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第18話 惚気
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王都への楽しい移動も終わり、バタバタとしていたらいつのまにか舞踏会当日になってしまった。
着いた日にオルガン様から、実家に挨拶に行きたいか聞かれたけれど、断った。
私の表情から何かを察してくれたのか、それ以上は何も言わずに何も聞かれないのが、オルガン様の優しさだと思う。
「さぁさぁ。ビオラ様! お時間ですよ。オルガン様は馬車の前でお待ちだそうです」
「ええ。ありがとうハープ。いつも世話になるわね」
「何をおっしゃるんですか! お世話になりっぱなしなのは私の方ですよ! ビオラ様の薬のおかげで手荒れなんてあれから一度もなってないし。肌用に調合していただいたクリームも、使用人全員喜んで使ってます。母の調子だって、すこぶる良くて困っちゃうくらいです」
「うふふ。そう。ありがとう。みんなが喜んでくれているなら嬉しいわ。さぁ、行きましょう。オルガン様が待ちくたびれてしまうわ」
そう言うと、ハープは笑顔を強めて答える。
「オルガン様はビオラ様を待つのにくたびれるなんてことはありませんよ。いつまでも待つんじゃないですか? 心配はするでしょうが。ああ、でも、早くこの素敵なお姿をお見せしたいですね」
「もう! ハープも少し調子が良すぎるんじゃない?」
「そりゃあ、あれだけ幸せそうなオルガン様を見ていたら、使用人の誰もが調子良くなりますよ」
ハープの言葉に、私の心に小さな感情が湧く。
「オルガン様は……幸せかしら……? 私と結婚して。……私は! 今とっても幸せだけど」
「はいはい。もう何二人して惚気てるんですか。幸せだって言ってますでしょうに。見たら誰だって分かりますよ。ビオラ様が屋敷に来る前と後じゃあ雲泥の差ですから」
「そう……なの。やだ。ちょっと恥ずかしいこと言ってた?」
「とりあえず。オルガン様の元へ向かいましょう。長くて素敵な首をお持ちですが、これ以上長くなると大変ですからね」
ハープに付き添われながら、エントランスに向かうと、正装を身に纏った凛々しい姿のオルガン様がいた。
とっても素敵……と声に出そうと思って口を開ける前に、オルガン様が声を発した。
深緑の目で私を見つめながら。
「綺麗だ」
こんなまっすぐに褒められたら、顔が火照ってしまうわ。
そんな! オルガン様ったら、ずるいわ!
私も素敵だって言おうと思ってたのに。
良いわよね? 言っても。
頬を両手で隠しながら、オルガン様へと近づく。
オルガン様は私より背が高いので、立った状態で近付くと見上げる形になる。
「オルガン様も素敵ですわ。とっても!」
「そうか。ありがとう。今日は初めての社交界だから、陛下への挨拶を済ませたら、早めに帰るとしよう」
「あら。良いんですか? 私に用がある方はいらっしゃらないでしょうが、オルガン様は陛下以外にも色々と挨拶をしないといけないのでは?」
「いや……それはまた今度でいい。ビオラを……」
そこでオルガン様は言い淀んでしまった。
どうしたのかしら?
私が何か問題が?
「私がどうしました? あ! マナーが不安なんですね。挨拶する方に粗相をしないように、と。すいません。気付かずに。頑張ったんですが、まだ足りませんでしたか」
「いや! 違う! ビオラのマナーは完璧と言って良い。どこに出しても恥ずかしくない! ただ……」
「ただ?」
「素敵なビオラをあまり他の男に見せたくない。つまり……俺以外の男が寄ってくるのが我慢ならんのだ」
「まぁ!」
あまりのことに口を大きく開けて大声を出してしまった。
その後、思わず笑ってしまう。
「うふふ。安心してください。私は一生オルガン様の妻ですから。それに、そんなこと言ったら、オルガン様だって」
「俺がビオラ以外の女に興味なんて持つわけないだろう。絶対にだ!」
「はいはい。お二人とも。馬車の馬すらお二人の惚気に呆れ返っていますよ。いつまで続ける気ですか?続きは移動中の馬車の中でどうぞ」
呆れた口調のハープの声に我に返る。
舞踏会に遅れたら大変だわ。
オルガン様にリードされて、馬車の中に乗り込む。
舞踏会が開催されるのは城の西の広間。
私たちが乗ったのを確認すると御者が手綱を繰った。
高いいななきの後、馬車はゆっくりと城へと向かう。
「オリンとクラリー嬢はまだ少しかかるそうだ。先についてあっちで合流しよう」
「分かりました。クラリー様のドレス姿も、オリン様の正装も楽しみだわ」
「ビオラとクラリー嬢は本当に仲が良いな。まるで本当の姉妹のようだ」
「うふふ。クラリー様がとても良い方だからよ。今回の舞踏会が終わったら、名実ともに妹になるのね。楽しみだわ」
その時私はすっかり忘れていた。
私にはクラリー様の他に、もう一人妹がいることを。
着いた日にオルガン様から、実家に挨拶に行きたいか聞かれたけれど、断った。
私の表情から何かを察してくれたのか、それ以上は何も言わずに何も聞かれないのが、オルガン様の優しさだと思う。
「さぁさぁ。ビオラ様! お時間ですよ。オルガン様は馬車の前でお待ちだそうです」
「ええ。ありがとうハープ。いつも世話になるわね」
「何をおっしゃるんですか! お世話になりっぱなしなのは私の方ですよ! ビオラ様の薬のおかげで手荒れなんてあれから一度もなってないし。肌用に調合していただいたクリームも、使用人全員喜んで使ってます。母の調子だって、すこぶる良くて困っちゃうくらいです」
「うふふ。そう。ありがとう。みんなが喜んでくれているなら嬉しいわ。さぁ、行きましょう。オルガン様が待ちくたびれてしまうわ」
そう言うと、ハープは笑顔を強めて答える。
「オルガン様はビオラ様を待つのにくたびれるなんてことはありませんよ。いつまでも待つんじゃないですか? 心配はするでしょうが。ああ、でも、早くこの素敵なお姿をお見せしたいですね」
「もう! ハープも少し調子が良すぎるんじゃない?」
「そりゃあ、あれだけ幸せそうなオルガン様を見ていたら、使用人の誰もが調子良くなりますよ」
ハープの言葉に、私の心に小さな感情が湧く。
「オルガン様は……幸せかしら……? 私と結婚して。……私は! 今とっても幸せだけど」
「はいはい。もう何二人して惚気てるんですか。幸せだって言ってますでしょうに。見たら誰だって分かりますよ。ビオラ様が屋敷に来る前と後じゃあ雲泥の差ですから」
「そう……なの。やだ。ちょっと恥ずかしいこと言ってた?」
「とりあえず。オルガン様の元へ向かいましょう。長くて素敵な首をお持ちですが、これ以上長くなると大変ですからね」
ハープに付き添われながら、エントランスに向かうと、正装を身に纏った凛々しい姿のオルガン様がいた。
とっても素敵……と声に出そうと思って口を開ける前に、オルガン様が声を発した。
深緑の目で私を見つめながら。
「綺麗だ」
こんなまっすぐに褒められたら、顔が火照ってしまうわ。
そんな! オルガン様ったら、ずるいわ!
私も素敵だって言おうと思ってたのに。
良いわよね? 言っても。
頬を両手で隠しながら、オルガン様へと近づく。
オルガン様は私より背が高いので、立った状態で近付くと見上げる形になる。
「オルガン様も素敵ですわ。とっても!」
「そうか。ありがとう。今日は初めての社交界だから、陛下への挨拶を済ませたら、早めに帰るとしよう」
「あら。良いんですか? 私に用がある方はいらっしゃらないでしょうが、オルガン様は陛下以外にも色々と挨拶をしないといけないのでは?」
「いや……それはまた今度でいい。ビオラを……」
そこでオルガン様は言い淀んでしまった。
どうしたのかしら?
私が何か問題が?
「私がどうしました? あ! マナーが不安なんですね。挨拶する方に粗相をしないように、と。すいません。気付かずに。頑張ったんですが、まだ足りませんでしたか」
「いや! 違う! ビオラのマナーは完璧と言って良い。どこに出しても恥ずかしくない! ただ……」
「ただ?」
「素敵なビオラをあまり他の男に見せたくない。つまり……俺以外の男が寄ってくるのが我慢ならんのだ」
「まぁ!」
あまりのことに口を大きく開けて大声を出してしまった。
その後、思わず笑ってしまう。
「うふふ。安心してください。私は一生オルガン様の妻ですから。それに、そんなこと言ったら、オルガン様だって」
「俺がビオラ以外の女に興味なんて持つわけないだろう。絶対にだ!」
「はいはい。お二人とも。馬車の馬すらお二人の惚気に呆れ返っていますよ。いつまで続ける気ですか?続きは移動中の馬車の中でどうぞ」
呆れた口調のハープの声に我に返る。
舞踏会に遅れたら大変だわ。
オルガン様にリードされて、馬車の中に乗り込む。
舞踏会が開催されるのは城の西の広間。
私たちが乗ったのを確認すると御者が手綱を繰った。
高いいななきの後、馬車はゆっくりと城へと向かう。
「オリンとクラリー嬢はまだ少しかかるそうだ。先についてあっちで合流しよう」
「分かりました。クラリー様のドレス姿も、オリン様の正装も楽しみだわ」
「ビオラとクラリー嬢は本当に仲が良いな。まるで本当の姉妹のようだ」
「うふふ。クラリー様がとても良い方だからよ。今回の舞踏会が終わったら、名実ともに妹になるのね。楽しみだわ」
その時私はすっかり忘れていた。
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