28 / 36
28
しおりを挟む
今はその反動か、体中にキスマークを残された。
まあ僕も僕でお返しとばかりに、彼の背中に引っかき傷を残したワケだけど。
ふと彼の方を見るとすでに下は穿き終えていて、上半身はまだだった。
その背中には僕がつけた傷以外の痕がある。
それは彼が殺し屋をやっている証拠とも言える。
銃弾の痕や切り傷、肌が一部焼き爛れた痕もある。
彼はどんなに重傷を負っても、無表情を変えない。
痛覚が無いのだと、昔言っていた。
デスは自分のことはほとんどしゃべらない。
だからこそ、覚えていたのかもしれない。
どうして痛覚がなくなったのか聞いても、デスは薄く笑うだけで答えてはくれなかったが…。
「…僕もいずれはアナタのようになるんでしょうかね?」
ガラガラの声で呟くと、デスは振り返り僕を見る。
いつもの人形のような無表情をして。
「俺のように―とは?」
「言葉の通り、ですよ」
そこまで言って軽く咳き込む。
自分の口から性臭がした。
口の中は彼が放った白濁の液の匂いと味があるからだ。
行為の最中、有無を言わさず無理やり咥えさせられ、大量に出された。
一滴残らず飲み干すことを強要されて、頑張って飲みくだした。
だけど自分の体の中から溢れてくるオスの匂いに、眼が眩む。
「『死神』にでもなりたいのか?」
しかし行為を強要した張本人は、すでに情事のことなどなかったかのように冷静になっていた。
…少し恨めしい。
「とっくになっていると思いますが……要は人間らしさを失うという意味です」
彼には罪悪感がない。
だからどんなに残酷な仕事でも、平気でこなす。
そんなデスの近くにいるからこそ、僕の成績は優秀だと言われているのだ。
デスはベッドに腰掛け、僕の顎を掴んだ。
「―怖いのか? 人でなくなるのが」
宝石のように冷たい闇色の双眸は、だけど決して怖くはなかった。
慣れというのもあるけれど、きっと僕も同じ眼をしているから…。
「いいえ。アナタやラバーと同じ所にいられるなら、人間なんてやめてもいいです」
そう言って微笑んだ。
その言葉は本心から出た。
例え愛情を注がれなくても、仕事上の付き合いだけでも、一緒にいられるのは嬉しい。
どんなに犠牲を払ってでも、ここにいたいと願ってしまうのだから、僕はとっくにおかしくなっている。
「そうか」
素っ気なく答えると僕から離れ、上着を着始めた。
ここが室温調整されている部屋で良かった。
さすがに素っ裸で放置され続けたら、いくら僕でも風邪をひく。
この後ラバーと一緒に遊ぶ約束もしているし、体調管理には気をつけないと。
デスは最後にコートを羽織り、両手に手袋をした。
「今日はここで眠ると良い」
「デスは?」
「お前の部屋を使う」
「そうですか。…ああ、ラバーの襲撃にはお気をつけて」
もしラバーがデスを僕だと勘違いして襲撃したら……シャレにもならないし、想像もしたくない。
「ああ」
そしてこの部屋の主は出て行きました、とさ。
「う~ダルい…」
散々喘がされ、揺す振られた後は、正直言って仕事をハシゴするよりキツイ。
僕はもぞもぞと布団に入り込み、瞼を閉じた。
…デスの匂いがする。
そしてセックスの後の匂いも。
いろんな意味で目眩を起こしながら、僕は眠りについた。
翌日、すでに夕日が沈む時間に僕は目覚めた。
そして疲れた体を引きずり、バスルームへ向かう。
そこで体を一通り洗ってすっきりしたは良いが、風呂場に貼りつけてある等身大の鏡で自分の体を見て、がっくり項垂れた。
「…日に日に隠さなければならない場所が増えるのは、何故だろう?」
手首の痣もまだ生々しいのに、体中には至る所にキスマーク。
―所有印だ。お前が俺の物である証拠だ。
とデスは昨夜、嬉しそうに僕の体にキスマークをつけまくったワケだけど…しばらくラバーと一緒にお風呂には入れないな。
「確かに僕は彼の物なんだけどね」
これでは普通の服も着れない。
首筋と手首を隠すような服じゃないと…。
「後でトランプに用意させるしかないか」
トランプは幹部である大アルカナの命令には絶対服従。
何か求められたら、すぐに用意してくれるのがありがたい。
「はあ~」
僕はとぼとぼとバスルームから出た。
そして数十分後。
トランプに用意させた服を着てロビーに顔を出すと、そこにはラバーとデス、ハーミットにフールがいた。
フールは『愚者』。
見た目には二十代前後に見える青年だ。
金と黒の入り混じった髪は顎の辺りまで伸びていて、色素の薄い琥珀色の眼が特徴だ。
肌の色も白くて、体も華奢。
ちょっと見、女の子に見えなくもない。
どちらかと言えば、中性的なタイプだ。
会うのは結構久しぶりになるので、僕は笑顔で駆け寄った。
まあ僕も僕でお返しとばかりに、彼の背中に引っかき傷を残したワケだけど。
ふと彼の方を見るとすでに下は穿き終えていて、上半身はまだだった。
その背中には僕がつけた傷以外の痕がある。
それは彼が殺し屋をやっている証拠とも言える。
銃弾の痕や切り傷、肌が一部焼き爛れた痕もある。
彼はどんなに重傷を負っても、無表情を変えない。
痛覚が無いのだと、昔言っていた。
デスは自分のことはほとんどしゃべらない。
だからこそ、覚えていたのかもしれない。
どうして痛覚がなくなったのか聞いても、デスは薄く笑うだけで答えてはくれなかったが…。
「…僕もいずれはアナタのようになるんでしょうかね?」
ガラガラの声で呟くと、デスは振り返り僕を見る。
いつもの人形のような無表情をして。
「俺のように―とは?」
「言葉の通り、ですよ」
そこまで言って軽く咳き込む。
自分の口から性臭がした。
口の中は彼が放った白濁の液の匂いと味があるからだ。
行為の最中、有無を言わさず無理やり咥えさせられ、大量に出された。
一滴残らず飲み干すことを強要されて、頑張って飲みくだした。
だけど自分の体の中から溢れてくるオスの匂いに、眼が眩む。
「『死神』にでもなりたいのか?」
しかし行為を強要した張本人は、すでに情事のことなどなかったかのように冷静になっていた。
…少し恨めしい。
「とっくになっていると思いますが……要は人間らしさを失うという意味です」
彼には罪悪感がない。
だからどんなに残酷な仕事でも、平気でこなす。
そんなデスの近くにいるからこそ、僕の成績は優秀だと言われているのだ。
デスはベッドに腰掛け、僕の顎を掴んだ。
「―怖いのか? 人でなくなるのが」
宝石のように冷たい闇色の双眸は、だけど決して怖くはなかった。
慣れというのもあるけれど、きっと僕も同じ眼をしているから…。
「いいえ。アナタやラバーと同じ所にいられるなら、人間なんてやめてもいいです」
そう言って微笑んだ。
その言葉は本心から出た。
例え愛情を注がれなくても、仕事上の付き合いだけでも、一緒にいられるのは嬉しい。
どんなに犠牲を払ってでも、ここにいたいと願ってしまうのだから、僕はとっくにおかしくなっている。
「そうか」
素っ気なく答えると僕から離れ、上着を着始めた。
ここが室温調整されている部屋で良かった。
さすがに素っ裸で放置され続けたら、いくら僕でも風邪をひく。
この後ラバーと一緒に遊ぶ約束もしているし、体調管理には気をつけないと。
デスは最後にコートを羽織り、両手に手袋をした。
「今日はここで眠ると良い」
「デスは?」
「お前の部屋を使う」
「そうですか。…ああ、ラバーの襲撃にはお気をつけて」
もしラバーがデスを僕だと勘違いして襲撃したら……シャレにもならないし、想像もしたくない。
「ああ」
そしてこの部屋の主は出て行きました、とさ。
「う~ダルい…」
散々喘がされ、揺す振られた後は、正直言って仕事をハシゴするよりキツイ。
僕はもぞもぞと布団に入り込み、瞼を閉じた。
…デスの匂いがする。
そしてセックスの後の匂いも。
いろんな意味で目眩を起こしながら、僕は眠りについた。
翌日、すでに夕日が沈む時間に僕は目覚めた。
そして疲れた体を引きずり、バスルームへ向かう。
そこで体を一通り洗ってすっきりしたは良いが、風呂場に貼りつけてある等身大の鏡で自分の体を見て、がっくり項垂れた。
「…日に日に隠さなければならない場所が増えるのは、何故だろう?」
手首の痣もまだ生々しいのに、体中には至る所にキスマーク。
―所有印だ。お前が俺の物である証拠だ。
とデスは昨夜、嬉しそうに僕の体にキスマークをつけまくったワケだけど…しばらくラバーと一緒にお風呂には入れないな。
「確かに僕は彼の物なんだけどね」
これでは普通の服も着れない。
首筋と手首を隠すような服じゃないと…。
「後でトランプに用意させるしかないか」
トランプは幹部である大アルカナの命令には絶対服従。
何か求められたら、すぐに用意してくれるのがありがたい。
「はあ~」
僕はとぼとぼとバスルームから出た。
そして数十分後。
トランプに用意させた服を着てロビーに顔を出すと、そこにはラバーとデス、ハーミットにフールがいた。
フールは『愚者』。
見た目には二十代前後に見える青年だ。
金と黒の入り混じった髪は顎の辺りまで伸びていて、色素の薄い琥珀色の眼が特徴だ。
肌の色も白くて、体も華奢。
ちょっと見、女の子に見えなくもない。
どちらかと言えば、中性的なタイプだ。
会うのは結構久しぶりになるので、僕は笑顔で駆け寄った。
2
あなたにおすすめの小説
被虐趣味のオメガはドSなアルファ様にいじめられたい。
かとらり。
BL
セシリオ・ド・ジューンはこの国で一番尊いとされる公爵家の末っ子だ。
オメガなのもあり、蝶よ花よと育てられ、何不自由なく育ったセシリオには悩みがあった。
それは……重度の被虐趣味だ。
虐げられたい、手ひどく抱かれたい…そう思うのに、自分の身分が高いのといつのまにかついてしまった高潔なイメージのせいで、被虐心を満たすことができない。
だれか、だれか僕を虐げてくれるドSはいないの…?
そう悩んでいたある日、セシリオは学舎の隅で見つけてしまった。
ご主人様と呼ぶべき、最高のドSを…
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる