恐怖の感染連鎖

hosimure

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「何で『みぃ』がクラスのみんなを祟るのよ?」

アタシの一言は、クラス中を凍り付かせる威力を発揮してしまった。

「もしかして…自殺の原因って、イジメ?」

なので思いきって言うと、今度は何かが壊れたような音がした。

「ちっちがっ…!」

「何の証拠があって、そんなこと言うのよ!」

「だって祟られる心当たり、あるんでしょ? しかもクラスメート全員が」

アタシの冷静な一言に、全員目を見張ってしまった。

「うっうわーん!」

すると1人の女子生徒が泣き出し、次々と泣き出す生徒が増えた。

「あっアレ? マジだったの?」

軽い気持ちで言った一言だったのに、思った以上にダメージを与えてしまったらしい。

…その後、騒ぎを聞きつけた担任に呼び出されたのは言うまでもない。 

担任はケガをした男子生徒達の手当てやら、連絡やらで今まで職員室にいた。

そして今、アタシも職員室にいた。

「篠原紅海のことは、むしかえさないでくれるか?」

真剣に困った顔で、担任は言った。

「でもアタシからは何も言ってませんよ。クラスメート達が勝手に説明してくれたんです」

「はあ…」

いや、ため息をつかれても。

「先生も、心当たりがあるんですか?」

「何にだ?」

「『みぃ』に祟られる心当たり」

「どうしてそれをっ!?」

思わず出した大声に、すぐさま気付いて声を潜める。

「どこで聞いた?」

「先程、クラスの女子達から聞きました。全員脅えていたので、もしかしたら先生かもって。どうやら彼女の死因、イジメらしいじゃないですか? 表沙汰にはしていませんね」

「そっそれが本当の原因かは分からないんだ。遺書も何も無かったんだからな!」 

「『遺書が無かった』を免罪符にして、罪から逃れようとするから、『みぃ』に復讐されているのでは?」

「なっ!」

担任は顔を真っ赤にしたが、言い返せないらしい。

「ちょっとアタシも彼女には困っているんですよね。よければ少し、お話を聞かせていただけませんか?」

アタシは担任の耳元で囁いた。

すると逡巡した後、立ち上がった。

「…面談室へ行こう」

「はい」

面談室は職員室の隣で、鍵が無ければ入れない小部屋だった。

昔は物置部屋だったらしいけど、今は個人面談をする時に使っているらしい。

授業中の今なら、使用する人もいない。

「…篠原がイジメを受けていることは、薄々だが気付いていたんだ」

「気付きながら、助けてあげなかったんですか?」 

「くっクラスの連中は『遊んでいただけ』と言っていた。それに篠原自身から、イジメを受けているということは聞いていなかったんだ。だが…」

担任は苦い顔で、続きを話した。

「肩まで伸びていた髪が急に短くなっていたり、机の中に入れていた物が床に散らばっていたりと、目に見えてひどくなっていった。そこで何とかしようとしていたところで…」

「自ら命を絶ったと言われているんですね。正確にはどのような死に方で?」

「ウチの学校の屋上から、飛び降りたんだ」

「遺書も無く?」

「ああ…。警察がいくら探しても見つからなかった。篠原は今のご家族とは血が繋がらないから、それが原因の1つだと言われている」

「養子縁組、ですか。後は受験ノイローゼだったと誰かが証言すれば、立派な自殺ですね」

「おっおい!」

「受験ノイローゼは、先生とクラスメート達のでっち上げだったんでしょ? イジメを受けて暗くなっている彼女を、そういう風に解釈してもらうために」

担任の顔色が、青ざめる。

多分口裏を合わせずとも、みんな同じことを言ったんだろうな。

中学三年生ならば、ありえないことじゃないし。

「で? 『みぃ』という存在は何なんですか?」

「あっああ…。それは篠原自身が言っていたことらしい。自分には『みぃ』という存在がついていて、守ってもらっている。だからこそ、自分は明るくなれるんだって」

「それで守護天使なんて言われているんですね。中学生にしては、随分子供っぽいことを口にしてたんですね」

「篠原は…それで明るかった。だがそれをクラスメート達は快く思っていなかったんだろう」 
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