ノヴァ・シュペルの受難

鳥羽

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なんとか乗り切ったと思いたい僕です

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「まぁそれなら良いけどよ」

 男は下びた笑いを見せたあと金を貰ってさっさと立ち去っていった。
 ノヴァは女の子に近付いて大丈夫?となるべく優しげに声をかけて、大丈夫そうだと確認するとホッとした。ずっとこんな場所に居ても怖かろうと、早く親御さんのもとへ帰りなさいとそのまま帰らせた。すると

「大丈夫じゃないのは君の方だ」
「ああ、先程はありがとうございました」
「は?」

 と声をかけられる。ジェイドだ。
 そう言えば助けられたのを思い出してお礼を言うと、彼は眉を寄せノヴァの手を取った。応急セットを持ち歩いているのだろう、革のポシェットを腰にかけており、そこから消毒液を取り出すとノヴァの手にザバザバとふりかけると綺麗な布でキュッと巻いてくれた。

「お礼をいう前に手当てだろう」

 呆れたように呟くと、ン?とした表情でノヴァを見てああ、と声を上げる。

「貴女はあの時の方か、馬車の…これは失礼を」
「普通にしてください。何よりこれで貸し借りなしでしょ」

 と手当てされた手を見せて笑う。が、金銭を出せてしまったので寧ろ貸しなのでは、と気付いて。

「あ、違うな。お金の分貸しが出来た」
「それは気にしないでほしい…この辺りを守るのも仕事のうちなので」

 馬車の時に同じような事を言っていた気がする。

「自警団か何かですか?」
「そんな感じです」
「あー、もっと気楽に」
「しかし」
「私はただの見習いシスターなので」
「…わかった」

 渋々と言った感じだが、言葉を崩されるのに成功した。ここで静かに暮らしたいのだ、堅苦しいのは宜しくない。

「しかしここは結構のんびりした平和な所だと聞いてたんですけどね」
「たまにある。どこの街にも変なのはいるもんさ。君も含めて」
「はい?」
「普通の女性は鞭を受け止めたりしないぞ」

 クックッと少し堪えるように笑う姿に、やってしまった。と冷や汗が出て来たが、咄嗟に動いてしまったものは仕方ない。あそこで鞭を打たれる女の子を見てられる方が異常だろうと己を納得させた。そうしてるとシンディが追いついて来て「もー!何してるのよ」とカンカンだったので、謝りつつもノヴァは重い小麦をまた担いだ。

「……重くないのか」

 今さっきの事でまたやらかしたがもう知らない。とりあえずお使いを済まそうと開き直る。


「重いよ、小麦ですもの」
「手伝おう」
「大丈夫よ、あなたは街と周りを守らないといけないんでしょ?私達が安心して帰れるように見回りの方をお願いするわ」

 やらかしを二回も見られてる相手である。ボロが出ては大変だとなるべく遠ざけたかった。
 スカーレットが実は替え玉だなんてバレては大変だ。なので適当言っての仕事へのプライドを刺激すると案の定「そうだな」と、アッサリジェイドはその場から立ち去ってくれた。

「ちょ、スカーレット」

 ホッとしたのも束の間横から突かれる。

「何よシンディ」
「彼といつの間に仲良くなったのよ」
「へ?」
「帰ったら色々聴かせてもらいますからね!」

 これは帰った後も大変そうだ。とノヴァはまだどう話したものかと考えつつ教会に帰宅した。

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