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異世界村観光協会
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ノックする音で老人はまどろみから目覚めた。
「どうぞ」
膝の上で組んでいた手を離し、深く息を吐いてから手すりを触る。すぐに、秘書がドアを開けて部屋に入って来た。
「お休み中でしたか、会長。お邪魔してすみません」
秘書は勤務中にもかかわらず、椅子に座って眠り込んでいた老人を咎めることなく、そう言った。
それから、
「こちら、先ほど村役場から届いたものです。緊急で、早急に検討してほしいとの言伝を預かっております」
と言って抱えていた書類を手渡す。
「うむ、そうか。わかった。ご苦労さん」
老人は秘書から赤い封筒に入った書類を受け取ると、さっそく中をあらためた。
そしてその内容を把握すると、深くため息をついて、背もたれにもたれかかった。
老人は秘書の背中に向けて語りかけた。
「ちょっといいかね、戻る前にヒドル茶を一杯、持ってきてくれんかの」
「かしこまりました」
秘書は頭を下げて部屋を出て行った。老人は書類を机の上に投げ出したまま、立ち上がり、ぶらぶらと部屋の中を歩いた。そこはトミトト村の小さな観光協会の会長室だった。暖房のついた小さな部屋。壁には書類棚に観光記録がぎっしり、大きな窓からは冬の日差しが入ってきて、部屋を明るくしていた。
「とうとう、わしたちのところにも巡って来たか」
老人は一通りその観光記録を眺めると、そう呟いた。秘書が温かいヒドル茶を持って戻って来た。その茶を堪能しながら、老人は窓から外の牧歌的な風景を眺めた。
「退屈な景色じゃわい。じゃが、これがウケるんじゃからな!」
老人はカップを机に置いて、天井から伸びていたひもを引っ張った。どこかでベルが鳴り、パタパタという足音の後に、ノックする音が会長室に響いた。
「うむ。よいぞ」
「失礼します」
透き通るような声色で、ドアの向こうから一人の女性が現れた。彼女の名は、カレット。スラリとした長身、白い陶器のような肌と、青い眼が特徴の美しい女性だ。彼女は十七歳になったばかりで、つい最近、この秋から、ここに見習いとして働きに出ていた。
「どんな御用でしょうか」
カレットは感情のこもっていない冷たい声で老人に聞いた。老人はあごひげを撫でながら言った。
「うむ。こちらの仕事には慣れたかね」
「ええ、少しは」
「働きやすいかね」
「……ええ、私にとってはこれ以上ない待遇です。給料も私には多すぎるほどいただけますし、仕事も新鮮です。ただ、少々、暇が多く、退屈することもありますが」
老人はカレットの明け透けな言い方に声をあげて笑った。
「そうかそうか。それはよかった。ただ、せっかく慣れてもらってもなんだが、それもどうも今日までらしくてな」
老人は目で机の上の書類を示した。
「そこにある書類、目を通して見なさい」
カレットは頷き、書類を手に取った。素早く目を通し、その一番大きな文字を、声に出して読んだ。
「“勇者観光委任状”。これ、どういう意味ですか」
「そのままの意味じゃよ。カレット」
老人はゆっくりと席に戻り腰を下ろした。
「ついにこの村にも、勇者が来ることになったのじゃよ」
「え!?」
カレットは驚いて声を荒げた。それから、恥ずかしそうに俯いた。
「すみません。大きな声を出してしまいました。勇者が私たちの村にやって来る。それは本当なんですか?」
「本当じゃとも」
老人は威厳らしく頷いた。
「来月。『常闇の森』に、召喚されることになっておる。これはもう決定事項じゃ」
カレットは黙って老人の話に聞き入っていた。老人はその凛とした表情を見定めながら言った。
「そこでじゃ、カレット。いきなりで驚くじゃろうが、わしは、お主にそこに行ってもらい、勇者の案内人になってほしいと思ったのじゃ」
カレットはそれを聞くと目を見開いた。
「私に? どうして?」
「適任だと思ったからじゃよ。お主は若く、美しい。度胸もある。それから……うら若き乙女じゃ!」
老人はカッカッカと、大きな声で笑った。カレットは老人の言動に言い知れない不快感を覚えたが、それを抑えて冷静に尋ねた。
「どういうことですか。それだけではわかりません。詳しくお教えくれませんか」
「簡単なことじゃよ」
老人はヒドル茶を口に含んで答えた。
「最近の勇者には、若い乙女が大量に必要なのじゃよ。そして、何も知らない彼らには、この世界のことを教える人物が必要なのじゃ。お主はわしと繋がりがある。事情をこれから勉強してもらえば、わしも必要に応じてサポートすることができるじゃろう」
「でも、それなら、私でなく、会長の方が相応しいのでは?」
「わし? わしは相応しくない!」
老人は頭を振った。
「かつてはそのような時代もあった。が、最近ではわしのような人間が最初に現れると、彼らはそのまま帰ってしまうのだよ。それで困った誰かが、観光客の殆どが男性であることに目をつけた。年の若いおなごに案内人を任せることにしたのじゃ。偶然悪党に襲われて困っているところを助けてもらったお礼、などと称してな。そうすると彼らは満足し、最後には金を落としてくれると、誰かが気付いたんじゃな」
老人はあごひげを撫でながら、遠い目をして答えた。
「私も、その話を初めて聞いたわけではありません」
カレットは毅然とした態度で言った。
「しかし、それが現実のものだとは、理解していなかっただけで」
「そうじゃろうとも」
老人は目を細めて書類棚の方を見ると、頷いた。
「だが、それが現実なのじゃ」
老人はカレットに向き直って続けた。
「お主たちが、資料で読むような勇者たちは、もうここには訪れんのだよ。かつて彼らは皆、勇気や愛、真実といったものを求めておった。理想じゃな。しかし、そのような時代は過ぎ去ったのだ。少しずつ、彼らのような人間は去っていき、今わしらのところに来るのは、女、復讐心、それから何と言ったかの、……しょうにん?」
「しょうにん? 商いですか?」
「いや、違う。ああ! 思い出した。承認欲求。誰かに認められたいとかいう感情じゃな。それ等を求めてやって来る人間ばかりじゃよ」
老人が口を閉ざすと、カレットは気まずそうに彼を見つめていた。
「不満かの?」
「いえ、不満、というわけではないですけども、しかし……」
カレットは口ごもった。
「ふむ。言いたいことはわかるぞ。あまりにも志が低い、低俗。そのようなことを言いたのだろう。案ずるな、わしもな、そう思っておる」
「私は、なにもそこまで……」
「いいんじゃよ。それも真実じゃ。時代とは移り変わるものじゃな。理想に燃えていた時代が懐かしいわい。七つの宝石、隠された秘宝。火を噴く恐ろしいドラゴン、行方不明になった世継ぎ……ほっ! なんと歳をとったものか!」
老人は自虐的に笑い、若かったころに自分が携わった仕事を思い出していた。その時代には勇者たちも苦労して、こちらの世界を探検し、自らの理想を探していたものだ。それが今では……。
「一ついいですか」
カレットが聞いた。
「ん? なんじゃい?」
「その、こちらに来られる勇者の方ですが、本当に私のような、その、未熟な女に満足するのでしょうか。私はこの世界についての知識に乏しいですし、満足のいくような案内はできそうにないのですが」
カレットは不安げに老人を見つめた。老人は微笑んだ。
「それがいいんじゃよ。彼らは複雑なわしらの世界の詳細についてなぞ、知りたくもないのじゃよ。さっきも言った通り、彼らは真理などと言うわかりにくい理想など求めておらんでな。人からの愛情に飢え、何より女性からの承認に飢えておる」
カレットは老人が目を細めて自分の身体を見た気がして寒気がした。
「でも、それは、本当に私の仕事なのでしょうか」
不満を忍ばせて聞いた。
「ふむ。どうしても嫌だと申すなら、代役を立てるがの。ただ、言っておくが給料も弾むし(そう言って老人は数字を見せた)、書類を見る限り、今度来る勇者は、間違ってもお主に手を出すようなことはなさそうじゃ。そのような経験もないそうで、やり方も知らないじゃろう」
「私はそのようなことを心配したのではありません」
カレットがきっぱりと否定すると老人は満足そうに頷いた。
「それじゃよ。その強気さ、冷徹さが、わしが適任だと思った理由じゃ。何と言ったかな、くー、くーでろ?」
「どういうことですか」
カレットは少々呆れながら聞いた。
「ふむ。お主はまだ経験が浅いからわからぬかもしれぬが、男というのは、そのように冷たくされながら、〝実は、陰で大切に思われている〟という妄想をよくするものなのじゃよ」
「……よくわかりません。私が嫌悪感を出している時は、嘘をつくためではないのですが」
老人は微笑んだ。
「ふむ。そうかもしれん。だがな、わしが話しておるのは、事実ではなく、妄想、願望の話じゃよ。勇者たちは、昔からこちらの世界に、その願望をかなえるためにやって来た。それは今でも変わらない。求めるものが変わったとしてもな……」
老人はまた昔に思いを馳せかけた。それをカレットが止めた。
「まだ、わかりません。彼らは本当にそれで満足なのでしょうか。私のような未熟な女性、それから、何人、集めるのかわかりませんが、他のたくさんの女性たち。それらに囲まれ、昔ながらの魔王が必要になることもあれば、まったくいらない場合もいると聞きます。彼らは、何を目的にここに来るのですか?」
「目的なら、さっき言ったであろう。おなごじゃよ。その承認じゃ」
「しかしそれは、彼らの世界でも十分に得られるものなのでは?」
老人はまじまじとカレットを眺めた。
「ふむ。若いな。しっかりしとると思いきや、まだまだ知らないことばかり。うん、そうじゃな。わしもな、最初の頃はそう思っておったよ。しかし他の村にやって来た勇者たちの視察をしていくうちに、どうもそうではないのだとわかってきたわい。彼らの現実は厳しい。おなごは寄って来ないし、話しかける勇気もなければ、そもそも普段誰とも話さない。人間的な交わりのかわりに、毎日を仕事で埋め尽くされておる。そしてその自らのすべてを捧げた仕事に裏切られる。もはや理想など、何の役に立たなくなってしまったのじゃよ。彼らは傷つき、この世界にやって来る。それは自分のすべきことを探していたかつての勇者たちとは違う。すでに現実と戦い、敗れ、その傷を癒すためにくるのじゃ。または、復讐にな」
カレットは老人の話に聞き入っていた。そして俯き、複雑な表情をした。
「彼らがこちらの世界に持ち込むものも幾らかあると聞きます。なにか白と黒のボードゲームのようなものや、それから独特の風味がある汁ものなどを聞いたことがあります」
「オセロとみそ汁じゃな」
老人はゆったりと答えた。
「正直そんなものはもう珍しくもなんともない。じゃが、彼らはそのプログラムが好きなんじゃよ。そうやって驚いたり喜んだりするわしらのことが好きなのじゃよ。そういう喜びは、彼らの日常からも奪われてしまっているということじゃな。だからわしたちは、彼らがそれを差し出すと、驚いてあげることにしておる」
「私も、みそ汁ならば飲んだことがあります。確かに珍しい味でしたが、これといって気に入ることはありませんでした」
「好む必要はないのじゃよ。嫌なら、飲むふりをすればいいのじゃ」
カレットは椅子に座る老人を仰ぎ見た。
「……彼らは、こちらに来る時、以前はそうではなかったのに、何か能力を授かると聞きます。それも、とても卓越した力だとか。今度のもそうなのですか?」
「そうなるじゃろうな」
老人は頷いた。
「どのような力なのですか?」
「それはわしにはわからん。決める権利もない。その力を決めるのは、勇者と、女神と言われる人じゃからの。彼らはまず向こうで死んだことになり、そして……」
「なぜ、死ぬ必要があるのですか」
老人は思ってもないことを聞かれてまごついた。
「わからぬ! じゃがそうなっておるんじゃ。それで、ええと、なんじゃったかな」
「一度死に」
カレットが助けた。
「そう! そして、ゲートで女神と出会い、協議をして、そこで初めてその力を決定、契約が成立するのじゃ」
カレットは深く考え込んだ。
「……なぜ、そのようなややこしいことを?」
老人は意外そうな顔をした。
「わからぬか。まあ無理もないか。説明しておこうかの。確かに、かつてはお主の言う通り、勇者たちは、何も持たないままこの世界にやって来ることが多かった。それは彼らが自分の理想を探していたからじゃ。つまり彼らはここで理想を探し、それを彼らの世界に持ち帰ったのじゃ。そうしてその世界で、何者かになっていった。じゃが、いまこちらに来る勇者たちは違う。彼らは何者でもないのじゃよ。そうして苦労して理想を持ち帰っても現実に跳ね返されるだけらしくてな。そのようなことは廃れていった。かわりに、何者かにしてくれる、幻想を求めていった。その幻想を持ち帰り、辛い現実を生きていくのじゃよ」
カレットは老人の話を聞いていて、気が重くなった。
「その、“何者”というのはどういう概念なのでしょうか。私にはよくわからないのですが」
「ほっ! そうじゃろうな。実は、わしもよく知らないのじゃが、それでいいなら説明しようかの。彼らの言う“何者”とは、要するに、自分がどんな人間か、ということじゃな」
「?」
カレットは首を傾げた。老人が笑う。
「わからぬのも無理はない。わしも最初は何を言っているのかわからなかった。しかしどうも彼らの世界では、国とか村とか家とか言ったものをどんどん捨て去っているようでな。その影響があるそうじゃ」
「しかし、そのような行為は、自らの足元を崩すようなもの。それでは、ただ自ずと首を絞めているだけでは……?」
カレットが思案しながら尋ねる。
「もちろん。そうとも。わしは誰か? わしはコートル村出身の、ジュナの子じゃよ。そしてトミトト村の観光協会の会長じゃよ。それだけじゃ。何者かなどは、そんなものでしかないのじゃよ。しかし彼らの世界ではそれ以外のことを求めなくてはいけなくなったのじゃ」
「どうしてですか?」
老人は首を振った。
「わしにもわからん。ただそのようなことが行われたとしか、言いようがないのじゃ。ただ、金……。そう、お金がそれに一役買っているそうじゃ」
「よくわかりませんが、そうなのですね」
カレットは憂鬱そうに俯いた。
「聞きたいことはそれだけかな?」
老人が聞いた。カレットは質問を考えた。
「その女神から授かる能力とは、本当にこの世界を超越したような力なのですか?」
「もちろんそんなことはない。カレット。彼らが、どのような姿でこちらに来るのか知っておるかの?」
「……すみません。不勉強なもので、詳しくは知りません」
カレットは正直に答えた。
「ふむ。わしらもそうじゃが、彼らは向こうの世界の姿そのものでこちらに来ることできないのじゃよ。彼らは幽体としてこちらにやって来る。わしらを知覚することはあっても、その手で触れたり、舌で味わったり、影響を与えたりなんてことは、本当のところできないのじゃよ」
「そうなのですか?」
カレットは驚いて目を見開いた。
「うむ。残念ながらな。しかしそれが、異世界に渡るということじゃ。わしも向こうの世界をこっそり見学しに行った時、『幽霊だ!』と子供に叫ばれたものじゃ。慌てて隠れたがの。あれはなかなか面白かったわい」
老人は愉快そうに笑った後、カレットがくすりともしていないのを見ると、続けた。
「しかして、そのように幽体の彼らに『本物らしさ』を届けるのがわしらの役目なのじゃ。彼らが何を望んでいるのか事前に調査し、そのようになるために計らう。そうして、イメージを届けておるのじゃ。わしらは魔法を使えるが、彼らはそれに十分に慣れておらんので、わしらのしたことには気づかない。自分のしたことだと思うのじゃ。そうして偉業を目撃したように、それが伝わるように、わざとらしく大げさに言うことが推奨されておるな。そうでなければ帰ってしまうと聞いておる」
「帰ってしまうとどうなるのですか」
「もちろん契約不履行で、わしらに入ってくるお金はゼロじゃよ。苦労が全部パァじゃ。わしらも必死なんじゃ、彼らの機嫌を損ねないようにするのにな」
カレットはため息を漏らした。
「大変なんですね。観光というのは」
「そうじゃとも。サービス業じゃからな。わしも、向こうに行った時は楽しませてもらっておる」
老人は部屋の奥を見やった。
「さて、もうこんなものかの。質問はいいかね?」
「はい」
「では、受けてくれる気になったかの」
「いえ、それは……まだ決めかねています。しかし、興味を持ったのは確かです。そのような人間が、どんな思いでこちらに来るのか、何を望んでいるのか、自分の目で確かめてみたいと思いました」
「それならば……」
カレットは頭を振った。
「いえ、今は決めません。持ち帰って考えてみようと思います。確かに珍しい経験になるだろうと思うのです。異世界のことは、私にも興味があります。私はかつて、枕元で、母親から勇者の話を聞いたことがあります。彼らはやはり、自らの理想を持ち帰ったそうです。それは価値のあることだったのでしょうが、それはもはや、失われてしまったのでしょうね。ですがそうではない人間たちも、気になるのです。理想でなくても、こちらに来る動機がある人達なのですから、何かを探しに来るのでしょう。それはきっと、大切なもののはずです。私には、せっかくこちらにいらっしゃるならば、それに応えてみたい、という気持ちがあります。嫌になって、逃げだしてしまうかもしれませんが……」
カレットは自信なさげにそう呟いた。老人はその葛藤を懐かしむような目つきで眺めた。
「ふむ。そうだな、ゆっくり考えて決めればいい。今度の勇者も、決して悪い人間ではないようだ。いや、ほとんどの人間がそうじゃ。それに、彼らは自らの欲望だけでは満足しないのだ。そのような試みは、すぐに頓挫してしまう。つまらないと思うものなんじゃよ。表面的な欲望を叶えるだけではダメなのじゃ。彼らもそれがわかっておるから、何度もこちらを訪れて、確かめようとする。今度の観光も、楽しいものになるように計らうつもりじゃ」
「そうなるといいですね」
「ふむ。もう下がってよいぞ。……一か月後じゃ」
「はい。失礼します」
カレットは頭を下げ、部屋を出て行った。老人はカップを手に取り、ヒドル茶を飲もうとして空になっていることに気付いて机におろした。
そして立ち上がり、窓から外の景色を眺め、これから勇者が目にして怪しむものを取り除いておく必要があると考えていた。念のため寂れた町並みも、魔法で中世風にしておいた方がいいだろう。そのための手段、手順、人物を、あごひげを触りながら思案した。
「これは忙しくなるわい」
老人は、ぶるっと震えると、後に懐に入る金額を想像した。そして、その金でずっと欲しかった新しい自動車を買おうと考えた。
「どうぞ」
膝の上で組んでいた手を離し、深く息を吐いてから手すりを触る。すぐに、秘書がドアを開けて部屋に入って来た。
「お休み中でしたか、会長。お邪魔してすみません」
秘書は勤務中にもかかわらず、椅子に座って眠り込んでいた老人を咎めることなく、そう言った。
それから、
「こちら、先ほど村役場から届いたものです。緊急で、早急に検討してほしいとの言伝を預かっております」
と言って抱えていた書類を手渡す。
「うむ、そうか。わかった。ご苦労さん」
老人は秘書から赤い封筒に入った書類を受け取ると、さっそく中をあらためた。
そしてその内容を把握すると、深くため息をついて、背もたれにもたれかかった。
老人は秘書の背中に向けて語りかけた。
「ちょっといいかね、戻る前にヒドル茶を一杯、持ってきてくれんかの」
「かしこまりました」
秘書は頭を下げて部屋を出て行った。老人は書類を机の上に投げ出したまま、立ち上がり、ぶらぶらと部屋の中を歩いた。そこはトミトト村の小さな観光協会の会長室だった。暖房のついた小さな部屋。壁には書類棚に観光記録がぎっしり、大きな窓からは冬の日差しが入ってきて、部屋を明るくしていた。
「とうとう、わしたちのところにも巡って来たか」
老人は一通りその観光記録を眺めると、そう呟いた。秘書が温かいヒドル茶を持って戻って来た。その茶を堪能しながら、老人は窓から外の牧歌的な風景を眺めた。
「退屈な景色じゃわい。じゃが、これがウケるんじゃからな!」
老人はカップを机に置いて、天井から伸びていたひもを引っ張った。どこかでベルが鳴り、パタパタという足音の後に、ノックする音が会長室に響いた。
「うむ。よいぞ」
「失礼します」
透き通るような声色で、ドアの向こうから一人の女性が現れた。彼女の名は、カレット。スラリとした長身、白い陶器のような肌と、青い眼が特徴の美しい女性だ。彼女は十七歳になったばかりで、つい最近、この秋から、ここに見習いとして働きに出ていた。
「どんな御用でしょうか」
カレットは感情のこもっていない冷たい声で老人に聞いた。老人はあごひげを撫でながら言った。
「うむ。こちらの仕事には慣れたかね」
「ええ、少しは」
「働きやすいかね」
「……ええ、私にとってはこれ以上ない待遇です。給料も私には多すぎるほどいただけますし、仕事も新鮮です。ただ、少々、暇が多く、退屈することもありますが」
老人はカレットの明け透けな言い方に声をあげて笑った。
「そうかそうか。それはよかった。ただ、せっかく慣れてもらってもなんだが、それもどうも今日までらしくてな」
老人は目で机の上の書類を示した。
「そこにある書類、目を通して見なさい」
カレットは頷き、書類を手に取った。素早く目を通し、その一番大きな文字を、声に出して読んだ。
「“勇者観光委任状”。これ、どういう意味ですか」
「そのままの意味じゃよ。カレット」
老人はゆっくりと席に戻り腰を下ろした。
「ついにこの村にも、勇者が来ることになったのじゃよ」
「え!?」
カレットは驚いて声を荒げた。それから、恥ずかしそうに俯いた。
「すみません。大きな声を出してしまいました。勇者が私たちの村にやって来る。それは本当なんですか?」
「本当じゃとも」
老人は威厳らしく頷いた。
「来月。『常闇の森』に、召喚されることになっておる。これはもう決定事項じゃ」
カレットは黙って老人の話に聞き入っていた。老人はその凛とした表情を見定めながら言った。
「そこでじゃ、カレット。いきなりで驚くじゃろうが、わしは、お主にそこに行ってもらい、勇者の案内人になってほしいと思ったのじゃ」
カレットはそれを聞くと目を見開いた。
「私に? どうして?」
「適任だと思ったからじゃよ。お主は若く、美しい。度胸もある。それから……うら若き乙女じゃ!」
老人はカッカッカと、大きな声で笑った。カレットは老人の言動に言い知れない不快感を覚えたが、それを抑えて冷静に尋ねた。
「どういうことですか。それだけではわかりません。詳しくお教えくれませんか」
「簡単なことじゃよ」
老人はヒドル茶を口に含んで答えた。
「最近の勇者には、若い乙女が大量に必要なのじゃよ。そして、何も知らない彼らには、この世界のことを教える人物が必要なのじゃ。お主はわしと繋がりがある。事情をこれから勉強してもらえば、わしも必要に応じてサポートすることができるじゃろう」
「でも、それなら、私でなく、会長の方が相応しいのでは?」
「わし? わしは相応しくない!」
老人は頭を振った。
「かつてはそのような時代もあった。が、最近ではわしのような人間が最初に現れると、彼らはそのまま帰ってしまうのだよ。それで困った誰かが、観光客の殆どが男性であることに目をつけた。年の若いおなごに案内人を任せることにしたのじゃ。偶然悪党に襲われて困っているところを助けてもらったお礼、などと称してな。そうすると彼らは満足し、最後には金を落としてくれると、誰かが気付いたんじゃな」
老人はあごひげを撫でながら、遠い目をして答えた。
「私も、その話を初めて聞いたわけではありません」
カレットは毅然とした態度で言った。
「しかし、それが現実のものだとは、理解していなかっただけで」
「そうじゃろうとも」
老人は目を細めて書類棚の方を見ると、頷いた。
「だが、それが現実なのじゃ」
老人はカレットに向き直って続けた。
「お主たちが、資料で読むような勇者たちは、もうここには訪れんのだよ。かつて彼らは皆、勇気や愛、真実といったものを求めておった。理想じゃな。しかし、そのような時代は過ぎ去ったのだ。少しずつ、彼らのような人間は去っていき、今わしらのところに来るのは、女、復讐心、それから何と言ったかの、……しょうにん?」
「しょうにん? 商いですか?」
「いや、違う。ああ! 思い出した。承認欲求。誰かに認められたいとかいう感情じゃな。それ等を求めてやって来る人間ばかりじゃよ」
老人が口を閉ざすと、カレットは気まずそうに彼を見つめていた。
「不満かの?」
「いえ、不満、というわけではないですけども、しかし……」
カレットは口ごもった。
「ふむ。言いたいことはわかるぞ。あまりにも志が低い、低俗。そのようなことを言いたのだろう。案ずるな、わしもな、そう思っておる」
「私は、なにもそこまで……」
「いいんじゃよ。それも真実じゃ。時代とは移り変わるものじゃな。理想に燃えていた時代が懐かしいわい。七つの宝石、隠された秘宝。火を噴く恐ろしいドラゴン、行方不明になった世継ぎ……ほっ! なんと歳をとったものか!」
老人は自虐的に笑い、若かったころに自分が携わった仕事を思い出していた。その時代には勇者たちも苦労して、こちらの世界を探検し、自らの理想を探していたものだ。それが今では……。
「一ついいですか」
カレットが聞いた。
「ん? なんじゃい?」
「その、こちらに来られる勇者の方ですが、本当に私のような、その、未熟な女に満足するのでしょうか。私はこの世界についての知識に乏しいですし、満足のいくような案内はできそうにないのですが」
カレットは不安げに老人を見つめた。老人は微笑んだ。
「それがいいんじゃよ。彼らは複雑なわしらの世界の詳細についてなぞ、知りたくもないのじゃよ。さっきも言った通り、彼らは真理などと言うわかりにくい理想など求めておらんでな。人からの愛情に飢え、何より女性からの承認に飢えておる」
カレットは老人が目を細めて自分の身体を見た気がして寒気がした。
「でも、それは、本当に私の仕事なのでしょうか」
不満を忍ばせて聞いた。
「ふむ。どうしても嫌だと申すなら、代役を立てるがの。ただ、言っておくが給料も弾むし(そう言って老人は数字を見せた)、書類を見る限り、今度来る勇者は、間違ってもお主に手を出すようなことはなさそうじゃ。そのような経験もないそうで、やり方も知らないじゃろう」
「私はそのようなことを心配したのではありません」
カレットがきっぱりと否定すると老人は満足そうに頷いた。
「それじゃよ。その強気さ、冷徹さが、わしが適任だと思った理由じゃ。何と言ったかな、くー、くーでろ?」
「どういうことですか」
カレットは少々呆れながら聞いた。
「ふむ。お主はまだ経験が浅いからわからぬかもしれぬが、男というのは、そのように冷たくされながら、〝実は、陰で大切に思われている〟という妄想をよくするものなのじゃよ」
「……よくわかりません。私が嫌悪感を出している時は、嘘をつくためではないのですが」
老人は微笑んだ。
「ふむ。そうかもしれん。だがな、わしが話しておるのは、事実ではなく、妄想、願望の話じゃよ。勇者たちは、昔からこちらの世界に、その願望をかなえるためにやって来た。それは今でも変わらない。求めるものが変わったとしてもな……」
老人はまた昔に思いを馳せかけた。それをカレットが止めた。
「まだ、わかりません。彼らは本当にそれで満足なのでしょうか。私のような未熟な女性、それから、何人、集めるのかわかりませんが、他のたくさんの女性たち。それらに囲まれ、昔ながらの魔王が必要になることもあれば、まったくいらない場合もいると聞きます。彼らは、何を目的にここに来るのですか?」
「目的なら、さっき言ったであろう。おなごじゃよ。その承認じゃ」
「しかしそれは、彼らの世界でも十分に得られるものなのでは?」
老人はまじまじとカレットを眺めた。
「ふむ。若いな。しっかりしとると思いきや、まだまだ知らないことばかり。うん、そうじゃな。わしもな、最初の頃はそう思っておったよ。しかし他の村にやって来た勇者たちの視察をしていくうちに、どうもそうではないのだとわかってきたわい。彼らの現実は厳しい。おなごは寄って来ないし、話しかける勇気もなければ、そもそも普段誰とも話さない。人間的な交わりのかわりに、毎日を仕事で埋め尽くされておる。そしてその自らのすべてを捧げた仕事に裏切られる。もはや理想など、何の役に立たなくなってしまったのじゃよ。彼らは傷つき、この世界にやって来る。それは自分のすべきことを探していたかつての勇者たちとは違う。すでに現実と戦い、敗れ、その傷を癒すためにくるのじゃ。または、復讐にな」
カレットは老人の話に聞き入っていた。そして俯き、複雑な表情をした。
「彼らがこちらの世界に持ち込むものも幾らかあると聞きます。なにか白と黒のボードゲームのようなものや、それから独特の風味がある汁ものなどを聞いたことがあります」
「オセロとみそ汁じゃな」
老人はゆったりと答えた。
「正直そんなものはもう珍しくもなんともない。じゃが、彼らはそのプログラムが好きなんじゃよ。そうやって驚いたり喜んだりするわしらのことが好きなのじゃよ。そういう喜びは、彼らの日常からも奪われてしまっているということじゃな。だからわしたちは、彼らがそれを差し出すと、驚いてあげることにしておる」
「私も、みそ汁ならば飲んだことがあります。確かに珍しい味でしたが、これといって気に入ることはありませんでした」
「好む必要はないのじゃよ。嫌なら、飲むふりをすればいいのじゃ」
カレットは椅子に座る老人を仰ぎ見た。
「……彼らは、こちらに来る時、以前はそうではなかったのに、何か能力を授かると聞きます。それも、とても卓越した力だとか。今度のもそうなのですか?」
「そうなるじゃろうな」
老人は頷いた。
「どのような力なのですか?」
「それはわしにはわからん。決める権利もない。その力を決めるのは、勇者と、女神と言われる人じゃからの。彼らはまず向こうで死んだことになり、そして……」
「なぜ、死ぬ必要があるのですか」
老人は思ってもないことを聞かれてまごついた。
「わからぬ! じゃがそうなっておるんじゃ。それで、ええと、なんじゃったかな」
「一度死に」
カレットが助けた。
「そう! そして、ゲートで女神と出会い、協議をして、そこで初めてその力を決定、契約が成立するのじゃ」
カレットは深く考え込んだ。
「……なぜ、そのようなややこしいことを?」
老人は意外そうな顔をした。
「わからぬか。まあ無理もないか。説明しておこうかの。確かに、かつてはお主の言う通り、勇者たちは、何も持たないままこの世界にやって来ることが多かった。それは彼らが自分の理想を探していたからじゃ。つまり彼らはここで理想を探し、それを彼らの世界に持ち帰ったのじゃ。そうしてその世界で、何者かになっていった。じゃが、いまこちらに来る勇者たちは違う。彼らは何者でもないのじゃよ。そうして苦労して理想を持ち帰っても現実に跳ね返されるだけらしくてな。そのようなことは廃れていった。かわりに、何者かにしてくれる、幻想を求めていった。その幻想を持ち帰り、辛い現実を生きていくのじゃよ」
カレットは老人の話を聞いていて、気が重くなった。
「その、“何者”というのはどういう概念なのでしょうか。私にはよくわからないのですが」
「ほっ! そうじゃろうな。実は、わしもよく知らないのじゃが、それでいいなら説明しようかの。彼らの言う“何者”とは、要するに、自分がどんな人間か、ということじゃな」
「?」
カレットは首を傾げた。老人が笑う。
「わからぬのも無理はない。わしも最初は何を言っているのかわからなかった。しかしどうも彼らの世界では、国とか村とか家とか言ったものをどんどん捨て去っているようでな。その影響があるそうじゃ」
「しかし、そのような行為は、自らの足元を崩すようなもの。それでは、ただ自ずと首を絞めているだけでは……?」
カレットが思案しながら尋ねる。
「もちろん。そうとも。わしは誰か? わしはコートル村出身の、ジュナの子じゃよ。そしてトミトト村の観光協会の会長じゃよ。それだけじゃ。何者かなどは、そんなものでしかないのじゃよ。しかし彼らの世界ではそれ以外のことを求めなくてはいけなくなったのじゃ」
「どうしてですか?」
老人は首を振った。
「わしにもわからん。ただそのようなことが行われたとしか、言いようがないのじゃ。ただ、金……。そう、お金がそれに一役買っているそうじゃ」
「よくわかりませんが、そうなのですね」
カレットは憂鬱そうに俯いた。
「聞きたいことはそれだけかな?」
老人が聞いた。カレットは質問を考えた。
「その女神から授かる能力とは、本当にこの世界を超越したような力なのですか?」
「もちろんそんなことはない。カレット。彼らが、どのような姿でこちらに来るのか知っておるかの?」
「……すみません。不勉強なもので、詳しくは知りません」
カレットは正直に答えた。
「ふむ。わしらもそうじゃが、彼らは向こうの世界の姿そのものでこちらに来ることできないのじゃよ。彼らは幽体としてこちらにやって来る。わしらを知覚することはあっても、その手で触れたり、舌で味わったり、影響を与えたりなんてことは、本当のところできないのじゃよ」
「そうなのですか?」
カレットは驚いて目を見開いた。
「うむ。残念ながらな。しかしそれが、異世界に渡るということじゃ。わしも向こうの世界をこっそり見学しに行った時、『幽霊だ!』と子供に叫ばれたものじゃ。慌てて隠れたがの。あれはなかなか面白かったわい」
老人は愉快そうに笑った後、カレットがくすりともしていないのを見ると、続けた。
「しかして、そのように幽体の彼らに『本物らしさ』を届けるのがわしらの役目なのじゃ。彼らが何を望んでいるのか事前に調査し、そのようになるために計らう。そうして、イメージを届けておるのじゃ。わしらは魔法を使えるが、彼らはそれに十分に慣れておらんので、わしらのしたことには気づかない。自分のしたことだと思うのじゃ。そうして偉業を目撃したように、それが伝わるように、わざとらしく大げさに言うことが推奨されておるな。そうでなければ帰ってしまうと聞いておる」
「帰ってしまうとどうなるのですか」
「もちろん契約不履行で、わしらに入ってくるお金はゼロじゃよ。苦労が全部パァじゃ。わしらも必死なんじゃ、彼らの機嫌を損ねないようにするのにな」
カレットはため息を漏らした。
「大変なんですね。観光というのは」
「そうじゃとも。サービス業じゃからな。わしも、向こうに行った時は楽しませてもらっておる」
老人は部屋の奥を見やった。
「さて、もうこんなものかの。質問はいいかね?」
「はい」
「では、受けてくれる気になったかの」
「いえ、それは……まだ決めかねています。しかし、興味を持ったのは確かです。そのような人間が、どんな思いでこちらに来るのか、何を望んでいるのか、自分の目で確かめてみたいと思いました」
「それならば……」
カレットは頭を振った。
「いえ、今は決めません。持ち帰って考えてみようと思います。確かに珍しい経験になるだろうと思うのです。異世界のことは、私にも興味があります。私はかつて、枕元で、母親から勇者の話を聞いたことがあります。彼らはやはり、自らの理想を持ち帰ったそうです。それは価値のあることだったのでしょうが、それはもはや、失われてしまったのでしょうね。ですがそうではない人間たちも、気になるのです。理想でなくても、こちらに来る動機がある人達なのですから、何かを探しに来るのでしょう。それはきっと、大切なもののはずです。私には、せっかくこちらにいらっしゃるならば、それに応えてみたい、という気持ちがあります。嫌になって、逃げだしてしまうかもしれませんが……」
カレットは自信なさげにそう呟いた。老人はその葛藤を懐かしむような目つきで眺めた。
「ふむ。そうだな、ゆっくり考えて決めればいい。今度の勇者も、決して悪い人間ではないようだ。いや、ほとんどの人間がそうじゃ。それに、彼らは自らの欲望だけでは満足しないのだ。そのような試みは、すぐに頓挫してしまう。つまらないと思うものなんじゃよ。表面的な欲望を叶えるだけではダメなのじゃ。彼らもそれがわかっておるから、何度もこちらを訪れて、確かめようとする。今度の観光も、楽しいものになるように計らうつもりじゃ」
「そうなるといいですね」
「ふむ。もう下がってよいぞ。……一か月後じゃ」
「はい。失礼します」
カレットは頭を下げ、部屋を出て行った。老人はカップを手に取り、ヒドル茶を飲もうとして空になっていることに気付いて机におろした。
そして立ち上がり、窓から外の景色を眺め、これから勇者が目にして怪しむものを取り除いておく必要があると考えていた。念のため寂れた町並みも、魔法で中世風にしておいた方がいいだろう。そのための手段、手順、人物を、あごひげを触りながら思案した。
「これは忙しくなるわい」
老人は、ぶるっと震えると、後に懐に入る金額を想像した。そして、その金でずっと欲しかった新しい自動車を買おうと考えた。
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