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8年ぶりの再会
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さすがは医者の住居…と感心している間もなく、彼の性格が爆発した。
薄々とは感じてたが、彼はとっても執着心が強い。
そして一度決めると、絶対に覆さない。
だから今みたいに予告なく帰宅時間が遅くなると、とんでもないことをする。
彼の職場はマンションから近いので、定時で帰ってくる彼にはどうしても追い付かない。
それでもなるべく急いで帰ろうとした。
しかし、…扉の前で、俺は止まった。
防音壁なので、音は一切聞こえない。
でも部屋から漏れ出る異様なオーラが、可視できるのが恐ろしい。
「ううっ…!」
先に帰ってきているであろう、彼の怒気を感じられる。
勇気を振り絞り、ドアノブに手をかけた。
「たっただいま帰り…ひぃっ!」
部屋の中は、惨劇が起こっていた。
ありとあらゆる物が床に散らばり、そして壁に投げつけられていた。
朝見たモデルルームのような綺麗な部屋の光景は、すでに過去のものになってしまった。
「…おかえり」
そして惨劇の場の中心に、彼が笑顔で立っていた。
…冷気をまといながら。
「すっすみません! 急に仕事が入って、遅くなったんです!」
カバンを胸に抱えながら、必死に謝る。
…彼は少しでも予告していた帰宅時間が遅れると、キれて暴れる。
その後の俺の身に降りかかることは、恐ろしくて誰にも相談できない。
「ふぅん?」
「本当ですって! 兄貴に聞けば、分かりますから」
足元に気をつけながら、彼に近付く。
…本当は逃げ出したい。
けれど逃げて捕まった後は、言葉にできないことをされた経験があるので、絶対に逃げられない。
「…空耶くんの仕事ってさ、結構忙しい上に不規則だよね?」
「まっまあそうですね」
いつ急な仕事が入るとか、前以って分からないのが辛い仕事ではある。
「もう辞めちゃえば?」
「うっ…!」
いつかは言い出されるとは覚悟していたものの、実際言われるとキツイ。
「平日は会社終わった後でも連絡来る上に、残業も多い。休みはなかなか取れないから、二人で一緒にいる時間も少ないし」
…それも言われそうだったから、彼の元に引っ越してくることにしたのに。
「キミ一人ぐらい、僕が養ってあげるからさ。ねっ?」
彼は俺の頬を両手で包み込み、間近で微笑んだ。
こっ怖いっ!
悪魔どころか、魔王レベルの恐ろしさだっ…!
「でっでも、会社は俺がいなくちゃ成り立たない部分もありまして…かっ改善しますので、勘弁してもらえないでしょうか?」
動揺のし過ぎで、敬語がおかしくなっている。
でも直そうと思って、できることじゃない。
「ダメ」
…彼の気迫が怖過ぎるから。
「八雲には僕から言っておくから。キミは大人しくここで僕を待ってて?」
「えっ…ええぇ~?」
血の気が引く顔で、笑っても変に見えるだろう。
「うん、そうしな。専業主夫になりなよ、空耶くん」
…俺も常々自分で自分のことを、執念深いと思っていた。
自分をフッた男のことを、ずっと思い続けていたからだ。
でもその相手は、自分以上の執念深さを持っていた。
八年間、離れていた分だけ、溜まっているのかもしれないが…コレは少々どころか、かなりヤリ過ぎな気がする。
「…櫂都さん、自分で自分の行動、精神科のお医者さんとして見て、どういうふうに思いますか?」
「イかれているよね」
精一杯の嫌味も、彼は笑顔で応える。
「でもそれってしょうがないんじゃないかな?」
「しょうがない?」
「そっ。だって」
彼はゆっくりとキスをしてきた。
「恋って人を狂わせる力があるんだから」
「…それって、卑怯な言い方に聞こえますが」
少しムッとしてしまう。
愛の告白は、こういう時に言われると異様な力を持つから。
「ふふっ、ゴメンね? 僕もまさかこんなにキミに夢中になるなんて思わなかった」
そう言って美しい狂人は、優しく抱き締めてくる。
「愛しているんだ、空耶くん。全部、僕の物になって?」
「…本当にズルいですね、櫂都さん」
愛しい人にそんなことを言われたら、逆らえない。
「―良いですよ。俺の全てをあなたに差し上げます。代わりに、あなたを俺にください」
「良いよ。僕はすでにキミの物だ」
この言葉は…本気?
それとも誤魔化し?
…いや、どちらでも良い。
今はただ、目の前に彼がいれば、それで良い。
【終わり】
★最後まで読んでいただき、ありがとうございました♪
薄々とは感じてたが、彼はとっても執着心が強い。
そして一度決めると、絶対に覆さない。
だから今みたいに予告なく帰宅時間が遅くなると、とんでもないことをする。
彼の職場はマンションから近いので、定時で帰ってくる彼にはどうしても追い付かない。
それでもなるべく急いで帰ろうとした。
しかし、…扉の前で、俺は止まった。
防音壁なので、音は一切聞こえない。
でも部屋から漏れ出る異様なオーラが、可視できるのが恐ろしい。
「ううっ…!」
先に帰ってきているであろう、彼の怒気を感じられる。
勇気を振り絞り、ドアノブに手をかけた。
「たっただいま帰り…ひぃっ!」
部屋の中は、惨劇が起こっていた。
ありとあらゆる物が床に散らばり、そして壁に投げつけられていた。
朝見たモデルルームのような綺麗な部屋の光景は、すでに過去のものになってしまった。
「…おかえり」
そして惨劇の場の中心に、彼が笑顔で立っていた。
…冷気をまといながら。
「すっすみません! 急に仕事が入って、遅くなったんです!」
カバンを胸に抱えながら、必死に謝る。
…彼は少しでも予告していた帰宅時間が遅れると、キれて暴れる。
その後の俺の身に降りかかることは、恐ろしくて誰にも相談できない。
「ふぅん?」
「本当ですって! 兄貴に聞けば、分かりますから」
足元に気をつけながら、彼に近付く。
…本当は逃げ出したい。
けれど逃げて捕まった後は、言葉にできないことをされた経験があるので、絶対に逃げられない。
「…空耶くんの仕事ってさ、結構忙しい上に不規則だよね?」
「まっまあそうですね」
いつ急な仕事が入るとか、前以って分からないのが辛い仕事ではある。
「もう辞めちゃえば?」
「うっ…!」
いつかは言い出されるとは覚悟していたものの、実際言われるとキツイ。
「平日は会社終わった後でも連絡来る上に、残業も多い。休みはなかなか取れないから、二人で一緒にいる時間も少ないし」
…それも言われそうだったから、彼の元に引っ越してくることにしたのに。
「キミ一人ぐらい、僕が養ってあげるからさ。ねっ?」
彼は俺の頬を両手で包み込み、間近で微笑んだ。
こっ怖いっ!
悪魔どころか、魔王レベルの恐ろしさだっ…!
「でっでも、会社は俺がいなくちゃ成り立たない部分もありまして…かっ改善しますので、勘弁してもらえないでしょうか?」
動揺のし過ぎで、敬語がおかしくなっている。
でも直そうと思って、できることじゃない。
「ダメ」
…彼の気迫が怖過ぎるから。
「八雲には僕から言っておくから。キミは大人しくここで僕を待ってて?」
「えっ…ええぇ~?」
血の気が引く顔で、笑っても変に見えるだろう。
「うん、そうしな。専業主夫になりなよ、空耶くん」
…俺も常々自分で自分のことを、執念深いと思っていた。
自分をフッた男のことを、ずっと思い続けていたからだ。
でもその相手は、自分以上の執念深さを持っていた。
八年間、離れていた分だけ、溜まっているのかもしれないが…コレは少々どころか、かなりヤリ過ぎな気がする。
「…櫂都さん、自分で自分の行動、精神科のお医者さんとして見て、どういうふうに思いますか?」
「イかれているよね」
精一杯の嫌味も、彼は笑顔で応える。
「でもそれってしょうがないんじゃないかな?」
「しょうがない?」
「そっ。だって」
彼はゆっくりとキスをしてきた。
「恋って人を狂わせる力があるんだから」
「…それって、卑怯な言い方に聞こえますが」
少しムッとしてしまう。
愛の告白は、こういう時に言われると異様な力を持つから。
「ふふっ、ゴメンね? 僕もまさかこんなにキミに夢中になるなんて思わなかった」
そう言って美しい狂人は、優しく抱き締めてくる。
「愛しているんだ、空耶くん。全部、僕の物になって?」
「…本当にズルいですね、櫂都さん」
愛しい人にそんなことを言われたら、逆らえない。
「―良いですよ。俺の全てをあなたに差し上げます。代わりに、あなたを俺にください」
「良いよ。僕はすでにキミの物だ」
この言葉は…本気?
それとも誤魔化し?
…いや、どちらでも良い。
今はただ、目の前に彼がいれば、それで良い。
【終わり】
★最後まで読んでいただき、ありがとうございました♪
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