ピエロの仮面は剥がれない

寝倉響

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Treasure every meeting, for it will never recur

バレンタイン・カタストロフィー ③

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 キーンコーンカーンコーンー

 授業の始業のチャイムがなった。
 私達3人は話に夢中になって授業の準備をまったくしてなかったため、急いで準備をした。一時限目の授業は担任の現代文の授業だったので、彩はそれなら大丈夫と髪の毛を直していた。しかし案の定、担任の先生は彩を叱った。まあこれも月曜日の朝のいつもの光景だった。
 その日の休み時間や放課後も何度かバレンタインの話題があがり、好きな男子について話す機会があったのだが、うまくはぐらかされ彩と美希の好きな人は分からなかった。

 それから二人の好きな人が誰だか分からないまま火曜日、水曜日と過ぎていった。



 そして木曜日。2月13日。
いよいよバレンタイン前日の朝を迎えた。

 今日もいつもと変わらずに彩の遅刻から始まった。
 バレンタインの前日ともなると男子達は少しそわそわしているように見えた。
 お調子者の男子の中には「俺にチョコをくださーい」などと叫んでいる者もいた。一方の沖山君はというといつも通り静かに小説を読んでいた。

 私はずっとバレンタインのことで上の空のまま、全ての授業が終わった。担任の先生が教室にやってきて帰りのホームルームが始まる。
 若い担任の先生も例外ではなく、明日のバレンタインに向けてアピールを行った。

「先生はチョコなんて欲しくないからなー全然欲しくないからなー」

 そう言いながら担任の釜田先生はクラス中を見渡した。釜田先生の顔は物欲しそうな顔をしていると私にもわかった。その先生の顔を見たクラスのあちこちからくすくすと笑う音が聞こえる。そんな物欲しそうな顔をしなくても釜田先生は人気だから貰えると思ったがそれは心の内に隠しておく。

 そのまま帰りのホームルームが終わった。放送部の当番は休みのため、帰りの準備をして学校を出た。いつもは学校近くのバス停からバス通いだが、今日は徒歩で帰ることにした。

 そして学校を出ると家と学校の中間地点にあるスーパーに買い物にいった。
 明日、バレンタインデーの手作りのチョコを作るためだ。私はガトーショコラを作ろうと決めていた。彩や美希の分も一緒に作るため、家にある材料だけじゃ足りないと考えてスーパーに行くことにした。卵と牛乳、バター、グラニュー糖、チョコレート、トッピング用の砂糖にハート型の型を買った。スーパーではバレンタイン特集をしていたため時間をかけずに全て揃えることが出来た。帰り道、明日のことが楽しみ過ぎてスキップをしそうになるほどだった。

 そしてそのまま家に帰りチョコを作った。そして出来たチョコを箱に入れて、リボンでラッピングをして沖山君への手紙を書いた。
私はそのチョコを沖山君に放課後渡そうと決心して眠りについた。しかし中々寝付けなかった。それは美希や彩も同じで、そんな美希や彩と一緒にトークアプリで明日のバレンタインのことについて話した。夜も遅くなるにつれて、彩、美希と寝落ちし、私も気付いた時には眠りについていた。
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