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緑の書 第1章
9話 己の悪魔
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なんだこの化け物は…
化け物に掴まれた肩をすぐ振り解き、数歩後ろに下がる。
化け物はその様子をただずっと見ていた。
顔に穴が空いていて表情は見えないが、明らかにこちらを見えてるな。
全体を見て改めて思うが異形な形をしている。
天使みたいな翼が左翼に3本、蝙蝠みたいな翼が右翼に3本、蜥蜴のような鱗に覆われた尾に、身体も暗い灰色の肌。
手には鋭い爪が生やし、あれで切り裂かれてはひとたまりもないだろう。
例えるなら、天使と悪魔を混ぜたような生き物だ。
だが、すぐ爪で切り裂かないことから敵意はないのか?
まだ断定するのは早いが…
『貴様がそうか』
悍ましい声が頭に鳴り響く。
ブルームーンと同じだ。
頭に話しかけられる感じがする。
ガリルでいうブルームーン的なやつが、あの化け物か。
つまり、俺の右手にはアイツが宿ってるってことか。
もっと友好的な感じなのがよかったな。
『案ずるな、貴様を殺しはしない』
化け物は近づきながらそう言う。
化け物にそう言われて易々と信じる方が難しいと思うが。
人によっては悲鳴をあげそうな見た目してるしな。
『そう警戒するな。貴様は我の宿主なのだから』
「そう言われても、はいそうですかと首を縦に振りにくくないか。それに、俺は気づいたらここに飛ばされて君が現れ、理解が追いついてない状況だからな」
ガリルはどうやってブルームーンとあそこまで仲良くなったんだろうか。
ダーリン呼びされてたし…
俺があの化け物と仲良くなる姿が想像出来ない。
『なるほどな。君の心境は理解した。しかし何か目的があってきたのではないか?』
「あぁ、とある人に能力の使い方を教えるって言われたらここにきた。君がそれを知ってるの?」
俺がそう言うと化け物は顎をさすり始め、少しするとやめた。
『そうか貴様は我の力を使いたいのか。それは構わないが、人の身に余る故、3つ条件をつけるが構わないか?』
意外と話が通じるな。
人のみに余るって言っても、ココアが生身で人智を超える強さしてたからな。
他は分からないが、人の身に余ることは他と変わらないだろう。
ただ、
「条件ってなんだ」
『一つ、貴様の感覚を共有させること』
今の言葉から察するに、ブルームーンみたいに出さないと外のことを見たり聞いたりできないのか。
ただ、特に私生活には今のところ問題ないしから大丈夫かな。
『二つ、自我を失わないこと』
「自我を失わない?」
どういうことだ。
まずそんなことはないと思うが、仮にあってもなんで失ったらだめなんだ。
『貴様らが印持者呼ぶ存在。そいつらが化け物になってしまう理由は、心が堕ちて我のような存在に飲み込まれるからだ』
なるほど、だがそれは俺にはデメリットだが、この化け物にはメリットなのでは?
「なんでそれが条件なんだ?」
『すぐに貴様が堕ちて俺に飲み込まれれば、俺に不都合なことがあるだけだ。気にするな、貴様にも悪い話ではないだろう』
「まぁ、そうだが」
不都合点が気になるが、これ以上聞いても教えてくれないだろう。
どっちにしたって、俺も化け物になるのは嫌だしな。
ただ、モネが教えてあげるって言ってたけど解決したな。
まぁ、会話の内容はガリルは知らなかったし、遅かれ早かれ変わらないか。
『最後の条件…というか問題だが、一時的に激痛に耐えることとなる』
「どういうことだ?」
『貴様が人の身であるから、我の能力を扱うための身体に変形しなければならない。その時に痛みを伴うのだ。貴様にとっての問題は痛みだけだ。見た目が我に近づくような問題は起こらん』
痛みか。
身体を変形っていうと聞こえが悪いが、おそらくココアやガリルも乗り越えたからそうなったんだろうしな。
他の条件を見ても、俺に不都合なことはあまりないし。
「その条件受け入れるよ」
『了解した。能力の扱い方は痛みに耐えた後に教えよう』
化け物は右手を俺に向ける。
『そういえば、名を伝えるのを忘れていた。我の名はルシフだ。貴様の名は?』
「キリル・クローバーだ」
『了解した。キリルよ少し耐えろよ。ᚨᛋᛋᛁᛗᛁᛚᚨᛏᛁᛟᚾ ᛟᚠ ᛗᛁᚾᛞ ᚨᚾᛞ ᛒᛟᛞ』
「ぐはっ!?」
なんだ…これは…
身体が熱い、ドロドロに溶けてしまいそうだ。
「はぁ~はー、はぁ~はー」
喉も苦しくなってきた。
呼吸がしづらい。
意識が…とおのく…
キリルは痛みに耐えながら倒れた。
化け物に掴まれた肩をすぐ振り解き、数歩後ろに下がる。
化け物はその様子をただずっと見ていた。
顔に穴が空いていて表情は見えないが、明らかにこちらを見えてるな。
全体を見て改めて思うが異形な形をしている。
天使みたいな翼が左翼に3本、蝙蝠みたいな翼が右翼に3本、蜥蜴のような鱗に覆われた尾に、身体も暗い灰色の肌。
手には鋭い爪が生やし、あれで切り裂かれてはひとたまりもないだろう。
例えるなら、天使と悪魔を混ぜたような生き物だ。
だが、すぐ爪で切り裂かないことから敵意はないのか?
まだ断定するのは早いが…
『貴様がそうか』
悍ましい声が頭に鳴り響く。
ブルームーンと同じだ。
頭に話しかけられる感じがする。
ガリルでいうブルームーン的なやつが、あの化け物か。
つまり、俺の右手にはアイツが宿ってるってことか。
もっと友好的な感じなのがよかったな。
『案ずるな、貴様を殺しはしない』
化け物は近づきながらそう言う。
化け物にそう言われて易々と信じる方が難しいと思うが。
人によっては悲鳴をあげそうな見た目してるしな。
『そう警戒するな。貴様は我の宿主なのだから』
「そう言われても、はいそうですかと首を縦に振りにくくないか。それに、俺は気づいたらここに飛ばされて君が現れ、理解が追いついてない状況だからな」
ガリルはどうやってブルームーンとあそこまで仲良くなったんだろうか。
ダーリン呼びされてたし…
俺があの化け物と仲良くなる姿が想像出来ない。
『なるほどな。君の心境は理解した。しかし何か目的があってきたのではないか?』
「あぁ、とある人に能力の使い方を教えるって言われたらここにきた。君がそれを知ってるの?」
俺がそう言うと化け物は顎をさすり始め、少しするとやめた。
『そうか貴様は我の力を使いたいのか。それは構わないが、人の身に余る故、3つ条件をつけるが構わないか?』
意外と話が通じるな。
人のみに余るって言っても、ココアが生身で人智を超える強さしてたからな。
他は分からないが、人の身に余ることは他と変わらないだろう。
ただ、
「条件ってなんだ」
『一つ、貴様の感覚を共有させること』
今の言葉から察するに、ブルームーンみたいに出さないと外のことを見たり聞いたりできないのか。
ただ、特に私生活には今のところ問題ないしから大丈夫かな。
『二つ、自我を失わないこと』
「自我を失わない?」
どういうことだ。
まずそんなことはないと思うが、仮にあってもなんで失ったらだめなんだ。
『貴様らが印持者呼ぶ存在。そいつらが化け物になってしまう理由は、心が堕ちて我のような存在に飲み込まれるからだ』
なるほど、だがそれは俺にはデメリットだが、この化け物にはメリットなのでは?
「なんでそれが条件なんだ?」
『すぐに貴様が堕ちて俺に飲み込まれれば、俺に不都合なことがあるだけだ。気にするな、貴様にも悪い話ではないだろう』
「まぁ、そうだが」
不都合点が気になるが、これ以上聞いても教えてくれないだろう。
どっちにしたって、俺も化け物になるのは嫌だしな。
ただ、モネが教えてあげるって言ってたけど解決したな。
まぁ、会話の内容はガリルは知らなかったし、遅かれ早かれ変わらないか。
『最後の条件…というか問題だが、一時的に激痛に耐えることとなる』
「どういうことだ?」
『貴様が人の身であるから、我の能力を扱うための身体に変形しなければならない。その時に痛みを伴うのだ。貴様にとっての問題は痛みだけだ。見た目が我に近づくような問題は起こらん』
痛みか。
身体を変形っていうと聞こえが悪いが、おそらくココアやガリルも乗り越えたからそうなったんだろうしな。
他の条件を見ても、俺に不都合なことはあまりないし。
「その条件受け入れるよ」
『了解した。能力の扱い方は痛みに耐えた後に教えよう』
化け物は右手を俺に向ける。
『そういえば、名を伝えるのを忘れていた。我の名はルシフだ。貴様の名は?』
「キリル・クローバーだ」
『了解した。キリルよ少し耐えろよ。ᚨᛋᛋᛁᛗᛁᛚᚨᛏᛁᛟᚾ ᛟᚠ ᛗᛁᚾᛞ ᚨᚾᛞ ᛒᛟᛞ』
「ぐはっ!?」
なんだ…これは…
身体が熱い、ドロドロに溶けてしまいそうだ。
「はぁ~はー、はぁ~はー」
喉も苦しくなってきた。
呼吸がしづらい。
意識が…とおのく…
キリルは痛みに耐えながら倒れた。
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