ピエロの仮面は剥がれない

寝倉響

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Treasure every meeting, for it will never recur

バレンタイン・カタストロフィー ④

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 そしてバレンタイン当日 2月14日 金曜日。

 今日もいつものような朝が始まる……。
と思っていたのだが、私が教室に入ると、いつも遅れてくる彩がすでに自分の机に座っていた。どうかしたのかと時計を確認するがまだ朝のホームルームが始まる15分も前だった。私は既に来ていた美希と彩に挨拶すると自分の席へと座った。

 教室内はほとんどのクラスメイトが揃っており、他の女子達がチョコを女子同士で交換したり、男子に配って歩いたりしていた。
チョコを貰った男子はもらったチョコを美味しそうに食べていた。
沖山君もチョコを何個かもう貰っていた。しかしこんな大っぴらに配られるチョコレートは全て義理チョコや友チョコなので私は特に驚きもしなかった。

 教室があわただしくしているうちにチャイムが鳴り、担任の釜田先生が入ってきて朝のホームルームが始まる。
先生は彩の姿がすでにあるのに驚いていた。その彩は少し得意気な顔をしていた。
さらに今日の彩の髪は、いつものボサボサヘアーではなく、きちんと整えてあった。

 そして連絡事項を済ませた釜田先生が教室を出ていきホームルームが終わった。

「彩、それにしても今日はどうしたのよ」
 美希はいつもと違う彩に疑問を抱いたのか質問を投げかける。

 彩は、早く目が覚めちゃって とそれだけを言って、バレンタインの話を私に振る。

「舞依は沖山君にチョコいつ渡すの?」

「放課後、渡そうと思って…」
 耳が熱くなるのを感じながら私はそう言った。

「ねね!!どんなチョコか見せてよー!!」
 彩は興味津々そうにさらにそう言った。

 三人は私の机を囲むようにして身を寄せた。
 私は自分のリュックサックの中から昨日作った手作りチョコを机に出した。

「かわいくラッピングされてるじゃ~ん」
 美希はそう言うと物欲しそうな目でその箱を見ている。

 私はチョコをハートの箱に入れ、さらにピンク色のリボンでラッピングをしてあった。私は美希のそんな顔に応えるために昨日作っておいた二人分のガトーショコラを美希と彩に渡した。2人はすぐにそれを口に入れた。2人ともとても美味しそうに食べてくれた。
美希と彩も2人とも鞄から友チョコを取り出すと私の机の上でチョコの交換会が始まる。美希の作ってきたのはフォンダンショコラで、彩のは一口サイズのチョコレートケーキだった。2人から貰ったチョコを私は食べた。どちらももの凄く美味しくて、頬が落ちそうになるほど緩んだ。

「ところで美希はどうしたの本命チョコ?」
 交換会が終わると、私は気になっていたことを質問した。

「私も放課後渡すから大丈夫」
 そう言うと手を前に出しOKの合図をした。

「で、彩は本命チョコは作ってきてないの?」
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