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プラヴェール領
ただの休暇
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ようやく、休暇が取れる。
シアは河を下る船の中でそう思う。
目的地はトルカ領、ゴスラルだ。
空中庭園というリゾート施設に行き、プールやカジノで遊んで気晴らしをするのである。
シガル村からだと二、三日の旅程だ。少し遠いが、サザンドキア帝国の都市だと、ゴスラルくらいしか楽しめそうな場所がなかった。
観光やレジャーなら他の場所でもいいが。
(しかしまぁ、金にならない事の連続だな)
と、自分でも思う。
どれだけツキに見放されているというのか。
(なにより、ストレスが溜まった)
金じゃなく、ストレスばかり溜まる。
嫌になる。
これでは、いけない。
シアの家の習わしの一つに、このような格言がある。
『腹が立ったらギャンブルしろ』
ストレスが溜まったら、どう発散するか。
運動や食事、酒や買い物もいい。
しかし、ギャンブルが一番である、らしい。
あくまで、シアの家での話だが。
ギャンブルをすると、勝っても負けてもスカっとする、らしい。そしたらムカつく出来事も忘れられるというのである
(いや、ギャンブルで負けたら余計ストレスが溜まるだろ)
と、思わなくもない。
が、今はなんでもいいから適当に苛立ちや鬱憤を解消したかった。
そんなわけで、シアは金を使うつもりでいた。
とは言え、シアはギャンブルをした事がない。カードゲームやサイコロ遊びならやったことがあるが、金を賭けて博打を打つなど、今までは興味がなかった。所詮、暇つぶしだろ。くらいにしか思っていなかった。そもそも、そんなにしょっちゅう休暇など取れなかったので、遊びに行くのも久しぶりだ。
(ま、ジャイアントラットレースには前から興味があったんだけどな)
ゴスラルの名物レースである。
賭け方は競馬と似ている。
ジャイアント・ラットを競わせて走らせる。客はラットに賭ける。当てれば配当が支払われる。賭け方は色々あり、単勝、複勝、連単とあったはずだ。
シアも話に聞いた事があるだけだが。
そんなに難しいギャンブルではない。
後は、ベリドとビリヤードやダーツなどを競っても面白いかもしれない。ベリドがどのくらい上手いのか気になるところだ。腕利きのローグなので、ダーツなど百発百中でなくてはおかしいが。
とにかく、適当に遊んで楽しめればシアとしてはオッケーだ。まさか、少しギャンブルをしただけで破産するわけでもあるまいし。
ゴスラルには上手く船を乗り継ぐ事ができ、二日で着いた。船旅の間は暇だった。
ようやく、遊べる。
ゴスラルの空中庭園は段丘のあるピラミッド型の建物であり、シアはベリドと二人で貴族の泊まるスイートルームを取った。
部屋は王室をイメージした作りになっているようだ。高級感のある家具が置かれ、ベッドは広く、見事な天蓋が付いている。テラス、というより庭があり、そこは建物の段丘に位置する。珍しい植物が庭に植えられており、その奥に進むと個人用のプールがある。パラソルや寝転がれる椅子、浮き輪もあるが、素材は多分、魔物の部位を加工しているのだろう。つるつるしていて肌触りが良く、水を弾き、弾力がある。こうした遊び道具は高価な品である。
シアは水着に着替え、早速プールに入る。
浮き輪を水に浮かべて、その上に腰掛けるように乗った。
「ハー」
なんだか、落ち着いた。
ベリドはキャビネットから葡萄酒を出して、ソファに座り一人で飲んでいる。とりあえず、自分はまだいいや。と、シアはプールでのんびりしていた。
(これからどうするか考えないとな)
と、シアは空を眺めながら思う。
今は夕方だ。施設には魔法の明かりが灯っている。
(親父が死んだ、か……死体すらないからな。生き返らせる事はできないけど……でも、エルザの使った杖だったら高位階の魔法で蘇らせる事ができたのか?)
クレリックの魔法にはあまり詳しくないシアだが、第九位階魔法なら可能なんじゃないかと思う。
(だったら、親父を生き返らせる手段もあるって事か)
不可能ではない。それを、ひとまず、頭に入れておく。あのアーティファクトはもう無いのだ。あまり期待しても仕方ないが。
(親父の遺品はお母さんの所に送られているはずだ。お母さんも親父の形見なんかもらっても仕方ないと思うだろうけど、売れば金になるしな)
シアの父と母は別に仲が悪いわけじゃない。ただ、デオフィロは夢を追いたい人だったので、公国の比較的安全な町に邸を買い、母と兄を住まわせていた。
シアは十四歳の時に、父の傭兵団に入った。性格的にも能力的にも、傭兵は向いていたのだと感じている。しかし、考えてみれば、自分も二年しか傭兵でいた期間はなかったのだ。
短い気もする。
ちなみに、ベリドは子供の頃からの知り合い、シアにとっては遊び相手のような存在で、傭兵団に入った時にはもう今みたいな接し方だった。
(麝教の件も片付いて、逃げる必要もなくなったわけだけど、あたしはこれからずっと冒険者をすんのか?)
何をしたいか、自分でもはっきりしなかった。
冒険者? 父と同じように、誰かとパーティを組んでダンジョンに夢を求めるのか?
(少し、違うんだよな。あたしがしたい事は……)
強いて言うなら、力を付けたい、といった気持ちはある。エルザに勝たなくてはいけない。
そうじゃない。
ゾルだ。
ゾルを手に入れなければならない。
(いや……それでもない。ゾルは手に入れるけど)
シアのしたい事。
それは、もう答えはある。
あるが。
それに向かう道筋が見えなかった。
(あたしは支配者になりたいんだ。でも、なんか王様とか貴族って感じじゃないんだよ。傭兵でも海賊でもない)
そう。
言ってみれば。
シアは。
(あたしは神になりてーんだ)
と、思っている。
正直、こんな話は誰にもできない。
さしものシアでも恥ずかしさを感じるからだ。
人から神族になった存在は実際にいる。昔話の類ではあるが。
(神族、神の一柱になれば、男共、いや、人族を支配できるだろう。それこそが、あたしの求めるものだ)
本気でそう考えるシアと、子供っぽいかな、と考える大人のシアが両方頭の中にいる。
今は子供のシアが勝った。
(神になり凄い力を得た時、ゾルは自然と手に入る。エルザにも完全勝利できる)
シアは本気でそう思う。
エルザに聞かせたら呆れられるだろう。
ムカつくが、今のシアでは、その域に到達するなど不可能な話だ。仕方ない。
(考えてみれば、あたしが神になったら親父も蘇らせる事ができるだろうし、ベリドの姿も元に戻せるはずだ。悩みがすべて解決するじゃねーか。……そのためには、どうするか)
シアは空を仰ぐ。
(とりあえず、ここで遊んだら真面目に訓練するか……)
と、ひとまず結論らしきものが出た。
翌日。
シアもベリドも旅装束であるため、空中庭園で過ごすのに服を着替えなくてはいけなかった。クローゼットには色々と衣装が掛けてあるため、適当にサイズの合う服に着替えた。
ベリドはシャツに黒いズボン、それに革靴。
シアは短いズボンを穿くようなタイプの上下の服を選んだ。スカートはあまり好きではない。
なんか、デカイ花の飾りが背中や肩に付いている。流行りなんだろうか。
「ベリド、この服どう思う?」
「派手です」
「変か?」
「いえ」
じゃあ、これでいいか。と、シアはその花の飾りが付いた服で過ごす事にした。
とりあえず、まずはベリドと二人で施設を見て回った。ベリドはここに来たことがあるらしい。
ビリヤード台があったので、軽く遊んでいく事にした。
二ゲームして、今度はダーツで遊ぶ。
うん、面白い。
やっぱりベリドは上手かった。
なんとなく、施設の雰囲気にも慣れてきたシアだ。
施設内では武器の携帯が禁じられている。
警備員が見張りについているので、客同士のもめ事は起こることがない。金持ちが多いからか、客は皆紳士淑女である。
施設の中には色々と遊戯コーナーがあり、そう言った設備は自由に使ってよいようだ。
「ベリド、ジャイアントラットレースってやった事あるか?」
「いえ、ありません」
「興味ないのか?」
「はい」
「ちょっと、これから始まるみたいだから行ってくる。お前はカジノでも行ってろよ。飲みたかったら、もう酒飲んでてもいいぜ」
「分かりました。カジノにいます」
「おう」
シアは一人、ジャイアントラットレースの行われる会場に足を運んだ。
ジャイアントラットレース。
その会場は、空中庭園の屋上にある。
貴族も商人も庶民も、ここに泊まっている客なら誰でも賭けに参加できる。賭け方は競馬に似ている。七匹のジャイアント・ラットを走らせるのだが、それぞれのラットにオッズがあり、事前にラットの毛並みや歯艶、親などの情報が公開される。ちなみに、年齢制限はなく、会場には子供もいる。
レースは地上から始まり、ラットたちは建物の外側のコースを走って、屋上のゴールを目差す。ジャイアント・ラットの背にはハーフリンクの騎手が乗っている。
ジャイアント・ラットは品種改良されており、野生のものよりも身体が大きく、筋肉は発達している。訓練されているから凶暴性もなく、人に懐いている。
シアはラットの情報が載ったボードを睨むように見ていた。
一番、ホワイトミスト。本命。
二番、ファイアーボルト。
三番、フクロノネズミ。
四番、ネズミトリー。
五番、ジャンピングテイオー。穴。
六番、テゴワイー。
七番、オーケンオー。対抗。
(ホワイトミストは完璧だな……。毛並みや歯艶も良い、体調も万全、やる気も十分。オーケンオーも中々だ。だけど……)
客の話し声が聞こえる。
「単勝、ホワイトミストで決まりですな」
「いやいや、分かりませんよ。ホワイトミストは打たれ弱いですからな。私はジャンピングテイオーがやるんじゃないかと思いますがね」
「今日のレースは天気も良いし、風もない。一番足の速いホワイトミストですよ」
「しかし、他のラットもホワイトミストは警戒しとりますからな。番狂わせが起きますよ」
「そうですなぁ……」
ジャイアント・ラットレースはタックルなど、妨害ありのレースだ。時には流血も起きる過激なレースだ。足の速さだけで勝てるかと言えばそうでもない。
(オッズを見ても、ホワイトミストは断トツで人気だな。でも、ジャイアント・ラットだろ……野生っぽい、荒っぽい奴の方が強いと思うんだよな)
馬券(ここでは鼠を馬に例えている)には、単勝、複勝、連番がある。
シアは単勝で勝ちを狙う。
屋上にはパドックがあり、ラットたちを客に見せていた。
シアはパドックを歩くジャイアント・ラットたちを見るため、場所を移動した。
ジャイアント・ラットの背にはラット用の鐙がついており、ゴーグルを付け勝負服を着たハーフリンクの騎手が轡を引いてパドックを回っていた。
また、客たちが話している。
「やはりホワイトミストは毛並みと歯艶が違いますな。綺麗です」
どうも、毛並みや歯艶の良さは、いいラットを選ぶのに大切な要素であるらしい。たしかに、ホワイトミストは白いふわふわした毛並みをしており、歯の艶も輝いている。
「そうですな。しかし、ジャンピングテイオーの黒い毛並みとあの目付きも、大番狂わせを起こしそうに思えなくもないですよ」
「たしかに、強そうですな」
(いや……)
シアは一匹づつ、品定めするようにラットを見つめた。
(たしかに、毛並みも歯艶もいい。体もデカイ。が、ホワイトミストの歯は人の手で磨かれているな……)
野生のジャイアント・ラットと戦った経験のあるシアからすると、ホワイトミストの歯は不自然に見えた。
(それにちょっと長すぎる気がする。格好良く見せるためかな。固い物を囓らせていないのか?)
もしそうなら、ホワイトミストに賭けるのは危険だ。
固い物を囓っておらず、レース用に調教されてきているのなら、もしかしたら知らない内にホワイトミストの中の野生を削りすぎているかもしれない。それでは、足は速くても、シアは賭ける気にはならない。
(オーケンオーとジャンピングテイオーもホワイトミストと同じだな。まぁ、人気があるって事は実績もあるんだろうけど……)
シアは真剣に考える。
自分の戦った事のあるジャイアント・ラットを思い出す。奴らは群れで襲ってくる。その中のボスの印象を、パドックの中に見出そうとした。
「……」
(あえて言うなら)
テゴワイーだ。
毛はごわごわで茶色と白が混ざった、七匹の中でも見栄えは良いと言えないラットである。歯は太く、短い。艶々しているわけでもない。身体のサイズもホワイトミストに比べると小さい。しかし、ジャイアント・ラットとはそういう見た目で良いのだ。シアはテゴワイーに群れのボスに近い存在感を感じていた。
シアは賭けを行う設営所に向かった。
「単勝、テゴワイーだ」
五百金貨。五十枚のプラチナ貨で支払う。周囲の大人たちがどよめいた。金額が大きいからだろう。それに、テゴワイーの単勝の配当率はおおよそ十倍である。当たれば五千金貨になって返ってくる。
「かしこまりました」
と、係の男は礼儀正しくシアに馬券、割り符を渡した。
シアはその割り符を受け取り、踵を返して観客席へと向かった。
(さて、どうなるかな)
シアは一番前の席に座り、レースを待った。
ラッパの音が吹き鳴らされた。
レースがスタートするようである。
レースは地上から始まるため、屋上からだと下を見て観戦する事になる。物見台もあり、その上では男性客がぎゅうぎゅう詰めの状態だ。段丘の外側のコースを走るため、部屋の中からだと走っている様子を間近で見る事ができるようだ。
今回のレースは芝、約二千メートルの傾斜を登る事になる。普通に考えると、なかなかキツそうなコースにも思えるが、ジャイアント・ラットの体力からすると余裕があるのかもしれない。
バン! と、魔法を使った合図が鳴りレースがスタートした。残念な事に実況者はいないが、観客の歓声で実況があっても聞こえないだろう。
会場は盛り上がっている。
それだけの金額が動いているのだ。
空中庭園はピラミッド構造になっているため、屋上からであれば、ラットたちが登ってくる様子が大体分かる。
(ホワイトミストは序盤から飛ばすな……。このまま逃げるつもりか。やっぱタックルには弱いのかもな。その後ろをオーケンオー、ジャンピングテイオーの順番で走っている)
シアの賭けたテゴワイーは後方、五着の辺りを走っていた。
ホワイトミストに賭けた観客たちは、そのまま逃げ切れ! と早くも声を上げていた。
(果たしてそうなるかな?)
レースも中盤に差し掛かる。
ここで、ジャイアント・ラットレースらしさが出てきた。
ダークホースのジャンピングテイオーが横に並んできたフクロノネズミにタックルを浴びせたのだ。
「やりやがったぞ!」
と、観客の一人がそう叫ぶ。
フクロノネズミは吹き飛び、段丘の庭に転がった。騎手も転げ落ちてしまったため、レース復帰は不可能だろう。一匹脱落した事になる。
観客たちは白熱したレース展開に興奮しているようだ。
しかし、考えてみると、高所であんな事をしてたら結構危ない気がするシアである。
一応、落下や怪我などの最悪の事態が起きても魔法の巻物を持った従業員が助けるようではあるが。
そんなこんなで、残り千メートルを切った。
残り六匹。
シアも声を上げた。
「テゴワイー、行け! 本性を見せろ!」
シアも柵から身を乗り出して応援する。
すると、シアの声援を受けてか、テゴワイーの瞳が輝いたように見えた。シアの錯覚かもしれないが。
残り五百メートル付近で、テゴワイーが差してきた。
テゴワイーはジャンピングテイオーのタックルを人馬、いや、人鼠一体の動きで横に躱す。テゴワイーはジャンピングテイオーを抜き去り、二番手にいたオーケンオーに迫る。テゴワイーはオーケンオーに並ぶ。二匹はぶつかり合った。が、恐怖を感じたのだろう、オーケンオーは自ら道を譲るような動きを見せた。
「行け! テゴワイー!」
ついに、百メートル付近で、テゴワイーは一番手、ホワイトミストに並んだ。ホワイトミストも必死で逃げる。
屋上のゴールに二頭が来た。
最後、速度の乗ったテゴワイーは跳んだ。ジャンピング
ゴールイン。
跳んだ時の伸びが良かった。
瞬発力のあるラットなんだろう。
髭の差で、一着は見事テゴワイーが飾った。
「よっしゃ!」
テゴワイーの騎手は鐙から降りて、ラットの顔を撫でてやっている。テゴワイーもこの勝利を喜んでいる。嬉しそうだ。
「やるじゃん! よくやったぞー!」
シアも遠くから勝利を讃えた。
一度の賭けで、五千金貨手に入れた。
ホワイトミストや他の馬に賭けた客たちの消沈した顔が辺りを埋めている。
幼女っぽい客が叫んでいた。
「ああー! 負けたのじゃー!」
その客は割り符を柵に叩きつけていた。
(あんな子供でも賭けをするんだな……)
さすがに、子供が賭け事をしている姿にシアも言葉がなかった。だがしかし複勝でもテゴワイーに賭けた客は少ないのだろう。みな、その幼女と似た行動を取っていた。
ひとまず、換金は置いておく。
金額が大きいため、レースが終わってから部屋に届けさせようとシアは思う。
二レース目は障害物レースのようだ。
もうすでに、パドックには違うラットたちが顔見せをしている。
シアは再び掲示板にラットの情報を見に向かった。
結果的に、その日のレースの勝敗は二勝一敗だった。
障害物レースでも同じ手でラットを見極めようとしたが、思わぬ展開に予想が外れてしまった。このレースでは、足の速さよりも、器用で訓練されたラットの方がいいらしい。
三レース目は再び芝で、これは複勝で勝ちを得た。
二レース目も大きく賭けたため、金額は三千五百金貨に減ってしまったが、むしろ最初に十倍の配当で勝てたのはビギナーズラックと言えるかもしれない。中々予想通りにはいかないものだ。
シアは結果に満足していた。
(結構な儲けになったな。空中庭園の宿泊代は完全に浮いたぜ)
レースに熱くなったため、ストレスも無くなっていた。
これはこれで、目的に適っている。
(あー楽しかったな。レースも終わったし、ベリドの様子でも見てくるか)
シアは屋上を出ると、カジノに向かった。
空中庭園での豪遊は四日間続いた。
三日で帰るつもりだったが、レースで大金を手に入れた事だしと、シアはベリドの分もついでに支払い、後一泊延長して宿泊した。カードゲームやルーレット、スロットなどもあり、カジノではベリドも数百金貨勝っていたようだ。
二人は空中庭園の娯楽を楽しみ、夜には酒を飲みながら二人で卓上ゲームなどをした。昼はプールでカラフルなフルーツジュースを飲んで気分転換し、また夜になると大ホールでバードや楽器隊の奏でる音楽を聴きながらコース料理を堪能した。
金を使い、酒を飲んで美味い飯を食い、賭け事をし、日常から遠ざかって、シアの数日前までのくさくさした気分はいくらか解消されていた。
(さて、遊びはもう終わりだな)
空中庭園を馬車に乗り後にする。
今度は、訓練しなければならない。
強くなるために。
ベリドと二人で一旦シガル村に戻り、その後、二人はアルカナ山脈の火口へと向かうつもりでいた。
(エルザ、あたしも化け物になってやるよ)
と、シアは考えている。
数日後、二人はシガル村に戻り、レイと話をした。
気になっていたのは、神殿がもろもろの出来事についてどのような判断を下すかだった。
結果から言えば、シアもベリドも神殿から何もペナルティを受けることはなかった。麝教壊滅、ゼス討伐についてはむしろ感謝までされているという。
変な話だな、とシアは思う。
あんだけ無法なことをしても、神殿はこちらを許すのだから。
(しかし、あたしの判断は間違っていなかったわけだ)
エルザに協力して正解だったとシアは思っている。しかし、あくまでそれは自分の考えが正しかったのであり、エルザに感謝する気にはまったくならない。
(ニール公の殺害、不当とも言える貴族の拉致、報復。アーティファクトの破壊。どれも下手すりゃ重罪として扱われてもおかしくなかった。それが反対に神殿から褒められるとは、分からないもんだ)
しかし、こうも考えられる。
エルザの仲間として、シアとベリドの名は良くも悪くも各国に知られることになってしまった。ベリドの過去の罪状など数えれば切りがない。今は英雄視されているが、あんまり悪いことばっかりしていると神殿も態度を変えるかもしれない。
(しばらくは、あたしたちもレイのそばにいるか。神殿がこの事件から保護してくれるって言うなら、ここから離れることもないしな)
なんにしても、シアはまだ目的らしきものがない。このまま流れに身を任せる方が良いように思えた。
(それに、何かするにしてももう少し事態が収束してからじゃないと動きにくいしな)
シアはレイと話を終えると、翌日には村を出てアルカナ山脈を目差した。
シアのソーサラーとしての遺伝はかなり濃く受け継がれている。子供の頃から優秀なソーサラーとして期待されてきたし、実際にシアは優れたソーサラーに育った。
それは、周囲の期待以上と言えた。
そんなシアを育てたのが、曾祖母だった。
シアが唯一恐れる存在である。
シアの家には家訓があるが、それはほとんど曾祖母が考えたものだ。
同じ血が流れる曾祖母による訓練を子供の頃に受け、シアはここまでソーサラーとして成長した。
しかし、シアが曽祖母を尊敬しているかと言えばしていない。むしろ嫌っている。実力はめちゃくちゃ高いので、逆らった事はないが。
(曽ばあちゃんが言ってたんだよな)
シアの中に眠る炎の精霊の力は、色々な特殊技能を本人に与えてくれる。炎系魔法の威力強化や範囲拡大、射程延長などがそれだ。
訓練しレベルが上がると、もっと色々と技を使えるようになる。
その技の一つに、エレメンタル化がある。身体を火の姿に変化させる事ができるのだ。この技を覚えると、炎に対する完全耐性や魔法武器でしかダメージを受けないといった効果の他に、フライの魔法のように宙を飛んだり、炎を操るなど、魔法を使わなくても色々とできるようになる。
その技を使えるレベルになれば、第四、第五位階魔法も覚える事ができるはずだ。
シアはその特殊技能の修得方法を曾祖母から聞いていた。
その方法を試すためには、溶岩の流れる火山に行かなくてはいけない。
が。
簡単に修得できるわけじゃない。
これは、命がけの訓練になる。
曾祖母は、生身の状態でマグマに飛び込む事でこの技を修得する事ができると話していたのだ。
失敗すれば、丸焼けである。
(ま、なんとかなるだろ)
とにかく、火山に行ってから考えようとシアは思う。
二人はアルカナ山脈の洞窟から地下へと進んでいく。地下には溶岩が噴出し、流れている場所がある。ベリドがそこまでのマップを用意していた。
アルカナ山脈付近には、強い魔物や亜人はあまり生息していない。皇帝領に近いためである。資源の伐採のために、人の往来も多い。
洞窟には人の踏み込んだ痕跡が数多く残されている。
(あたしたちは冒険に来たってわけでもないからな)
これが素材採集や宝探しであれば人の踏み込んだ跡を見てガッカリもするだろう。
冒険者に荒らされた後のダンジョンなど、なんの価値もない。
だがそれも、今回の場合は都合が良かった。
余計な戦闘をせずに済むし、目的地のマグマの流れる場所まで道のりが楽だ。
シアとベリドは順調に洞窟を進んでいった。たまに休憩を取りながら、長い洞窟を歩き、目的の場所に到着した。
辺りは凄い熱気だ。地面がひび割れており、その下をマグマが流れているのが見える。煙が立ちのぼり、周囲は硫黄の匂いがしていた。
実は、シアはマグマを見るのは初めてだ。
ひび割れた地面の下に見える真っ赤な溶岩は、想像していたよりもずっと迫力がある。
「これ、飛び込んだら死ぬな」
「……」
ベリドは何も言わない。
一応、ここに来るまでに訓練の内容は話している。
「ババアはこれに飛び込んだのかよ……」
「……」
正直、マグマの赤く流れゆく様に、シアはビビっている。これは舐めたらやばい。
「……」
「……」
しばらく、シアはそのマグマを見つめ続けた。
シアは自分の力を信じている。自分は優秀な魔法使いだし、その実力は実際に誰もが認めるだろう。
しかし、こうも考える。
命を粗末にする者は愚かだ、と。
このマグマに飛び込むのは、はっきり言って自殺行為だ。
自分の才能があれば、エレメンタル化する事はできるだろう。
曾祖母にできて自分にできない事はないのだから。
しかし、命をチップにギャンブルをしようとは思わない。
このマグマに飛び込む。
もし、仮にだが、失敗したらどうなる? 自分は死ぬ。マグマに飲まれて。
馬鹿のする事だ。
自分は馬鹿じゃない。
「無理だ。止めた」
「はい」
「マグマに飛び込むのは中止だ。エレメンタル化を諦めるつもりはないけど、このやり方は自殺行為だ。普通に練習して身に付けた方がいい。ババアの奴イカれてやがる」
「……」
ちなみに、ベリドも曾祖母に会った事がある。
ベリドはシアの家族と仲がいいのである。シアは子供の頃、ベリドを親戚のおじさんだと思っていた。
そんな話は今はよくて。
とにかく、この訓練は中止にする。
「でも、せっかく来たんだ。魔法の訓練はしていくぜ」
「はい」
シアはひび割れた地面の下に降り、できるだけマグマに近づいた。そこで、瞑想を始める。
魔力の扱いは子供の頃から訓練している。瞑想する事で己の魔力を意識し、上手く操れるように訓練する。
これを続けるだけで、新しい魔法に目覚める事もある。最近また力が上がったから、訓練した方がいいと感じていた。
(マグマに飛び込むなんて無茶はできなかったけど、この場所に来たのは正解だった)
この場所は、自然の魔力、龍脈の流れが強い。
こうした場所は瞑想するのに向いている。なかなか理想的な環境だと言えた。シアは立ったまま、目を瞑り集中して、己の中を流れる魔力を感じ取る。
いい感じだ。
その訓練を数日続けた。
訓練が終わると、シアは新しい魔法を使えるようになっていた。
エレメンタル化の特殊技能は得られなかったが、シアとしては満足のいく結果だった。
(村に戻るか)
訓練に手応えを感じたシアは、その日、その場所を後にした。自分でも意外なくらい、体内を巡る魔力が強くなっていた。知らない間にレベルが上がっていたのだ。
新しい魔法も、すんなりと扱えるようになった。
(次は実戦を積まないといけないか……)
訓練だけでは限界がある。
魔物や強い亜人と戦う事で、より強くなれるのだ。
やはり、実戦を積むなら冒険者になって魔物と戦うのが一番だろう。
そうシアは思い始めていた。
シアは河を下る船の中でそう思う。
目的地はトルカ領、ゴスラルだ。
空中庭園というリゾート施設に行き、プールやカジノで遊んで気晴らしをするのである。
シガル村からだと二、三日の旅程だ。少し遠いが、サザンドキア帝国の都市だと、ゴスラルくらいしか楽しめそうな場所がなかった。
観光やレジャーなら他の場所でもいいが。
(しかしまぁ、金にならない事の連続だな)
と、自分でも思う。
どれだけツキに見放されているというのか。
(なにより、ストレスが溜まった)
金じゃなく、ストレスばかり溜まる。
嫌になる。
これでは、いけない。
シアの家の習わしの一つに、このような格言がある。
『腹が立ったらギャンブルしろ』
ストレスが溜まったら、どう発散するか。
運動や食事、酒や買い物もいい。
しかし、ギャンブルが一番である、らしい。
あくまで、シアの家での話だが。
ギャンブルをすると、勝っても負けてもスカっとする、らしい。そしたらムカつく出来事も忘れられるというのである
(いや、ギャンブルで負けたら余計ストレスが溜まるだろ)
と、思わなくもない。
が、今はなんでもいいから適当に苛立ちや鬱憤を解消したかった。
そんなわけで、シアは金を使うつもりでいた。
とは言え、シアはギャンブルをした事がない。カードゲームやサイコロ遊びならやったことがあるが、金を賭けて博打を打つなど、今までは興味がなかった。所詮、暇つぶしだろ。くらいにしか思っていなかった。そもそも、そんなにしょっちゅう休暇など取れなかったので、遊びに行くのも久しぶりだ。
(ま、ジャイアントラットレースには前から興味があったんだけどな)
ゴスラルの名物レースである。
賭け方は競馬と似ている。
ジャイアント・ラットを競わせて走らせる。客はラットに賭ける。当てれば配当が支払われる。賭け方は色々あり、単勝、複勝、連単とあったはずだ。
シアも話に聞いた事があるだけだが。
そんなに難しいギャンブルではない。
後は、ベリドとビリヤードやダーツなどを競っても面白いかもしれない。ベリドがどのくらい上手いのか気になるところだ。腕利きのローグなので、ダーツなど百発百中でなくてはおかしいが。
とにかく、適当に遊んで楽しめればシアとしてはオッケーだ。まさか、少しギャンブルをしただけで破産するわけでもあるまいし。
ゴスラルには上手く船を乗り継ぐ事ができ、二日で着いた。船旅の間は暇だった。
ようやく、遊べる。
ゴスラルの空中庭園は段丘のあるピラミッド型の建物であり、シアはベリドと二人で貴族の泊まるスイートルームを取った。
部屋は王室をイメージした作りになっているようだ。高級感のある家具が置かれ、ベッドは広く、見事な天蓋が付いている。テラス、というより庭があり、そこは建物の段丘に位置する。珍しい植物が庭に植えられており、その奥に進むと個人用のプールがある。パラソルや寝転がれる椅子、浮き輪もあるが、素材は多分、魔物の部位を加工しているのだろう。つるつるしていて肌触りが良く、水を弾き、弾力がある。こうした遊び道具は高価な品である。
シアは水着に着替え、早速プールに入る。
浮き輪を水に浮かべて、その上に腰掛けるように乗った。
「ハー」
なんだか、落ち着いた。
ベリドはキャビネットから葡萄酒を出して、ソファに座り一人で飲んでいる。とりあえず、自分はまだいいや。と、シアはプールでのんびりしていた。
(これからどうするか考えないとな)
と、シアは空を眺めながら思う。
今は夕方だ。施設には魔法の明かりが灯っている。
(親父が死んだ、か……死体すらないからな。生き返らせる事はできないけど……でも、エルザの使った杖だったら高位階の魔法で蘇らせる事ができたのか?)
クレリックの魔法にはあまり詳しくないシアだが、第九位階魔法なら可能なんじゃないかと思う。
(だったら、親父を生き返らせる手段もあるって事か)
不可能ではない。それを、ひとまず、頭に入れておく。あのアーティファクトはもう無いのだ。あまり期待しても仕方ないが。
(親父の遺品はお母さんの所に送られているはずだ。お母さんも親父の形見なんかもらっても仕方ないと思うだろうけど、売れば金になるしな)
シアの父と母は別に仲が悪いわけじゃない。ただ、デオフィロは夢を追いたい人だったので、公国の比較的安全な町に邸を買い、母と兄を住まわせていた。
シアは十四歳の時に、父の傭兵団に入った。性格的にも能力的にも、傭兵は向いていたのだと感じている。しかし、考えてみれば、自分も二年しか傭兵でいた期間はなかったのだ。
短い気もする。
ちなみに、ベリドは子供の頃からの知り合い、シアにとっては遊び相手のような存在で、傭兵団に入った時にはもう今みたいな接し方だった。
(麝教の件も片付いて、逃げる必要もなくなったわけだけど、あたしはこれからずっと冒険者をすんのか?)
何をしたいか、自分でもはっきりしなかった。
冒険者? 父と同じように、誰かとパーティを組んでダンジョンに夢を求めるのか?
(少し、違うんだよな。あたしがしたい事は……)
強いて言うなら、力を付けたい、といった気持ちはある。エルザに勝たなくてはいけない。
そうじゃない。
ゾルだ。
ゾルを手に入れなければならない。
(いや……それでもない。ゾルは手に入れるけど)
シアのしたい事。
それは、もう答えはある。
あるが。
それに向かう道筋が見えなかった。
(あたしは支配者になりたいんだ。でも、なんか王様とか貴族って感じじゃないんだよ。傭兵でも海賊でもない)
そう。
言ってみれば。
シアは。
(あたしは神になりてーんだ)
と、思っている。
正直、こんな話は誰にもできない。
さしものシアでも恥ずかしさを感じるからだ。
人から神族になった存在は実際にいる。昔話の類ではあるが。
(神族、神の一柱になれば、男共、いや、人族を支配できるだろう。それこそが、あたしの求めるものだ)
本気でそう考えるシアと、子供っぽいかな、と考える大人のシアが両方頭の中にいる。
今は子供のシアが勝った。
(神になり凄い力を得た時、ゾルは自然と手に入る。エルザにも完全勝利できる)
シアは本気でそう思う。
エルザに聞かせたら呆れられるだろう。
ムカつくが、今のシアでは、その域に到達するなど不可能な話だ。仕方ない。
(考えてみれば、あたしが神になったら親父も蘇らせる事ができるだろうし、ベリドの姿も元に戻せるはずだ。悩みがすべて解決するじゃねーか。……そのためには、どうするか)
シアは空を仰ぐ。
(とりあえず、ここで遊んだら真面目に訓練するか……)
と、ひとまず結論らしきものが出た。
翌日。
シアもベリドも旅装束であるため、空中庭園で過ごすのに服を着替えなくてはいけなかった。クローゼットには色々と衣装が掛けてあるため、適当にサイズの合う服に着替えた。
ベリドはシャツに黒いズボン、それに革靴。
シアは短いズボンを穿くようなタイプの上下の服を選んだ。スカートはあまり好きではない。
なんか、デカイ花の飾りが背中や肩に付いている。流行りなんだろうか。
「ベリド、この服どう思う?」
「派手です」
「変か?」
「いえ」
じゃあ、これでいいか。と、シアはその花の飾りが付いた服で過ごす事にした。
とりあえず、まずはベリドと二人で施設を見て回った。ベリドはここに来たことがあるらしい。
ビリヤード台があったので、軽く遊んでいく事にした。
二ゲームして、今度はダーツで遊ぶ。
うん、面白い。
やっぱりベリドは上手かった。
なんとなく、施設の雰囲気にも慣れてきたシアだ。
施設内では武器の携帯が禁じられている。
警備員が見張りについているので、客同士のもめ事は起こることがない。金持ちが多いからか、客は皆紳士淑女である。
施設の中には色々と遊戯コーナーがあり、そう言った設備は自由に使ってよいようだ。
「ベリド、ジャイアントラットレースってやった事あるか?」
「いえ、ありません」
「興味ないのか?」
「はい」
「ちょっと、これから始まるみたいだから行ってくる。お前はカジノでも行ってろよ。飲みたかったら、もう酒飲んでてもいいぜ」
「分かりました。カジノにいます」
「おう」
シアは一人、ジャイアントラットレースの行われる会場に足を運んだ。
ジャイアントラットレース。
その会場は、空中庭園の屋上にある。
貴族も商人も庶民も、ここに泊まっている客なら誰でも賭けに参加できる。賭け方は競馬に似ている。七匹のジャイアント・ラットを走らせるのだが、それぞれのラットにオッズがあり、事前にラットの毛並みや歯艶、親などの情報が公開される。ちなみに、年齢制限はなく、会場には子供もいる。
レースは地上から始まり、ラットたちは建物の外側のコースを走って、屋上のゴールを目差す。ジャイアント・ラットの背にはハーフリンクの騎手が乗っている。
ジャイアント・ラットは品種改良されており、野生のものよりも身体が大きく、筋肉は発達している。訓練されているから凶暴性もなく、人に懐いている。
シアはラットの情報が載ったボードを睨むように見ていた。
一番、ホワイトミスト。本命。
二番、ファイアーボルト。
三番、フクロノネズミ。
四番、ネズミトリー。
五番、ジャンピングテイオー。穴。
六番、テゴワイー。
七番、オーケンオー。対抗。
(ホワイトミストは完璧だな……。毛並みや歯艶も良い、体調も万全、やる気も十分。オーケンオーも中々だ。だけど……)
客の話し声が聞こえる。
「単勝、ホワイトミストで決まりですな」
「いやいや、分かりませんよ。ホワイトミストは打たれ弱いですからな。私はジャンピングテイオーがやるんじゃないかと思いますがね」
「今日のレースは天気も良いし、風もない。一番足の速いホワイトミストですよ」
「しかし、他のラットもホワイトミストは警戒しとりますからな。番狂わせが起きますよ」
「そうですなぁ……」
ジャイアント・ラットレースはタックルなど、妨害ありのレースだ。時には流血も起きる過激なレースだ。足の速さだけで勝てるかと言えばそうでもない。
(オッズを見ても、ホワイトミストは断トツで人気だな。でも、ジャイアント・ラットだろ……野生っぽい、荒っぽい奴の方が強いと思うんだよな)
馬券(ここでは鼠を馬に例えている)には、単勝、複勝、連番がある。
シアは単勝で勝ちを狙う。
屋上にはパドックがあり、ラットたちを客に見せていた。
シアはパドックを歩くジャイアント・ラットたちを見るため、場所を移動した。
ジャイアント・ラットの背にはラット用の鐙がついており、ゴーグルを付け勝負服を着たハーフリンクの騎手が轡を引いてパドックを回っていた。
また、客たちが話している。
「やはりホワイトミストは毛並みと歯艶が違いますな。綺麗です」
どうも、毛並みや歯艶の良さは、いいラットを選ぶのに大切な要素であるらしい。たしかに、ホワイトミストは白いふわふわした毛並みをしており、歯の艶も輝いている。
「そうですな。しかし、ジャンピングテイオーの黒い毛並みとあの目付きも、大番狂わせを起こしそうに思えなくもないですよ」
「たしかに、強そうですな」
(いや……)
シアは一匹づつ、品定めするようにラットを見つめた。
(たしかに、毛並みも歯艶もいい。体もデカイ。が、ホワイトミストの歯は人の手で磨かれているな……)
野生のジャイアント・ラットと戦った経験のあるシアからすると、ホワイトミストの歯は不自然に見えた。
(それにちょっと長すぎる気がする。格好良く見せるためかな。固い物を囓らせていないのか?)
もしそうなら、ホワイトミストに賭けるのは危険だ。
固い物を囓っておらず、レース用に調教されてきているのなら、もしかしたら知らない内にホワイトミストの中の野生を削りすぎているかもしれない。それでは、足は速くても、シアは賭ける気にはならない。
(オーケンオーとジャンピングテイオーもホワイトミストと同じだな。まぁ、人気があるって事は実績もあるんだろうけど……)
シアは真剣に考える。
自分の戦った事のあるジャイアント・ラットを思い出す。奴らは群れで襲ってくる。その中のボスの印象を、パドックの中に見出そうとした。
「……」
(あえて言うなら)
テゴワイーだ。
毛はごわごわで茶色と白が混ざった、七匹の中でも見栄えは良いと言えないラットである。歯は太く、短い。艶々しているわけでもない。身体のサイズもホワイトミストに比べると小さい。しかし、ジャイアント・ラットとはそういう見た目で良いのだ。シアはテゴワイーに群れのボスに近い存在感を感じていた。
シアは賭けを行う設営所に向かった。
「単勝、テゴワイーだ」
五百金貨。五十枚のプラチナ貨で支払う。周囲の大人たちがどよめいた。金額が大きいからだろう。それに、テゴワイーの単勝の配当率はおおよそ十倍である。当たれば五千金貨になって返ってくる。
「かしこまりました」
と、係の男は礼儀正しくシアに馬券、割り符を渡した。
シアはその割り符を受け取り、踵を返して観客席へと向かった。
(さて、どうなるかな)
シアは一番前の席に座り、レースを待った。
ラッパの音が吹き鳴らされた。
レースがスタートするようである。
レースは地上から始まるため、屋上からだと下を見て観戦する事になる。物見台もあり、その上では男性客がぎゅうぎゅう詰めの状態だ。段丘の外側のコースを走るため、部屋の中からだと走っている様子を間近で見る事ができるようだ。
今回のレースは芝、約二千メートルの傾斜を登る事になる。普通に考えると、なかなかキツそうなコースにも思えるが、ジャイアント・ラットの体力からすると余裕があるのかもしれない。
バン! と、魔法を使った合図が鳴りレースがスタートした。残念な事に実況者はいないが、観客の歓声で実況があっても聞こえないだろう。
会場は盛り上がっている。
それだけの金額が動いているのだ。
空中庭園はピラミッド構造になっているため、屋上からであれば、ラットたちが登ってくる様子が大体分かる。
(ホワイトミストは序盤から飛ばすな……。このまま逃げるつもりか。やっぱタックルには弱いのかもな。その後ろをオーケンオー、ジャンピングテイオーの順番で走っている)
シアの賭けたテゴワイーは後方、五着の辺りを走っていた。
ホワイトミストに賭けた観客たちは、そのまま逃げ切れ! と早くも声を上げていた。
(果たしてそうなるかな?)
レースも中盤に差し掛かる。
ここで、ジャイアント・ラットレースらしさが出てきた。
ダークホースのジャンピングテイオーが横に並んできたフクロノネズミにタックルを浴びせたのだ。
「やりやがったぞ!」
と、観客の一人がそう叫ぶ。
フクロノネズミは吹き飛び、段丘の庭に転がった。騎手も転げ落ちてしまったため、レース復帰は不可能だろう。一匹脱落した事になる。
観客たちは白熱したレース展開に興奮しているようだ。
しかし、考えてみると、高所であんな事をしてたら結構危ない気がするシアである。
一応、落下や怪我などの最悪の事態が起きても魔法の巻物を持った従業員が助けるようではあるが。
そんなこんなで、残り千メートルを切った。
残り六匹。
シアも声を上げた。
「テゴワイー、行け! 本性を見せろ!」
シアも柵から身を乗り出して応援する。
すると、シアの声援を受けてか、テゴワイーの瞳が輝いたように見えた。シアの錯覚かもしれないが。
残り五百メートル付近で、テゴワイーが差してきた。
テゴワイーはジャンピングテイオーのタックルを人馬、いや、人鼠一体の動きで横に躱す。テゴワイーはジャンピングテイオーを抜き去り、二番手にいたオーケンオーに迫る。テゴワイーはオーケンオーに並ぶ。二匹はぶつかり合った。が、恐怖を感じたのだろう、オーケンオーは自ら道を譲るような動きを見せた。
「行け! テゴワイー!」
ついに、百メートル付近で、テゴワイーは一番手、ホワイトミストに並んだ。ホワイトミストも必死で逃げる。
屋上のゴールに二頭が来た。
最後、速度の乗ったテゴワイーは跳んだ。ジャンピング
ゴールイン。
跳んだ時の伸びが良かった。
瞬発力のあるラットなんだろう。
髭の差で、一着は見事テゴワイーが飾った。
「よっしゃ!」
テゴワイーの騎手は鐙から降りて、ラットの顔を撫でてやっている。テゴワイーもこの勝利を喜んでいる。嬉しそうだ。
「やるじゃん! よくやったぞー!」
シアも遠くから勝利を讃えた。
一度の賭けで、五千金貨手に入れた。
ホワイトミストや他の馬に賭けた客たちの消沈した顔が辺りを埋めている。
幼女っぽい客が叫んでいた。
「ああー! 負けたのじゃー!」
その客は割り符を柵に叩きつけていた。
(あんな子供でも賭けをするんだな……)
さすがに、子供が賭け事をしている姿にシアも言葉がなかった。だがしかし複勝でもテゴワイーに賭けた客は少ないのだろう。みな、その幼女と似た行動を取っていた。
ひとまず、換金は置いておく。
金額が大きいため、レースが終わってから部屋に届けさせようとシアは思う。
二レース目は障害物レースのようだ。
もうすでに、パドックには違うラットたちが顔見せをしている。
シアは再び掲示板にラットの情報を見に向かった。
結果的に、その日のレースの勝敗は二勝一敗だった。
障害物レースでも同じ手でラットを見極めようとしたが、思わぬ展開に予想が外れてしまった。このレースでは、足の速さよりも、器用で訓練されたラットの方がいいらしい。
三レース目は再び芝で、これは複勝で勝ちを得た。
二レース目も大きく賭けたため、金額は三千五百金貨に減ってしまったが、むしろ最初に十倍の配当で勝てたのはビギナーズラックと言えるかもしれない。中々予想通りにはいかないものだ。
シアは結果に満足していた。
(結構な儲けになったな。空中庭園の宿泊代は完全に浮いたぜ)
レースに熱くなったため、ストレスも無くなっていた。
これはこれで、目的に適っている。
(あー楽しかったな。レースも終わったし、ベリドの様子でも見てくるか)
シアは屋上を出ると、カジノに向かった。
空中庭園での豪遊は四日間続いた。
三日で帰るつもりだったが、レースで大金を手に入れた事だしと、シアはベリドの分もついでに支払い、後一泊延長して宿泊した。カードゲームやルーレット、スロットなどもあり、カジノではベリドも数百金貨勝っていたようだ。
二人は空中庭園の娯楽を楽しみ、夜には酒を飲みながら二人で卓上ゲームなどをした。昼はプールでカラフルなフルーツジュースを飲んで気分転換し、また夜になると大ホールでバードや楽器隊の奏でる音楽を聴きながらコース料理を堪能した。
金を使い、酒を飲んで美味い飯を食い、賭け事をし、日常から遠ざかって、シアの数日前までのくさくさした気分はいくらか解消されていた。
(さて、遊びはもう終わりだな)
空中庭園を馬車に乗り後にする。
今度は、訓練しなければならない。
強くなるために。
ベリドと二人で一旦シガル村に戻り、その後、二人はアルカナ山脈の火口へと向かうつもりでいた。
(エルザ、あたしも化け物になってやるよ)
と、シアは考えている。
数日後、二人はシガル村に戻り、レイと話をした。
気になっていたのは、神殿がもろもろの出来事についてどのような判断を下すかだった。
結果から言えば、シアもベリドも神殿から何もペナルティを受けることはなかった。麝教壊滅、ゼス討伐についてはむしろ感謝までされているという。
変な話だな、とシアは思う。
あんだけ無法なことをしても、神殿はこちらを許すのだから。
(しかし、あたしの判断は間違っていなかったわけだ)
エルザに協力して正解だったとシアは思っている。しかし、あくまでそれは自分の考えが正しかったのであり、エルザに感謝する気にはまったくならない。
(ニール公の殺害、不当とも言える貴族の拉致、報復。アーティファクトの破壊。どれも下手すりゃ重罪として扱われてもおかしくなかった。それが反対に神殿から褒められるとは、分からないもんだ)
しかし、こうも考えられる。
エルザの仲間として、シアとベリドの名は良くも悪くも各国に知られることになってしまった。ベリドの過去の罪状など数えれば切りがない。今は英雄視されているが、あんまり悪いことばっかりしていると神殿も態度を変えるかもしれない。
(しばらくは、あたしたちもレイのそばにいるか。神殿がこの事件から保護してくれるって言うなら、ここから離れることもないしな)
なんにしても、シアはまだ目的らしきものがない。このまま流れに身を任せる方が良いように思えた。
(それに、何かするにしてももう少し事態が収束してからじゃないと動きにくいしな)
シアはレイと話を終えると、翌日には村を出てアルカナ山脈を目差した。
シアのソーサラーとしての遺伝はかなり濃く受け継がれている。子供の頃から優秀なソーサラーとして期待されてきたし、実際にシアは優れたソーサラーに育った。
それは、周囲の期待以上と言えた。
そんなシアを育てたのが、曾祖母だった。
シアが唯一恐れる存在である。
シアの家には家訓があるが、それはほとんど曾祖母が考えたものだ。
同じ血が流れる曾祖母による訓練を子供の頃に受け、シアはここまでソーサラーとして成長した。
しかし、シアが曽祖母を尊敬しているかと言えばしていない。むしろ嫌っている。実力はめちゃくちゃ高いので、逆らった事はないが。
(曽ばあちゃんが言ってたんだよな)
シアの中に眠る炎の精霊の力は、色々な特殊技能を本人に与えてくれる。炎系魔法の威力強化や範囲拡大、射程延長などがそれだ。
訓練しレベルが上がると、もっと色々と技を使えるようになる。
その技の一つに、エレメンタル化がある。身体を火の姿に変化させる事ができるのだ。この技を覚えると、炎に対する完全耐性や魔法武器でしかダメージを受けないといった効果の他に、フライの魔法のように宙を飛んだり、炎を操るなど、魔法を使わなくても色々とできるようになる。
その技を使えるレベルになれば、第四、第五位階魔法も覚える事ができるはずだ。
シアはその特殊技能の修得方法を曾祖母から聞いていた。
その方法を試すためには、溶岩の流れる火山に行かなくてはいけない。
が。
簡単に修得できるわけじゃない。
これは、命がけの訓練になる。
曾祖母は、生身の状態でマグマに飛び込む事でこの技を修得する事ができると話していたのだ。
失敗すれば、丸焼けである。
(ま、なんとかなるだろ)
とにかく、火山に行ってから考えようとシアは思う。
二人はアルカナ山脈の洞窟から地下へと進んでいく。地下には溶岩が噴出し、流れている場所がある。ベリドがそこまでのマップを用意していた。
アルカナ山脈付近には、強い魔物や亜人はあまり生息していない。皇帝領に近いためである。資源の伐採のために、人の往来も多い。
洞窟には人の踏み込んだ痕跡が数多く残されている。
(あたしたちは冒険に来たってわけでもないからな)
これが素材採集や宝探しであれば人の踏み込んだ跡を見てガッカリもするだろう。
冒険者に荒らされた後のダンジョンなど、なんの価値もない。
だがそれも、今回の場合は都合が良かった。
余計な戦闘をせずに済むし、目的地のマグマの流れる場所まで道のりが楽だ。
シアとベリドは順調に洞窟を進んでいった。たまに休憩を取りながら、長い洞窟を歩き、目的の場所に到着した。
辺りは凄い熱気だ。地面がひび割れており、その下をマグマが流れているのが見える。煙が立ちのぼり、周囲は硫黄の匂いがしていた。
実は、シアはマグマを見るのは初めてだ。
ひび割れた地面の下に見える真っ赤な溶岩は、想像していたよりもずっと迫力がある。
「これ、飛び込んだら死ぬな」
「……」
ベリドは何も言わない。
一応、ここに来るまでに訓練の内容は話している。
「ババアはこれに飛び込んだのかよ……」
「……」
正直、マグマの赤く流れゆく様に、シアはビビっている。これは舐めたらやばい。
「……」
「……」
しばらく、シアはそのマグマを見つめ続けた。
シアは自分の力を信じている。自分は優秀な魔法使いだし、その実力は実際に誰もが認めるだろう。
しかし、こうも考える。
命を粗末にする者は愚かだ、と。
このマグマに飛び込むのは、はっきり言って自殺行為だ。
自分の才能があれば、エレメンタル化する事はできるだろう。
曾祖母にできて自分にできない事はないのだから。
しかし、命をチップにギャンブルをしようとは思わない。
このマグマに飛び込む。
もし、仮にだが、失敗したらどうなる? 自分は死ぬ。マグマに飲まれて。
馬鹿のする事だ。
自分は馬鹿じゃない。
「無理だ。止めた」
「はい」
「マグマに飛び込むのは中止だ。エレメンタル化を諦めるつもりはないけど、このやり方は自殺行為だ。普通に練習して身に付けた方がいい。ババアの奴イカれてやがる」
「……」
ちなみに、ベリドも曾祖母に会った事がある。
ベリドはシアの家族と仲がいいのである。シアは子供の頃、ベリドを親戚のおじさんだと思っていた。
そんな話は今はよくて。
とにかく、この訓練は中止にする。
「でも、せっかく来たんだ。魔法の訓練はしていくぜ」
「はい」
シアはひび割れた地面の下に降り、できるだけマグマに近づいた。そこで、瞑想を始める。
魔力の扱いは子供の頃から訓練している。瞑想する事で己の魔力を意識し、上手く操れるように訓練する。
これを続けるだけで、新しい魔法に目覚める事もある。最近また力が上がったから、訓練した方がいいと感じていた。
(マグマに飛び込むなんて無茶はできなかったけど、この場所に来たのは正解だった)
この場所は、自然の魔力、龍脈の流れが強い。
こうした場所は瞑想するのに向いている。なかなか理想的な環境だと言えた。シアは立ったまま、目を瞑り集中して、己の中を流れる魔力を感じ取る。
いい感じだ。
その訓練を数日続けた。
訓練が終わると、シアは新しい魔法を使えるようになっていた。
エレメンタル化の特殊技能は得られなかったが、シアとしては満足のいく結果だった。
(村に戻るか)
訓練に手応えを感じたシアは、その日、その場所を後にした。自分でも意外なくらい、体内を巡る魔力が強くなっていた。知らない間にレベルが上がっていたのだ。
新しい魔法も、すんなりと扱えるようになった。
(次は実戦を積まないといけないか……)
訓練だけでは限界がある。
魔物や強い亜人と戦う事で、より強くなれるのだ。
やはり、実戦を積むなら冒険者になって魔物と戦うのが一番だろう。
そうシアは思い始めていた。
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