朔夜蒼紗の大学生活~幽霊だって勉強したい~

折原さゆみ

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西園寺桜華という人物②

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「じゃあ、お昼を食べてお腹がいっぱいになったことだし、話していきましょうか。私と静流の関係はこの前話した通りで間違いはないわ。それで、私たちの家系について話すわね。」

 

 西園寺さんが話をまとめるとこういうことらしい。

 


 西園寺さんの家系は代々、化け狐の血が受け継がれている。誰が受け継ぐかはわからないけれど、化け狐の血が流れているものはその時の当主となっていることは事実であり、取り決めとなっている。

 化け狐の血が受け継がれなかったときは、代理が当主を務めることになっていて、あくまで代理であり、正当な後継者が生まれたら、すぐに当主を交代する決まりになっている。彼女の祖父が父の前の当主だったけれど、彼女の生まれる前に亡くなってしまった。

 


 現在の当主は父上になるけれど、父には化け狐の血は受け継がれなかった。受け継がれたかどうかはすぐにわかる。生まれたときに狐の耳と尻尾を有していたら、血は受け継がれているという証拠。わかりやすい証拠である。
 
 父には耳と尻尾はなかった。父には受け継がれなかったけれど、彼女は耳と尻尾を有して生まれた。このことで父は西園寺さんの代理であるということが決まった。彼女が18歳になったら父の後を継いで正式な跡取りとして任命される。これは決定事項だ。代々受け継がれてきた決まりである。これが争いを生んだ。

 

 西園寺さんがそのまま育てば父は当主ではなくなる。これが父上にとって悔しいことだった。自分の娘とはいえ、何もせずとも当主に慣れるということが気に入らなかったのだろう。父は化け狐の血を受け継がなかったせいで西園寺グループや親せきの人にさんざんひどい言葉を浴びせられた。

 自分のせいではないのに正式な当主になれない憤り、それに加えて周りからの非難中傷の数々。その中での娘の存在。化け狐の血を受け継いで生まれた彼女を見て父は「お前さえいなければ」と何度も繰り返し言ってきた。

 


 化け狐の能力はその名の通り、変身の力である。さらに代々、西園寺家に仕えている狐の神様の守護の力を得ることができる。狐の神様の姿も認識でき会話も可能になる。この狐の神の守護のもと、西園寺家は大きな発展を遂げてきたといっても過言ではない。

 ただし、能力を受け継いだものに対してのみその狐の神は力を貸す契約を交わしているそうだ。初代西園寺当主が狐の神様と決めた契約であるそうだ。

 そのため、化け狐の能力が出ないときは守護されずに何度か倒産の危機に陥っていたらしい。もし、初代当主の直系の血が途絶えればどうなるのか。西園寺家はたちまちに倒産してしまう、そんな不安を抱えていたため、狐の耳と尻尾を有した子供が生まれた時の喜びは大きい。そして、過剰な期待が寄せられる。





「今の話だと、西園寺さんは西園寺家の当主になることになると思うのですが、現状だと西園寺さんは後を継いでいませんよね。西園寺さんの実家は確か京都だったはずですが。」


「確かに話の流れだと私は当主になっていてもおかしくないわね。西園寺グループも代々のしきたりとか言って私を当主にしようとした。でも、私は当主になんかなりたくなかったから、静流を連れて逃げてきた。当然、グループの人間は私を逃がしはしない。ここ最近は狐の血を受け継いだ人間は現れなかったから余計に私を手放したくはなかったのでしょうね。」


「彼らは執拗に私に当主になるように迫った。当時高校生だった私には力がなかったから、もう当主になって西園寺グループの人形になり果てるしかないとあきらめかけていた。」

 

 けれど、そうはならなかった。だから西園寺さんは今、私の目の前にいる。西園寺さんは説明を続けた。




「私は狐の神様にお願いした。私を逃がしてくれるように頼みこんだ。彼は気まぐれで人間に慈悲を与えてくれる。その時、たまたま機嫌が良かったのか、彼は私を逃がしてくれるように手配した。ただし、ただで逃がすよう手配はしてくれなかった。条件として、私にある仕事を依頼してきた。それが今から話す私の仕事というか、バイトのこと。」


「仕事をするだけで逃がしてくれるというなら、私は喜んでその条件を受け入れた。すると、彼は私に化けて、私の声で言ってきた。『私がお前の代わりに努めてやろう。人間の仕事が面白いとは思わないが、暇つぶしにはなるだろう。』と。」



 彼は本当に言葉通り、西園寺さんに成りすまして、西園寺家の当主になったようだ。晴れて彼女は自由の身になった。当然、狐の神様が私に成りすましているので、そのまま京都に残っていては西園寺さんの存在が二人になってしまい、不審に思われる。そこで、彼女は大学を京都ではない場所に行く必要があったようだ。




「私はあの家でなければ正直どこでもよかった。でも、せっかく彼が自由を与えてくれたのだから、それを有意義に使わなければならない。そこで、自らのことを知ることができるかもしれないこの大学を選んだ。」



 確かにこの大学は日本に唯一ある妖怪などの怪異について学ぶことができる学科がある。それでこの大学にしたのだ。彼女がうちの大学に来た理由は理解できた。



「大学は決まって、あとは住む場所とお金の問題が残っている。それも彼が手配してくれた。よほど私のことが気に入っていたのか、単なる気まぐれかわからないけれど、家は私の遠い親戚に言えば住まわしてくれるとのことで、お金も大学までは工面してくれると言っていた。半信半疑だったけれど、それにすがるしかなかった。」

 

 実際に彼女がその親せきを訪ねると、本当に住まわしてくれると言ったようだ。そしてお金も出してくれると言っていたらしい。



「ということでここまでが私の生い立ちでこの大学にいるまでの話。静流は私がついてきて欲しいから連れてきた。それに静流も私と一緒で能力があるから、家にいるといろいろ面倒だったらしいから、一緒に行くと言ってくれた。」
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