Girls Kiss

hosimure

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キライなキス

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「―ねぇ、あなた」
「ん?」
 帰り道。呼び止められて、振り返る。
 髪の長い、可愛い女の子が涙目で立っていた。
 アタシの着ている制服とは違うから、別の高校の女の子か。
 その可愛さに眼を奪われているうちに、

バチンッ!

 …頬を叩かれた。
「あなたなんて…大ッキライ!」
 そう言って、彼女はその場を去った。
 たまたまアタシと一緒にいた友人二人が怒りながら彼女の背に罵声を浴びせていた。
 けれどアタシは、彼女の姿が眼に焼き付いていた。
 その後、友人二人が彼女のことを調べた。
 この学校からそう遠くない所にある、お嬢様の女子高校の女の子らしい。
 アタシと同じ歳で、成績も優秀。
 そんな彼女が、アタシを叩いた理由は。
 あの子の元彼が、アタシを好きになったから。
 ウチの学校は進学校で、男女共学。
 彼女は中学は地元の中学校に通っていたらしく、彼とはその頃付き合っていた。
 高校入学してしばらくは付き合いがあったらしいけど、彼はアタシを好きになって、彼女をフッた。
 そして彼女は執念でアタシのことを調べて、恨みをぶちまけに来た…と。
 ちなみに彼のことは、言われて何となく思い出した。
 入学して一ヵ月後に告白されたけど、断った。
 だから今更恨まれても、と思う。
 でも友人情報では、彼は未だアタシに未練があるらしく、彼女にとってはそれがおもしろくないんだろう。
 友人達は彼に恨みを言おうと言ったが、めんどくさいので止めた。
 けれど……。
 アタシは学校をサボって、彼女の学校の校門前に来た。
 セーラー服の群れの中に、一人ブレザーの制服のアタシは目立つらしい。
 通り過ぎる女の子達が、アタシを見てコソコソ話をしている。
 そして群れの中で…一人、俯いた彼女を見つけた。
 アタシは歩き出し、彼女の腕を掴んだ。
「きゃっ!?」
「おはよう。アタシのこと、忘れてないよね?」
 彼女はアタシを見て、真っ赤に染まった。
 コレは…忘れられていないんだろうな。
「ちょっと話があるの」
 アタシはそう言って、彼女の腕を掴んだまま、歩き出した。
「ちょっ…ちょっと!」
 そして近くの公園に来た。
 時間帯のせいか、人はいない。
「離して!」
「いいよ」
 アタシは彼女の腕を離した。
 彼女はアタシから視線をそらし、バツの悪そうな顔をした。
「…文句言いに来たの?」
「まあ…それらしいことかな? 一応言っておくけどアタシ、彼とは付き合っていないから」
 それだけはちゃんと言いたかった。
「確かに告白されたけど、断った。その後、付き合いは一切無いから」
「知ってる…」
「あっそ…」
 まあ知ってても、どうにかしたかったんだろうな。
 …にしても、可愛い子だな。
 女の子らしい女の子。
 彼は何でこの子をフッて、アタシなんて好きになったんだろう?
 こんな無頓着で無表情な女を好きになるなんて、趣味が悪すぎる。
 アタシだったら…彼女を選ぶ。
 こんな子と付き合えるなんて、男にとっちゃ夢だろうに…。
「…ゴメンなさい」
 彼女は俯いたまま、呟いた。
 …一応、悪いとは思っていたんだろうな。
「うん、まあ、コレで終わりにしよう?」
「……うん」
 彼女はボロボロ泣き出した。
 思っちゃいけないけど…可愛いなぁ。
 彼女は泣きながらも、顔を上げた。
「わたしを叩いて」
「…はい?」
 しかし彼女の口からは、とんでもない言葉が出た。
「あなたをわたしは叩いた。だからあなたも叩いて、終わりにしましょう」
 …この子、見た目に反して結構行動的というか、直情的と言うか…。
 涙を流しながらも、顔を上げて、眼を閉じた。
 その一生懸命さも、可愛く思えてしまう。
「じっじゃあ…」
 アタシは彼女に近付き、顔を覗き込んだ。
 ああ…可愛い。
 アタシだったら、絶対彼女を離さないのに…。
 そう思っていたら、アタシは彼女を叩くどころか、
 キス―をしていた。
 彼女の涙の味がした。
「…っ!」
 彼女は驚いて眼を開け、そして、

バチンッ!

 …二度目だ。
「何するの!?」
「あっ、いや、つい…。可愛かったものだから」
 殴られた頬を押さえながら、それでもニヤけてしまう。
「あっあなたって…!」
 彼女は耳まで真っ赤になり、口をパクパクさせた。
 そしていきなり、抱き着いてきた。
「―へ?」
「あなたって…どうしてそうなの?」
「そうって言われましても…」
「…ズルイ」
「うん?」
 とりあえず抱き締め返しながら、アタシは彼女の言葉に耳をすませた。
「最初…あなたのことを知った時、腹がたったわ」
「うん」
「何でこんな女のこと好きなんだろうって、彼にも腹がたった」
「うん…」
「なのにっ…!」
 ぎゅうっとアタシを抱き締め、彼女は涙を流す。
「なのに…ずっと忘れられなかった」
「…うん」
「あなたのこと、一日一時一瞬たりとも忘れたことが無かった」
「……うん」
「そして気付いたの…。わたしも彼と同じように、あなたに夢中になっているって」
「うん」
「だからっ…叩きに行ったの」
「うん」
「彼どころか、わたしまでも夢中にさせたあなたがキライだったから…!」
「うん」
 アタシはぎゅっと彼女の細い体を抱き締めた。
「…あのね」
 アタシは優しく声を出した。
「…何?」
「アタシも、忘れられなかったの。アナタのこと」
「えっ…?」
 彼女は顔を上げ、真っ赤になった眼でアタシを見た。
「コレって…アタシもアナタに夢中ってことなのかしらね」
 そう言うと、彼女はまた泣き出す。
 アタシはそんな彼女に、キスをした。

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