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彼と僕
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天気が良ければ、海が凪いでいれば、最高の結婚式が挙げられると言われていた。
確かに実際来て見て、ここで結婚する人は幸せになれるだろうなと思った。
…そう、他人事ならば良い。
しかし彼が笑顔で神父と会話をしている。英語だけど、時々『結婚』と言う単語が聞こえるたびに、寒気がするのは何故だろう?
初老の優しそうな神父は、にこにこしている。
でも…この教会には僕と紗神、そして神父の三人しかいないようだった。
物凄く、イヤ~な予感がする。今すぐ海に飛び込んで、泳いで逃げ出したいぐらいの悪寒も感じる。
「永河、話ついたよ」
満面の笑顔の彼に声をかけられると、びくっと体が震えた。
「話って…何の?」
「結婚式」
「…一応、聞いておくけどさ」
「うん」
「誰か身近な人が、結婚するの?」
「うん。オレと永河」
やっぱりっ!
「遠慮させていただきますっ!」
海に向かって走り出すも、彼の方が足が速かった。すぐに捕らえられて、ズルズルと教会の中に引きずり込まれた。
神父が笑顔で手を振って、見送ってくれる。どうやら外で待っているらしい…。
「そう照れるなって。日本じゃ恥ずかしいだろうから、せっかく外国にしたのに」
「日本でやったら、悶絶するって!」
「アハハ。だからここにしたんだって」
紗神は楽しそうに言って、大きなステンドグラスの前で立ち止まった。美しい天使を描いたステンドグラスの迫力に、目を見開いてしまった。
「キレイだね」
「うん、キレイだ。ここで誓えば、信じるだろう?」
「…何を誓うって?」
「だから、永河への愛だよ」
ぞわっ! 全身に一気に鳥肌が立った!
「なっ、どっ、どうしたの? あまりの暑さに、頭やられた?」
「…お前、本当に言うようになったよな。そもそもオレが好きでもないヤツを、側に置くと思っていたのか?」
「だって…僕は僕に自信がないし。そもそも紗神に愛を言われたことなんて、今まで一度もなかったじゃん」
「でも好きだとは言っただろう?」
「…言ったっけ?」
「言った。はじめてセックスした時」
「言ってない! 僕に好きかと聞いただけ!」
「アレ? そうだったっけ?」
くぅっ! …あの時せめて好きって言ってくれれば、こんなに思い悩むこともなかったのに。
「でも好きかと聞いて、『両想い』って言っただろう?」
「『好き』にはいろんな意味があるの、知らない?」
嫌味たっぷりに言うも、紗神は肩を竦めただけ。
「何だ。オレはあれから素直になっているし、てっきり両想いだって通じているのかと思ってた」
…わぁ。分かっていたことだけど、この人、信じられないぐらい自意識過剰だぁ。
「それじゃあ改めて言うよ」
彼の手には、いつのまにか金の指輪があった。それを素早く僕の左手の薬指にはめた。
「なっ、ちょっと!」
「愛しているよ、永河」
信じられないぐらい甘い言葉を囁くと、キスしてきた。触れるだけの、軽いキス。だけど…今までで一番優しいキスだった。
「永河は? オレのこと愛しているよな?」
僕は自分の顔が赤くなるのを感じた。
答えなんて、一つしかない。
「…うん。愛してるよ、紗神」
僕はぎゅっと紗神に抱きついた。
「んっ。知ってた」
どこまでも自信家の人。でもこの人がこうでなきゃ、僕はこんなに強く惹かれなかっただろう。
「あっ、僕も指輪買った方が良いよね?」
「いや、オレはもう自分のあるから」
そう言う彼の左手の薬指には、すでに金の指輪があった。
「でも…」
「良いんだって。そもそも指輪を買う為にバイトをはじめて、オレの側にいる時間が短くなったらイヤだしな」
…どこまで先読みする人なんだろう?
僕が数秒前まで考えていたことは、全部お見通しってわけか。
「なあ、永河。お前、自分のことを自信なさそうに言うのやめろ」
「それは…」
「謙虚なのは悪いことじゃない。でもオレが選んだお前でも、そう言うのか?」
確かに実際来て見て、ここで結婚する人は幸せになれるだろうなと思った。
…そう、他人事ならば良い。
しかし彼が笑顔で神父と会話をしている。英語だけど、時々『結婚』と言う単語が聞こえるたびに、寒気がするのは何故だろう?
初老の優しそうな神父は、にこにこしている。
でも…この教会には僕と紗神、そして神父の三人しかいないようだった。
物凄く、イヤ~な予感がする。今すぐ海に飛び込んで、泳いで逃げ出したいぐらいの悪寒も感じる。
「永河、話ついたよ」
満面の笑顔の彼に声をかけられると、びくっと体が震えた。
「話って…何の?」
「結婚式」
「…一応、聞いておくけどさ」
「うん」
「誰か身近な人が、結婚するの?」
「うん。オレと永河」
やっぱりっ!
「遠慮させていただきますっ!」
海に向かって走り出すも、彼の方が足が速かった。すぐに捕らえられて、ズルズルと教会の中に引きずり込まれた。
神父が笑顔で手を振って、見送ってくれる。どうやら外で待っているらしい…。
「そう照れるなって。日本じゃ恥ずかしいだろうから、せっかく外国にしたのに」
「日本でやったら、悶絶するって!」
「アハハ。だからここにしたんだって」
紗神は楽しそうに言って、大きなステンドグラスの前で立ち止まった。美しい天使を描いたステンドグラスの迫力に、目を見開いてしまった。
「キレイだね」
「うん、キレイだ。ここで誓えば、信じるだろう?」
「…何を誓うって?」
「だから、永河への愛だよ」
ぞわっ! 全身に一気に鳥肌が立った!
「なっ、どっ、どうしたの? あまりの暑さに、頭やられた?」
「…お前、本当に言うようになったよな。そもそもオレが好きでもないヤツを、側に置くと思っていたのか?」
「だって…僕は僕に自信がないし。そもそも紗神に愛を言われたことなんて、今まで一度もなかったじゃん」
「でも好きだとは言っただろう?」
「…言ったっけ?」
「言った。はじめてセックスした時」
「言ってない! 僕に好きかと聞いただけ!」
「アレ? そうだったっけ?」
くぅっ! …あの時せめて好きって言ってくれれば、こんなに思い悩むこともなかったのに。
「でも好きかと聞いて、『両想い』って言っただろう?」
「『好き』にはいろんな意味があるの、知らない?」
嫌味たっぷりに言うも、紗神は肩を竦めただけ。
「何だ。オレはあれから素直になっているし、てっきり両想いだって通じているのかと思ってた」
…わぁ。分かっていたことだけど、この人、信じられないぐらい自意識過剰だぁ。
「それじゃあ改めて言うよ」
彼の手には、いつのまにか金の指輪があった。それを素早く僕の左手の薬指にはめた。
「なっ、ちょっと!」
「愛しているよ、永河」
信じられないぐらい甘い言葉を囁くと、キスしてきた。触れるだけの、軽いキス。だけど…今までで一番優しいキスだった。
「永河は? オレのこと愛しているよな?」
僕は自分の顔が赤くなるのを感じた。
答えなんて、一つしかない。
「…うん。愛してるよ、紗神」
僕はぎゅっと紗神に抱きついた。
「んっ。知ってた」
どこまでも自信家の人。でもこの人がこうでなきゃ、僕はこんなに強く惹かれなかっただろう。
「あっ、僕も指輪買った方が良いよね?」
「いや、オレはもう自分のあるから」
そう言う彼の左手の薬指には、すでに金の指輪があった。
「でも…」
「良いんだって。そもそも指輪を買う為にバイトをはじめて、オレの側にいる時間が短くなったらイヤだしな」
…どこまで先読みする人なんだろう?
僕が数秒前まで考えていたことは、全部お見通しってわけか。
「なあ、永河。お前、自分のことを自信なさそうに言うのやめろ」
「それは…」
「謙虚なのは悪いことじゃない。でもオレが選んだお前でも、そう言うのか?」
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