異世界召喚先で国家を作るだけのとても大変なお仕事です

雷帝

文字の大きさ
9 / 21
第一章

ゴーレム実験結果

しおりを挟む
 さて、早速ゴーレム作成実験を行った訳だが。

 「きもいよ兄貴」
 「不気味」
 「さすがにこれは……」
 「何とかならないのですか?」

 女性陣からはゴーレムは不評だった。
 もっともエルフ達もどこか顔が引きつってるから内心は同じなのかもしれない。

 「気持ちは分からんでもない」
 「まったくダ」

 そうティグレさんとカノンからも言われた。
 もっとも俺も初めてこれを見た時似たような事を考えたのを思い出して、少し懐かしく思ったものだった。
 『ワールドネイション』の植物型ゴーレムは初めて見た者は大抵「なんでこんな造形にした!」と叫ぶのがお約束と言われるまでに独特な外見をしている。なにせその見た目は筋肉繊維剥き出しのボディビルダーといった体をしているからだ。一応、頭部は種のような形状をした黒くつるりとしたのっぺらぼうで、筋肉繊維のように見えるものは植物の蔦などで構成されているから肉の生々しさはない。
 それでもゴーレム作成すると蔦などが絡み合って肉体を構成し、完成した事を示すようにボディビルの各種ポージングのいずれかを取るのは何を考えてこんな設定にしたのかと思ってしまう。
 
 「ねえ、お兄ちゃん、他の見た目のゴーレムってないの?」
 「あるにはあるんだが」

 ウッドゴーレムとか。
 こちらは丸太を組み合わせたみたいな武骨な姿だ。問題は……。

 「あっちは重機みたいな扱いなんだよな」

 図体はでかく人の倍はあるし、パワーもあるが動きが鈍い。おまけに丸太なだけあって見た目通りに火にも弱い。
 なので戦闘用に使えるかと言われると疑問と言わざるをえない。
 それに対して、最初に見せたボディビルゴーレム。こちらは動きは俊敏で、たっぷりの水分を含んでいるからなのか、それとも構築する植物の質なのか火にも強い。人体を模しているからなのか、様々な格闘技もプログラミングされているようで主にプロレス技を好んで使う。植物魔法を限定的ながら使用し、ロープ状に蔦を張って、相手をロープに振ってからのドロップキックなんてかました時には目を疑った。
 ネタ要素をたっぷり詰め込まれてはいるが、強い事は強いんだ。
 
 「むしろ強くないと使ってもらえないと思ったんじゃないでしょうか?」
 「それには賛成します」
 
 とは陽菜ちゃんと摩莉夜ちゃん改め咲夜とマリアの言葉。
 内心、俺自身も運営のそうした意図を感じてはいる。案外徹夜のランナーズハイ状態でネタ要素満載のこんな見た目にはしたものの、我に返ってこのままじゃ折角作ったのに使ってもらえないんじゃと慌てて強めのデータを入れたって事かもしれないが。
 さて、こうやって作って動かしてみたのは、実際にゴーレムが戦闘に使えるかどうかを確認するためだったが、結果から言えば、使えると判明した。
 どうやら作成時にゴーレムの作成者とある程度のリンクが成立するらしく、敵味方の識別などは作成者、この場合は自分の認識に従って行動するようだ。ただし、そのリンクは作成者の認識の範囲内でのみ成立するようで作成者の認識の外側にいる場合には事前に受けた命令に従っての行動しか出来ない。

 実は後者に関しては自分のゴーレムではなく、マリアが簡易ゴーレムを作成してみて判明した事だった。
 彼女の作成したゴーレムは彼女の視界で動く内は割と高度な判断が可能なのに、森の中に分け入ると急にバカになってしまった。
 エルフであるマリアの魔法で造られたゴーレムも、俺が植物魔法で生成したゴーレムも強さとか見た目はさておき、基本は同じゴーレムだ。では何が違うのか、と調べていくとどうも植物の精霊王エントである自分の認識範囲が怖ろしく広い事が原因らしいと判明した訳だ。
 例えば、見えている範囲でなら声を張り上げたりしなくても、「薪を集めろ」と言われたらマリアが背中を向けていても割とまともな作業をする。たとえば薪に向いているようななるだけ乾燥しているような細めの枝を拾うといった行動を取る。
 ところが、森の中に入らせて、マリアが振り向いても見えないような場所で同じ「薪を集める」作業を開始させるとひたすら木を集めようとする。
 そう、木だ。乾燥しているかいないか、細いかどうかなんておかまいなし。腐った倒木を持ち上げようとしたり、下手すればまだ生えている木を引っこ抜こうとして、抜く事が出来ずにジタバタしていたりする。

 「……常葉さんぐらいしか戦力に出来そうにないですね」
 「いや、これはこれで使い方はあるけど……」

 確かにこれでは他のエルフ達にゴーレム作成の術を教えても細かな制御は無理だろう。
 ただし、敵しかいない状態で「生きてる奴を攻撃しろ」という命令を与えて突っ込ませるとか使い方は色々ある。要は史実にある動物を使った戦いとかと同じに考えればいい訳だ。日本で有名所だと木曽義仲が用いた倶利伽羅峠の火牛の計とかだな。ま、あれも実際に行われたかは怪しいそうだけど。
 それに、傍を歩きながらの力作業、薪になりそうな倒木を運ばせるといった単純作業にはおおいに使えるだろうから、単純な労働力の底上げとして活用していくのも手だな。
 
 「まあ、いいじゃねえか。常葉、お前さんが使うの限定でゴーレムが戦力になるってのはいい話だぞ?二重の意味で」
 「そうですね」

 ティグレさんの言葉に頷く。
 確かにそうだ。自分が作ったゴーレムは単に突っ込ませるだけじゃなく、大規模戦闘で戦力として使える、そしてこの仕様なら敵がゴーレムの部隊を使ってくるという事もないだろう。

 「しっかし、お前らが羨ましいぜ……カノンの奴はまだ戻ってないんだな?」
 「ええ」

 きっとまだ置物みたいに座ったままのはずだ。多少喋る事は出来るみたいだが動く事は出来ないらしい。
 でも、敵の偵察が出来るのはお前か自分しかいないんだよ、すまない。
 実際にティグレさんが言う通り、ゲームでは色々と制限がかけられていた自分達モンスターの力はこちらの世界に来て、自由度が上がった為に実質的な戦闘力と応用力はティグレさん達と比べて、大きく増大したと言っていいだろう。
 カノンが偵察している間に、自分達も仕事をしなければ。とりあえずはゴーレム軍団の作成からだろうか。
 
 「無数の緑色のマッチョマンが裸体で無言で立ち続けてる状態になる訳か……知らない奴が見たらホラーだな」

 ……確かに。
 紅達もそれを聞いて、体を震わせている。まず、作成場所には近づかないな、あれは。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

滅せよ! ジリ貧クエスト~悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番(金髪幼女)に!?~

スサノワ
ファンタジー
「ここわぁ、地獄かぁ――!?」  悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、気がつきゃ金糸のような髪の小娘に!? 「えっ、ファンタジーかと思ったぁ? 残っ念っ、ハイ坊主ハラペコSFファンタジーでしたぁ――ウケケケッケッ♪」  やかましぃやぁ。  ※小説家になろうさんにも投稿しています。投稿時は初稿そのまま。順次整えます。よろしくお願いします。

転生女神さまは異世界に現代を持ち込みたいようです。 〜ポンコツ女神の現代布教活動〜

れおぽん
ファンタジー
いつも現代人を異世界に連れていく女神さまはついに現代の道具を直接異世界に投じて文明の発展を試みるが… 勘違いから生まれる異世界物語を毎日更新ですので隙間時間にどうぞ

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ

月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。 こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。 そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。 太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。 テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...