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6不審な電話
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「おはようございます」
「おはよう」
実乃梨は中小企業の事務職をしている。今働いている会社は何社目だろうか。年齢を偽ることが難しくなるたびに、実乃梨は転職を繰り返してきた。そのたびに自分の不老不死の体質に殺意が芽生えたが、そこで性行為をしてしまって、不老不死の力を失くそうとは思わなかった。
会社に着くと、先に来ていた社員に挨拶して、自分の机につき、仕事に取り掛かる。大手企業ではなく、従業員が二十人ほどの小さな会社であるため、朝礼が行われることはなく、会社に来たものからすぐに、自分の仕事に取り掛かることになっていた。
「プルルルルル」
「はい。太田商事です」
さっそく電話がかかってきた。実乃梨がこの会社に転職して五年が経つ。すっかり仕事にも慣れ、それなりに電話対応もこなせるようになっていた。
「栄枝実乃梨さんはいらっしゃいますか?」
「失礼ですが、お名前をうかがってもよろしいですか?」
朝一番に出た電話で、自分のことを指名されたがどこの取引先だろうか。いや、実乃梨はフルネームを取引先に教えたことはない。取引先ではないことがこの時点で判明する。
「私のことはいいので、栄枝実乃梨さんに代わってもらえませんか?」
実乃梨が相手の名前を尋ねるが、相手は答えようとしない。自分の名前を名乗らない相手に、自分が栄枝実乃梨だと伝える必要はない。
「あの、聞いていますか?栄枝実乃梨さんに」
「栄枝にどんな用事でしょうか?」
電話先の若い女性は、実乃梨の沈黙に耐え切れず、怒りを露わに栄枝実乃梨に代わるよう催促する。会社の取引先でもない相手に話すことはないが、とりあえず、相手の用件を先に聞くことにした。
「はあ。これだけ聞いても本人に代わらないつもりね。わかった。あなたが彼女に用件を伝えて頂戴」
「ガチャリ」
用件を伝えた相手は、必ず栄枝実乃梨に伝えるよう念を押して電話を切る。電話のディスプレイには、今までの通話時間が表示されていた。ナンバーディスプレイになっているため、着信相手の番号が表示されるが、非通知となっていた。実乃梨に個人的に用事があって、非通知で会社に電話をかけてきた。怪しいことこの上ない。
名前もわからない相手とは、十五分ほど話していたようだ。実乃梨が辺りを見渡すと、始業時間を過ぎた事務所には、出社した社員がそれぞれ自分の仕事を行っていた。
「今の電話、長かったみたいですけど、誰だったんですか?」
「わかりません。会社の取引先ではなかったみたいです。名前を聞いても教えてもらえなかったし、会社に関係ある相手ではなかったです」
電話の内容を思い返すが、気分が悪くなるような内容なので、深く考えないことにした。実乃梨に声をかけてきたのは、彼女と同時期にこの会社に転職してきた榎木(えのき)という、三十代の女性だった。彼女とは同期のために、会社の中では親しい方だった。
「栄枝さんに用事があったみたいですね?いったい何だったのか気になりますね」
「私に用事があるのに、わざわざ会社に電話かけてくる意味が分からなかったし、どうやって私が勤めている会社を知ったのか、そこが怖いです」
「確かに、会社宛てに取引先でもないのに、自分を呼ぶ電話がかかってくると、怖いですね」
「プルルルルル」
「ハイ。太田商事です。いつもの商品ですね。在庫があるので、本日出荷可能です。ありがとうございます。失礼します」
会話の途中で電話が事務所に鳴り響く、すぐに榎木が受話器を取って応対する。いつもの取引先だったようで、すぐに電話を切って電話の内容をメモして、出荷表に相手先と商品内容を記入していた。
「おはよう」
実乃梨は中小企業の事務職をしている。今働いている会社は何社目だろうか。年齢を偽ることが難しくなるたびに、実乃梨は転職を繰り返してきた。そのたびに自分の不老不死の体質に殺意が芽生えたが、そこで性行為をしてしまって、不老不死の力を失くそうとは思わなかった。
会社に着くと、先に来ていた社員に挨拶して、自分の机につき、仕事に取り掛かる。大手企業ではなく、従業員が二十人ほどの小さな会社であるため、朝礼が行われることはなく、会社に来たものからすぐに、自分の仕事に取り掛かることになっていた。
「プルルルルル」
「はい。太田商事です」
さっそく電話がかかってきた。実乃梨がこの会社に転職して五年が経つ。すっかり仕事にも慣れ、それなりに電話対応もこなせるようになっていた。
「栄枝実乃梨さんはいらっしゃいますか?」
「失礼ですが、お名前をうかがってもよろしいですか?」
朝一番に出た電話で、自分のことを指名されたがどこの取引先だろうか。いや、実乃梨はフルネームを取引先に教えたことはない。取引先ではないことがこの時点で判明する。
「私のことはいいので、栄枝実乃梨さんに代わってもらえませんか?」
実乃梨が相手の名前を尋ねるが、相手は答えようとしない。自分の名前を名乗らない相手に、自分が栄枝実乃梨だと伝える必要はない。
「あの、聞いていますか?栄枝実乃梨さんに」
「栄枝にどんな用事でしょうか?」
電話先の若い女性は、実乃梨の沈黙に耐え切れず、怒りを露わに栄枝実乃梨に代わるよう催促する。会社の取引先でもない相手に話すことはないが、とりあえず、相手の用件を先に聞くことにした。
「はあ。これだけ聞いても本人に代わらないつもりね。わかった。あなたが彼女に用件を伝えて頂戴」
「ガチャリ」
用件を伝えた相手は、必ず栄枝実乃梨に伝えるよう念を押して電話を切る。電話のディスプレイには、今までの通話時間が表示されていた。ナンバーディスプレイになっているため、着信相手の番号が表示されるが、非通知となっていた。実乃梨に個人的に用事があって、非通知で会社に電話をかけてきた。怪しいことこの上ない。
名前もわからない相手とは、十五分ほど話していたようだ。実乃梨が辺りを見渡すと、始業時間を過ぎた事務所には、出社した社員がそれぞれ自分の仕事を行っていた。
「今の電話、長かったみたいですけど、誰だったんですか?」
「わかりません。会社の取引先ではなかったみたいです。名前を聞いても教えてもらえなかったし、会社に関係ある相手ではなかったです」
電話の内容を思い返すが、気分が悪くなるような内容なので、深く考えないことにした。実乃梨に声をかけてきたのは、彼女と同時期にこの会社に転職してきた榎木(えのき)という、三十代の女性だった。彼女とは同期のために、会社の中では親しい方だった。
「栄枝さんに用事があったみたいですね?いったい何だったのか気になりますね」
「私に用事があるのに、わざわざ会社に電話かけてくる意味が分からなかったし、どうやって私が勤めている会社を知ったのか、そこが怖いです」
「確かに、会社宛てに取引先でもないのに、自分を呼ぶ電話がかかってくると、怖いですね」
「プルルルルル」
「ハイ。太田商事です。いつもの商品ですね。在庫があるので、本日出荷可能です。ありがとうございます。失礼します」
会話の途中で電話が事務所に鳴り響く、すぐに榎木が受話器を取って応対する。いつもの取引先だったようで、すぐに電話を切って電話の内容をメモして、出荷表に相手先と商品内容を記入していた。
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