朔夜蒼紗の大学生活~幽霊だって勉強したい~

折原さゆみ

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佐藤という女②

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 バイトの日である。今日はどんな子が来るのだろう。塾に自転車で向かう途中、私のスマートフォンは着信をつげていたが、自転車に乗っていて私は気づかなかった。
 

 塾に到着して、自転車を駐輪場において塾に入った。しかし、瀧さんは塾にはいないらしい。いつもなら、私が行く頃にはすでに塾の準備をして待っているのになんだか変な気分だ。塾にはかぎが掛かっていなかった。シャッターもおりていない。塾に入ることができたということは、今日は塾があるということだろう。念のため、瀧さんから何か連絡がないかスマホを確認する。
 
  1件、不在着信が入っていた。瀧さんからである。さらに私が電話に出なかったからなのか、メッセージも来ていた。



「すいません。今日は当塾日ですが、私は塾を休みます。急に予定が入ってしまいまして連絡も突然になってしまいました。もし、連絡を見ずに塾に行ってしまったようでしたら、すみません。今日は塾を開講しないことにしました。生徒たちには私の方から連絡しておきました。迷惑をかけますがよろしくお願いします。」



 なんだか最近、突然用事がキャンセルされるとか、突然用事を言いつけられるとかが多い気がする。大学に入ってから出会った人たちに自分勝手な人が多いからそう感じるだけかもしれない。
 
 しかし、塾が休みだというのに、なぜ、塾は明かりがついていて、鍵が開いていたのだろう。塾には生徒の個人情報が置いてある。それに振り込みも多いが、集金でお金を持ってくる生徒もいるので、多少のお金も置いてある。盗まれては大変だ。

 

 私は塾内を見渡した。特に荒らされた様子はなく、盗まれたものもなさそうだ。塾内の一か所に奇妙なものを見つけた。お札のようなものが落ちていた。いつも掃除をしているのに気づかなかった。拾ってごみ箱に捨てておく。今度のごみの日にまとめて捨ててしまうことにしよう。

 


 とりあえず、塾が休みになったので、私が塾にいる必要はない。塾の明かりを消して鍵を閉めて、シャッターを下ろしておく。しっかり鍵を閉めたことを確認して、塾を後にする。これから何をしようか。急に予定がなくなってしまったのでやることがない。まあ、大学で勉強したことを復習でもするか。私はのんびりと家に帰った。







 その後、塾ではだれもいないはずだと確認したはずなのに、突然明かりがつき、シャッターが上がり、塾が内側から開けられた。


「まさか、蒼紗がこの塾で働いていたとは驚きだわ。」

「確かに。だが、この状況はまずい。この塾の講師がまさか、連続殺人犯の正体だと知ったら、あいつはショックを受けるだろう。」




 何と、西園寺さんと雨水君が塾にはいたのだった。どこかに隠れていたのだろう。全く気付かなかった。私はふたりに気付くことはなかった。


 





 次の日も、佐藤さんは私たちに絡んできた。まるで、前から親しかったかのように馴れ馴れしい。昨日の西園寺さんの言葉をものともせず、私たちに絡んでくる。まるで、蛇に巻き付かれているかのような絡み方である。さらには、私と西園寺さんのコスプレを真似してきた。どこで今日のコスプレ衣装の情報をつかんだのだろうか。
 


 本日のコスプレは教会のシスターが来ているような修道服だった。頭にベールをかぶり、今日は珍しく暗い感じである。佐藤さんもこれに合わせて、修道服を着ていた。

 いったい佐藤さんは何がしたいのだろうか。コスプレが好きなら、私もお願いしますと素直に頼めばよいものを。コスプレがしたいのか、それとも西園寺さんと一緒にいるために、私も努力していますアピールをしているつもりなのか。しかし、いくら努力しようとも西園寺さんが振り向くことはないだろう。

 西園寺さんはこうと決めたらそのまま突き進むタイプだ。佐藤さんを選ばずに私を選んだということは今後も、佐藤さんが選ばれる可能性は限りなく低い。



 それにしても、最近私の周りは賑やかである。このまま、にぎやかに楽しい時間がずっと続けばよいのに。ふとそんなことが頭をよぎった。別にこれから何か大変な危機が迫っているわけでもないのに、どうしてこんなことを考えてしまうのだろうか。








「蒼紗、大事な話があるのだけど、今日この後私の家に来てもらえるかしら。」



 特に用事はない。行けると答えようとしたら、西園寺さんと雨水君のスマホが着信を告げた。二人は慌てて確認する。


「ごめん。仕事が入った。今日の仕事に蒼紗はついてこない方がいいわ。このまま家に帰っていいわよ。今日は来ない方がいい。話はまた今度しましょうね。」



 最近は、仕事を見学することが多いので、少し残念である。しかし、ここでわがままを言っても仕方がない。わがままを言って、仕事の迷惑になっては困る。私はまだ、自分の能力がどのようなものかわかっていない。能力がわからないならば、普通の人間と変わらない存在である。


 私は素直にうなずく。その答えに西園寺さんは満足したようだ。二人は駆け足で佐藤さんがいた方向に走っていった。私は西園寺さんたちとは反対方向の自分の家に向かう。この時、私は西園寺さんの気づかいに気付くことはできなかった。

 
 空を見上げると、きれいな夕焼けが見えていた。今日も雨が降るのだろうか。せっかくの夕焼けが雨で見られなくなるかと思うと少し寂しくなった。西園寺さんたちはあんな仕事をいつまで続けるつもりなのだろうか。
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