異世界召喚先で国家を作るだけのとても大変なお仕事です

雷帝

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第一章

チート三本勝負、一本目【常葉】

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 「何故こんな話を受けタ?」
 「そらまあ、今後戦いになる以上、部下は必要なんでなあ。ちょうど良かったのさ。後はまあ、自分の身柄を交換条件にしてまで何とかしたいと思う気概を買ったってとこだな」
 「……それなのに、勝っても負けても最終的な結果は同じなんですね」

 などという会話を経て。

 「さて、あなたのお相手はボクがするよ」

 どうやら自分のお相手はこの、どこかナルシストっぽいエルフらしい。
 まあ、長の息子のお相手はティグレさんに譲るとして、そうなると自分とカノンの対戦相手は二人、敢えてぱっと見の印象だけで言うならナルシストエルフと、ショタエルフだ。で、公平にくじ引きを行った結果、こうなった訳だ。

 「ふっ、さて、では始めようか。決闘や勝負というなら本来は名乗る所なのだろうけど今回周囲にいるのは皆、知ってる者ばかりだしね!」
 「そりゃそうだ」

 確かに周囲に知らない相手や、こちらが鎧兜でぱっと見て誰か分からないなら名乗る必要もあるだろうけど、今回は村の中での勝負。いちいち名乗る必要もないな。

 「ボクはこの武器を使わせてもらうよ!君は何かな?」

 チャッと取り出したのは細剣。
 ……いや、レイピアというにはゴツイな。エストックの方が正しいか?

 「案外実用重視なんだな」
 「そりゃあね。ボクだって恰好つけて死にたくはないさ」

 成る程。
 確かにこんな森の中で、こんな武器を使う相手となれば同じエルフを除けば獣達だろう。彼らに美麗な剣を見せても意味はない。 

 「こう見えても若手の中ではそれなりの使い手なんだよ。さて!改めて聞くがそちらの武器はなんだい?」
 「これだな」

 ぐっと拳を握って見せる。
 思わず、といった様子で相手は沈黙した。
 
 「……ふざけてるのかな?」
 「いやいや、自分のもう一つの姿では武器を持つというのは少々難しくてね。必然的に拳を強化して打撃武器として扱えるようにするしかないのさ」
 「……そう言うなら信じるよ。ただ、怪我をしても文句は言わないで欲しいね」

 言ってもそう信じてはもらえないか。まあ、当然じゃあるな。
 とはいえ、本当の話なので……「はじめ!」の合図と共に突き込んできた剣を真っ向から(手加減しつつ)迎撃してみせる。
 
 「ッ!?こいつの突きを拳が止める!?……失礼、どうやらその拳は正真正銘の武器のようだね」
 「分かってくれて嬉しい、よ!」

 エストックと素手。
 当然、軽さは素手の方が上だ。なにせ、何も持ってないんだしな。
 そして、自由度もまた上。ギリギリと押し合う中、さっと手を開いて勢いで前へ進んだ刀身を掴む。しかし。

 「危ない危ない」
 「武器を捨てるとは思い切りがいいな」
 「だって、離さなかったら次の瞬間、ボクの胴体にその拳が突き刺さっていたじゃないか!」

 いやまあ、その通りなんだが。
 
 「殺さないよう手加減するのは難しくてね」
 「怖い事言わないでおくれよ!?」

 いや、本音。
 思い切り手加減しないと胴体そのままぶち抜いてしまいそうでねえ……手加減スキルとか取っておけば良かった。しょうがない、幸い相手は武器を手放してくれた。もう一つの手段で何とかしよう。あっちなら殺さずやる手なら幾らでもあるし。

 「やられる前にやらせてもらうよ!【精霊達よ、我に力を!拘束せし鎖となりて絡みつけ!!】」
 「うん?」

 周囲の蔦が起き上がって飛んできた。
 ……相手の方に。

 「え!?ちょ!ボクの方じゃないよ!!あっちだってば!!」

 おお、グルグル巻きになっている。そりゃあ自分が使った魔法で自分の方が拘束されるとは思わんよな……周囲の連中も呆気に取られている。
 ……しょうがない、ここはあいつの面子の為にも少し説明してやるか。

 「先程使った魔法は精霊魔法という奴か?」
 「え、ああ」
 「なら無駄だな。自分はこの姿では分からんだろうが、精霊王の一体でもある。精霊達がこの身を害する事はないよ」

 ……おまけに植物の精霊王に、植物の精霊使った魔法を使おうとした訳だからなあ。そりゃあ、こうなるだろうよ。
 唖然としていた相手はしばらくして我に返ると、溜息をついて「降参」と告げた。
 当人曰く「本当に精霊王かどうかはボク如きには分からないね。けど、一つだけはっきりしてるのはこんな全身拘束されて吊り下げられてる状態で勝てる訳ないって事さ!」。まあ、確かにその状態で勝てると思ってる奴がいたら相当な自信家かバカのどちらかだな。
 
 「あ、えーと……しょ、勝者常葉!」
 
 なんか勝った気しないね、ほんと。
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