Kiss

hosimure

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イジワルなキス

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あたしはキョロキョロと周囲を見回す。

よし! いないな。

そう思って教室に入ると…。

「おっはよー!」

「うぎゃうっ!」

後ろから抱き付かれた!

「いっいつ来てたのよ!」

「今だよ~。キミの後姿を見て、つけてたんだ」

「すっストーカー!」

「人聞き悪いこと言わないでよ。そんなことを言う口は、これかなぁ?」

ぎゅむっ★

右側の頬をつねられた!

もう片方のアイツの手は、あたしの腰に回っていて、放してくれない!
「ちょっ、誰か助けてよぉ!」

クラスメート達に助けを求めるも、苦笑して見ているだけ。

こっこんなのイジメだぁあ!

「ととっ…。キミをいじるのも楽しいけれど、HRが始まってしまうね」

パッといきなり解放されて、あたしはよろめいた。

「じゃ、またね」

爽やかな笑顔で、アイツは自分の席に座った。

あたしはフラつきながらも、アイツの前の席に座る。

…何でこの席になったんだろう。

ああ、アイツのせいだった。

あたしの後ろの席のアイツは、悪魔だ。

意気揚々と高校入学して、ワクワクしながら教室に入ると…アイツがいた。

あたしは教室に早く入りたくて、走って来たのに、先にアイツがいた。

アイツは表面上は爽やかイケメンだった。

窓際で外の桜を見ていて、あたしが入って来たことに気付くと、ゆっくりと振り返った。

「あっ、はじめまして。一番乗りしたのね。早いわね」

息を切らしながらも、あたしは笑顔を向けた。

アイツは最初、無表情だった。

けれどいきなりズンズン近付いてきたかと思うと、あたしの頬を手で包んだ。

「えっ…」

「キミ…ボク好みの顔しているね」

キレイな声に、心臓が高鳴った。

「ええっとぉ」

「おもしろい顔をしている」

ぴきっ★

思いっきり自分の顔が固まった音が聞こえた。

「あはは。おもしろい顔」

アイツは笑うと、いきなりぎゅむぎゅむとあたしの頬をつねったり、押したりしてきた。

「ちょっ…やめてよぉ!」

「その声もおもしろーい! 気に入った! 今日からキミはボクのおもちゃだ!」

なっ! 何ですとぉー!



…てなことがあり、いつの間にやらここまできた。

アイツは相変わらず、あたしにだけイジワルをする。

理由を聞いても、

「おもしろいから」

と最上級の笑顔で言うだけ。

周囲の人は、愛情表現だと言っているけど、明らかに悪意を感じるのはあたしだけ?

毎日毎日っ! 何かしらあたしにイジワルをしては、楽しそうにしているんだもの!

サドだっ! 変態だっ!

…でも、あの心底楽しそうな笑顔を近くで見れるのは、ちょっと役得…とも思えなくも無い。

……だけどその笑顔の理由が、あたしの苦しむ顔ってーのはどーよ?

我が身を犠牲にしてまで、アイツのイジワルに耐える必要はあるんだろうか?

まあアイツがあたしをいじくるおかげで、クラスメートとは仲が良い。

けれど…彼氏ができない。

というより、アイツが男子生徒を追い払ってしまう。

これでも人並みには青春をしたいのに!

何度か手紙や呼び出しを受けたこともあった。

けれどそのたびに、アイツがどこからともなく現れては、ブチ壊してくれる…。

おかげで高校に入ってから、彼氏が一度もできない…。

いっそアイツに責任を取らせようかとも考えたことがあった。

アイツはモてるのに、彼女がいない。

…まあいたら、あたしをいじっているヒマはないだろうが。

でも…これから一生、アイツにイジメられる日々が続くことを、自ら望むことは絶対にできなかった。

そんな苦悩しそうな日々を送ったら、絶対にいつかポックリ逝ってしまう!

精神的な面を考えて、責任を取らせることは絶対にやめようと思った。

だけどこのままじゃなぁ。

ツンツン

ん? 何か後ろ髪が引かれている気が…。

グイグイ

…間違いない。

アイツはあたしの髪の毛をいじるのが、大好き。

今もHR中なのに、後ろから髪の毛を引っ張っている。

ここで大声を出すわけにも、リアクションを起こすつもりもないので、スルーする。

アイツも一応常識はある。いつもずっとかまってくるわけじゃない。

髪の毛を引っ張るのも、ほんの少しの力でだ。

決して強くはしない。

だからあたしもスルーできるんだけど…うっとおしいなぁ。

ストレスはブスブスとくすぶっている。

やがてHRが終わると、すぐに授業。

進学校なだけに、授業はすごくハード。

だから授業中だけは、アイツは何もしてこない。

代わりにお昼休みになると…。

「おっ、今日もキミの手作り?」

「そうだけど…。アンタはコンビニで買ったおにぎりとサンドイッチがあるでしょーが!」

お弁当を開けて、さあ食べよう!…とした時に、お弁当は取り上げられてしまった。

「交換しよーよ。ボク、キミの作るから揚げと出汁巻き卵、好きなんだよね」

「あたしも自分の好物だから、作って入れてんの! とっとと返してよ!」

手を伸ばすも、頭一つ分の差は大きい…。

「今日だけ交換!」

「ほぼいつも略奪してるじゃない!」

あたしがお弁当を開くと、その中身を見て、好物が入っていると略奪していく。

そして自分が買ってきたおにぎりやパンと、無理やり交換させるんだ。

まあ…コイツとあたしの好みが同じなのが、救いだろう。

「はい、キミのお昼」

そう言って、笑顔でコンビニの袋を押し付けてきた。

「ちょっ…って、もう食べてるし!」

袋を受け取ると、すでにアイツはお弁当に手をつけていた。

渋々袋の中をあさり、コンブのおにぎりを食べる。

「キミ、それ好きでしょ?」

「好きだけどさぁ。…自分で作ったお弁当の方が、もっと好きなんだけど?」

「ワガママだなぁ」

「どっちがよっ!」

お昼休みは何故か、コイツと2人で食べている。

それも…やめた方が良いのかもしれない。

「ねっねぇ」

「何?」

「そろそろ…あたしをいじるの、やめてくれない?」

「どーして?」

真顔で聞き返しやがった!

「…あたし、そろそろ彼氏欲しいのよ。アンタがいつまでもあたしをかまってちゃ、出来ないでしょ?」

キッパリ言うと、キョトンとした。

「彼氏って…ボクのことでしょ?」

「はあ!? 何でよ!」

強気で聞き返すと、いきなり…キスされた。

教室内で、悲鳴や嬌声が飛び交う。

「…これでキミはボクのモノだって、みんな分かったから。誰にも渡さないよ」

唇に息を吹きかけながら、間近であたしを睨みつけるアイツに、思わず目がくらんだ。

「一生放さないよ? キミはボクのモノなんだから」
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