異世界召喚先で国家を作るだけのとても大変なお仕事です

雷帝

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第一章

チート三本勝負、三本目【ティグレ】

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次週からは火曜・水曜は別作品アップの為、こちらの更新お休みします

※※※※※※※※※※

 「あーなんだ。その、すまん」
 「いや、大丈夫だ」

 ティグレと長の息子。
 二人の冒頭はそんな謝罪から始まった。言うまでもなく、カノンのやりすぎが原因だ。

 「何というか、挑んだ時点で僕達の敗北は決まっていたんだな、と思いますよ」
 「………」

 長の息子の自嘲めいた台詞にティグレは返事をしない。
 自分が否定した所で意味はない。そう理解しているからだ。
 賛意を示せば、惨いだけ。否定した所で実感などあるまい。何せ、先の二人はカノン戦こそ勝利を得たものの、誰がどう見ても勝ちを譲られただけで、実際は負けたとしか見えなかっただろう。そして、それは他ならぬ当人達が一番理解している。

 「ま、俺はあいつらよりは大分マシだと思うぜ?」
 「だといいんですけどね。さて、ではやりましょうか。勝つ可能性、現状ゼロではありませんからね」
 「そうだな」

 一応、一勝一敗なのは間違いない。
 構えた武具はティグレが大剣、長の息子は長剣。
 もちろん、ティグレは殺すつもりがないので鞘に納めたままで抜けないよう縛ってあるのだが、それでもあんなもので殴られたら骨折ぐらいは覚悟しないといけないだろう。

 「さて、それでもやるかい?」
 「当然です。二人が戦って、自分が逃げたんじゃさすがに恥ずかしいですよ」

 頷くと両者が武器を構えた。
 次の瞬間。

 【蔦の束縛ブラインド・フォールド

 大地からいきなり噴き出した蔦がティグレを束縛せんと襲い掛かり。

 【破軍咆哮】「ゴルァアアアアアアアッ!!!!!!」

 ティグレから放たれた衝撃波すら伴う咆哮によって弾き飛ばされ、千切れ飛んだ。
 そして、それは開始と同時に用いられた魔法と共に突っ込んでくる途中だった長の息子の足を止めるには十分で。即座にティグレが動き、鞘に入ったままの大剣を横薙ぎに振り回した!
 当たれば、その瞬間に決着がついていただろうが、態勢を崩しつつも地面に転がるようにして回避する。

 「はっ!開始早々に不意打ちの魔法たあやるじゃねえか!気に入った!」
 
 戦場で互いに睨み合っているのと同じ現状、正々堂々などという事はありえない。
 
 「そうだよなあ!勝てばいいのさ、勝てばなあ!!」
 「ぐうッ!【種子の裁きシードショット】」
 「おお!?魔法が得意なんだなあ!!」

 硬い種子が散弾のように飛来するが、ティグレはそれを防ぐ気配すらない。

 「……それは酷い」

 防具自体の機能なのか、淡い壁が種を防ぎきる。実際の所、この防御は同レベル帯には効かない。あくまでティグレの物理的な防御を魔法に対しても有効にするというスキルだからだ。なので、ティグレの防御を普通に抜いてくるような同レべルの術者相手には意味がなく、抜けないような相手はそもそも多少魔法が効いたぐらいではティグレに勝てない。
 要は格下専用の防具用スキル。なので、割と特に意識しなくても凄腕の防具職人の作ならば普通についている。
 が、現実になるとこうも酷い。

 「おうらあ!!」
 「ぐうッ!」

 そうして、種の散弾で態勢を立て直す為の時間稼ぎをするつもりだったのが、それを無視して突っ込まれてしまえば態勢が崩れたまま受けざるをえなくなる。
 
 「うっ…!」
 
 そして、無理な態勢で大剣を受けた事のツケは剣を弾き飛ばされ、地面に崩れ落ちるという形で現れ。

 「……これで終いだな」
 「みたいです、ね……」

 次の瞬間、顔の横にピタリと止められた大剣によって決着となった。
 
 
 
   
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