぶりです」
馬車を降りると、見覚えのある青年が一目散に駆けて来た。
「聞いて欲しいっす。リズちゃんをお茶に誘いたいのに、隊長が意地悪するんすよ。屋敷に行っても門前払いされるっす」
イアンはそう言いながら不満そうに口を尖らせる。
門前払いと聞いてエヴェリーナは眉を上げた。
彼が来訪していた事を全く知らなかったし、更に門前払いされていたなど初耳だ。
「セドリック様がですか?」
「そうっす。本当心が狭いというかお子ちゃまというかーー」
余程不満なのか延々と愚痴を洩らす様子に、内心苦笑する他ない。
セドリックの意図は不明だが、恐らくエヴェリーナが困ると思い気を回してくれたに違いない。
今は事件の事もあり多忙であるので、助かったと思った。
「あの、本日はイアンさんも当番なのですね」
話が長くなりそうなので、話題を変えた。
ここにきた目的は世間話をする訳ではないので、余り別の事に時間を取られたくない。
「そうなんす。実はリズちゃんに会えると思って頑張って勝ち取ったっす。今騎士団では皆関所に行きたい団員が多くて大変なんすよ」
「それはまた……」
一体何の話なのかと聞いてみれば、先程上げた四つの部隊では関所の当番を掛けて各部隊で決闘をしているらしい。無論、決闘と言っても殺し合いではなく剣を手から放したら負けるという簡易的なものだ。
そしてその理由が、第二皇子の侍女を見る為らしい。
確かにここに来る度に異様に視線を感じている。フードで髪を隠しているのに不審には思っていた。
何故そんなにエヴェリーナを見たいのかは分からないが、女嫌いもとい女性に興味のないセドリックの屋敷の侍女が珍しいのかも知れない。
その後適当に話を切り上げ、エヴェリーナは慣れた様子で見張り台の最上部へと向かった。
セドリックから借りてきた双眼鏡を覗き込む。
見えるのはいつもと変わらない光景だ。
(あの子供……)
ただ観察していて気になる事はある。
エヴェリーナは記憶力には自信があるが、流石に全ての通行人を覚える事は出来ない。だがそんな中、ある人物が目に止まった。それは同じ服装をした子供達だ。
通行人には当然子供もいるが、一部の子供達は同じ服装をしていた。始めは同じような服装などよくある事だと気に留めていなかったが、この十日の間、エヴェリーナがここに来た回数は五回だが何度も同じ服装の子供達を見た。
男の子は帽子、シャツ、ズボン、靴、女の子は頭にリボン、ワンピース、靴、それ等が全て同じ物を身に付けている。
エヴェリーナの予想ではあの子供達はーー
エヴェリーナはその場を離れ、螺旋階段を足早に降りて行った。
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