光輪学院高等部・『オカルト研究部』

hosimure

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雛/ガーデニングの封印

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「そっかぁ。じゃあかんちゃんとくぅちゃん、大丈夫なのね?」

『何とかね……。もう走り回ってクタクタ……。九曜なんて封印の衝撃で、もう立てないみたい……』

「じゃ、部室で休んだ方が良いんじゃない? アタシの方も、すぐに済ませて行くからぁ」

『分かった。悪いけど言葉に甘えるわ』

「うん! じゃ、すぐに行くね!」

雛は明るく言って、通信を切った。

神無月、依琉、九曜まで封印を済ませた。

次は自分の番だと、雛は思った。

学院にはガーデンニング部は存在しない。

そして誰もガーデニングなどやっていない。

しかし学院には、とても美しいガーデニングが存在している。

誰の手も入れられていないのに、美しく存在するこの庭こそ、封印するべきモノだった。

「キレーなものまで封印するなんて勿体無いと思うけどぉ。危ないんじゃ、仕方無いよねぇ」

へらっと笑い、雛はガーデニングの中心部にある噴水の場所へ向かった。

そこには水瓶を持った女神の像があった。

ただの石像だったが、雛が近付くにつれ、少しずつ震え始めた。

「こんばんわ! 早く部室に行かなきゃいけないから、とっとと終わらせましょ!」

明るく言うと、石造の眼が赤く光った。

それと同時にバラの棘の蔓が伸びて、雛に襲い掛かった。

「よっと」

しかし雛は軽々とかわす。

次に花が黄色の花粉を一気に放った。

「毒花粉か。最近のお花さん達はぶっそうだねぇ」

襲い掛かってくる花粉を、雛は右手に力を込め、空気を引き裂いた。

石像がガタガタッと動いた。

「えへへ。驚いたぁ? ウチの部長、ちゃんとアタシ達の力を考えて、担当の場所を決めてくれるから良いんだよねぇ~」

笑顔で言いつつ、雛は石像に近付く。

襲い掛かってくる蔓や花粉を恐るべきスピードで避けながら、雛は石像の目の前に来た。

「ゴメンね!」

そのまま石像に回し蹴りをくらわす。

 バキィッ!

石像は腰から真っ二つに折れた。

石像の眼が強く赤く光る。

けれど雛はすでに、レンズにその姿を捕らえていた。

「吸引~」

石像が形を歪め、レンズに吸収されていくた。

「うぐっ!」

後ろに倒れそうになるも、雛は両足を踏ん張って耐えた。

やがて全てが吸収され、レンズが落ちてきた。

「はぁっはぁ……。まっ毎年だと、さすがにきっついかなぁ」

雛は肩で息をしながら、レンズを手にした。

レンズには上半身しかない石像が写っていた。両目は赤い。

「これで終了~。早くかんちゃんやくぅちゃんの待っている部室に行かなきゃ」

しかし雛はその場で倒れ込んだ。

「うっ……!」

その時、連絡が入った。

『雛? 大丈夫かい?』

「依琉くん……」

『その様子だと、封印は終わったみたいだね』

「うん……。でもちょっと<力>を使い過ぎちゃった」

『……あれほど無茶は禁物だと言ったのに』

「ゴメンねぇ。でも頼られると、嬉しいからさ」

よろけながら噴水の所まで行き、背を預けた。

背後に感じる水の存在が、今はありがたかった。

『キミの<力>は肉体に直接影響が出る。パワーバランスはちゃんとしてたのかい?』

「手加減なんて出来ない相手でしょ? ちょっと張り切っちゃっただけ。すぐにかんちゃん達と合流するよ。今、部室にいるみたいだから」

『神無月には二ヶ所も担当してもらったし、九曜は今年がはじめてだったからな。雛、キミももう休んで良いから』

「……そういうワケにもいかないよね?」

雛の言葉に、依琉は言葉を失くした。

「大丈夫! 少し休んだら、部長の所に行くから。もちろん、二人を連れてね」

『すまない……』

「ううん。じゃ、いったん切るね」

雛はそのまま、スイッチを切った。

「ふぅ……」

全身の筋肉が、軋んでいた。

ミシミシ……と。
爆発的な力を使える雛。

しかしその反動はもろ肉体に返ってくる。

そのことを知っているのは、部長と依琉、そして神無月も薄々気付いてはいるだろう。

周りはただ、雛がバカ力を使っているように見えるだろうが、実際は反動との戦いだ。

ちょっと使うぐらいならいいのだが、今日みたいに戦闘となると話は別。

「でも頼られちゃねぇ」

今までこの力のせいで、周りからは遠ざかられていた。

けどオカルト研究部に誘われた時は嬉しかった。

「やっと見つけたアタシの居場所……」

例え苦しい反動があっても、失いたくは無いと思った。

雛はやがて、目を閉じて意識を手放した。


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