19 / 38
19親友の家族構成
しおりを挟む
「ここが、私が予約した部屋だよ。4人部屋だから、今日は楓子たちもここに泊まるといいわ」
美耶たちの案内で楓子たちはホテルの一室にたどり着く。部屋に入ると、ずいぶんと広かったが、4人泊まれるというのなら納得だった。ベッドはツインベッドがふたつ置かれていた。「泊まるといい」と軽く言っているが、当然、楓子と紅葉は結婚式に参加するだけだと思って宿泊の用意はしてない。そのうえ、こんな高そうなホテル代に泊めてもらうのは気が引けた。
「困っている顔もそっくりだねえ。そこまで緊張しなくていいよ。とりあえず、座って話そう」
いきなりのことすぎて困惑するのは当然だ。それなのに困った顔が似ていると笑う親友がどうかしている。何か文句を言ってやろうかと思ったが、何を言っても親友には効果ないだろうと楓子は口をつぐむ。弟も同じ考えなのか何も口にすることはなかった。
しかし、いつまでも入り口近くで立っているわけにもいかない。楓子と紅葉は無言で部屋に備え付けられているソファに隣同士に腰掛ける。美耶は楓子たちの正面に座り、雅琉はソファに座ることなく、美耶の後ろに静かに移動した。
「まずは何かルームサービスでも頼む?おなか減ったでしょう?」
気を利かせたつもりなのか、今回の件の元凶である美耶が口を開いた。ルームサービスなど頼んだら、ただでさえ高い宿泊費にさらに追加でお金を出すことになる。親友にこれ以上の支出を許してはならない。
「そんなことしてもらわなくても」
「雅琉」
「はい」
楓子の断りの言葉は途中で遮られる。雅琉はすぐに机に備え付けられていた電話でルームサービスを頼みだす。簡単な料理と飲み物を注文してすぐに受話器を置いて、親友に向きなおる。
「30分以内に運んでくれるそうです」
「ありがとう。さすが私の『おとうと』」
「ねえさんに褒められるほどではありません」
「謙遜しなくてもいいのに。そうそう、部屋に連れてきたから、もうその敬語はいらないよ。いつも通りにしてちょうだい」
「わかった」
突然、美耶と雅琉は楓子たち姉弟にとって不可解な会話を始めた。親友は「おとうと」と言っていた。親友に弟などいただろうか。楓子は必死に大学時代の親友との会話を思い出すが、姉弟がいたという会話をした記憶はない。むしろ、一人っ子だったという話を聞いたことがある。
「紅葉先輩。この男が『おとうと』って」
疑問を先に口にしたのは弟だった。紅葉にとっても親友のおとうと発言は驚きだったようだ。楓子たちが説明を求めるように視線を向けると、にっこりとほほ笑まれる。
「紹介がまだだったわね。この子は私の『おとうと』の『原雅琉(はらまもる)』っていうの」
「『おとうと』とは言っても、ねえさんの母親とオレの父親が再婚した結果、『おとうと』になったわけで、血のつながりはありません」
「血のつながりはない……」
「何を心配しているのかなんとなくわかるけど、私たちはあくまで姉弟だからね。あなたたちと一緒。恋愛感情はないから、気味の悪い想像はやめてくれる?」
「ねえさんの言っていた通り、かなり純真な姉弟なんだね。自分たちが今からどういう目にあうのか知らず、のんきなものだね」
美耶と雅琉の二人の会話は楓子の耳に届いているが、そのまま素通りしていく。美耶がおとうとの自己紹介を始めたとたんに、雅琉の言葉遣いが変わったことにも気づかない。
(両親が離婚して、再婚した……)
きっと、それは楓子たちが大学を卒業してからの出来事だろう。大学卒業後の親友の身に起きたことなど知る由もない。
「美耶を苦しめる奴が、一人減った」
「楓子?」
両親が厳しいと言っていたが、どちらが美耶に結婚を強いていたのだろうか。どちらが男尊女卑を説いていたのだろうか。どちらにせよ、両親が一人減ったなら、美耶を縛り付ける人間が一人減ったということだ。
「姉ちゃん、顔が怖いよ」
「美耶は自由に生きるべきだ」
「楓子、と、突然どうしたの?」
楓子は美耶に対して思ったことを自然と口にしていた。これは美耶にとって良いことだ。これを機に彼女の両親が強要したことを忘れて欲しい。
(でも、もし美耶が自由に生きると決めたとしたら、私と美耶は……)
楓子は弟と親友の言葉に我に返る。今の自分の顔を想像するが、きっとおかしな顔になっているだろう。
ちらりと美耶のおとうとだという男を観察する。この男が美耶にどんなことを言ったとしても問題はない。美耶の両親ほど影響を与えるとは思えない。たとえ、なにか言ったとしても、今度は自分が。楓子の思考はどんどん悪い方向に進んでいた。
美耶たちの案内で楓子たちはホテルの一室にたどり着く。部屋に入ると、ずいぶんと広かったが、4人泊まれるというのなら納得だった。ベッドはツインベッドがふたつ置かれていた。「泊まるといい」と軽く言っているが、当然、楓子と紅葉は結婚式に参加するだけだと思って宿泊の用意はしてない。そのうえ、こんな高そうなホテル代に泊めてもらうのは気が引けた。
「困っている顔もそっくりだねえ。そこまで緊張しなくていいよ。とりあえず、座って話そう」
いきなりのことすぎて困惑するのは当然だ。それなのに困った顔が似ていると笑う親友がどうかしている。何か文句を言ってやろうかと思ったが、何を言っても親友には効果ないだろうと楓子は口をつぐむ。弟も同じ考えなのか何も口にすることはなかった。
しかし、いつまでも入り口近くで立っているわけにもいかない。楓子と紅葉は無言で部屋に備え付けられているソファに隣同士に腰掛ける。美耶は楓子たちの正面に座り、雅琉はソファに座ることなく、美耶の後ろに静かに移動した。
「まずは何かルームサービスでも頼む?おなか減ったでしょう?」
気を利かせたつもりなのか、今回の件の元凶である美耶が口を開いた。ルームサービスなど頼んだら、ただでさえ高い宿泊費にさらに追加でお金を出すことになる。親友にこれ以上の支出を許してはならない。
「そんなことしてもらわなくても」
「雅琉」
「はい」
楓子の断りの言葉は途中で遮られる。雅琉はすぐに机に備え付けられていた電話でルームサービスを頼みだす。簡単な料理と飲み物を注文してすぐに受話器を置いて、親友に向きなおる。
「30分以内に運んでくれるそうです」
「ありがとう。さすが私の『おとうと』」
「ねえさんに褒められるほどではありません」
「謙遜しなくてもいいのに。そうそう、部屋に連れてきたから、もうその敬語はいらないよ。いつも通りにしてちょうだい」
「わかった」
突然、美耶と雅琉は楓子たち姉弟にとって不可解な会話を始めた。親友は「おとうと」と言っていた。親友に弟などいただろうか。楓子は必死に大学時代の親友との会話を思い出すが、姉弟がいたという会話をした記憶はない。むしろ、一人っ子だったという話を聞いたことがある。
「紅葉先輩。この男が『おとうと』って」
疑問を先に口にしたのは弟だった。紅葉にとっても親友のおとうと発言は驚きだったようだ。楓子たちが説明を求めるように視線を向けると、にっこりとほほ笑まれる。
「紹介がまだだったわね。この子は私の『おとうと』の『原雅琉(はらまもる)』っていうの」
「『おとうと』とは言っても、ねえさんの母親とオレの父親が再婚した結果、『おとうと』になったわけで、血のつながりはありません」
「血のつながりはない……」
「何を心配しているのかなんとなくわかるけど、私たちはあくまで姉弟だからね。あなたたちと一緒。恋愛感情はないから、気味の悪い想像はやめてくれる?」
「ねえさんの言っていた通り、かなり純真な姉弟なんだね。自分たちが今からどういう目にあうのか知らず、のんきなものだね」
美耶と雅琉の二人の会話は楓子の耳に届いているが、そのまま素通りしていく。美耶がおとうとの自己紹介を始めたとたんに、雅琉の言葉遣いが変わったことにも気づかない。
(両親が離婚して、再婚した……)
きっと、それは楓子たちが大学を卒業してからの出来事だろう。大学卒業後の親友の身に起きたことなど知る由もない。
「美耶を苦しめる奴が、一人減った」
「楓子?」
両親が厳しいと言っていたが、どちらが美耶に結婚を強いていたのだろうか。どちらが男尊女卑を説いていたのだろうか。どちらにせよ、両親が一人減ったなら、美耶を縛り付ける人間が一人減ったということだ。
「姉ちゃん、顔が怖いよ」
「美耶は自由に生きるべきだ」
「楓子、と、突然どうしたの?」
楓子は美耶に対して思ったことを自然と口にしていた。これは美耶にとって良いことだ。これを機に彼女の両親が強要したことを忘れて欲しい。
(でも、もし美耶が自由に生きると決めたとしたら、私と美耶は……)
楓子は弟と親友の言葉に我に返る。今の自分の顔を想像するが、きっとおかしな顔になっているだろう。
ちらりと美耶のおとうとだという男を観察する。この男が美耶にどんなことを言ったとしても問題はない。美耶の両親ほど影響を与えるとは思えない。たとえ、なにか言ったとしても、今度は自分が。楓子の思考はどんどん悪い方向に進んでいた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる