30歳処女、不老不死になりました

折原さゆみ

文字の大きさ
17 / 67

17護衛の男

しおりを挟む
「栄枝実乃梨さんですよね」

 定時に仕事を終わらせた実乃梨は会社を出て、駐車場に停めている自分の車まで歩いていた。駐車場に着いたところで、見知らぬ男性に声をかけられた。実乃梨の名前を堂々と呼ぶ姿から、会社の関係者だろうと推測するが、それにしてはフルネームで呼ぶのはおかしい。

「人違いではありま」

「いえ、間違いではありません。私はこのようなものです」

 男は黒スーツのポケットから一枚の名刺を取り出し、実乃梨に差し出した。差し出し方が様になっていて、不覚にもその仕草にときめいてしまう。差し出された名刺を素直に受け取り、相手の素性を確認する。



「本日付で、栄枝実乃梨さんの護衛となりました、永徳慎吾(えいとくしんご)と申します」

「はあ」

「これから、栄枝さんの身の安全のために精一杯働かせていただきますので、よろしくお願いします」

 名刺を眺めていたら、突然、男が自己紹介を始めた。どうやら、彼が実乃梨の護衛を担当してくれるらしい。

「それで、具体的にどのように私の護衛をしてくれるのですか?」

 今の自分の現状を理解していないわけではないが、現実逃避できるのものならしてしまいたい。実乃梨は目の前の男性を見つめつつ、心の中でため息を吐く。

 そもそも、実乃梨が不老不死になってしまった原因は、男性が苦手なことにある。男性恐怖症や男性アレルギーとまではいかないが、男性に対して過剰に反応してしまう。別に男性から性的な嫌がらせを受けたわけでも、いじめられたわけでもないのだが、どうしても男性を拒絶してしまう。

 知らず知らずのうちに顔が引きつっていたのだろう。目ざとく実乃梨の表情に気付いた永徳が、にこやかに笑って、実乃梨の緊張を解こうと話しかけてくる。

「初対面の男性にいきなりこんなことを言われて戸惑う気持ちはわかります。ですが、私の仕事は栄枝さんの護衛となります。ですので、少しでも私といるときに、緊張しないように陰ながら見守ることにします」

 笑顔で話しかけてきた永徳の姿を見ながら、実乃梨は別のことを考えていた。永徳という男は、異性にもてるだろうなということだった。

 さらさらとした黒髪に、切れ長の真っ黒な瞳。護衛の仕事柄か、背は高く、スーツを着ていてもわかる筋肉質な身体。肌の色も健康的に日焼けしている。低い声は耳に心地よい。



「永徳さんはごけ」

 無意識に疑問が口に出てしまい、慌てて途中で口を押える。永徳は指輪をしていなかった。

 実乃梨は男性を見ると、どうしても相手をじっくりと観察してしまう。目の前の男性がどういったタイプの男性なのか、自分にとってどういう影響をもたらすのか気になってしまう。これは長年生きてきて習慣となってしまって、今更自分の習慣を変えることは困難である。

「その辺のプライベートについては黙秘します。仕事柄、いろいろ話してしまうと、のちのち困った事態を引き起こしますから」

 永徳は実乃梨の質問の意図をくみ取り、先に忠告する。見た目が三十代に見えるとはいえ、実際はすでに百五十年を超える時を生きている実乃梨は、明らかに自分より年下の男に忠告されて、恥ずかしくて顔を俯かせてしまう。

「まあ、今日は初回ですし、挨拶ということで自己紹介に上がりました。では、本日より犯人逮捕までの間、よろしくお願いします」

 永徳はそういうと、その場からいなくなった。どうやら、陰から実乃梨のことを警護するらしい。あっという間に姿が見えなくなり、実乃梨は駐車場に一人きりとなった。

「そういえば、どうして誰も駐車場にいないのだろうか」

 実乃梨は定時に仕事を終えて、駐車場にやってきた。他にも定時上がりの社員はいたはずだが、なぜか周囲を見回しても他の社員の姿はない。なぜか社長の顔が頭に浮かんだが、深く考えることはせず、実乃梨は車に乗って自宅に帰ることにした。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...