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ゾルの過去
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しおりを挟む「これが、ターラム砦で起きた出来事の一部始終だ」
「……その後、ゾルはどうしたんだ?」
「俺はしばらく何も考えられなかった。無気力になって、ただ毎日宿で呆然としていた。ようやく気力が戻ったのは、金が尽きた頃だ。さすがに、食わないと死ぬしな」
「……軍には戻らなかったのか?」
「ああ。ターラム砦の生き残りと言っても、名簿も消えていたし、それを証明する物がない。あの首飾りも魔法を食らった時に無くなってしまった。それでも戻ろうと思えば戻れたんだが、何故か気持ちが奮わなかった。その後、一度故郷に戻った。六年以上も王国にいたのに、知り合いは砦にしかいなかったからな。故郷で久しぶりに母に会った」
「何て言っていた?」
「何も。ただおかえりと、労ってくれた」
「ビズ、優しいな。お前は使命をほったらかしにしてたのに」
「ああ、その、そうだな。母からは、そんな事があってよく生きていたなと言われたよ。それから修行をやり直し、女の手掛かりを探して王国を旅して回ったり、古代魔法について何か分からないかと自分なりに調べたりした」
「……気になるんだけど、最後、女に迫ったゾルの力はいつもと同じ技だったのか?」
「いや……あれは、意識せずに使っていた違う技だ。あの力を使えないかとその後訓練したが、未だに引き出せていない」
「……ゾルの感情が引き金になったんだろうな……。私は怒りを覚えた時に新しい力が発現した。お前の場合、私とは違うトリガーがある」
「そうかもしれないな」
「……ゾル」
「何だ?」
「お前はその女を追う事を諦めるな。その目的は捨ててはいけない気がする」
ゾルはその言葉に、なんとなくエルザにグレイシャの面影を重ねた。グレイシャもよくゾルに助言をしてくれた。
「……そうだな。分かってる。みんなの仇を討たないといけない。俺はやはり諦めたくない」
「そいつは必ず見つかる。私の勘がそう言ってる」
ゾルは頷く。
「……今度は必ず勝つよ。ありがとう、エルザ」
その後、ゾルとエルザはなんやかんやあって宝珠の塔を制覇する。
なんか、盗賊に追われている少女を助けたら、彼女が塔の頂上に行くための秘密の合い言葉を知っていて、案内してくれた。
この塔が古代の時代の魔法装置である事が分かり、二人はそれをレイに報告した。
レイは宝珠の塔を強引にアーティファクトと神殿に認定させ、塔を神殿の管理下に置いた。
神殿はサザンドキア帝国皇帝にこの塔の管理を委託した。巨大な建造物だし、サザンドキア帝国の領地だったからだ。その後、市長や都市議員たちとの話し合いを経て、自由都市パルは皇帝の管轄下に置かれる事になった。
その後も二人は各地を巡り、冒険した。エルザは操れる魔力の色を増やし、ゾルは何カ所か石碑を見つけた。
半年経った頃、ゾルは新しい特殊技能を使えるようになった。
その技は、ターラム砦で最後に使った技と同じものだ。闘神憑依と名付け、使いこなせるように訓練した。
ゾルは思う。
ターラム砦を落とされた後、石碑を見つける旅に出られなかったのは、王国にやり残した事があるように感じていたからだ。思えばそれは気持ちの問題だった。自分だけでは前に進めなかった。
忘れる事ができずにいた。
砦の仲間の事を。
あの日の事を。
エルザと出会った事で、ゾルは前に進む事ができた。
色々な出来事が立て続けに起きたから、そんな事を考えている余裕がなかったのかもしれないが。
…………。
あの時、あの女は俺を生かした。
俺だけを殺さなかった。
殺そうと思えば殺せたのに。
何故?
その疑問は、常にゾルの中にあった。
しかし、どんな理由があっても、奴は敵だ。
仲間の仇だ。
それは、疑う余地の無い事だ。
いずれ、決着を付ける時が来る。
ゾルは自分なりに努力して女を追った。その手応えは、今までは無かった。だが女の正体に近づいている手応えをこの半年の間に掴んでいた。
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