寝起きでロールプレイ

スイカの種

文字の大きさ
50 / 126
第一章

第50話 アジト到着

しおりを挟む
 大宮市内では、そう酷い事にはならなかった。
 通せんぼした警備会社の車を跳ね飛ばしたりは一部あったが、上空を囲むヘリからの警告や攻撃は無く。そのまま付かず離れず、スミレさんのアジトまで付いてきて、敷地内に車が入るとすんなり帰投していった。
 貝塚からの連絡も無かった。

 アジトは、中心に一ヘクタール程の中庭を囲む三十階建ての四角いビルだった。
 整備された庭園にモニュメントがちらほら建っていて、ビルをぶった切る十字に車道が整備されている。
 ライヴハウスのオーナーがこんなの持ってんの?!
 正面からビル内の立体駐車場に入れるのだが、車は中庭に抜けて、中心に来るとそこで停まった。

 まさか。

 正面の道路が持ち上がり、下るスロープが出現する。

「すげぇ」

「男の子はこういうの好きだものね」

 車はリニアレールに載り、そのままスロープを下りてゆく。
 地下に入ると、誘導灯が順番つ点灯していき、かなり巨大な機械式駐車場なのが分かる。
 中庭の下はぶち抜かれて、その底まで上と同じくらいの深さに見えるので大体百二十メートルはあるだろうか。
 一番下までレールに載ったままエレベータで下り、最下層には普通にホテルの和式庭園とエントランスが大量の噴水と共に待ち構えていた。
 今は時間帯が夜中だしあまり照明も明るくないが、地下のくせに光量が足りているのか、植木も枯れていない、よく手入れされている庭だ。
 池に架かる小さな橋から、つつみちゃんと金属袋が鯉に餌をやっていた。
 車に気付いてにこやかに手を振っていたが、入口に乗りつけ、血だらけの俺らが出てくるのを見て血相を変え、餌の袋を金属袋にホン投げて走り寄ってくる。あ。こぼしてる。あの袋頭、運動神経悪いのか?
 エントランスには傭兵の他、医療スタッフっぽいのが大勢待機している。

「明日の朝、呼ぶわ」

 スミレさんは大量のスタッフに囲まれ、大量のチャット窓を開いたり閉じたりしつつ厩戸皇子の真似をしながら去って行った。

「やだぁ!もうっ!スミレさん大丈夫って言ったのに!!」

 ボロボロの俺を見ると。勝手にメットを強制パージして、眼球を視て首元に手を触れスタッフに指示を出している。

「つつみちゃん、雑に外すと直すのが」

「黙って!ストレッチャーに乗って!」

 怒りでプルプルしだした。不味い。これ、話しかけるとどんどん怒りのボルテージ上がっていくやつだ。隣にガシャコンと広がった台車にどうしても俺を載せたいらしい。

 横になるとき首に負荷が掛かって痛いんだよなあ。
 言ったら、余計に騒ぎそうなので黙っておこう。
 台車に腰掛け、痛む手で後頭部を抑え横になろうとすると、察したスタッフが介助してくれた。
 寝っ転がって上を向くと、目の端で金属袋が鯉の餌をボリボリ齧っているのが見えた。喰えるの?それ。
 どっから喰ってるんだ?
 あ、そこ開くんだ。
 俺と目が合うと、ピースしてきた。

「あ。ヤッポン、わたしこのままついてくから、部屋からベースかヴィオラ持ってきて」

「これ食べたらな」

「もぅ!そんなの全部鯉にあげちゃいなよ!もっと美味しいの買ってあげるから!」

「ちっ。仕方ない」

 外の池には向かわず、そのまま廊下の向こうに消えていった。
 食い意地張ってるなぁ。

 御影石の床はガラガラと結構な振動が伝わるので傷に響きまくる。
 歩いたほうがマシだろこれ。
 エレベーターで待っている時、俺の腹に気付いたスタッフが。

「時間おくと不味いので、直ぐ剥がし始めますね」

 あ、ちょ、待、いやまぁ、そうなんだけど。

 横についた医療スタッフが俺のスーツをベリベリ剥がし、俺の腹を見たつつみちゃんが悲鳴と共に気を失いぶっ倒れた。
 顔を見合わせたスタッフたちは二台目の台車を持ってきてガシャコンと開いた。
 ・・・おんぶでいいじゃん。
 このエレベーター台車二台乗るの?
 あ、隣のに乗せるんだな。



 気付いたら、寝てしまっていた。
 もう夜が明けている。

「あ、起きた?」

「ハラヘッタ」

「軽いもの用意してもらうね」

 ずっとヴァイオリンを弾いている。
 音はしていない。いや、してるか。
 キュッキュッと、時々擦れる音はしている。
 ああ、これが、ヴィオラか。形は変だけど。
 骨組みと首で支える部分だけで、弦が張ってない。
 エレキヴィオラ的な物なのだろうが、音は切っているのか?
 見上げれば、あの高級テックスフィアが三つ浮いていた。
 治療は終わっているのか、所々にパッドやら包帯やらしてある。
 ここは、地下巨大基地の病室だろう。つつみちゃんの横に点滴が何個も行列して吊り下がっていた。一つだけ打ち終わって二個目途中だが、あれ全部打つのか?しょんべん凄いことになりそうだな。
 大きな窓の向こうに、朝日に照らされた日本庭園が見える。
 機械式駐車場の向うから朝日が見えるって、どうなってるんですかね、ここ地下だろ。
 久々の綺麗な朝日に見とれていると、ノックがして、医療スタッフが良い匂いをさせたキッチンワゴンを転がして入ってきた。

 飯、飯だ。

「ありがと、後やっとく」

 匂いだけで雑巾バリに絞られた胃をおさえる俺を見て、つつみちゃんがニヨニヨしている。
 知ってるぞ。絶対これあーんとかするやつだろ。
 俺、手が使えるからな。

「早食いするでしょ。駄目だからね」

 くそう!くそう!



「何やってんの君ら」

 心の中で血の涙を流しながら、美味い飯を無駄に咀嚼してから流し込む俺と、ニッコニコでゆっくり餌を与えるつつみちゃんを見て、入ってきたノリユキは呆れている。

「よこやまクン早食いだからね。しっかり節制してあげないと」

 大きなお世話だよ!可愛い子にあーんされるの好きな奴もいるけどさ!俺はいついかなる時も自分の自由に食べたい!
 余計に腹減ってきたよ!

「駄目だよ?胃が雷でこんがりボイルされてたんだから。いくら治ったからって、本当なら一週間は食事禁止なんだからね」

 え?あ。そうなの?
 食べて大丈夫なのか?

「漫才は後でやってよ。とりあえず、ボスが呼んで来いって」

「ログでいいのに」

「面通しでしょ。ボスは兎も角、周りが五月蝿いからねー」

 仕方ない。
 スリッパが欲しいな。
 ベッドから抜けて立とうとしたらつつみちゃんに止められた。

「ダメッ!」

 ブラックアウトして力が入らず膝から崩れてしまった。
 慌ててつつみちゃんが支えようとしたが間に合わなくて、べちゃっと自分の顔が床に打ち付けられた音が聴こえた。
 血が相当足りてない。
 床が冷たい。
 後、話を聞いた所為か?胃が上ずって喰ったもの吐きそう・・・。

「車椅子・・・も駄目そうだな。ベッドのまま行くか」

 狼男が唸っている。
 喚くつつみちゃんに介護され、二人がかりでベッドに戻されて、なんとか見えるようになってきた目に映った狼男は、耳の後ろをポリポリ掻いている。
 すごく間抜けに見えて、笑ってしまったらつつみちゃんがカンカンになってしまい、何故自分までと理不尽さを滲ませる狼男と共にアイコンタクト取りながら必死になって宥めすかす。スミレさんから催促のログがとんでくるまでそれは続いた。

----
祝 50話!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
現代文学
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

リボーン&リライフ

廣瀬純七
SF
性別を変えて過去に戻って人生をやり直す男の話

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

処理中です...