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両想い
34 ドッグイヤー
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二人ともよくやってくれた
助かったぞ
親父は黄昏色の二級河川が見える川床の飲食店で、ところてんを啜りながら子供たち二人を待っていた
労いにご馳走してくれるという
そこで綾羽は甜菜糖を使ったスイーツアラカルト、てんさい甘味御膳をコーギーに注文した
はあー美味しかった
綾羽
ひとりでバトルは大変だったろう
全然
余裕だったよ
誠清も余裕だったか?
全然
激ムズだったよ
明らかバグってる
敵強すぎ
はは、、、そうか
事情を知っている親父は愛想笑いで誤魔化す
そして話を逸らすため息子にプレゼントを送ることにした
頑張ったご褒美に、こいつをやろう
え!こいつは、、、!
俺の果樹園には時々、カブトムシやクワガタムシが飛んできてな
こいつ形も凄いし色も凄いだろう
しかもAランクだって書いてたし捕まえたんだ
すっげ!マジでくれんの!?
やるやる
お前好きだろう
持ってけ
なにそのピカピカした虫
自然環境を再現したガラスドームに収まる手の平サイズのムシを、綾羽は冷めた横目で見る
メタリフェルホソアカクワガタだよ
こいつ、めっちゃレアなんだぜ
誠清は情熱的な視線をメタリフェルホソアカクワガタに注ぎながら自慢気に答えた
ふーん
綺麗じゃん
この長く鋭いハサミ
メタリックな金の体
かっこよすぎだろ
お兄ちゃん
そういうの好きだったんだ
キャンプした時にな
まだ日が昇る前に、一緒にカブトムシを捕りに行ったことがあるぞ
誠清、覚えてるか
覚えてる
て、それよりも
もうじき日が暮れるから急ごう
誠清は親父の思い出話を華麗に受け流すと、これから戦うボスについて少しだけレクチャーした
おお、それは楽しみだな
親父が活き活きする
それもそのはず
今回、戦うボスにはとある遊びがある
なーんか面倒くさそう
そう言うなや
知ってるか誠清
俺よりも綾羽の方が上手いんだぞ
知ってる
見てたから
お兄ちゃん勝負する?
勝負すんのは俺じゃなくてボスな
多分またバカみたいに強いから気を抜くなよ
うーい
そんじゃ
そろそろ行こうぜ
都会を離れ二級河川を遡って渓谷に入ると屈曲したところに突き出た半島があって、地形の関係からパワースポットになっている
そこには現在でも小さな集落が残っていて、過去を物語る史跡公園が有名だ
三人はその史跡公園にある狛城前まで犬小屋を模した扉を抜けて転移した
うおっ!立派な城だなあ!
そびえ立つ厳つい城を前にして親父の声が弾む
その大きさは、王都にあるクッキーのお城と比較して、およそ二倍はあろうか
そもそも犬の暮らす建物の全てが人間にとっては小さく感じる
それは都を移して新しくお城を建てる前の時代のこと
人間達がここを使っていたんだよ
山の中にある都はいつも満開の花でいっぱいでね
人と犬が寄り集まって楽しく暮らしていた
へえ
現在も残っている集落は、ネコツキからみんなを守る防御の役割も担っていた城下町の名残なんだよ
ほう
下流の野原に王都が移る前は、川に沿ってたくさんの畑があってね
海では魚介を捕り、川では畑を耕し、山では鉱物を加工して生活を営んでいたのさ
その日々を通して、犬達は人間からたくさんのことを教わったよ
やけに詳しいな
エーデルワイス
えっへん
僕は、この世界を任された神の使いだからね
だから、ずっと見てきたんだ
犬と自然と人の繁栄を
なるほどな
いい話だ
ところで、ある日のこと
猫が本気を出して強力なネコツキを連れてきたんだ
犬と人間が力を合わせて戦ったけれど、勝ち目がなくて、僕は仕方なく人間達を他の世界に送り届けた
その間にお釈迦様が力を貸してくれて、どうにかネコツキを封印することに成功した
これが、妖狐が語っていた大昔の災難さ
それで、残された犬達はどうなった?
とても寂しくなって、ほとんどの犬がここを離れたよ
当時は酷い状況だったろうしな
想像するだけでも胸が痛い
彼らは川を下って、野原に犬の町を作って、一から暮らすことを決めたんだ
全てが順調に思えた
町はどんどん大きく成長して新しい都が出来て、やがて犬の王国が誕生した
でもね、、、
それに対して、川沿いの畑が無くなっていった
そして、とうとう一つも残らなかった
こんな風にして無くなった自然もたくさんあるんだ
それを忘れないでいてくれると嬉しいな
俺も山育ちだからよく分かる
自然は大事だよな
都会に出て、自然が少ないことが特に残念だった
もう一つ
君たちに覚えておいてほしい大切な約束があるんだ
何だ?
よく食べ、よく遊び、よく学び、よく寝ること!
分かったか二人とも
どうでもいいわ
話変わりすぎだろ
こら誠清!
またお前は!
つか、また話長いって
綾羽
お前は犬が好きなんだろう
それとこれとは別でーす
ごめんね、お話が長くて
退屈だよね
いやいやいや
エーデルワイスは悪くない
親の教育が悪いんだ
すまん
親父は過去を振り返る
ああ、すっかり夜になって帰るから子供達に構った覚えがあまりない
あるのは休日の思い出ばかりだ
警備員に転職して帰りは早くなったけど、こんどは休日に仕事が入るようになって、倒れる前はどんな風に子供達と接していたっけ
そうだ俺が悪い
思い返せば仕事仕事で構ってやった記憶があんまりないや
はは、まったくダメなお父さんだな
ちょっと急にネガティブになんのやめてよ
空気悪くなるからさあ
娘は冷たく言うが、目がたゆたい狼狽していることが分かる
流石に子供達にも焦りが見えた
まるで自分達が責められているようにさえ感じていることだろう
別に、んな事ないって
あっちこっち連れてって貰ったし
ちゃんと、その、、、
親らしく叱ってくれるしな
「お父さんは、、、ダメじゃない?」
その顔でそんなこと言ってそんな表情しないでくれ
一瞬で息子を冷静にしたほど美少女に変身した親父の憂い顔は凄まじい破壊力を秘めていた
ほんのり赤らむ頬が憎らしい
へへっ
お父ちゃんは世界一のお母ちゃんだよ
親を馬鹿にするな
してないってば
褒めてるの
そもそも、そんな見た目だから格好つかないんだよ
今更だけどな
それは、もうこれに慣れたんだから仕方ないだろう
エーデルワイス
話を進めてー
綾羽がダルそうに催促すると
大人しくお座りして待てをしていた大きくて白い丸い犬はスクッと立ち上がった
わんだふぉー
仲のいい素敵な家族さんだね
それじゃ、お散歩しながらお話を続けよう
助かったぞ
親父は黄昏色の二級河川が見える川床の飲食店で、ところてんを啜りながら子供たち二人を待っていた
労いにご馳走してくれるという
そこで綾羽は甜菜糖を使ったスイーツアラカルト、てんさい甘味御膳をコーギーに注文した
はあー美味しかった
綾羽
ひとりでバトルは大変だったろう
全然
余裕だったよ
誠清も余裕だったか?
全然
激ムズだったよ
明らかバグってる
敵強すぎ
はは、、、そうか
事情を知っている親父は愛想笑いで誤魔化す
そして話を逸らすため息子にプレゼントを送ることにした
頑張ったご褒美に、こいつをやろう
え!こいつは、、、!
俺の果樹園には時々、カブトムシやクワガタムシが飛んできてな
こいつ形も凄いし色も凄いだろう
しかもAランクだって書いてたし捕まえたんだ
すっげ!マジでくれんの!?
やるやる
お前好きだろう
持ってけ
なにそのピカピカした虫
自然環境を再現したガラスドームに収まる手の平サイズのムシを、綾羽は冷めた横目で見る
メタリフェルホソアカクワガタだよ
こいつ、めっちゃレアなんだぜ
誠清は情熱的な視線をメタリフェルホソアカクワガタに注ぎながら自慢気に答えた
ふーん
綺麗じゃん
この長く鋭いハサミ
メタリックな金の体
かっこよすぎだろ
お兄ちゃん
そういうの好きだったんだ
キャンプした時にな
まだ日が昇る前に、一緒にカブトムシを捕りに行ったことがあるぞ
誠清、覚えてるか
覚えてる
て、それよりも
もうじき日が暮れるから急ごう
誠清は親父の思い出話を華麗に受け流すと、これから戦うボスについて少しだけレクチャーした
おお、それは楽しみだな
親父が活き活きする
それもそのはず
今回、戦うボスにはとある遊びがある
なーんか面倒くさそう
そう言うなや
知ってるか誠清
俺よりも綾羽の方が上手いんだぞ
知ってる
見てたから
お兄ちゃん勝負する?
勝負すんのは俺じゃなくてボスな
多分またバカみたいに強いから気を抜くなよ
うーい
そんじゃ
そろそろ行こうぜ
都会を離れ二級河川を遡って渓谷に入ると屈曲したところに突き出た半島があって、地形の関係からパワースポットになっている
そこには現在でも小さな集落が残っていて、過去を物語る史跡公園が有名だ
三人はその史跡公園にある狛城前まで犬小屋を模した扉を抜けて転移した
うおっ!立派な城だなあ!
そびえ立つ厳つい城を前にして親父の声が弾む
その大きさは、王都にあるクッキーのお城と比較して、およそ二倍はあろうか
そもそも犬の暮らす建物の全てが人間にとっては小さく感じる
それは都を移して新しくお城を建てる前の時代のこと
人間達がここを使っていたんだよ
山の中にある都はいつも満開の花でいっぱいでね
人と犬が寄り集まって楽しく暮らしていた
へえ
現在も残っている集落は、ネコツキからみんなを守る防御の役割も担っていた城下町の名残なんだよ
ほう
下流の野原に王都が移る前は、川に沿ってたくさんの畑があってね
海では魚介を捕り、川では畑を耕し、山では鉱物を加工して生活を営んでいたのさ
その日々を通して、犬達は人間からたくさんのことを教わったよ
やけに詳しいな
エーデルワイス
えっへん
僕は、この世界を任された神の使いだからね
だから、ずっと見てきたんだ
犬と自然と人の繁栄を
なるほどな
いい話だ
ところで、ある日のこと
猫が本気を出して強力なネコツキを連れてきたんだ
犬と人間が力を合わせて戦ったけれど、勝ち目がなくて、僕は仕方なく人間達を他の世界に送り届けた
その間にお釈迦様が力を貸してくれて、どうにかネコツキを封印することに成功した
これが、妖狐が語っていた大昔の災難さ
それで、残された犬達はどうなった?
とても寂しくなって、ほとんどの犬がここを離れたよ
当時は酷い状況だったろうしな
想像するだけでも胸が痛い
彼らは川を下って、野原に犬の町を作って、一から暮らすことを決めたんだ
全てが順調に思えた
町はどんどん大きく成長して新しい都が出来て、やがて犬の王国が誕生した
でもね、、、
それに対して、川沿いの畑が無くなっていった
そして、とうとう一つも残らなかった
こんな風にして無くなった自然もたくさんあるんだ
それを忘れないでいてくれると嬉しいな
俺も山育ちだからよく分かる
自然は大事だよな
都会に出て、自然が少ないことが特に残念だった
もう一つ
君たちに覚えておいてほしい大切な約束があるんだ
何だ?
よく食べ、よく遊び、よく学び、よく寝ること!
分かったか二人とも
どうでもいいわ
話変わりすぎだろ
こら誠清!
またお前は!
つか、また話長いって
綾羽
お前は犬が好きなんだろう
それとこれとは別でーす
ごめんね、お話が長くて
退屈だよね
いやいやいや
エーデルワイスは悪くない
親の教育が悪いんだ
すまん
親父は過去を振り返る
ああ、すっかり夜になって帰るから子供達に構った覚えがあまりない
あるのは休日の思い出ばかりだ
警備員に転職して帰りは早くなったけど、こんどは休日に仕事が入るようになって、倒れる前はどんな風に子供達と接していたっけ
そうだ俺が悪い
思い返せば仕事仕事で構ってやった記憶があんまりないや
はは、まったくダメなお父さんだな
ちょっと急にネガティブになんのやめてよ
空気悪くなるからさあ
娘は冷たく言うが、目がたゆたい狼狽していることが分かる
流石に子供達にも焦りが見えた
まるで自分達が責められているようにさえ感じていることだろう
別に、んな事ないって
あっちこっち連れてって貰ったし
ちゃんと、その、、、
親らしく叱ってくれるしな
「お父さんは、、、ダメじゃない?」
その顔でそんなこと言ってそんな表情しないでくれ
一瞬で息子を冷静にしたほど美少女に変身した親父の憂い顔は凄まじい破壊力を秘めていた
ほんのり赤らむ頬が憎らしい
へへっ
お父ちゃんは世界一のお母ちゃんだよ
親を馬鹿にするな
してないってば
褒めてるの
そもそも、そんな見た目だから格好つかないんだよ
今更だけどな
それは、もうこれに慣れたんだから仕方ないだろう
エーデルワイス
話を進めてー
綾羽がダルそうに催促すると
大人しくお座りして待てをしていた大きくて白い丸い犬はスクッと立ち上がった
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仲のいい素敵な家族さんだね
それじゃ、お散歩しながらお話を続けよう
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