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5離婚はしない
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「恵琉さん、最近、僕に何か言いたそうな顔をしていますけど」
「よくわかりましたね。実は……」
妊娠しているとわかってから一週間ほどが経っても恵琉はなかなか打ち明けられずにいた。幸は仕事柄か、他人の表情をよく見ている。自分の出した薬のことをきちんと処方するために相手の顔色をしっかり窺う癖が身についている。自分の妻が何か自分に話があることを察するのは簡単だった。
いつものように帰宅して二人でリビングで過ごしていると、幸に話を促された。素直に自身の妊娠について夫に告げようとしたが、それは間抜けな空腹の音で遮られる。
「話を聞く前に夕食を取るべきでしたね」
「私、妊娠しました」
「はいはい。今日は僕の当番でしたよね。すぐに準備しますね」
「妊娠しました」
幸はお腹を空かせた妻のためにキッチンに向かおうとしたので、恵琉はその背中にもう一度同じ言葉を吐く。
「ええと、えええ、に、妊娠?」
「その反応が正しいです。そうです、私は妊娠しました。当然、幸との子供ですよ」
「うわわわわわわわわ。ちょっと、ちょっと頭の整理が追い付かないんだけど」
幸は突然の妻の発言に頭を抱えてその場にうずくまる。どうやら、妻の言葉の意味を理解して一人悶えているらしい。
「ふふふふ」
夫が自分の妊娠に驚いてはいるが、嫌悪感を持っていないことがわかり、ほっとした。ほっとしたら、さらに空腹感が前面に出て、盛大な音を鳴らしてしまう。
「ああ、ごめん。すぐ準備するね」
(私は本当に良い夫を持った)
そんな夫との間に子供ができた。このまま何事もなく順調に行けば、将来は子供と夫と自分の三人での生活が始まる。もしかしたら、また一人子供が増える未来も考えられる。
(でも、それは私の理に反している)
幸せな家庭生活が容易に想像はできるが、そこに進むことはない。恵琉は心の中でため息を吐く。どうしても、自分にはやりたいことがある。そのためにはこの後、どんな試練があろうと離婚にこぎつけてみせる。
明るい笑顔の下。これからの離婚に向けての準備で頭がいっぱいの妻の様子に気付くことなく、いつもより赤くなった頬をして夫は妻のために夕食を準備するのだった。
恵琉が妊娠を伝えてからも、夫の幸は家に同僚の雷を家に呼んでいた。世間的には女ではないので、同僚が家にやってきても問題はないように思えたが、恵琉の中ではすでに同僚の男性が自分たち夫婦の家にやってくることは、浮気に等しい行為ととらえていた。
「なあ、幸、今度一緒に奥さんの妊娠祝いに飲みに行こうぜ」
「そんなわけにはいかない。恵琉さんのことを考えて、仕事が終ったらすぐに家に帰るようにしようと思っている」
「まあ、普通そうだよな。でもさ、奥さんだってたまには一人でいたいときもあるだろ、だから」
同僚の雷という男は、夫婦の家に遠慮なしにやってきては、幸の妻である恵琉がいるにも関わらず、幸を飲みに誘おうと必死になっていた。それに対して、夫の幸は嫌そうに顔をしかめて断っている。
「あの、私は別にかまいませんよ。まだ妊娠3か月目で特に体調も悪くないですし」
このような会話を何回、聞いたことだろうか。一度や二度のことではないため、恵琉はすでに雷という同僚の執念に負けていた。別にただ同僚と飲みにいく分には構わない。仕事の息抜きやストレス発散として出かけるのも悪くないだろう。
「奥さんの許可ももらったし、今週末、さっそく一緒に飲みに行こうぜ。新しくできた店が幸の好きな料理がたくさんあってさ……」
「ま、まあ、恵琉さんがいいっていうのなら」
妻の許可が出たため、幸は嫌な顔から一転、うれしそうな顔になる。嫌な顔をしていたのは恵琉に遠慮してのことだったのだろうか。とはいえ、このまま目の前のイチャイチャを見続けるわけにはいかない。とりあえず、今回は許すとして、妻としてしっかりとくぎを刺すことにした。
「今回は良いですけど、これからは幸を気軽に誘わないでもらえますか?幸は私の夫です」
「おう、幸は奥さんに愛されてるなあ。もしかしておれ、いま奥さんにけん制されてるのか?」
つい、強い口調で夫とのことをとがめてしまった。確かに、これで同僚の雷とかいう男性が女性だったとしたら、修羅場になっていたかもしれない。ちらりと同僚の表情を確認すると、顔は笑っていたが、目の奥がまったく笑っていなかった。どうやら、相手にとって自分の存在は幸を拘束する邪魔な女らしい。
「まあまあ、恵琉さんもこう言っていますし、僕も彼女の意見に賛成です。僕は雷の同僚だけど、それと同時に恵琉さんの夫だから」
「だから、俺と気軽に飲みにも行けないということか。はっ、見損なったぞ。恋人と友達だったら、恋人を選ぶってやつか。まったく、これだから女ってやつは」
恵琉と雷の間に一触即発の険悪な空気が流れるが、そんな空気を読まずに発言したのは夫の幸だった。恵琉としては嬉しい言葉だが、今このタイミングでの言わないでほしかった。案の定、雷は夫の発言に目を吊り上げて怒っていた。
「何言ってんだよ。恵琉さんとお前は恋人と友達じゃないだろ。比べること自体がおかしい」
「おかしくないだろ。俺とお前は」
「そこまでにしてください!」
このままだとおかしな内容に話が発展しそうだった。夫を取り合っての修羅場になりかねない。この無意味な争いを止める必要がある。そして、このまま今日は雷という同僚にはお帰り願おう。後日、どうせ二人きりで飲みに行く約束を取り付けているのだ。そこで仲直りしてもらおう。恵琉の声は思いのほか、部屋に響いた。普段はあまり大声を出さないので、夫の幸は驚いていた。
「別に俺は幸とけんかしたいわけじゃない。悪かったな。お前の奥さんを悪く言って」
「こっちこそ、分かればいいんだ」
恵琉の言葉は意外な効果をもたらした。二人はなぜか、急に仲直りを始めた。こうしてみると、恵琉が悪者みたいに感じてくるから不思議だ。どうして、幸の妻である自分が肩身の狭い思いをしなければならないのか。
(とはいえ、計画は順調に進められそうだ)
これだけ親密な仲ならば、恵琉が背中を少し押すだけで二人は禁断の同性同士の恋に目覚めるかもしれない。
その日は、そのまま和やかな雰囲気のまま解散となり、雷は帰宅していく。二人きりになったところを見図らって、恵琉は雷との仲をそれとなく探ることにした。
「幸はさっきの同僚とどうなりたいとかある?」
「どうって、どういう意味?もしかして、今はやりのBL(ボーイズラブ)とかいうやつ?恵琉さんもそういうのに興味があるの?」
「いや別にそういうのは……。待てよ。そういうことを言うのなら、私のこの計画もそういう意味では」
「図星?だとしたら、恵琉さんは僕のこと、バカにしてるよね?」
恵琉の言葉が幸の何かに響いたようだ。なぜか説教をされてしまう。
「僕は恵琉さんと結婚していて、今は恵琉さんの夫だよ。それなのに、同僚との仲はどうとかふつう聞かないよね?もし、僕が彼とそういう関係だと言ったら、どうするつもりなの?簡単に離婚してくれるの?」
「私は」
「離婚するといったとして、僕は絶対に認めないよ。彼とはただの職場の同僚だから。やたら俺に構ってくるけど、僕と彼の間に恵琉さんの期待するような感情はない」
(離婚してくれないと、困るんだよねえ。私と離婚しないとか、そんな未来、ありえないんだけど)
「変なこと言ってごめんなさい。ただ少し、気になっただけなの」
その場は謝罪することで幸の機嫌を取ることにした。
「よくわかりましたね。実は……」
妊娠しているとわかってから一週間ほどが経っても恵琉はなかなか打ち明けられずにいた。幸は仕事柄か、他人の表情をよく見ている。自分の出した薬のことをきちんと処方するために相手の顔色をしっかり窺う癖が身についている。自分の妻が何か自分に話があることを察するのは簡単だった。
いつものように帰宅して二人でリビングで過ごしていると、幸に話を促された。素直に自身の妊娠について夫に告げようとしたが、それは間抜けな空腹の音で遮られる。
「話を聞く前に夕食を取るべきでしたね」
「私、妊娠しました」
「はいはい。今日は僕の当番でしたよね。すぐに準備しますね」
「妊娠しました」
幸はお腹を空かせた妻のためにキッチンに向かおうとしたので、恵琉はその背中にもう一度同じ言葉を吐く。
「ええと、えええ、に、妊娠?」
「その反応が正しいです。そうです、私は妊娠しました。当然、幸との子供ですよ」
「うわわわわわわわわ。ちょっと、ちょっと頭の整理が追い付かないんだけど」
幸は突然の妻の発言に頭を抱えてその場にうずくまる。どうやら、妻の言葉の意味を理解して一人悶えているらしい。
「ふふふふ」
夫が自分の妊娠に驚いてはいるが、嫌悪感を持っていないことがわかり、ほっとした。ほっとしたら、さらに空腹感が前面に出て、盛大な音を鳴らしてしまう。
「ああ、ごめん。すぐ準備するね」
(私は本当に良い夫を持った)
そんな夫との間に子供ができた。このまま何事もなく順調に行けば、将来は子供と夫と自分の三人での生活が始まる。もしかしたら、また一人子供が増える未来も考えられる。
(でも、それは私の理に反している)
幸せな家庭生活が容易に想像はできるが、そこに進むことはない。恵琉は心の中でため息を吐く。どうしても、自分にはやりたいことがある。そのためにはこの後、どんな試練があろうと離婚にこぎつけてみせる。
明るい笑顔の下。これからの離婚に向けての準備で頭がいっぱいの妻の様子に気付くことなく、いつもより赤くなった頬をして夫は妻のために夕食を準備するのだった。
恵琉が妊娠を伝えてからも、夫の幸は家に同僚の雷を家に呼んでいた。世間的には女ではないので、同僚が家にやってきても問題はないように思えたが、恵琉の中ではすでに同僚の男性が自分たち夫婦の家にやってくることは、浮気に等しい行為ととらえていた。
「なあ、幸、今度一緒に奥さんの妊娠祝いに飲みに行こうぜ」
「そんなわけにはいかない。恵琉さんのことを考えて、仕事が終ったらすぐに家に帰るようにしようと思っている」
「まあ、普通そうだよな。でもさ、奥さんだってたまには一人でいたいときもあるだろ、だから」
同僚の雷という男は、夫婦の家に遠慮なしにやってきては、幸の妻である恵琉がいるにも関わらず、幸を飲みに誘おうと必死になっていた。それに対して、夫の幸は嫌そうに顔をしかめて断っている。
「あの、私は別にかまいませんよ。まだ妊娠3か月目で特に体調も悪くないですし」
このような会話を何回、聞いたことだろうか。一度や二度のことではないため、恵琉はすでに雷という同僚の執念に負けていた。別にただ同僚と飲みにいく分には構わない。仕事の息抜きやストレス発散として出かけるのも悪くないだろう。
「奥さんの許可ももらったし、今週末、さっそく一緒に飲みに行こうぜ。新しくできた店が幸の好きな料理がたくさんあってさ……」
「ま、まあ、恵琉さんがいいっていうのなら」
妻の許可が出たため、幸は嫌な顔から一転、うれしそうな顔になる。嫌な顔をしていたのは恵琉に遠慮してのことだったのだろうか。とはいえ、このまま目の前のイチャイチャを見続けるわけにはいかない。とりあえず、今回は許すとして、妻としてしっかりとくぎを刺すことにした。
「今回は良いですけど、これからは幸を気軽に誘わないでもらえますか?幸は私の夫です」
「おう、幸は奥さんに愛されてるなあ。もしかしておれ、いま奥さんにけん制されてるのか?」
つい、強い口調で夫とのことをとがめてしまった。確かに、これで同僚の雷とかいう男性が女性だったとしたら、修羅場になっていたかもしれない。ちらりと同僚の表情を確認すると、顔は笑っていたが、目の奥がまったく笑っていなかった。どうやら、相手にとって自分の存在は幸を拘束する邪魔な女らしい。
「まあまあ、恵琉さんもこう言っていますし、僕も彼女の意見に賛成です。僕は雷の同僚だけど、それと同時に恵琉さんの夫だから」
「だから、俺と気軽に飲みにも行けないということか。はっ、見損なったぞ。恋人と友達だったら、恋人を選ぶってやつか。まったく、これだから女ってやつは」
恵琉と雷の間に一触即発の険悪な空気が流れるが、そんな空気を読まずに発言したのは夫の幸だった。恵琉としては嬉しい言葉だが、今このタイミングでの言わないでほしかった。案の定、雷は夫の発言に目を吊り上げて怒っていた。
「何言ってんだよ。恵琉さんとお前は恋人と友達じゃないだろ。比べること自体がおかしい」
「おかしくないだろ。俺とお前は」
「そこまでにしてください!」
このままだとおかしな内容に話が発展しそうだった。夫を取り合っての修羅場になりかねない。この無意味な争いを止める必要がある。そして、このまま今日は雷という同僚にはお帰り願おう。後日、どうせ二人きりで飲みに行く約束を取り付けているのだ。そこで仲直りしてもらおう。恵琉の声は思いのほか、部屋に響いた。普段はあまり大声を出さないので、夫の幸は驚いていた。
「別に俺は幸とけんかしたいわけじゃない。悪かったな。お前の奥さんを悪く言って」
「こっちこそ、分かればいいんだ」
恵琉の言葉は意外な効果をもたらした。二人はなぜか、急に仲直りを始めた。こうしてみると、恵琉が悪者みたいに感じてくるから不思議だ。どうして、幸の妻である自分が肩身の狭い思いをしなければならないのか。
(とはいえ、計画は順調に進められそうだ)
これだけ親密な仲ならば、恵琉が背中を少し押すだけで二人は禁断の同性同士の恋に目覚めるかもしれない。
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「いや別にそういうのは……。待てよ。そういうことを言うのなら、私のこの計画もそういう意味では」
「図星?だとしたら、恵琉さんは僕のこと、バカにしてるよね?」
恵琉の言葉が幸の何かに響いたようだ。なぜか説教をされてしまう。
「僕は恵琉さんと結婚していて、今は恵琉さんの夫だよ。それなのに、同僚との仲はどうとかふつう聞かないよね?もし、僕が彼とそういう関係だと言ったら、どうするつもりなの?簡単に離婚してくれるの?」
「私は」
「離婚するといったとして、僕は絶対に認めないよ。彼とはただの職場の同僚だから。やたら俺に構ってくるけど、僕と彼の間に恵琉さんの期待するような感情はない」
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