攻略失敗99回目。もう諦めました。

VVV

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嫌な奴ほどよく会うってね

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 ハイブランドが並ぶフロアに入って少し歩くと、後ろから声をかけられた。

「レイナ?」

 振り向いて見るとそこには友人のサラが立っていて、目が合うと同時に喜色満面で駆け寄ってきた。

「やっぱりレイナだった! 今日は買い物? 私もなの。ちょうどいいわ、一緒に見て回ろうよ」

「いいけど……今日は友達の子どもと一緒なの。それでもいい?」

 エレーナはちらっとロイを見て、すぐに頷いた。

「いいわよ。珍しいわね、友達の子を預かるなんて」
 
「まあね」

 本当のことを言う訳にもいかないので咄嗟に架空の友人の子どもという事にしたが、サラは特に不審にも思っていないようで。
 ロイに微笑みかけ、バッグから飴をひとつ出して「食べる?」と言って彼に差し出した。

「ありがとう」

 ロイは素直に受け取り、お礼を言って口に放り込む。
 気を良くしたらしいサラはレイナの腕を取り、しっかり絡めて顔を寄せ、耳打ちしてきた。

「可愛い子じゃなーい。本当に友人の子なの? どことなくあなたに似てない?」

 何を言い出すのか。
 面食らったレイナは目線を落とし、頬を飴玉の形に膨らませるロイの顔を見下ろした。
 長く、くるんとカールした睫毛。幼いながらもしっかり通った鼻筋。引き締まっていながらも情の厚さを思わせるふっくらした唇。
 彼は確かに人目を惹く見た目をしているが、自分と似ているとは思わない。
 
「まさか。全然似てないわよ」

「そうかなぁ。一目見て姉弟かと思ったくらい似てるけど……。どこからかあなたん家の血縁者が出てきて匿ってるのかと勘違いするとこだったわ」

 その言葉にレイナは少なからず動揺した。
 レイナの生家――没落したハリス家は近しい者は死んだか失踪したとされていて、今はその名を名乗る者はレイナただ一人。
 しかし人間は一般的にある日突然どこからか一人で生えてくるものではないので、血縁者が世界のどこかにいる可能性は否定できなかった。
 だとしても、ない。
 ロイは海外の名門アスコット家の関係者だ。その力は強大で、遠く離れたこの地――ガーネット家とクワイエット家が支配するこの地においても少なくない影響力を持つ。
 そんな家とレイナのハリス家に関係がある訳がない。
 レイナは笑い、首を振ってサラの腕を引いた。

「くだらないこと言ってないで、さっさと買い物しちゃいましょう。私、今日はちょっと忙しいのよ」

「なに? このあと用事でもあるの?」

「ええ」

 ロワールの元を去ると決めたのだから、当然彼名義のマンションも出るつもりだ。
 なるべく早めに荷物をまとめて新しい拠点に移す必要がある。
 新しい拠点については……まだ未定。何も決めていない。昨夜ロワールがジュディにプレゼントした豪邸をレイナにやると言ったことを忘れた訳ではないが、そんなところに住めるはずもない。
 行くあてはないが、お金はあるから最悪ホテル住まいでも大丈夫。
 やはり金だ……金こそが全てを解決する。
 
「なーんだ。つまんないの。どっかでアフタヌーンティーでもしながら昨日の話を聞きたかったのに」

「昨日の話? 誕生日パーティーのこと?」

「うん」

 サラは頷き、好奇心いっぱいの目を細めて笑った。
 彼女は元々ジュディの囲いの男達の中の一人と付き合っていた元カノだ。
 彼とは家柄も釣り合っていたし、結婚を見据えた誠実な恋人であろうとしていたが……彼がたびたびジュディのために高額なプレゼントを購入したりパーティーで囲いをやるために彼女を放置したりといったことが続いて、愛想を尽かし、別れてしまった。
 その時の縁でレイナと友達になったのだが、今ではサラはレイナのことを心から気の合う親友だと思っている。
 ついでに言うとレイナには同じような縁で始まった友情がサラの他にもいっぱいある。
 皆、この街の同年代の富裕層男子がジュディ一人の総取り状態になっていることに腹を据えかねているのだ。
 自身に魅力が足りないせいだ、と言われればそれまでの話なので表立って騒ぐことはないが、同じ経験をした女子達はどんなひどい目に遭わされても決してめげないレイナを尊敬していたし、呆れてもいた。
 美人で有能でスタイルも良い上に一途なレイナ。彼女の魅力に一生気付かないロワールの目の節穴っぷりと、自分を粗末にしているとしか思えないレイナの献身っぷりに。
 だから友人達は事あるごとに言うのだ。もういい加減ロワールから離れろ、と。
 サラは今日もそれを言うつもりで話題を切り出した。
 
「どんなムカつくことがあったのか聞きたいわ。教えてよ」
 
「特に何もなかった。いつも通りよ」

「いつも通りって、あの純粋ないい子ちゃんが会場いっぱいに男を侍らせて山のようなプレゼントを積み上げ、蝶よ花よとチヤホヤされるのをあなたが一生懸命お膳立てしてたってこと?」

 サラの言い方にはサボテン並の棘があったが、大体合ってるので苦笑しつつ頷いた。

「かぁーっ!! 何年経っても進歩がないのね! レイナあなた、いつまでそんな道化を引き受け続けるつもりなの!? もうやめなさいよ! どんなに心を尽くしてもロワールは感謝どころか邪魔するなくらいに思ってるのよ!?」

「ええ。だから、もう離れるわ」

「そう! 離れるべき――ええっ?」

 サラは信じられない、とでも言いたげない顔でレイナを見た。

「今、何て言った……?」

「だから、離れるって言ったの。諦めるわ。ロワールのこと。もう、さすがにね」

 淡々と話すレイナに唖然とするサラだったが、ごくりと喉を鳴らして何か言おうと口を開いた瞬間、横から「はっ」と蛙の潰れたような声が響いて目を向けた。

「誰かと思えば忠犬レイナとそのお供じゃないか。心にもないセリフ口にして、女優にでもなったつもりか?」

 見ると、そこには害悪ピクミンの筆頭ことカルバンが両手にショッピングバッグを抱えてジュディの横に立っていた。
 ジュディは両手を口元に当て、目を見開いてまるでショックを受けたかのような表情で目をうるうるさせている。

「レイナさん……。ロワールから離れるって聞こえたんだけど……冗談よね? まさか本気じゃ……?」

 面倒な二人に会ってしまった……。
 レイナは苦虫を噛み潰す思いで、ロイをさりげなく背後に隠した。



 
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