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噂のオバケ屋敷で起こったこと
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ところがその子供はいくら捜しても見つからなかった。
大地主は絶望し、家を捨て、町を出てしまった。
それ以後、その家には誰も住んでいないはずなのに、時折灯りがついたり、人の声が聞こえるという。
その家とは、くしくも今からアタシ達が行こうとしている屋敷だった。
男性は話し終えた後、あの屋敷に入ろうとした人が次々と行方不明になっていると言った。
だからアタシ達に、近付かない方が良いのだと…。
仲間達は少し暗い気分になったものの、すぐにお会計を済ませて店を出た。
さすがに不安になったのか、仲間の1人が行くのを止めるかと聞いてきた。
しかし言いだしっぺの彼が、意地になって行くと言った。
その気迫に押されて、アタシ達は再び歩き出した。
―あの屋敷を目指して。
電車で見た時は感じなかったが、あの屋敷は駅から結構遠かった。
しかも森の中だ。
迷ったらそれこそとんでもないことになるだろう。
けれど仲間の歩みは止まらない。
アタシは歩きながらも、さっき聞いた話を思い出した。
例の子供の行方について。
普通なら、殺しに来た人達を返り討ちにして、逃げたと考えるだろう。
でも逆の発想をすれば、それは不可能に近いのではないだろうか?
1人対複数。この図式はあまりに不利と見える。
しかも屋敷に居た全員を殺めたというのは、いくら子供が優秀でも成せることとは思えない。
…まあ昔の話だから、どこまでが真実なのかは全然分からないんだけど。
やがて例の森の入り口にたどり着いた。
…着いてしまった。
森の入り口には1つのお地蔵さんがいた。
お地蔵さんを見ているうちに、ふと何かが引っ掛かった。
それはお地蔵さんに供えられているお水とお饅頭だ。
どちらもまだ新しい…。
ついさっき、誰かがそなえたみたいだ。
今時お地蔵さんにおそなえをする人なんて、珍しいな。
そう思いながら、森の中に足を踏み入れた。
道は土道ながらも一本道。
昔は馬でもひいていたのだろう。幅が広くて歩きやすかった。
…歩いて20分ほど経ち、アタシ達はとうとう例の屋敷の前に来てしまった。
そこで仲間の1人が割り箸を取り出した。
どうやら番号が書かれているらしく、ペアを組んで行こうと言い出した。
そして引いたら…何故かアタシだけがペアを組む人がいなかった。
それもそのはず。
アタシ達は男4人に女3人。ペアにしようとすれば、必ず誰か1人はあぶれてしまう。
仕方無いので、1番目に行くペアが戻ってきたら、3人で行くということになった。
…別にここで待っていても良いんだけどな。
でもそんなアタシの思いも虚しく、1番目のペアが屋敷の門をくぐり、中に入って行った。
アタシは深く息を吐いて、仲間の中から離れた。
ちょっと周囲を見てくると言って。
周囲は木ばかりで、ここから近くの家まで歩いて30分以上もあるだろう。
…だから屋敷で起こった惨劇の真実は、この屋敷にいた人間以外、誰も分からない。
「本当にその子供だったのかなぁ」
などと呟きながら、屋敷の周りを歩いていると、裏側に小さな社を見つけた。
小走りで近付いてみると、どうやら屋敷とは背中合わせのように建てられている。
だから鳥居も家とは逆方向にあった。
でも…ここでも同じだった。
森の入り口のお地蔵さんと同じで、お供えされた水とおまんじゅうが置いてある。
同一人物がやったことかな?
社も鳥居も年季は入っていたけれど、ボロイというところまではいかなかった。
手入れがされている。
こういう田舎町では、森の中の神様まで大切にしているのか。
そんなことを考えながら、鳥居を潜り、社を覗いて見る。
社の中には、小さなお地蔵さんがいた。
優しく微笑んでいるけれど…どこか薄ら寒く感じるのは何故?
大地主は絶望し、家を捨て、町を出てしまった。
それ以後、その家には誰も住んでいないはずなのに、時折灯りがついたり、人の声が聞こえるという。
その家とは、くしくも今からアタシ達が行こうとしている屋敷だった。
男性は話し終えた後、あの屋敷に入ろうとした人が次々と行方不明になっていると言った。
だからアタシ達に、近付かない方が良いのだと…。
仲間達は少し暗い気分になったものの、すぐにお会計を済ませて店を出た。
さすがに不安になったのか、仲間の1人が行くのを止めるかと聞いてきた。
しかし言いだしっぺの彼が、意地になって行くと言った。
その気迫に押されて、アタシ達は再び歩き出した。
―あの屋敷を目指して。
電車で見た時は感じなかったが、あの屋敷は駅から結構遠かった。
しかも森の中だ。
迷ったらそれこそとんでもないことになるだろう。
けれど仲間の歩みは止まらない。
アタシは歩きながらも、さっき聞いた話を思い出した。
例の子供の行方について。
普通なら、殺しに来た人達を返り討ちにして、逃げたと考えるだろう。
でも逆の発想をすれば、それは不可能に近いのではないだろうか?
1人対複数。この図式はあまりに不利と見える。
しかも屋敷に居た全員を殺めたというのは、いくら子供が優秀でも成せることとは思えない。
…まあ昔の話だから、どこまでが真実なのかは全然分からないんだけど。
やがて例の森の入り口にたどり着いた。
…着いてしまった。
森の入り口には1つのお地蔵さんがいた。
お地蔵さんを見ているうちに、ふと何かが引っ掛かった。
それはお地蔵さんに供えられているお水とお饅頭だ。
どちらもまだ新しい…。
ついさっき、誰かがそなえたみたいだ。
今時お地蔵さんにおそなえをする人なんて、珍しいな。
そう思いながら、森の中に足を踏み入れた。
道は土道ながらも一本道。
昔は馬でもひいていたのだろう。幅が広くて歩きやすかった。
…歩いて20分ほど経ち、アタシ達はとうとう例の屋敷の前に来てしまった。
そこで仲間の1人が割り箸を取り出した。
どうやら番号が書かれているらしく、ペアを組んで行こうと言い出した。
そして引いたら…何故かアタシだけがペアを組む人がいなかった。
それもそのはず。
アタシ達は男4人に女3人。ペアにしようとすれば、必ず誰か1人はあぶれてしまう。
仕方無いので、1番目に行くペアが戻ってきたら、3人で行くということになった。
…別にここで待っていても良いんだけどな。
でもそんなアタシの思いも虚しく、1番目のペアが屋敷の門をくぐり、中に入って行った。
アタシは深く息を吐いて、仲間の中から離れた。
ちょっと周囲を見てくると言って。
周囲は木ばかりで、ここから近くの家まで歩いて30分以上もあるだろう。
…だから屋敷で起こった惨劇の真実は、この屋敷にいた人間以外、誰も分からない。
「本当にその子供だったのかなぁ」
などと呟きながら、屋敷の周りを歩いていると、裏側に小さな社を見つけた。
小走りで近付いてみると、どうやら屋敷とは背中合わせのように建てられている。
だから鳥居も家とは逆方向にあった。
でも…ここでも同じだった。
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