辺境暮らしの付与術士

黄舞

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第5章

第108話

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 カイン達がベヒーモスの角を運んで街の入口に辿り着くと、ちょうどサラが戻ってきたところだった。
 サラはカインたちに向かって手を振っている。隣に一人の女性を携えているようだ。

「ただいま! お父さん。ソフィ。え……っと、どちらさま?」

 サラはカインとソフィの隣にいる見慣れぬ男とエルフの女性を見て、目を白黒させている。
 そういうサラも二人が見たことの無い女性を連れているのだからお互い様だ。

「えーっと、色々あってな。詳しいことは後でゆっくりと話すとして。こちらはアオイさんとコハンさん。そちらは?」
「はじめまして。カインの娘のサラです。こちらはアイリさん。集落で色々あったので一緒に説明してもらうために連れてきたの」

 互いに挨拶を交わした後、立ち話もなんなので街の料理屋へと向かいそこでそれぞれが経験した事を詳しく話すことになった。
 ベヒーモスの角はカインが解呪の付与魔法をかけたあと、ひとまず造船所の倉庫の置かせてもらうことにした。

 まずはカインがアオイと遭遇したこと、カリラの日記のことやベヒーモスの襲撃から撃退までを簡単に説明した。
 続いてサラとソフィがそれぞれの集落で発生した不思議な呪いについて話し、採鉱や伐採の再開とその経緯の節約としてアイリとコハンを連れてきたことを伝えた。

 互いに話すべきことを話した後、サラが口を開く。

「それにしても、私一人ハズレくじ引いたと思ってたら、私が一番楽だったなんて。少なくとも襲われることなんてなかったもの」
「私なんて最悪よ。話は通じない上に魔物ではないのに襲ってくるんだから。危うく殺しちゃうところだったわ」

 ソフィがさらりと言った言葉にコハンは眉根を上げ、アイリはあからさまに驚いた顔をした。

「それよりもやっぱり一番大変だったのはお父さんよ。よく伝説の魔物なんかとなんの準備無しに遭遇して無事だったわね」
「ああ。本当に運が良かったんだよ。それと、ここに居るアオイさんのおかげだ」

 アオイは褒められたのがこそばゆいのか、ただ頭を掻いていた。
 そうこうしているうちに夜はふけ、話はこの辺りにして宿に行くことになった。

 別々に止まる理由も無かったため、カインとアオイが同じ部屋、残りの四人が同室になった。
 互いに初対面のアイリとコハンを二人はきりにする訳にもいかず、それならば全員一緒にということだった。

 その夜。女性達は様々な話題で盛り上がっていた。
 特にソフィからコハンがララの弟子だと聞いたサラは、ララの話を根掘り葉掘り聞いた。

「それで、ララさんの好きな人が同じパーティにいるんですよね!?」
「うむ。そのはずじゃ。カイン殿も以前同じパーティにいたのじゃな? あの魔力……姉様が好きになってもおかしくないのじゃ……」

「私はルークさんだと思うけどなぁ。師匠はああ見えて俺様に弱いんだと思うんだよね」
「意外とミューさんかも? ほら、なんだかんだいってあの二人、妙に仲がいいし」

 ワイワイ話す三人をアイリは楽しそうに眺めていた。
 集落には同じ年頃の女性などいないため、こうやって女性が集まってたわいもない話で盛り上がるのが楽しくて仕方がなかった。

「そう言えば、アイリさんってすごく絵が上手なんだよ! そうだ! 街で見かけた怪しい女性の絵を持ってきてもらったんだ。見てみる?」
「あ、今出しますね」

 サラに言われアイリはいそいそと自分の荷物の中から自分と同じ髪の色をした女性の絵を取り出し、三人に見せた。
 サラはまるで自分が描いたかのように自慢気な顔をしている。

 しかし、ソフィとコハンは驚きの表情で描かれたその女性の絵を凝視していた。
 不思議そうに二人を覗くサラとアイリに、ソフィがおもむろに声を上げた。

「これ、アイリさんの集落に現れた怪しい女性って言ったわよね? この女性が現れてから、集落の人達がおかしくなり始めたって」
「はい。この女性が直接関係しているかどうかは分かりませんが……」

 ソフィは今日出会った女性の形を模した不思議な魔物、魔物と呼べるのかどうかすら怪しい何かのことについて、二人に説明した。
 話を聞いた二人は驚きの表情を浮かべた。

 絵に描いた女性とそっくりの姿をした何かにソフィ達が出会い、しかもそれは水が呪いによって人の形を模した何かだと言うのだ。
 更にアイリとコハンの集落で起きた人々の異常を、互いに思いつくままに話した結果、驚くほど似た症状であることが分かった。

「ちょっと待って! じゃあ、なに? ソフィとコハンさんが今日出会った女性の姿をした何かが、二つの集落で起きた異常の原因だって言うこと?」
「はっきりとは言えないけど、原因もしくは原因に関係する何かの可能性が高いかもね……大変。明日、朝すぐにカインさんにこの事を伝えなくちゃ」

 四人は興奮冷めやらぬも、明日以降にもなにか良くない事が起こりそうな予感がして、冴えた頭を必死で休め眠りにつくことにした。
 
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