囚われの姉弟

折原さゆみ

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2弟の彼女

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「ただいま」
「お帰り。ねえ、姉ちゃん、俺、ついに彼女出来た!」

「はあ」

 楓子が家に着くころにはすでに日が暮れていた。帰宅すると、興奮気味の弟に出迎えられる。いきなりの彼女発言に驚くが、旅行の疲れから楓子の反応はおざなりになる。

 楓子には2つ下の弟がいた。大学は楓子と同じだったが、学部が違うのであまり大学内で会うことはなかった。姉弟仲はそこまで悪くないが、格段に仲が良いという訳ではないごく普通の姉弟だった。

「なんでそんなに無反応なんだよ。そういえば、友達と旅行行ってきたんだよな。どうだった?俺にも当然、お土産あるだろ」

「はいはい。あるけど、お姉ちゃんは旅行帰りで疲れているの。話は後で聞くから、とりあえず家に入らせて」

 テンションの高い弟は玄関から楓子を上がらせず、そのまま話し続ける。そのことにようやく気付いた弟は、慌てて玄関の廊下の隅による。

「そういえば、姉ちゃんの友達って名前は」

「お帰り。予定通りに帰ってきたわね。夕飯はもうすぐだから、とりあえず荷物を部屋に運んで着替えてきなさい」

 弟の言葉を遮るように母親がリビングから顔を出す。夕食という言葉を聞くと、急に空腹を覚える。弟は母親の言葉に嬉しそうにリビングに走っていく。先ほど楓子に話し掛けたことも忘れた様子にあきれてしまう。楓子も重いスーツケースを二階に運んで、急いで着替えて一階のリビングに向かう。

(どうして私の親友の名前なんて気にしたんだろう。私の交友関係なんて興味なかったはずなのに)

 些細なことが気になったが、夕食をとるころにはすっかり楓子の頭から消えていた。

(とうとう、弟にも彼女ができた)

 夕食後、自分の部屋に戻り、ようやく弟の言葉を思い出す。そして少しうらやましい気持ちになった。楓子にも彼氏がいたらよかったのだが、なかなか良い男に出会う機会がなく、そのままだらだら大学生活を続けているうちに、彼氏が出来ずに大学を卒業することになってしまった。弟も同じように出会いがなく、楓子と同じような大学生活を送ると思っていた。そのため、大学在学中に弟に彼女ができるとは思わなかった。

(別に弟が出来たところで何も問題はない、か)

 ベッドに転がりながら、今後の自分のことを考える。早めに就活を行っていたため、内定は大学4年生の夏休み前にはとることが出来た。実家のある場所からは遠い県外に拠点を置く会社のため、4月からは独り暮らしを始めることになる。すでに新しい住居は決まっていて引っ越しのための準備が進められていた。部屋には段ボール箱が置かれ、一人暮らしに必要なものが詰められている。

 卒業式を終えたら、楓子は新たな住居に住み始めることになっていた。そのため、この家に住むのもあと数週間かと思うと、なんだか感慨深い気持ちになる。

「お母さんだけど、お風呂に入れるわよ」
「ノックしてからすぐに入ってこないで。ノックの意味ないでしょ」

 ノックの音と同時にガチャリと母親が部屋に入ってきた。特に隠すべきようなことはしていないが、母親の行動を注意する。とはいえ、風呂の準備ができたようなのでありがたく入らせてもらうことにした。

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