朔夜蒼紗の大学生活~幽霊だって勉強したい~

折原さゆみ

文字の大きさ
46 / 49

殺人鬼の告白②

しおりを挟む
 地下室に向かう途中、私たちは無言だった。重々しい雰囲気の中、地下室にたどりつく。その部屋には寝台が一台置いてあり、部屋の隅には日本刀のような刀も置いてある。

 その部屋を見た瞬間、私はふと既視感を覚えた。初めて見た部屋のはずなのに、どこかで見たことあるような気がしたのだ。そして、私のもう一つの能力を思い出す。そういえば、私には予知夢を見る力があるらしい。きっと見たことがあると感じたのは、夢で見たことがあるということだろう。ということは、この部屋で起きていたことは本当のことになる。


 急に吐き気を催した。瀧さんはここで人を殺し、魂をとりだして子供の姿の幽霊を作り出したのだ。夢の内容を一気に思い出した私は、気持ち悪くなって立っていられなくなり、その場に座り込んでしまった。きっと、彼らがここに来なかったのは、自分たちが殺された瞬間を思い出してしまうからだろう。夢で見ただけの私でさえ、この状態である。地下室に来なくて正解である。

 しかし、私はこの目で見なければならない。この事件の全容を知るためには必要なことだ。座り込んで考えていたら、不意に瀧さんが話し始めた。




「もう何もかもがおしまいですね。さて、これからどうしましょうか。あの少年に頼んでみれば何とかしてくれるかもしれません。私に素晴らしい能力を与えてくれたあの少年こそ、この事件を引き起こしたともいえます。私はその少年の指示に従っただけ。その少年こそが今回の黒幕でしょう。朔夜さん、彼はどんなことを私に言っていたかわかりますか。」

 そんなことを言っても私にわかるはずもない。そもそもその少年が誰なのかもわからない。自分の罪を認めたくがないがゆえに、架空の人物をでっちあげているのだろうか。そして、瀧は驚くべきことを言い出した。






「彼は私にこう言った。『殺したい女がいる。名前は西園寺桜華。お前はその女を殺すだけでいい。殺してくれるならば、お前の望みをかなえてやってもいいぞ。』と。」



「その少年は本当に西園寺桜華といったのですか。その人物はどんな人でしたか。」

「おや、気になるのですか。しかし、私もよくは知りません。いきなり私の目の前に現れ、力を与えてくれた。私にはそのことだけで充分しあわせだった。その力を与えてくれた人物が何者だろうと別に構わなかった。しいて言えば、彼はおそらく未成年で中学生ぐらいの背丈だと思います。少年はフードを被り、顔を隠し、丈の長いコートを着ていて詳しいことはわかりません。」

 

 黒幕である少年の特徴を話してくれ、さらに続けて瀧は語っていく。

「西園寺桜華という名前を聞き間違えるはずもありません。何せ彼女は西園寺グループの跡取り娘ですからね。その少年と彼女の関係は知りませんが、私は最初、断りました。当然、人を殺してほしいと言われて『わかりました』なんて答える人はいませんからね。望みをかなえてやると言われても、その少年が私の望みをかなえてくれる保証もないですから。しかし、その後、少年はまるで私の心を読んだかのように話し出しました。その言葉を聞いて、私は彼の望みをかなえるのに協力しました。」

 
 自分の望みのために人を殺すことを選んだというのか。いったい、瀧という男は何を少年に言われて協力すると決めたのだろうか。




『お前は、幽霊が見えるようだな。幽霊たちに勉強を教えている。勉強を教えるのは決まって子供の幽霊だけ。大人の幽霊が話しかけても完全に無視しているのか。とんだロリコンだな。幽霊になっても必死に勉強している子供の幽霊を見てお前は興奮していた。』

「私はその少年の言うことに反論できなかった。少年の言うことはほとんど当たっていた。幽霊は子供ばかりではなかった。大人の幽霊もたくさん私を訪ねてきた。しかし、彼の言う通り、大人の幽霊には勉強を教えることはしなかった。子供の幽霊に興奮していたかというと必ずしもそうではない。ただ、子供に勉強を教えているときの快感は忘れることができない。」

 
 そして、少年は続けて、瀧に西園寺さんを殺す計画を伝えてきたそうだ。




『まず、この町にいる能力者が暴れるように仕向ける。お前はその能力者を好きにしていい。見たところ、ロリコンの気があるから、そいつらに罪を償うためだといって殺して構わない。殺したら魂を子供の姿に変えて子供の幽霊を作ることができるよう手配しよう。彼らは犯罪を起こすだろう。そんな奴らが子供の姿になってもかわいくないだろうから、幽霊にした際に生前の記憶も失わせておこう。そうすればお前の理想の子供の幽霊が完成だ。お前はその幽霊の子供たちに、今まで教えた幽霊たちと同じように勉強を教えてやればいい。』

 

 瀧に力を与えるために少年は自分の血を飲ませた。さらに、殺すための刀と人間の身体から魂を引き出すための札も用意してくれたそうだ。こうして、瀧は新たな力を手に入れた。

 

 これだけで、どうやって西園寺さんを殺すことができるのだろう。西園寺さんが能力者だったとはいえ、瀧の前に現れるだろうか。不審に思ったことが顔に出ていたのだろう。瀧に力を与えた少年は続けてこう話した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

ユニークアイテムな女子(絶対的替えの効かない、唯一無二の彼女)「ゆにかの」

masuta
キャラ文芸
恋と友情、そして命を懸けた決断。青春は止まらない。 世界を股にかける財閥の御曹司・嘉位は、U-15日本代表として世界一を経験した天才投手。 しかし、ある理由で野球を捨て、超エリート進学校・和井田学園へ進学する。 入学式の日、偶然ぶつかった少女・香織。 彼女は、嘉位にとって“絶対的替えの効かない、唯一無二の存在”だった。 香織は、八重の親友。 そして八重は、時に未来を暗示する不思議な夢を見る少女。 その夢が、やがて物語を大きく動かしていく。 ゴールデンウィーク、八重の見た夢は、未曾有の大災害を告げていた。 偶然か、必然か……命を守るために立ち上がる。 「誰も欠けさせない」という信念を胸に走り続ける。 やがて災害を未然に防ぎ、再びグラウンドへと導く。 その中で、恋もまた静かに進んでいく。 「ずっと、君が好きだった」告白の言葉が、災害と勝負を越えた心を震わせる。 それぞれの想いが交錯し、群像劇は加速する。 一人ひとりが主人公。人生に脇役はいない。 現代ファンタジーとリアルが交錯する青春群像劇。 本作は小説家になろう、オリジナル作品のフルリメイク版です。

ママはヤンママ女子高生! ラン&ジュリー!!

オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
キャラ文芸
神崎ラン(♂)の父親の再婚相手は幼馴染みで女子高生の高原ジュリー(♀)だった。 ジュリーは金髪美少女だが、地元では『ワイルドビーナス』の異名を取る有名なヤンキーだった。 学校ではジュリーは、ランを使いっ走りにしていた。 当然のようにアゴで使われたが、ジュリーは十八歳になったら結婚する事を告白した。 同級生のジュリーが結婚するなんて信じられない。 ランは密かにジュリーの事を憧れていたので、失恋した気分だ。 そう言えば、昨夜、ランの父親も再婚すると言っていた。 まさかとは思ったが、ランはジュリーに結婚相手を聞くと、ランの父親だと判明した。  その夜、改めて父親とジュリーのふたりは結婚すると報告された。 こうしてジュリーとの同居が決まった。 しかもジュリーの母親、エリカも現われ、ランの家は騒然となった。  

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

完結‼️翡翠の歌姫は 後宮で声を隠す―2人の皇子と失われた記憶【1/23本編完結】

雪城 冴
キャラ文芸
本編完結‼️【中華サスペンス】 皇帝が隠した禁忌の秘密。 それを“思い出してはいけない少女”がいた。 「その眼で見るな――」 特殊な眼を持つ少女・翠蓮は、忌み嫌われ、村を追われた。 居場所を失った彼女が頼れたのは、歌だけ。 宮廷歌姫を目指して辿り着いた都でも、待っていたのは差別と孤立。 そんな翠蓮に近づいたのは、 危険な香りをまとう皇子と、天女のように美しいもう一人の皇子だった。 だが、その出会いをきっかけに皇位争い、皇后の執着、命を狙われる日々。 追い詰められる中で、翠蓮の忘れていた記憶が揺り動く。 かつて王家が封じた“力”とは? 翠蓮の正体とは? 声を隠して生き延びるか。 それとも、すべてを賭けて歌うのか。 運命に選ばれた少女が、最後に下す決断とは――? ※架空の中華風ファンタジーです ※アルファポリス様で先行公開しており、書き溜まったらなろう、カクヨム様に移しています ※表紙絵はAI生成

烏の王と宵の花嫁

水川サキ
キャラ文芸
吸血鬼の末裔として生まれた華族の娘、月夜は家族から虐げられ孤独に生きていた。 唯一の慰めは、年に一度届く〈からす〉からの手紙。 その送り主は太陽の化身と称される上級華族、縁樹だった。 ある日、姉の縁談相手を誤って傷つけた月夜は、父に遊郭へ売られそうになり屋敷を脱出するが、陽の下で倒れてしまう。 死を覚悟した瞬間〈からす〉の正体である縁樹が現れ、互いの思惑から契約結婚を結ぶことになる。 ※初出2024年7月

あやかし帝都の婚姻譚 〜浄癒の花嫁が祓魔の軍人に溺愛されるまで〜

鳴猫ツミキ
キャラ文芸
【完結】【第一章までで一区切り】時は大正。天羽家に生まれた桜子は、特異な体質から、家族に虐げられた生活を送っていた。すると女学院から帰ったある日、見合いをするよう命じられる。相手は冷酷だと評判の帝国陸軍あやかし対策部隊の四峰礼人だった。※和風シンデレラ風のお話です。恋愛要素が多いですが、あやかし要素が主体です。第9回キャラ文芸大賞に応募しているので、応援して頂けましたら嬉しいです。【第一章で一区切りで単体で読めますので、そこまででもご覧頂けると嬉しいです】。

処理中です...