LOVEファイト!

hosimure

文字の大きさ
14 / 18

黄龍出現

しおりを挟む
片手を上げ、白雨の顔を掴んだ。

「うぐっ!」

呻いた声を出した白雨に驚いて、正義くんは顔を上げた。

「―さっきっから大人しくしてりゃ、調子付きやがって…! このチンピラがぁあ!」

ナイフを掴む手を握り、そのまま背負い投げをした。

「がはっ!?」

「ケンカ売る相手、完全に間違えたわね。アンタ」

「ひっひなさん?」

わたしは正義くんに視線を向けると、彼に近付き、

ぱぁんっ!

…頬を叩いた。

「えっ…」
「仮にも人を率いる者が、簡単に膝をつくなっ! みっともない!」

そう言って無理やり立たせた。

「何でわたしの言うことを聞かないの! 玄武が白虎に服従するなんて、前代未聞だわ! もうちょっと考えて行動しなさいよ!」

「かっ考えたさ! 服従したら、すぐに玄武を下りるつもりだった!」

正義くんは顔を真っ赤にして、叫んだ。

「それが無責任ってもんなの!」

わたしは正義くんの頬を、思いっきりつねった。

「ひっひだいっ! ひははん、ひらいっ!」

「頭の悪いコは、このぐらいしなきゃダメでしょ!」

最後に両頬をバチンっと叩いて、終了。

「翠麻くんや芙蓉さんのこと、言える立場じゃないわね。…2人のことは許してやんなさいよ」

「でっでもっ!」

「でも、じゃない!」

わたしの一喝に、彼は黙った。

「頂点に立つものなら、ケジメはちゃんとしなさい! 分かった?」

「はっはい…」

剣幕に押され、彼は素直に頷いた。

「それで良し!」

わたしは彼の頭を撫でた。

「てってめぇ…」

おや、倒したと思った白雨が、上半身を起こした。

ちょっと投げが甘かったかな?

「何モンだっ、てめぇ…!」

「女の子に向かって、汚い言葉を投げつけるのが、チンピラだってーのよ」

わたしは深く息を吐いた後、真っ直ぐに白雨を見つめた。

「―まさかこんな所で正体を明かすことになるとは思わなかったケド、これも運命なんでしょうね」

次に正義くんを見て、苦笑した。

きっと、彼と出会った時から、動き出していた。

わたしが今まで逃げていたことから。

でも…このことはわたし自身の責任でもあるから。

改めて白雨を見つめ、声高らかに言った。

「竜星会と空龍組―。二つの組織には十八年前、お互いに後継者がいたわ。竜星会は長男が、空龍組は孫娘がその地位を引き継ぐ予定だった。でも―」

ふと遠い眼になる。

「2人は年に一度行われる、全国の組織の会議で知り合い、恋に落ちてしまった。そして生まれたのが…」

息を思いっきり吸って、止めた。

「わたし、月花陽菜子よ」

「えっ…。ひなさんが…」

この場にいる全員が、眼を見開いた。

「許されない恋だったけれど、母がわたしを身ごもったことで、一応結婚は許されたわ。母が父のところに嫁入りする形で、話はまとまったわ」

当時はそれこそ血の雨が降ったみたいだけど…。

「けれど両親がわたしが両家の血を引く者として、将来をとても心配していたわ。だから父は、この学院を作ったの」

「そっそれじゃあ、アンタが…!」

白雨が震える指で、わたしを指さした。

「ええ、黄龍はわたしのことよ」

わたしはアッサリ認めた。

「父は将来、わたしの役に立つ手下を作る為だけに、この学院を設立したの。父は相変わらず龍星会の後継者だし、このぐらいは簡単だったわけ。そして黄龍の存在を根付けさせたのも、わたしの為よ」
将来、わたしは父の後を継ぐ―。

それはつまり、龍星会を継ぐという意味だ。

だがそれだけじゃ、収まらない。

「でもちょっと出るのが遅かったみたいね。黄龍の存在がこんなに根強かったなんて分かんなかったから、気にも止めてなかったのよね。だけど…」

わたしは正義くんと白雨を見て、ため息をついた。

「最近の出来は、あんまり良くないと見た」

「えっ! ひなさん?」

「父は将来、二つの組織を背負わせたいみたいだし、わたしもそのつもりで生きてきたけど…。部下候補のコ達がこんなんじゃな~」

「ちょっ待ってよ! オレ、ひなさんの為なら、何だってできるよ!」

「それがよろしくないと、言っているでしょうが!」

再び頬をぎゅぅっとつねる。

「あうっ」

「まったく…」

パッと手を離し、わたしは周囲の不良達を見回した。

「こんなんじゃ、二つの組織をまとめる者なんてできないじゃない。わたしは融合とまではいかないけれど、二つの組織の間に立つ立場にはいかなきゃいけないんだから、もうちょっとしっかりしてよ」

「うっ…」

「ごっゴメンなさい」

青城先輩と朱李ちゃんはわたしの気迫に驚いてか、すぐに謝ってきた。

「くっくそっ…! 黄龍が女だったなんて!」

白雨がゆっくりと立ち上がる。

正義くんがすぐにわたしと白雨の間に入る。

「ひなさん、下がってて。コレは同じ四獣神としての問題だから」

「でもアイツはそうは思っていないみたいよ?」

白雨は殺意を含ませた視線を、わたしと正義くんに向けてくる。

「ここで終わらせてやる! 四獣神も、黄龍もっ! 全部だっ!」

「あ~あ。逆ギレパターン。厄介なヤツねぇ」

「それでも一応強いから」

「アラ、わたしも強いわよ? 幼い頃からじーさま達に、しごかれてきたんだもの」

「それは分かっているけどさ…」

正義くんはわずかに頬を赤くして、わたしを見た。

「彼女の前ぐらい、カッコ付けさせてよ」

あっ、ヤバイ。

胸きゅーん状態に…。

「こんな時にイチャ付きやがって…!」

…白雨の言うことが、正しいな。

再び倉庫内に、殺気が満ちる。

う~ん。久々だなぁ。

この肌がチクチクするカンジ。

将来二つの組を背負う者として、幼い頃からしごかれてきた。

でも中学に上がる頃には、さすがに減っていた。

だからこういうシーンは、本当に久々!

血が熱くなる!

「じゃあ、決着、付けましょうか?」

わたしの言葉で、空気が固まる。

「古き校則を守るか、それとも新たな校則がはじまるのか―」

「勝つのは俺だ! 俺が全てを統べる!」

「頑張りなさいよ。でも、わたしは強いわよ?」

「くそぉお! ヤレっ!」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~

湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。 「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」 夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。 公爵である夫とから啖呵を切られたが。 翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。 地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。 「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。 一度、言った言葉を撤回するのは難しい。 そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。 徐々に距離を詰めていきましょう。 全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。 第二章から口説きまくり。 第四章で完結です。 第五章に番外編を追加しました。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

処理中です...