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第一章
第50話 アジト到着
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大宮市内では、そう酷い事にはならなかった。
通せんぼした警備会社の車を跳ね飛ばしたりは一部あったが、上空を囲むヘリからの警告や攻撃は無く。そのまま付かず離れず、スミレさんのアジトまで付いてきて、敷地内に車が入るとすんなり帰投していった。
貝塚からの連絡も無かった。
アジトは、中心に一ヘクタール程の中庭を囲む三十階建ての四角いビルだった。
整備された庭園にモニュメントがちらほら建っていて、ビルをぶった切る十字に車道が整備されている。
ライヴハウスのオーナーがこんなの持ってんの?!
正面からビル内の立体駐車場に入れるのだが、車は中庭に抜けて、中心に来るとそこで停まった。
まさか。
正面の道路が持ち上がり、下るスロープが出現する。
「すげぇ」
「男の子はこういうの好きだものね」
車はリニアレールに載り、そのままスロープを下りてゆく。
地下に入ると、誘導灯が順番つ点灯していき、かなり巨大な機械式駐車場なのが分かる。
中庭の下はぶち抜かれて、その底まで上と同じくらいの深さに見えるので大体百二十メートルはあるだろうか。
一番下までレールに載ったままエレベータで下り、最下層には普通にホテルの和式庭園とエントランスが大量の噴水と共に待ち構えていた。
今は時間帯が夜中だしあまり照明も明るくないが、地下のくせに光量が足りているのか、植木も枯れていない、よく手入れされている庭だ。
池に架かる小さな橋から、つつみちゃんと金属袋が鯉に餌をやっていた。
車に気付いてにこやかに手を振っていたが、入口に乗りつけ、血だらけの俺らが出てくるのを見て血相を変え、餌の袋を金属袋にホン投げて走り寄ってくる。あ。こぼしてる。あの袋頭、運動神経悪いのか?
エントランスには傭兵の他、医療スタッフっぽいのが大勢待機している。
「明日の朝、呼ぶわ」
スミレさんは大量のスタッフに囲まれ、大量のチャット窓を開いたり閉じたりしつつ厩戸皇子の真似をしながら去って行った。
「やだぁ!もうっ!スミレさん大丈夫って言ったのに!!」
ボロボロの俺を見ると。勝手にメットを強制パージして、眼球を視て首元に手を触れスタッフに指示を出している。
「つつみちゃん、雑に外すと直すのが」
「黙って!ストレッチャーに乗って!」
怒りでプルプルしだした。不味い。これ、話しかけるとどんどん怒りのボルテージ上がっていくやつだ。隣にガシャコンと広がった台車にどうしても俺を載せたいらしい。
横になるとき首に負荷が掛かって痛いんだよなあ。
言ったら、余計に騒ぎそうなので黙っておこう。
台車に腰掛け、痛む手で後頭部を抑え横になろうとすると、察したスタッフが介助してくれた。
寝っ転がって上を向くと、目の端で金属袋が鯉の餌をボリボリ齧っているのが見えた。喰えるの?それ。
どっから喰ってるんだ?
あ、そこ開くんだ。
俺と目が合うと、ピースしてきた。
「あ。ヤッポン、わたしこのままついてくから、部屋からベースかヴィオラ持ってきて」
「これ食べたらな」
「もぅ!そんなの全部鯉にあげちゃいなよ!もっと美味しいの買ってあげるから!」
「ちっ。仕方ない」
外の池には向かわず、そのまま廊下の向こうに消えていった。
食い意地張ってるなぁ。
御影石の床はガラガラと結構な振動が伝わるので傷に響きまくる。
歩いたほうがマシだろこれ。
エレベーターで待っている時、俺の腹に気付いたスタッフが。
「時間おくと不味いので、直ぐ剥がし始めますね」
あ、ちょ、待、いやまぁ、そうなんだけど。
横についた医療スタッフが俺のスーツをベリベリ剥がし、俺の腹を見たつつみちゃんが悲鳴と共に気を失いぶっ倒れた。
顔を見合わせたスタッフたちは二台目の台車を持ってきてガシャコンと開いた。
・・・おんぶでいいじゃん。
このエレベーター台車二台乗るの?
あ、隣のに乗せるんだな。
気付いたら、寝てしまっていた。
もう夜が明けている。
「あ、起きた?」
「ハラヘッタ」
「軽いもの用意してもらうね」
ずっとヴァイオリンを弾いている。
音はしていない。いや、してるか。
キュッキュッと、時々擦れる音はしている。
ああ、これが、ヴィオラか。形は変だけど。
骨組みと首で支える部分だけで、弦が張ってない。
エレキヴィオラ的な物なのだろうが、音は切っているのか?
見上げれば、あの高級テックスフィアが三つ浮いていた。
治療は終わっているのか、所々にパッドやら包帯やらしてある。
ここは、地下巨大基地の病室だろう。つつみちゃんの横に点滴が何個も行列して吊り下がっていた。一つだけ打ち終わって二個目途中だが、あれ全部打つのか?しょんべん凄いことになりそうだな。
大きな窓の向こうに、朝日に照らされた日本庭園が見える。
機械式駐車場の向うから朝日が見えるって、どうなってるんですかね、ここ地下だろ。
久々の綺麗な朝日に見とれていると、ノックがして、医療スタッフが良い匂いをさせたキッチンワゴンを転がして入ってきた。
飯、飯だ。
「ありがと、後やっとく」
匂いだけで雑巾バリに絞られた胃をおさえる俺を見て、つつみちゃんがニヨニヨしている。
知ってるぞ。絶対これあーんとかするやつだろ。
俺、手が使えるからな。
「早食いするでしょ。駄目だからね」
くそう!くそう!
「何やってんの君ら」
心の中で血の涙を流しながら、美味い飯を無駄に咀嚼してから流し込む俺と、ニッコニコでゆっくり餌を与えるつつみちゃんを見て、入ってきたノリユキは呆れている。
「よこやまクン早食いだからね。しっかり節制してあげないと」
大きなお世話だよ!可愛い子にあーんされるの好きな奴もいるけどさ!俺はいついかなる時も自分の自由に食べたい!
余計に腹減ってきたよ!
「駄目だよ?胃が雷でこんがりボイルされてたんだから。いくら治ったからって、本当なら一週間は食事禁止なんだからね」
え?あ。そうなの?
食べて大丈夫なのか?
「漫才は後でやってよ。とりあえず、ボスが呼んで来いって」
「ログでいいのに」
「面通しでしょ。ボスは兎も角、周りが五月蝿いからねー」
仕方ない。
スリッパが欲しいな。
ベッドから抜けて立とうとしたらつつみちゃんに止められた。
「ダメッ!」
ブラックアウトして力が入らず膝から崩れてしまった。
慌ててつつみちゃんが支えようとしたが間に合わなくて、べちゃっと自分の顔が床に打ち付けられた音が聴こえた。
血が相当足りてない。
床が冷たい。
後、話を聞いた所為か?胃が上ずって喰ったもの吐きそう・・・。
「車椅子・・・も駄目そうだな。ベッドのまま行くか」
狼男が唸っている。
喚くつつみちゃんに介護され、二人がかりでベッドに戻されて、なんとか見えるようになってきた目に映った狼男は、耳の後ろをポリポリ掻いている。
すごく間抜けに見えて、笑ってしまったらつつみちゃんがカンカンになってしまい、何故自分までと理不尽さを滲ませる狼男と共にアイコンタクト取りながら必死になって宥めすかす。スミレさんから催促のログがとんでくるまでそれは続いた。
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祝 50話!
通せんぼした警備会社の車を跳ね飛ばしたりは一部あったが、上空を囲むヘリからの警告や攻撃は無く。そのまま付かず離れず、スミレさんのアジトまで付いてきて、敷地内に車が入るとすんなり帰投していった。
貝塚からの連絡も無かった。
アジトは、中心に一ヘクタール程の中庭を囲む三十階建ての四角いビルだった。
整備された庭園にモニュメントがちらほら建っていて、ビルをぶった切る十字に車道が整備されている。
ライヴハウスのオーナーがこんなの持ってんの?!
正面からビル内の立体駐車場に入れるのだが、車は中庭に抜けて、中心に来るとそこで停まった。
まさか。
正面の道路が持ち上がり、下るスロープが出現する。
「すげぇ」
「男の子はこういうの好きだものね」
車はリニアレールに載り、そのままスロープを下りてゆく。
地下に入ると、誘導灯が順番つ点灯していき、かなり巨大な機械式駐車場なのが分かる。
中庭の下はぶち抜かれて、その底まで上と同じくらいの深さに見えるので大体百二十メートルはあるだろうか。
一番下までレールに載ったままエレベータで下り、最下層には普通にホテルの和式庭園とエントランスが大量の噴水と共に待ち構えていた。
今は時間帯が夜中だしあまり照明も明るくないが、地下のくせに光量が足りているのか、植木も枯れていない、よく手入れされている庭だ。
池に架かる小さな橋から、つつみちゃんと金属袋が鯉に餌をやっていた。
車に気付いてにこやかに手を振っていたが、入口に乗りつけ、血だらけの俺らが出てくるのを見て血相を変え、餌の袋を金属袋にホン投げて走り寄ってくる。あ。こぼしてる。あの袋頭、運動神経悪いのか?
エントランスには傭兵の他、医療スタッフっぽいのが大勢待機している。
「明日の朝、呼ぶわ」
スミレさんは大量のスタッフに囲まれ、大量のチャット窓を開いたり閉じたりしつつ厩戸皇子の真似をしながら去って行った。
「やだぁ!もうっ!スミレさん大丈夫って言ったのに!!」
ボロボロの俺を見ると。勝手にメットを強制パージして、眼球を視て首元に手を触れスタッフに指示を出している。
「つつみちゃん、雑に外すと直すのが」
「黙って!ストレッチャーに乗って!」
怒りでプルプルしだした。不味い。これ、話しかけるとどんどん怒りのボルテージ上がっていくやつだ。隣にガシャコンと広がった台車にどうしても俺を載せたいらしい。
横になるとき首に負荷が掛かって痛いんだよなあ。
言ったら、余計に騒ぎそうなので黙っておこう。
台車に腰掛け、痛む手で後頭部を抑え横になろうとすると、察したスタッフが介助してくれた。
寝っ転がって上を向くと、目の端で金属袋が鯉の餌をボリボリ齧っているのが見えた。喰えるの?それ。
どっから喰ってるんだ?
あ、そこ開くんだ。
俺と目が合うと、ピースしてきた。
「あ。ヤッポン、わたしこのままついてくから、部屋からベースかヴィオラ持ってきて」
「これ食べたらな」
「もぅ!そんなの全部鯉にあげちゃいなよ!もっと美味しいの買ってあげるから!」
「ちっ。仕方ない」
外の池には向かわず、そのまま廊下の向こうに消えていった。
食い意地張ってるなぁ。
御影石の床はガラガラと結構な振動が伝わるので傷に響きまくる。
歩いたほうがマシだろこれ。
エレベーターで待っている時、俺の腹に気付いたスタッフが。
「時間おくと不味いので、直ぐ剥がし始めますね」
あ、ちょ、待、いやまぁ、そうなんだけど。
横についた医療スタッフが俺のスーツをベリベリ剥がし、俺の腹を見たつつみちゃんが悲鳴と共に気を失いぶっ倒れた。
顔を見合わせたスタッフたちは二台目の台車を持ってきてガシャコンと開いた。
・・・おんぶでいいじゃん。
このエレベーター台車二台乗るの?
あ、隣のに乗せるんだな。
気付いたら、寝てしまっていた。
もう夜が明けている。
「あ、起きた?」
「ハラヘッタ」
「軽いもの用意してもらうね」
ずっとヴァイオリンを弾いている。
音はしていない。いや、してるか。
キュッキュッと、時々擦れる音はしている。
ああ、これが、ヴィオラか。形は変だけど。
骨組みと首で支える部分だけで、弦が張ってない。
エレキヴィオラ的な物なのだろうが、音は切っているのか?
見上げれば、あの高級テックスフィアが三つ浮いていた。
治療は終わっているのか、所々にパッドやら包帯やらしてある。
ここは、地下巨大基地の病室だろう。つつみちゃんの横に点滴が何個も行列して吊り下がっていた。一つだけ打ち終わって二個目途中だが、あれ全部打つのか?しょんべん凄いことになりそうだな。
大きな窓の向こうに、朝日に照らされた日本庭園が見える。
機械式駐車場の向うから朝日が見えるって、どうなってるんですかね、ここ地下だろ。
久々の綺麗な朝日に見とれていると、ノックがして、医療スタッフが良い匂いをさせたキッチンワゴンを転がして入ってきた。
飯、飯だ。
「ありがと、後やっとく」
匂いだけで雑巾バリに絞られた胃をおさえる俺を見て、つつみちゃんがニヨニヨしている。
知ってるぞ。絶対これあーんとかするやつだろ。
俺、手が使えるからな。
「早食いするでしょ。駄目だからね」
くそう!くそう!
「何やってんの君ら」
心の中で血の涙を流しながら、美味い飯を無駄に咀嚼してから流し込む俺と、ニッコニコでゆっくり餌を与えるつつみちゃんを見て、入ってきたノリユキは呆れている。
「よこやまクン早食いだからね。しっかり節制してあげないと」
大きなお世話だよ!可愛い子にあーんされるの好きな奴もいるけどさ!俺はいついかなる時も自分の自由に食べたい!
余計に腹減ってきたよ!
「駄目だよ?胃が雷でこんがりボイルされてたんだから。いくら治ったからって、本当なら一週間は食事禁止なんだからね」
え?あ。そうなの?
食べて大丈夫なのか?
「漫才は後でやってよ。とりあえず、ボスが呼んで来いって」
「ログでいいのに」
「面通しでしょ。ボスは兎も角、周りが五月蝿いからねー」
仕方ない。
スリッパが欲しいな。
ベッドから抜けて立とうとしたらつつみちゃんに止められた。
「ダメッ!」
ブラックアウトして力が入らず膝から崩れてしまった。
慌ててつつみちゃんが支えようとしたが間に合わなくて、べちゃっと自分の顔が床に打ち付けられた音が聴こえた。
血が相当足りてない。
床が冷たい。
後、話を聞いた所為か?胃が上ずって喰ったもの吐きそう・・・。
「車椅子・・・も駄目そうだな。ベッドのまま行くか」
狼男が唸っている。
喚くつつみちゃんに介護され、二人がかりでベッドに戻されて、なんとか見えるようになってきた目に映った狼男は、耳の後ろをポリポリ掻いている。
すごく間抜けに見えて、笑ってしまったらつつみちゃんがカンカンになってしまい、何故自分までと理不尽さを滲ませる狼男と共にアイコンタクト取りながら必死になって宥めすかす。スミレさんから催促のログがとんでくるまでそれは続いた。
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祝 50話!
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