8 / 21
第一章
ゴーレムと食料の事情
しおりを挟む
戦闘要員としてゴーレムを作る、そう言った時のエルフ達の反応は。
「ゴーレム、ですか?」
そんな、首を傾げる、といった反応だった。
この様子からすると、少なくとも彼らが、あるいは人族の軍隊がゴーレムを戦力として使っている訳ではなさそうだ。最初はそう思ったのだが。
「その、ゴーレムとかいうのはどういうものなのでしょうか?」
まさかそこからだとは思わなかった。
ゴーレムとは、とそこから説明した上で彼らからも話を聞いてみて驚いた。どうも、こちらの世界ではゴーレムに相当する代物がないらしい。
いや、ゴーレムって単語自体は自分達の世界のものだからないって可能性はあったが、まさかゴーレムに相当する自動で動くもの自体がないと言われるのはさすがに想定外だった。
「あってもおかしくないと思ったのですが」
「いや……考えてみたら当然かもしれん」
自分のぼやきに答えたのはティグレさんだった。
どういう事かと周囲の視線が向く中、ティグレさんが言った。
「まず忘れちゃいけないのが戦闘に使えるレベルの自己判断能力ってのは相当難しいって事だな」
姿勢制御は当り前。
それも、周囲の状況が森か、平地か、あるいは山岳地帯や沼地か。それぞれの場所ごとに対応は異なる。
それを歩いて、必要なら走るのを集団行動でこなし、敵味方を識別する。
確かに難しい。これに二足歩行といった要素が加わるなら更に難しくなる。ましてや、自律行動となればこちらからの指示もなしだ。
「ぱっと思いつくだけでもそんだけ出てくる。ゲームとは違うんだ」
「そうか、なるほど……」
ゲームの中でなら違った。
別に『ワールドネイション』だけの事じゃない。ゲームならそうした事は何も考える必要がなかった。
敵と味方を間違えて攻撃するなんて事はないし、移動だって移動力減少などのペナルティがかかるだけで、隊列が乱れたりする事もない。
けど、現実では訓練された軍人であっても、同士討ちの危険性は常にあるし、起こる。移動にしても一人の乱れが全体に波及しかねない。
「この世界でゴーレムみたいなのがない、って事はおそらくそうした高度な自己判断が可能な奴が作れなかったんだろうな」
「なるほど、もしくは作れたとしてもお値段が高価すぎたとかですかね?」
「それはあるかもな」
もし、そうした難関を全て乗り越えて、優秀なゴーレムが造れたとする。でも、作れたとしても一台作るのに馬鹿高い費用がかかっていたら誰も主力にしようだなんて考えない。戦闘に用いるって事は失われる事が前提だ。人を鍛えて兵士にした方が遥かに安上がりなら、そっちを選ぶのが当然だ。
でも待てよ、そうなると……。
「自分の作るゴーレムってその辺どうなるんでしょう?」
「そうだよなあ……」
ティグレさんも分かる訳がないか。どこか困ったような表情になっている。
虎の顔じゃあるけど、猫さんにも表情豊かな猫さんもいれば割と顔に出ない猫さんがいるようにティグレさんの顔は結構表情豊かな部類だと思う。
「まあ、やってみるしかないんじゃないか?」
「それもそうですね」
という訳で、まずは実際にゴーレムを造って動かしてみる事になった。
こちらの戦力の内、数を補う予定のゴーレムが使えないとなれば、改めて作戦を考え直さないといけない。
この話合いの間、他の五人は黙っていた。
直前に常葉が用意した様々な森の恵みである果物にかぶりついていたり、お茶をすすっていたりと行動は様々だったが四人娘は全員、自分達は黙っていた方がいいと判断していたからだった。これらの果物やお茶も事前に常葉が実験も兼ねて用意したものだったが、これらは軍として行動する際の糧食にも転用可能だろう。
何より。
『米に味噌、醤油まで何とかなったのは凄く嬉しい!』
とは全員共通の意見だった。
麹は微生物じゃないのか、という意見もあるかもしれないが、多分茸の関係でエントの力で何とかなるようになっているのだろう。
茸、というと植物なイメージがあるかもしれないが、あれも分類上は微生物だしなあ。
そしてカノンは。
彼が黙っているのは別の理由があったからだが、それはまた次回にて。
「ゴーレム、ですか?」
そんな、首を傾げる、といった反応だった。
この様子からすると、少なくとも彼らが、あるいは人族の軍隊がゴーレムを戦力として使っている訳ではなさそうだ。最初はそう思ったのだが。
「その、ゴーレムとかいうのはどういうものなのでしょうか?」
まさかそこからだとは思わなかった。
ゴーレムとは、とそこから説明した上で彼らからも話を聞いてみて驚いた。どうも、こちらの世界ではゴーレムに相当する代物がないらしい。
いや、ゴーレムって単語自体は自分達の世界のものだからないって可能性はあったが、まさかゴーレムに相当する自動で動くもの自体がないと言われるのはさすがに想定外だった。
「あってもおかしくないと思ったのですが」
「いや……考えてみたら当然かもしれん」
自分のぼやきに答えたのはティグレさんだった。
どういう事かと周囲の視線が向く中、ティグレさんが言った。
「まず忘れちゃいけないのが戦闘に使えるレベルの自己判断能力ってのは相当難しいって事だな」
姿勢制御は当り前。
それも、周囲の状況が森か、平地か、あるいは山岳地帯や沼地か。それぞれの場所ごとに対応は異なる。
それを歩いて、必要なら走るのを集団行動でこなし、敵味方を識別する。
確かに難しい。これに二足歩行といった要素が加わるなら更に難しくなる。ましてや、自律行動となればこちらからの指示もなしだ。
「ぱっと思いつくだけでもそんだけ出てくる。ゲームとは違うんだ」
「そうか、なるほど……」
ゲームの中でなら違った。
別に『ワールドネイション』だけの事じゃない。ゲームならそうした事は何も考える必要がなかった。
敵と味方を間違えて攻撃するなんて事はないし、移動だって移動力減少などのペナルティがかかるだけで、隊列が乱れたりする事もない。
けど、現実では訓練された軍人であっても、同士討ちの危険性は常にあるし、起こる。移動にしても一人の乱れが全体に波及しかねない。
「この世界でゴーレムみたいなのがない、って事はおそらくそうした高度な自己判断が可能な奴が作れなかったんだろうな」
「なるほど、もしくは作れたとしてもお値段が高価すぎたとかですかね?」
「それはあるかもな」
もし、そうした難関を全て乗り越えて、優秀なゴーレムが造れたとする。でも、作れたとしても一台作るのに馬鹿高い費用がかかっていたら誰も主力にしようだなんて考えない。戦闘に用いるって事は失われる事が前提だ。人を鍛えて兵士にした方が遥かに安上がりなら、そっちを選ぶのが当然だ。
でも待てよ、そうなると……。
「自分の作るゴーレムってその辺どうなるんでしょう?」
「そうだよなあ……」
ティグレさんも分かる訳がないか。どこか困ったような表情になっている。
虎の顔じゃあるけど、猫さんにも表情豊かな猫さんもいれば割と顔に出ない猫さんがいるようにティグレさんの顔は結構表情豊かな部類だと思う。
「まあ、やってみるしかないんじゃないか?」
「それもそうですね」
という訳で、まずは実際にゴーレムを造って動かしてみる事になった。
こちらの戦力の内、数を補う予定のゴーレムが使えないとなれば、改めて作戦を考え直さないといけない。
この話合いの間、他の五人は黙っていた。
直前に常葉が用意した様々な森の恵みである果物にかぶりついていたり、お茶をすすっていたりと行動は様々だったが四人娘は全員、自分達は黙っていた方がいいと判断していたからだった。これらの果物やお茶も事前に常葉が実験も兼ねて用意したものだったが、これらは軍として行動する際の糧食にも転用可能だろう。
何より。
『米に味噌、醤油まで何とかなったのは凄く嬉しい!』
とは全員共通の意見だった。
麹は微生物じゃないのか、という意見もあるかもしれないが、多分茸の関係でエントの力で何とかなるようになっているのだろう。
茸、というと植物なイメージがあるかもしれないが、あれも分類上は微生物だしなあ。
そしてカノンは。
彼が黙っているのは別の理由があったからだが、それはまた次回にて。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
滅せよ! ジリ貧クエスト~悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番(金髪幼女)に!?~
スサノワ
ファンタジー
「ここわぁ、地獄かぁ――!?」
悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、気がつきゃ金糸のような髪の小娘に!?
「えっ、ファンタジーかと思ったぁ? 残っ念っ、ハイ坊主ハラペコSFファンタジーでしたぁ――ウケケケッケッ♪」
やかましぃやぁ。
※小説家になろうさんにも投稿しています。投稿時は初稿そのまま。順次整えます。よろしくお願いします。
転生女神さまは異世界に現代を持ち込みたいようです。 〜ポンコツ女神の現代布教活動〜
れおぽん
ファンタジー
いつも現代人を異世界に連れていく女神さまはついに現代の道具を直接異世界に投じて文明の発展を試みるが…
勘違いから生まれる異世界物語を毎日更新ですので隙間時間にどうぞ
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ
月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。
こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。
そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。
太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。
テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる