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第一章
詐欺師のやり口
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「何故僕達が戦わないといけない!」
「逃げ道などどこにあるというんだ!!」
双方喧嘩腰、殴り合い寸前の態で怒鳴り合っている。
後者はエルフの部族の長、村長さん。前者はその息子。何が起きているかと言えば、これまでの体験から徹底抗戦を選んだ長達に不満を持った若い連中が暴発した、ってとこか。だから、部族の面々も二つに別れている……若い側の方が圧倒的に少ないけどね。
「他の部族を頼ればいいじゃないか!大きな部族ならうちぐらい……」
「無駄だ!馬鹿者が!!」
「何で無駄だって言えるんだよ!!」
「私達の前に森を追われた部族で、それを考えなかった者達がいなかったとでも思うのか!!」
だよねえ……。
大森林は全体から見ればまだまだ一部とはいえ、それなりの時間をかけて大きな領域を人族に奪われた。当然、そこで暮らしていたエルフの人達もいたはず……。その中には戦う道を選んだエルフもいれば、逃げ出す道を選んだエルフもいただろうし、逃げ出したエルフ達の中には他の部族を頼ろうとした者だっていたはずだ。
「役に立つ技能を持つ者!裕福な者なら受け入れられる者もいた!!だがな、大半の普通のエルフ達はどこの部族も受け入れなかったのだ!!」
「そんな……何でだよ!」
余裕のある世界ならそれも出来るだろうね。
けど、百人が暮らしている村に突然同じ百人が「自分達もここで暮らさせてくれ」と言って来たらどうだろう?普通は断られると思う。
当然だけど、村の畑はすでに所有者が決まっているし、水の流れも今住んでいる者達の為に整えられている。家だって空き家なんてあるかどうか。彼らが生きる為に一部分けて欲しいと願い、それを叶えるとなると当然それまでの生活に負担が行く。
同数ではなく、千人の暮らす所だって同じだ。どうあったって貧しくなる。
もし、百人を受け入れても笑っていられるような豊かな地なら受け入れてくれるかもしれない。でも、そこだって百人が千人万人になれば笑ってはいられなくなる時が何時かは来る。そして、この森で、森と共に暮らすエルフ達は農耕民族ではない以上、余裕は限られる。長が言っていたように、部族が欲しがるような技能を持っていればともかく、そうでない者達が断られるのは当然だろう。
それをエルフの長は息子に言い聞かせるように言っていた。
「分かったか。結局、森を失った者達の大半は人族に屈して、彼らの街の片隅で細々と生きる道しかなかったのだ。お前達はそれでもいいというのか?それが嫌なら戦うしかないのだ」
これは息子の意見に賛同していた若者達に向かっての言葉だ。
長の言葉を聞いて、彼らも迷いが出たのか顔を見合わせている。それを見て、焦ったのか息子の方が更に言い募ろうとした。
「それでもまだ他にも道が…!」
「ねえよ」
ティグレさんか。
「お前……!」
「そんな時間なんかねえさ。人族の軍隊って奴は何時来る?来るまでに確実に他の道って奴は思いつくのか?出来なけりゃ、部族の全員が人族の街で惨めに暮らすか、それとも……いずれにせよ皆一緒になんて出来ずにバラバラに散っていく事になるんだろうな。なあ……」
「お前にその責任背負えるのか?」
絶句しているな。
他の若者達もティグレさんに睨まれると視線を逸らした。
「……お前達が」
「うん?」
「お前達が!俺達に協力すればもっといろんな道が見つかるだろう!?」
そう叫んだ相手にティグレさんはふん、と鼻を鳴らした。
「で、その代価は?」
「代価?」
「お前に協力するって事は俺達に、いきなり故郷からこっちの世界に呼ばれた俺達に故郷を捨てろ、って言うのと同じだ。何せ、俺達が故郷に戻るための陣のある場所は放棄せざるをえないんだからなあ?」
そうだね。
「だから、それに対してお前らは何を提供出来る?俺達に故郷を捨てさせる事に相応しい代価は何だ」
「………ぼ、僕に提供出来るのは自分だけだ!」
「ほおう?お前の体一つで、俺達全員に故郷を諦めさせるだけの価値があると?……うぬぼれるなよ、手前」
「ッ!……なっなら!僕と戦え!!」
「は?」
「僕が!お前達に勝てば!それだけの勝ちのある相手だと証明出来るだろう!そうしたら……!」
……なんだか変な方向に話が進んでいるような?
いや、それって勝ったら勝者の言う事を聞けとかそういうのじゃないの?
というか、そっちが勝ったら我々にそちらの身柄を提供する訳?それって何かおかしくない?
「いいだろ、お前が勝ったら代価として俺達にお前の身柄と権利を提供する。俺達が勝ったら、お前は俺達に従う。それでいいな?」
「ああ、いいだろう」
……てぃ、ティグレさん、それってまさか……。
「ふっ、友人一人にその身を賭けさせる訳にはいかないね……ボクも協力しようじゃないか」
「ぼ、ぼくも手を貸します!!」
「ふん、いいだろう。なら三対三だ。時刻は明日正午から、でどうだ?」
……ティグレさん、相手気づいてないけど詐欺じゃない?それって。
後から「勝てば何も問題はない」と言われたけど……はあ、詐欺の片棒担ぎたくなかったら勝てって事か。
何故か了承する前に自分も参加する事になってるのに気づいたのはティグレさんが寝た後の事だった事を追記しておく。
「逃げ道などどこにあるというんだ!!」
双方喧嘩腰、殴り合い寸前の態で怒鳴り合っている。
後者はエルフの部族の長、村長さん。前者はその息子。何が起きているかと言えば、これまでの体験から徹底抗戦を選んだ長達に不満を持った若い連中が暴発した、ってとこか。だから、部族の面々も二つに別れている……若い側の方が圧倒的に少ないけどね。
「他の部族を頼ればいいじゃないか!大きな部族ならうちぐらい……」
「無駄だ!馬鹿者が!!」
「何で無駄だって言えるんだよ!!」
「私達の前に森を追われた部族で、それを考えなかった者達がいなかったとでも思うのか!!」
だよねえ……。
大森林は全体から見ればまだまだ一部とはいえ、それなりの時間をかけて大きな領域を人族に奪われた。当然、そこで暮らしていたエルフの人達もいたはず……。その中には戦う道を選んだエルフもいれば、逃げ出す道を選んだエルフもいただろうし、逃げ出したエルフ達の中には他の部族を頼ろうとした者だっていたはずだ。
「役に立つ技能を持つ者!裕福な者なら受け入れられる者もいた!!だがな、大半の普通のエルフ達はどこの部族も受け入れなかったのだ!!」
「そんな……何でだよ!」
余裕のある世界ならそれも出来るだろうね。
けど、百人が暮らしている村に突然同じ百人が「自分達もここで暮らさせてくれ」と言って来たらどうだろう?普通は断られると思う。
当然だけど、村の畑はすでに所有者が決まっているし、水の流れも今住んでいる者達の為に整えられている。家だって空き家なんてあるかどうか。彼らが生きる為に一部分けて欲しいと願い、それを叶えるとなると当然それまでの生活に負担が行く。
同数ではなく、千人の暮らす所だって同じだ。どうあったって貧しくなる。
もし、百人を受け入れても笑っていられるような豊かな地なら受け入れてくれるかもしれない。でも、そこだって百人が千人万人になれば笑ってはいられなくなる時が何時かは来る。そして、この森で、森と共に暮らすエルフ達は農耕民族ではない以上、余裕は限られる。長が言っていたように、部族が欲しがるような技能を持っていればともかく、そうでない者達が断られるのは当然だろう。
それをエルフの長は息子に言い聞かせるように言っていた。
「分かったか。結局、森を失った者達の大半は人族に屈して、彼らの街の片隅で細々と生きる道しかなかったのだ。お前達はそれでもいいというのか?それが嫌なら戦うしかないのだ」
これは息子の意見に賛同していた若者達に向かっての言葉だ。
長の言葉を聞いて、彼らも迷いが出たのか顔を見合わせている。それを見て、焦ったのか息子の方が更に言い募ろうとした。
「それでもまだ他にも道が…!」
「ねえよ」
ティグレさんか。
「お前……!」
「そんな時間なんかねえさ。人族の軍隊って奴は何時来る?来るまでに確実に他の道って奴は思いつくのか?出来なけりゃ、部族の全員が人族の街で惨めに暮らすか、それとも……いずれにせよ皆一緒になんて出来ずにバラバラに散っていく事になるんだろうな。なあ……」
「お前にその責任背負えるのか?」
絶句しているな。
他の若者達もティグレさんに睨まれると視線を逸らした。
「……お前達が」
「うん?」
「お前達が!俺達に協力すればもっといろんな道が見つかるだろう!?」
そう叫んだ相手にティグレさんはふん、と鼻を鳴らした。
「で、その代価は?」
「代価?」
「お前に協力するって事は俺達に、いきなり故郷からこっちの世界に呼ばれた俺達に故郷を捨てろ、って言うのと同じだ。何せ、俺達が故郷に戻るための陣のある場所は放棄せざるをえないんだからなあ?」
そうだね。
「だから、それに対してお前らは何を提供出来る?俺達に故郷を捨てさせる事に相応しい代価は何だ」
「………ぼ、僕に提供出来るのは自分だけだ!」
「ほおう?お前の体一つで、俺達全員に故郷を諦めさせるだけの価値があると?……うぬぼれるなよ、手前」
「ッ!……なっなら!僕と戦え!!」
「は?」
「僕が!お前達に勝てば!それだけの勝ちのある相手だと証明出来るだろう!そうしたら……!」
……なんだか変な方向に話が進んでいるような?
いや、それって勝ったら勝者の言う事を聞けとかそういうのじゃないの?
というか、そっちが勝ったら我々にそちらの身柄を提供する訳?それって何かおかしくない?
「いいだろ、お前が勝ったら代価として俺達にお前の身柄と権利を提供する。俺達が勝ったら、お前は俺達に従う。それでいいな?」
「ああ、いいだろう」
……てぃ、ティグレさん、それってまさか……。
「ふっ、友人一人にその身を賭けさせる訳にはいかないね……ボクも協力しようじゃないか」
「ぼ、ぼくも手を貸します!!」
「ふん、いいだろう。なら三対三だ。時刻は明日正午から、でどうだ?」
……ティグレさん、相手気づいてないけど詐欺じゃない?それって。
後から「勝てば何も問題はない」と言われたけど……はあ、詐欺の片棒担ぎたくなかったら勝てって事か。
何故か了承する前に自分も参加する事になってるのに気づいたのはティグレさんが寝た後の事だった事を追記しておく。
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