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第2章
第27話
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「それで、結局領主代行は羊毛の件を知っててわざと高い納税額を言ってきたってこと?」
「確証はないですが、少なくともこの村の羊毛の価値に初めから気づいていたのは間違いないでしょうね」
「それじゃあ、なんで直接教えてくれなかったのかしら」
「多分、ジョセフの報復を恐れたんじゃないかな?領主代行が直接伝えてしまえば、矛先が領主代行に向かってしまう。しかし、村が自主的に気づいたのなら、ジョセフはどうしようもない。村を潰してしまっては元も子もないからね」
収穫祭のあと無事に納税も終わり、領主代行から、今後の納税は例年よりも少しだけ高い額になることを伝えられたと、ウィルは村の人々に伝えた。
ちなみに領主代行はその税を使って、隣町までの道を舗装してくれるのだそうだ。
これで、2日かかっていた移動が恐らく1日でも可能になるだろうとウィルは喜んでいた。
3人は今、出立の準備をしていた。名残惜しいが帰る時が来たのだ。
シャルルは羊毛以外にも色々と商売になりそうな物を見つけたらしい。見本をせっせと馬車に積んでいた。
ソフィはマチと離れるのが寂しいらしい。
火の精霊は相性が悪いと言っていたが、カインを除くと最もマチと一緒に過ごしていたのはソフィかもしれない。
サラも愛でていたが、それよりもカインとの時間の方が大事だったようだ。
「お父さん、起きてる?」
「ん? こんな時間にどうしたんだい?」
夜中、他の2人が寝静まってから、サラはカインの寝室を訪ねた。
ずっと放置していたが、タイラントドラゴンに切り裂かれてしまった防具の相談をしに来たのだ。
村の者は皆知っているが、カインの付与術は2人にはまだ内緒だった。
大っぴらに話していいのか分からなかったため、わざわざこんな時間を選んだのだ。
「言いそびれてたんだけど、お父さんに貰った鎧、この前壊しちゃって・・・」
「ええ? お前、まだあんな装備を使ってたのかい? ああ。でも今はさすがにいい装備をしているみたいだね。あれはワイバーンの革鎧だろう?」
サラはタイラントドラゴン討伐の後、有り合わせでワイバーンの皮鎧を購入していた。
普段ならそこそこ値の張る高級防具だが、素材の供給が多かったため、安く買えたのだ。
サラは速さを生かした攻撃が主なため、堅牢な鎧よりも動きやすさを重視した防具でもあった。
「あんな装備って・・・。やっぱりお父さんは、自分の才能に気づいていないのね」
「どういうことだい?」
「お父さんがくれた剣と防具。巷では宝具と間違えられるくらい高性能なのよ」
「なんだって? だってあれは、ただの鉄剣と革鎧だぞ? 宝具になんてどうやったら間違えられるんだい?」
「もう! ただの、じゃなくてお父さんの付与術が施されているじゃない! その性能は私が保証するわ。セレンディアでもあれより性能のいい装備を手に入れるのは困難よ」
「何かの間違いじゃないのかい? そんな強力な付与をかけた記憶はないんだが・・・」
「お父さんを説得するのは諦めるわ・・・。それで、お願いがあるんだけれど、また私の装備に付与術をかけてくれないかしら?」
「うーん。それは構わないけれど、今は素材が足りないな」
「素材? お父さんが付与術をかけるのに素材を選ぶことなんてあった?」
「サラには話していなかったかな? 付与術をかける素材に限定はないけれど、やっぱり相性があってね。特に、永続的に効果をもたらすには必要な素材があるんだよ」
「どういうこと?」
「ただ付与術をかけるだけだと、時間が経つにつれその効果は弱まってしまうんだ。そこらへんは補助魔法と一緒だね。だから、村の人に渡している道具なんかは、定期的に魔力を込めなおさないと効果が切れてしまうんだ。まぁ、あれだとそんなに強い効果は必要ないから、弱く長くに調整していてそこまですぐに効果が切れることはないけれど」
「じゃあ、私が貰った装備は?」
「あれは特別製でね。周りに見えないくらい薄くミスリルのコーティングが施されているんだ。それに私の血を触媒とした特別な付与をかけると、ほぼ永続的な効果を持った付与術が付与できるんだよ。そこで問題なんだが、この前サラとソフィちゃんに贈り物を贈った際に、残りのミスリルを全部使いきってしまったんだ。そういえば、サラ、手紙と贈り物は受け取ってもらえたかい?」
「いいえ。受け取ってないわ。いつ頃のこと?」
「えーと、ちょうどサラ達が来る半月ほど前かな。ああ、そうか。どこかですれ違いになっているようだね。ソニアというこの地域出身の女の子の魔術師がいるパーティに頼んだのだけれど」
「そうね。その時期ならこっちもオティスに向かい始めている頃でしょうし」
「まぁ、どちらにしろ防具に使うならあの量じゃあ足りない。どこかでミスリルを調達しないといけないね。多分オリハルコンでもいいけれど、そっちはもっと手に入りにくいから」
「どのくらい必要なの?」
「うーん。防具に使うとすると拳二つ分くらいは必要だね。そんな量のミスリルを買うとなるととてもじゃないけれど無理だな」
「お金はどうにかできそうだけれど、元々ミスリルは希少で一般向けに売りに出されるなんて滅多にないから、自分で採掘場所へ行って融通してもらった方が早そうね。そうなると、うーん。それまではこの装備で頑張るしかないのかぁ」
「そのことなんだけれどね。ちょうどいい。私もサラに相談したいことがあったんだよ」
◇
明くる日、3人は荷物の最終確認をし、忘れ物がないことを確かめた後、馬車に乗り込んだ。カインは何故か3人と同じような大きさの荷物を左肩にかけている。
「それじゃあ、カインさん。お世話になりました! なんだか、本当のお父さんが出来たみたいで楽しかったです。また遊びに来ますね! それまでお元気で!」
ソフィがカインに向かい別れの挨拶をする。何故か、共に世話になったはずの残りの2人は挨拶もせずに、少しにやけた顔でソフィを見ていた。
カインもソフィの挨拶に答えず、馬車に乗り込んできた。
「あれ? カインさん。まさか隣町まで見送ってくれるんですか? なんだぁ。知りませんでした。他の2人は知っていたんですね。それならそうと教えてくれればいいのに」
「違うのよ。ソフィ」
まだにやけた顔でサラはソフィを否定した。何がなんだか分からないといった顔でソフィはいたずらな顔を向ける3人を順番に見た。
「ああ! ソフィを見てるのも面白いけれど、もう黙ってるのは無理! 聞いて! ソフィ! お父さん、セレンディアまで一緒に来てくれるのよ! また一から冒険者を始めるって!」
「え?!!! 本当ですか? カインさん?」
「ああ。色々な事情もあるんだが、要は昔の夢を捨てられなくてね。先に娘に夢を叶えられてしまったが、私の夢は私のものだからね。どこまでいけるか分からないが、Sランクを目指して頑張ってみたいと思っているよ」
ソフィは目を丸くして、次の瞬間カインに強く抱き付いた。馬車が大きく揺れる。
カインの右肩にとまっていたマチは驚いたのか、一度中空に飛び上がり、カインの頭の上に降り立つと嬉しそうな声でぴよぴよっと2回鳴いた。
◇
高価そうな調度品が品良く並べられた一室に2人は居た。高級そうな服装を着こなした男が、顔が隠れるほど深くフードを被った男に言う。
「これで『色欲』、『憤怒』に加えて『暴食』も手に入ったのだな」
「そうだ。アレもすでに実になっているから、残りは3つだな」
少年のような声をしたフードの男が答える。それを聞いた男は満足そうに頷いた。
「ところで、気になる奴がいる。『憤怒』も『暴食』もそいつらにやられた。どちらも実がなった後だからよかったが、残りの種が成長する前に狩られてはかなわん。どうにかしろ」
「ふむ。あの昼食会の時の2人だな。ちょうどいい。あいつらはSランク冒険者だ。居場所も分かるし、依頼を出せばある程度動きも制限できる」
「ふん。そういう謀はお前の方がよく向いている。任せたぞ」
「それならば、この国にまた招待してもいい。この国にいるのはアレだけだ。アレに対峙させても問題ないだろう」
「ああ。アレは十分に実がなった。そろそろ刈り時だ。アレにやられるのでも、逆に狩ってもいいか」
そういうとフードの男はその場から一瞬で姿を消した。あとに残された男は、今流行りだという北の地方で作られた酒を飲むと、楽しそうな笑い声を上げた。
◇◇◇◇◇◇
いつも読んでいただきありがとうございます。
やっと第2章も終了です。
ここまで飽きずに読んでくださった方、お気に入り登録をしてくださっている方、感想を書いてくれた方本当にありがとうございます。
飽き症の私がここまで1日も休まずに書いてこれたのは皆様方のおかげです。
さて、第3章ですが、こちらも幸いプロットは大枠でできていますので、明日から休みなく更新できると思います。
これからもよろしくお願いします。
最後になりますが、励みになりますので、少しでも面白いと思っていただけたら感想、お気に入り登録をお願いします。
「確証はないですが、少なくともこの村の羊毛の価値に初めから気づいていたのは間違いないでしょうね」
「それじゃあ、なんで直接教えてくれなかったのかしら」
「多分、ジョセフの報復を恐れたんじゃないかな?領主代行が直接伝えてしまえば、矛先が領主代行に向かってしまう。しかし、村が自主的に気づいたのなら、ジョセフはどうしようもない。村を潰してしまっては元も子もないからね」
収穫祭のあと無事に納税も終わり、領主代行から、今後の納税は例年よりも少しだけ高い額になることを伝えられたと、ウィルは村の人々に伝えた。
ちなみに領主代行はその税を使って、隣町までの道を舗装してくれるのだそうだ。
これで、2日かかっていた移動が恐らく1日でも可能になるだろうとウィルは喜んでいた。
3人は今、出立の準備をしていた。名残惜しいが帰る時が来たのだ。
シャルルは羊毛以外にも色々と商売になりそうな物を見つけたらしい。見本をせっせと馬車に積んでいた。
ソフィはマチと離れるのが寂しいらしい。
火の精霊は相性が悪いと言っていたが、カインを除くと最もマチと一緒に過ごしていたのはソフィかもしれない。
サラも愛でていたが、それよりもカインとの時間の方が大事だったようだ。
「お父さん、起きてる?」
「ん? こんな時間にどうしたんだい?」
夜中、他の2人が寝静まってから、サラはカインの寝室を訪ねた。
ずっと放置していたが、タイラントドラゴンに切り裂かれてしまった防具の相談をしに来たのだ。
村の者は皆知っているが、カインの付与術は2人にはまだ内緒だった。
大っぴらに話していいのか分からなかったため、わざわざこんな時間を選んだのだ。
「言いそびれてたんだけど、お父さんに貰った鎧、この前壊しちゃって・・・」
「ええ? お前、まだあんな装備を使ってたのかい? ああ。でも今はさすがにいい装備をしているみたいだね。あれはワイバーンの革鎧だろう?」
サラはタイラントドラゴン討伐の後、有り合わせでワイバーンの皮鎧を購入していた。
普段ならそこそこ値の張る高級防具だが、素材の供給が多かったため、安く買えたのだ。
サラは速さを生かした攻撃が主なため、堅牢な鎧よりも動きやすさを重視した防具でもあった。
「あんな装備って・・・。やっぱりお父さんは、自分の才能に気づいていないのね」
「どういうことだい?」
「お父さんがくれた剣と防具。巷では宝具と間違えられるくらい高性能なのよ」
「なんだって? だってあれは、ただの鉄剣と革鎧だぞ? 宝具になんてどうやったら間違えられるんだい?」
「もう! ただの、じゃなくてお父さんの付与術が施されているじゃない! その性能は私が保証するわ。セレンディアでもあれより性能のいい装備を手に入れるのは困難よ」
「何かの間違いじゃないのかい? そんな強力な付与をかけた記憶はないんだが・・・」
「お父さんを説得するのは諦めるわ・・・。それで、お願いがあるんだけれど、また私の装備に付与術をかけてくれないかしら?」
「うーん。それは構わないけれど、今は素材が足りないな」
「素材? お父さんが付与術をかけるのに素材を選ぶことなんてあった?」
「サラには話していなかったかな? 付与術をかける素材に限定はないけれど、やっぱり相性があってね。特に、永続的に効果をもたらすには必要な素材があるんだよ」
「どういうこと?」
「ただ付与術をかけるだけだと、時間が経つにつれその効果は弱まってしまうんだ。そこらへんは補助魔法と一緒だね。だから、村の人に渡している道具なんかは、定期的に魔力を込めなおさないと効果が切れてしまうんだ。まぁ、あれだとそんなに強い効果は必要ないから、弱く長くに調整していてそこまですぐに効果が切れることはないけれど」
「じゃあ、私が貰った装備は?」
「あれは特別製でね。周りに見えないくらい薄くミスリルのコーティングが施されているんだ。それに私の血を触媒とした特別な付与をかけると、ほぼ永続的な効果を持った付与術が付与できるんだよ。そこで問題なんだが、この前サラとソフィちゃんに贈り物を贈った際に、残りのミスリルを全部使いきってしまったんだ。そういえば、サラ、手紙と贈り物は受け取ってもらえたかい?」
「いいえ。受け取ってないわ。いつ頃のこと?」
「えーと、ちょうどサラ達が来る半月ほど前かな。ああ、そうか。どこかですれ違いになっているようだね。ソニアというこの地域出身の女の子の魔術師がいるパーティに頼んだのだけれど」
「そうね。その時期ならこっちもオティスに向かい始めている頃でしょうし」
「まぁ、どちらにしろ防具に使うならあの量じゃあ足りない。どこかでミスリルを調達しないといけないね。多分オリハルコンでもいいけれど、そっちはもっと手に入りにくいから」
「どのくらい必要なの?」
「うーん。防具に使うとすると拳二つ分くらいは必要だね。そんな量のミスリルを買うとなるととてもじゃないけれど無理だな」
「お金はどうにかできそうだけれど、元々ミスリルは希少で一般向けに売りに出されるなんて滅多にないから、自分で採掘場所へ行って融通してもらった方が早そうね。そうなると、うーん。それまではこの装備で頑張るしかないのかぁ」
「そのことなんだけれどね。ちょうどいい。私もサラに相談したいことがあったんだよ」
◇
明くる日、3人は荷物の最終確認をし、忘れ物がないことを確かめた後、馬車に乗り込んだ。カインは何故か3人と同じような大きさの荷物を左肩にかけている。
「それじゃあ、カインさん。お世話になりました! なんだか、本当のお父さんが出来たみたいで楽しかったです。また遊びに来ますね! それまでお元気で!」
ソフィがカインに向かい別れの挨拶をする。何故か、共に世話になったはずの残りの2人は挨拶もせずに、少しにやけた顔でソフィを見ていた。
カインもソフィの挨拶に答えず、馬車に乗り込んできた。
「あれ? カインさん。まさか隣町まで見送ってくれるんですか? なんだぁ。知りませんでした。他の2人は知っていたんですね。それならそうと教えてくれればいいのに」
「違うのよ。ソフィ」
まだにやけた顔でサラはソフィを否定した。何がなんだか分からないといった顔でソフィはいたずらな顔を向ける3人を順番に見た。
「ああ! ソフィを見てるのも面白いけれど、もう黙ってるのは無理! 聞いて! ソフィ! お父さん、セレンディアまで一緒に来てくれるのよ! また一から冒険者を始めるって!」
「え?!!! 本当ですか? カインさん?」
「ああ。色々な事情もあるんだが、要は昔の夢を捨てられなくてね。先に娘に夢を叶えられてしまったが、私の夢は私のものだからね。どこまでいけるか分からないが、Sランクを目指して頑張ってみたいと思っているよ」
ソフィは目を丸くして、次の瞬間カインに強く抱き付いた。馬車が大きく揺れる。
カインの右肩にとまっていたマチは驚いたのか、一度中空に飛び上がり、カインの頭の上に降り立つと嬉しそうな声でぴよぴよっと2回鳴いた。
◇
高価そうな調度品が品良く並べられた一室に2人は居た。高級そうな服装を着こなした男が、顔が隠れるほど深くフードを被った男に言う。
「これで『色欲』、『憤怒』に加えて『暴食』も手に入ったのだな」
「そうだ。アレもすでに実になっているから、残りは3つだな」
少年のような声をしたフードの男が答える。それを聞いた男は満足そうに頷いた。
「ところで、気になる奴がいる。『憤怒』も『暴食』もそいつらにやられた。どちらも実がなった後だからよかったが、残りの種が成長する前に狩られてはかなわん。どうにかしろ」
「ふむ。あの昼食会の時の2人だな。ちょうどいい。あいつらはSランク冒険者だ。居場所も分かるし、依頼を出せばある程度動きも制限できる」
「ふん。そういう謀はお前の方がよく向いている。任せたぞ」
「それならば、この国にまた招待してもいい。この国にいるのはアレだけだ。アレに対峙させても問題ないだろう」
「ああ。アレは十分に実がなった。そろそろ刈り時だ。アレにやられるのでも、逆に狩ってもいいか」
そういうとフードの男はその場から一瞬で姿を消した。あとに残された男は、今流行りだという北の地方で作られた酒を飲むと、楽しそうな笑い声を上げた。
◇◇◇◇◇◇
いつも読んでいただきありがとうございます。
やっと第2章も終了です。
ここまで飽きずに読んでくださった方、お気に入り登録をしてくださっている方、感想を書いてくれた方本当にありがとうございます。
飽き症の私がここまで1日も休まずに書いてこれたのは皆様方のおかげです。
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