出会いの高速道路

hosimure

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「今のサービスエリアって、豪華になりましたよね。24時間営業なんて、昔はありえませんでしたし」

「ホテルや温泉まである所まであるからね。まあ食事が取れるのは一人暮らしとしてはありがたい」

「独身なんですか? 恋人は?」

「仕事が恋人なんだ」

「まあ」

店内の光の下で見た彼女は、本当にキレイで可愛い。

そして食堂の店員が彼女を認識したことで、俺は安心していた。

やっぱり彼女は幽霊なんかじゃない。

「親子丼セットにしょうかな。味噌汁付きの」

「じゃあわたしも同じので」

店員に注文した後、彼女はケータイを開いた。

「それじゃあちょっと家族に連絡してきますね」

「分かった」

彼女はケータイを持って、店の隅へと移動した。

その間、俺は席を立ち、水をコップ2つに入れた。

ここでは水やお茶は無料だが、自分で取りに行かなければならない。

まあ店内に人はまばらだから、苦にならないが。

「お待たせしました! あっ、お水ありがとうございます」

彼女は美味しそうに水を飲む。

「お父さん、すぐに来てくれるって?」

「はい、でも30分以上はかかるって言われました」

「それじゃあその間、付き合うよ。キミを1人にするのは何だか危険な気がする」

「そうですか? ではお願いします。1人じゃ味気ないですからね」

会話をしている間に、注文の品が来た。

「結構美味しいですね♪」

「ああ、俺はよくここで食べるんだ。メニューはほとんど食べたかな」

「スゴイですね。お仕事でここの高速道路、よく使われるんですか?」

「ああ。本社勤めなんだけどね。いろいろお店を回らなくちゃいけなくて、ここの高速道路は毎日何回も使うぐらいだ」

「へぇ…。それって会社の人、ほとんどですか?」

「まあそうだな。俺の部署の人間はほとんど本社にいない。おかしな部署だろ?」

「移動好きな人にはたまらない部署ですよね」

「確かに。車が好きなら、たまらないね」

彼女と会話をしながら、食事を済ませた。

その後はお茶を飲みながら、談笑した。

「あっ、そうだ。キミはもしかしたら知らないかもしれないけど、最近、若い女性ばかり被害に合う事件が多発しているんだ。気をつけた方がいい」

「ああ…そう、ですね」

そこで店内に置いてあるテレビで、ニュースが流れた。

30ぐらいの女性キャスターが重々しくニュースを読み上げる。

内容は例の女性ばかりが被害に合うヤツだった。

新たな犠牲者が出たらしい。

被害者達に共通点はなく、ただ若くキレイなコばかり狙われるというウワサだ。

夜道を1人で歩いていると、いきなりライトを消した車が近付いてきて、突然車の中に引っ張り込まれる。

そして暴行を受けた後、見知らぬ土地に捨てられるという、残酷極まりない事件だった。

しかし女性達がさらわれた場所は各地転々としていて、次にどの土地で事件が行われるか分からないというのが、恐ろしい。

「…あんな事件が起こっているんだ。探している人がいるなら、他の人に頼んでみるといい。探偵や警察とか」

「…それで見つかるなら、良いんですけどね」

そう呟いた彼女の声と表情は、ぞっとするほど冷たかった。

被害者達が捨てられる場所は各地転々。

この県でもあったことだし、近隣の県でもある。

あまりに範囲が広過ぎて、警察の混乱ぶりが目に見えるほどた。

しばらくは沈黙がおりた。

しかし1人の男性が店内に来たことで、彼女の表情が変わった。

「お父さん!」

「お前、またこんなことをっ…!」

父親は娘を見て、何故か安堵の表情ではなく、困惑の表情を浮かべた。

「この人が、わたしを保護してくれたの」

「あっ、ご挨拶が遅れて申し訳ございません。この子がご迷惑をおかけしまして…」

「いっいえ、危ないと思ったので、保護したまでですから」

頭を下げられると、こっちが恐縮してしまう。

「それじゃ、お会計、よろしく」

彼女が笑顔で、伝票を父親に差し出した。

「分かった分かった。それでは失礼します」

「はい…」

父と娘はお会計に向かい、そのまま店を出た。

ガラス越しに見ていたが、父親はどこか疲れた顔をしていて、彼女は明るかった。

しかしいきなり彼女は振り返り、俺に向かった笑顔を見せた。

そして彼女の唇が何かを言った。

…でも距離がありすぎて、聞こえなかった。

だが父親には聞こえていたらしく、憤怒し、彼女の腕を掴んで行ってしまった。

何だ? 彼女は一体、何を言ったんだ?
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