11 / 21
第一章
役割分担とその仕事
しおりを挟む
「という訳ダ。連中の軍勢はまだ到着していなイ」
「なるほど、って事は今の所、予定通りに進めて大丈夫そうだな」
「そうだナ。もう少し先まで足を伸ばしてみたが、軍勢の姿はなかっタ。聞いた限り軍勢の移動手段の中心は徒歩だそうだし、一月やそこらは大丈夫だろウ」
朗報だ、とカノンの偵察報告にティグレさんが頷いた。
今後もカノンは定期的に偵察に向かう事になった。最速且つ広範囲を探れるカノンがそれを担うのは良い分担だろう。
次は……。
「咲夜ちゃん、頼んでおいた装備はどんなもんだ?」
「順調。作った事がないのに、作った経験と記憶があるって怖いね……」
この面々の中で唯一の生産職が咲夜ちゃんだ。
現在、彼女が作成しているのが魔術付与を行った武器や道具。
もちろん、『ワールドネイション』のベテラン達の作る道具に比べれば、彼女の作成するものは大きく性能が劣る。しかし、この世界では道具に魔法の能力を付与する、という事は名工が長い長い時間をかけてやっと行える技だという。だから、一本の魔法付与の施された武器や道具、通称魔具はいずれもが国宝級。兵士一人一人に与えられるようなものじゃない。
それを簡単なものに限られるとはいえ、まとまった数生産出来るというのは大きい。
「それでも一月では頑張っても百が限界ですよ?」
「分かってる。それでもあるとないとでは大違いなんだ」
武器は弓に限定。
エルフ側の弓の作り手にも協力してもらい、ある程度の部分は彼らに任せる。
弓の素材に関しては自分が提供。これで本来なら弓に向いた木を探し、試しに削ってみて、といった作業は全部省略出来る。それでもそこまでやって、やっと一つの小部隊分の装備が整うのが現実だ。
「多少の追尾能力を持たせた弓に、夜の闇を少しだけ見通す眼鏡。これ意味あるんですか?」
「なに、どうせこっちの数じゃあ相手を全滅させる前に体力の限界がくる。そんなもんでいいのさ」
四人娘にも役割を割り振っている。
何もしない、する事がないというのは良くない。
「けれどステータス画面が見れないのは困りますね。どのぐらい腕が上がったのか分かりません」
「それが現実って奴じゃあるけどな。んで、次は紅ちゃんとユウナちゃん。……どうだ?」
「大丈夫!」
「最初はどんなもんかと思ったけど、何とかなるもんだね」
紅とユウナ、今日は二人が狩りに行く番だった。
自分とカノン、ティグレさんの三人は初日に即行で行って、問題ないと分かってはいたものの矢張り女性の場合は、と懸念していたんだが。
「でも咲夜の言う通り、やった事ないはずの経験と記憶があるってのは変な感じ……」
「うん、狩った獲物をさばくなんてやった事間違いなくないのにね……」
「まあ、問題ないならいいさ。調査がてら頼むぜ」
今後は二人は狩りを行いながら、土地に関して実際に動き回って、各部族の場所なんかを確認する事になっている。
他のメンバーと比べると出来る事が少ないからな……。でも、二人は共に空を飛び、空を駆ける事が出来る。高速で移動して、見つけた部族に、こちらの部族の人達からの協力要請の手紙を届ける、という役割も任されている。
……まあ、期待はしてないけどね。
「マリアちゃんはどうだい?」
「こちらの魔法や、私達のような存在が伝承にないか、ですね?魔法に関してはある程度分かって来たのですけど……伝承に関しては情報が少なすぎますね。エルフさん達は確かに長生きしてますけど、本当に村という狭い世界で生きて来たみたいで……」
マリアちゃんの担当はこちらの世界の魔法が自分達の魔法と比べてどんなものかを調べるのが一番の役割。
大規模な攻撃魔法なんてものが存在していればそれを警戒しないといけないし、広範囲攻撃が可能な魔術師はどのぐらいの腕前なのかも重要だ。と、同時に自分達が召喚されたように、過去にも召喚された奴がいたんじゃないか。あるいは今後、他にも召喚される奴がいるんじゃないか、って懸念もある。
あの召喚魔法陣を知る奴がエルフ達だけと思うのは甘い考えだろう。
「そうか……まあ、そっちは期待してなかったから魔法に重点おいてやってくれ」
「分かりました」
そうして、ティグレさんは一同を見回した。
「とにかく、色々思う事もあるかもしれないが、今は動こう。本当に攻めてくるとしたら国が俺達の個人的な意見なんて聞いちゃくれないだろうからな……」
そう、聞いてもらう為には相手が耳を傾けざるをえないだけの力をこちらが持っていると理解させなければならない。それが出来て初めて、俺達はエルフ達の最初の段階の安全を確保出来た、と言えるだろう。その次はそれを恒常的なものとしないといけない訳だが。
え?自分は何で確認しないのかって?
そりゃ自分はやってる事が多すぎるから最初にまとめて木板(紙ってないんだな……)に書き込んで、皆に配ってあった。
数を揃える為のゴーレム作り。
咲夜ちゃんの道具作りに必要な樹木の生成。
警戒の基点および今後の為の目印となる植物の設定。
米や味噌、醤油なんかの食材や調味料の生成。
などなど……自分だけやる事多すぎない?
世の中、便利な奴って徹底的に使い倒されるんだなあ……と自覚する日々だった。
「なるほど、って事は今の所、予定通りに進めて大丈夫そうだな」
「そうだナ。もう少し先まで足を伸ばしてみたが、軍勢の姿はなかっタ。聞いた限り軍勢の移動手段の中心は徒歩だそうだし、一月やそこらは大丈夫だろウ」
朗報だ、とカノンの偵察報告にティグレさんが頷いた。
今後もカノンは定期的に偵察に向かう事になった。最速且つ広範囲を探れるカノンがそれを担うのは良い分担だろう。
次は……。
「咲夜ちゃん、頼んでおいた装備はどんなもんだ?」
「順調。作った事がないのに、作った経験と記憶があるって怖いね……」
この面々の中で唯一の生産職が咲夜ちゃんだ。
現在、彼女が作成しているのが魔術付与を行った武器や道具。
もちろん、『ワールドネイション』のベテラン達の作る道具に比べれば、彼女の作成するものは大きく性能が劣る。しかし、この世界では道具に魔法の能力を付与する、という事は名工が長い長い時間をかけてやっと行える技だという。だから、一本の魔法付与の施された武器や道具、通称魔具はいずれもが国宝級。兵士一人一人に与えられるようなものじゃない。
それを簡単なものに限られるとはいえ、まとまった数生産出来るというのは大きい。
「それでも一月では頑張っても百が限界ですよ?」
「分かってる。それでもあるとないとでは大違いなんだ」
武器は弓に限定。
エルフ側の弓の作り手にも協力してもらい、ある程度の部分は彼らに任せる。
弓の素材に関しては自分が提供。これで本来なら弓に向いた木を探し、試しに削ってみて、といった作業は全部省略出来る。それでもそこまでやって、やっと一つの小部隊分の装備が整うのが現実だ。
「多少の追尾能力を持たせた弓に、夜の闇を少しだけ見通す眼鏡。これ意味あるんですか?」
「なに、どうせこっちの数じゃあ相手を全滅させる前に体力の限界がくる。そんなもんでいいのさ」
四人娘にも役割を割り振っている。
何もしない、する事がないというのは良くない。
「けれどステータス画面が見れないのは困りますね。どのぐらい腕が上がったのか分かりません」
「それが現実って奴じゃあるけどな。んで、次は紅ちゃんとユウナちゃん。……どうだ?」
「大丈夫!」
「最初はどんなもんかと思ったけど、何とかなるもんだね」
紅とユウナ、今日は二人が狩りに行く番だった。
自分とカノン、ティグレさんの三人は初日に即行で行って、問題ないと分かってはいたものの矢張り女性の場合は、と懸念していたんだが。
「でも咲夜の言う通り、やった事ないはずの経験と記憶があるってのは変な感じ……」
「うん、狩った獲物をさばくなんてやった事間違いなくないのにね……」
「まあ、問題ないならいいさ。調査がてら頼むぜ」
今後は二人は狩りを行いながら、土地に関して実際に動き回って、各部族の場所なんかを確認する事になっている。
他のメンバーと比べると出来る事が少ないからな……。でも、二人は共に空を飛び、空を駆ける事が出来る。高速で移動して、見つけた部族に、こちらの部族の人達からの協力要請の手紙を届ける、という役割も任されている。
……まあ、期待はしてないけどね。
「マリアちゃんはどうだい?」
「こちらの魔法や、私達のような存在が伝承にないか、ですね?魔法に関してはある程度分かって来たのですけど……伝承に関しては情報が少なすぎますね。エルフさん達は確かに長生きしてますけど、本当に村という狭い世界で生きて来たみたいで……」
マリアちゃんの担当はこちらの世界の魔法が自分達の魔法と比べてどんなものかを調べるのが一番の役割。
大規模な攻撃魔法なんてものが存在していればそれを警戒しないといけないし、広範囲攻撃が可能な魔術師はどのぐらいの腕前なのかも重要だ。と、同時に自分達が召喚されたように、過去にも召喚された奴がいたんじゃないか。あるいは今後、他にも召喚される奴がいるんじゃないか、って懸念もある。
あの召喚魔法陣を知る奴がエルフ達だけと思うのは甘い考えだろう。
「そうか……まあ、そっちは期待してなかったから魔法に重点おいてやってくれ」
「分かりました」
そうして、ティグレさんは一同を見回した。
「とにかく、色々思う事もあるかもしれないが、今は動こう。本当に攻めてくるとしたら国が俺達の個人的な意見なんて聞いちゃくれないだろうからな……」
そう、聞いてもらう為には相手が耳を傾けざるをえないだけの力をこちらが持っていると理解させなければならない。それが出来て初めて、俺達はエルフ達の最初の段階の安全を確保出来た、と言えるだろう。その次はそれを恒常的なものとしないといけない訳だが。
え?自分は何で確認しないのかって?
そりゃ自分はやってる事が多すぎるから最初にまとめて木板(紙ってないんだな……)に書き込んで、皆に配ってあった。
数を揃える為のゴーレム作り。
咲夜ちゃんの道具作りに必要な樹木の生成。
警戒の基点および今後の為の目印となる植物の設定。
米や味噌、醤油なんかの食材や調味料の生成。
などなど……自分だけやる事多すぎない?
世の中、便利な奴って徹底的に使い倒されるんだなあ……と自覚する日々だった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
滅せよ! ジリ貧クエスト~悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番(金髪幼女)に!?~
スサノワ
ファンタジー
「ここわぁ、地獄かぁ――!?」
悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、気がつきゃ金糸のような髪の小娘に!?
「えっ、ファンタジーかと思ったぁ? 残っ念っ、ハイ坊主ハラペコSFファンタジーでしたぁ――ウケケケッケッ♪」
やかましぃやぁ。
※小説家になろうさんにも投稿しています。投稿時は初稿そのまま。順次整えます。よろしくお願いします。
転生女神さまは異世界に現代を持ち込みたいようです。 〜ポンコツ女神の現代布教活動〜
れおぽん
ファンタジー
いつも現代人を異世界に連れていく女神さまはついに現代の道具を直接異世界に投じて文明の発展を試みるが…
勘違いから生まれる異世界物語を毎日更新ですので隙間時間にどうぞ
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ
月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。
こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。
そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。
太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。
テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる