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29決意
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「そういえば、姉ちゃんの家に泊まるのって初めてかも」
紅葉は大学卒業後、楓子と同じように県外に就職して一人暮らしを始めた。実家からは離れたが、楓子の家とは電車で30分ほどの距離で、会おうと思えば気軽に会える距離だった。会えると言っても、楓子も紅葉も平日は仕事で、休日に会うほど仲が良い姉弟でもない。互いの家を訪ねることはあっても、泊めたり泊まったりすることはなかった。
「わざわざ家に泊めるとか、姉弟でもあまりしないからね」
今は非常事態のため、弟を家に泊めることにしたが、普段ならこんなことはしない。紅葉の住むアパートにやってきた二人は部屋に入る。玄関から中に入ると、楓子とは違う独り暮らしの部屋がそこにはあった。
「ちょっと待ってて。着替えてすぐ荷物準備するから」
楓子はリビングのソファに座り、弟が準備するのを待つことにした。紅葉は奥の部屋に入っていく。
30分ほどで、紅葉は楓子の前に現れた。スーツから私服姿になり、堅苦しい感じがなくなった。白のTシャツに紺色の長袖のカッターシャツを羽織り、下はベージュの七分丈のパンツをはいていた。
(紅葉には彼女が居るのだろうか)
ふと、楓子は弟の人間関係が気になった。楓子は今現在、お付き合いをしている男性はいない。しかし、弟まで付き合っている女性がいないとは限らない。
「ねえ、紅葉はさ、彼女はいるの?」
もし、彼女が居るとしたら、弟だけでも美耶の魔の手から守る必要がある。
「いきなりだね。いないよ。いたら、美耶先輩の結婚式より彼女との予定を優先させるだろう?」
「ま、まあ、そうかもしれないけど」
「姉ちゃんだけ美耶先輩の元に行って、俺を解放するつもり?」
紅葉はじっと楓子を見つめる。真剣なまなざしに楓子の方が先に目をそらす。勘の良い弟で嫌になってしまう。楓子はため息を吐いて正直に今の心境を語る。
「だって、このままだと確実に私たちは美耶に囚われる。その責任はすべて私にある。弟まで巻き込むわけにはいかないでしょ」
「わかってないなあ」
「何が?紅葉だって美耶の気持ちわかって」
「わかってるよ。でもさ、ここまで美耶先輩との関係が崩れたのは、俺にも原因があると思ってる」
「別に紅葉のせいじゃ」
「俺が美耶先輩と付き合うって決めたから。それもまた先輩を狂わせる理由にはなるんじゃないかな」
紅葉は楓子の隣の腰を下ろす。隣を見ると、紅葉は疲れた顔で両手を頭にのせて苦笑する。
「まったく、姉ちゃんはやばい人に目を付けられちゃったよなあ」
「ご、ごめんなさい」
「謝ることはないよ」
(ここまできたら、俺も腹をくくってやる)
紅葉は隣に座る姉の姿を見て決心する。姉の楓子は、美耶という女性が自分たち姉弟二人を手に入れようとしていることに反対している。最悪の場合、美耶の元に楓子だけが残るつもりで弟を助けようとするだろう。姉を犠牲にしてまで助かろうとは思わない。
「こうなったからには、2人で一緒に美耶先輩に対抗しようぜ。それなら、きっと勝算はあるはずだから」
すでに2人そろって美耶の掌の上で躍らされている感じは否めないが、それでも今はこうして自由に過ごせている。
「そうだね。一度だけならまだしも、二度も美耶に騙されないから!」
楓子は紅葉の言葉に少しだけ元気をもらった。きっと、2人なら何とかなる。根拠のない自信があった。
紅葉は大学卒業後、楓子と同じように県外に就職して一人暮らしを始めた。実家からは離れたが、楓子の家とは電車で30分ほどの距離で、会おうと思えば気軽に会える距離だった。会えると言っても、楓子も紅葉も平日は仕事で、休日に会うほど仲が良い姉弟でもない。互いの家を訪ねることはあっても、泊めたり泊まったりすることはなかった。
「わざわざ家に泊めるとか、姉弟でもあまりしないからね」
今は非常事態のため、弟を家に泊めることにしたが、普段ならこんなことはしない。紅葉の住むアパートにやってきた二人は部屋に入る。玄関から中に入ると、楓子とは違う独り暮らしの部屋がそこにはあった。
「ちょっと待ってて。着替えてすぐ荷物準備するから」
楓子はリビングのソファに座り、弟が準備するのを待つことにした。紅葉は奥の部屋に入っていく。
30分ほどで、紅葉は楓子の前に現れた。スーツから私服姿になり、堅苦しい感じがなくなった。白のTシャツに紺色の長袖のカッターシャツを羽織り、下はベージュの七分丈のパンツをはいていた。
(紅葉には彼女が居るのだろうか)
ふと、楓子は弟の人間関係が気になった。楓子は今現在、お付き合いをしている男性はいない。しかし、弟まで付き合っている女性がいないとは限らない。
「ねえ、紅葉はさ、彼女はいるの?」
もし、彼女が居るとしたら、弟だけでも美耶の魔の手から守る必要がある。
「いきなりだね。いないよ。いたら、美耶先輩の結婚式より彼女との予定を優先させるだろう?」
「ま、まあ、そうかもしれないけど」
「姉ちゃんだけ美耶先輩の元に行って、俺を解放するつもり?」
紅葉はじっと楓子を見つめる。真剣なまなざしに楓子の方が先に目をそらす。勘の良い弟で嫌になってしまう。楓子はため息を吐いて正直に今の心境を語る。
「だって、このままだと確実に私たちは美耶に囚われる。その責任はすべて私にある。弟まで巻き込むわけにはいかないでしょ」
「わかってないなあ」
「何が?紅葉だって美耶の気持ちわかって」
「わかってるよ。でもさ、ここまで美耶先輩との関係が崩れたのは、俺にも原因があると思ってる」
「別に紅葉のせいじゃ」
「俺が美耶先輩と付き合うって決めたから。それもまた先輩を狂わせる理由にはなるんじゃないかな」
紅葉は楓子の隣の腰を下ろす。隣を見ると、紅葉は疲れた顔で両手を頭にのせて苦笑する。
「まったく、姉ちゃんはやばい人に目を付けられちゃったよなあ」
「ご、ごめんなさい」
「謝ることはないよ」
(ここまできたら、俺も腹をくくってやる)
紅葉は隣に座る姉の姿を見て決心する。姉の楓子は、美耶という女性が自分たち姉弟二人を手に入れようとしていることに反対している。最悪の場合、美耶の元に楓子だけが残るつもりで弟を助けようとするだろう。姉を犠牲にしてまで助かろうとは思わない。
「こうなったからには、2人で一緒に美耶先輩に対抗しようぜ。それなら、きっと勝算はあるはずだから」
すでに2人そろって美耶の掌の上で躍らされている感じは否めないが、それでも今はこうして自由に過ごせている。
「そうだね。一度だけならまだしも、二度も美耶に騙されないから!」
楓子は紅葉の言葉に少しだけ元気をもらった。きっと、2人なら何とかなる。根拠のない自信があった。
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