完結|ひそかに片想いしていた公爵がテンセイとやらで突然甘くなった上、私が12回死んでいる隠しきゃらとは初耳ですが?

七角@書籍化進行中!

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7章 これが魔法遣いたちの望みです

えぴろうぐなのに事件発生!?

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 激動の婚約式からひと月。
 夏のフセスラウは、朝陽が昇るなり気温がぐんぐん上がる。

「んん……ユーリィ、僕から離れないで……」
「王太子の務めがあります。わ、いけませんって!」

 にもかかわらずソーマはわたしにまとわりつき、寝台から降りられなくする。
 身支度をして政務に備えなければならないのに。

 今後のフセスラウの統治およびパルラディとの関係について、兄に代わって父王たちと毎夜遅くまで議論している。

 ソーマも改めて「王太子の婚約者」として、ミロシュ領に戻らず政務に携わる身なのに、朝の攻防はもはや日課になりつつあった。

「そう言って、君も僕と朝寝したがってるよね? 君が生きてるって、わからせて」
「……。あなたはやはり悪い人ですね」

 わたし好みの美貌を駆使するソーマに、今日も負けた。

「昨日の夜みたいにしてほしいな」
「ペトルが呼びに来るまでですよ」

 乱れた寝具にもぐり、口で愛撫し始める。初夜より上達したと思う。
 その証拠に、裸のソーマの肌がすぐに汗ばみ、体臭が匂い立った。

 さらに指先に魔力を集中させ、口に収まりきらない部分も撫でてあげれば「電マみたいでやばい」と悦ばれる。
 一部のみ解放されたわたしの魔力は、大掛かりな魔法を発動させることはできないものの、わたしもソーマも大好きな「せっくす」にはちょうどよかった。

「ユー、リィ……っ」

 しばらくして、くぐもった声で名を呼ばれる。ソーマの腰が最奥に擦りつけるときのようにくんっと動いた。
 喉奥に発射された甘い白濁を、起き上がってからゆっくり飲み下す。

「美味しい?」

 その様子をじっと見ていたソーマが、ちろりと舌なめずりした。
 労いの口づけの間に、自らのものを長い指で扱いて復活させる。昨夜の名残でまだやわらかい後腔に、早急に沈み込む。

(昨夜あんなに愛し合ったのに、飽かずわたしを欲しがってくださるとは)

 彼の言うとおり、朝求められるのは嫌いではない。揺るぎない愛を実感できる。

「あぁ……ん」

 口淫によって分泌した愛液で、滑りがいい。ソーマも寝起きにして力強く、寝台ごと揺れる。
 自分で足を抱えると、ソーマが奥をとんとん突き上げながら、空いた手で乳首も可愛がってくれた。絶妙な力加減で抓られ擦られ、早くも達してしまう。

「ソぉ、マ、声が、抑えられませ、ん」
「聞かせてあげればいいよ。ユーリィが誰を愛してるか」

 もう……と口では呆れつつ、ソーマのくっきり浮き出た肩甲骨にしがみつく。素直に引き寄せられたソーマが、わたしの首もとで深呼吸する。

「ソーマ……奥、だめ、っ、ソ、マ……イっちゃ、……ぅ、そうま、ぁ、気持ちい……です、もっと、とんとん……もっと、……愛、して、~ひゃ、ぁ、あぁあ――!」

 びくんっと喉が反る。
 秘める必要のなくなった恋を存分に詠った末に、すっかり彼の形を記憶した内壁にも美酒を飲ませてもらった。

「ふふ。朝寝のシーン、詳しく書き足さないと」

 ソーマはすっきりした顔でわたしの身体を拭き、新しい下衣を着せると、手記を手に取った。今や彼のほうが熱心に創作している。
 いや、実録か。どちらにしてもこの恋物語は終演未定だ。

 ちなみに折れてしまった万年筆は、十年分の感謝を込めて葬儀洞に埋めた。もうこれに頼らず縋らずとも、わたしは歩いていける。

「さて。今日も愛しいユーリィ殿下の仕事を巻き取るぞ。『公爵』の立場だとみんな僕の話を聞いてくれてやり甲斐があるし、巻き取ったぶんだけ夜ゆったり過ごせる」

 手記を閉じたソーマが意気込む。しかしわたしはぽつりとこぼした。

「なかなか『すろうらいふ』とはいきませんね。母上には『跡継ぎの顔が見たい』などと気の早いことを言われましたし」

 ふらぐを壊し、るうぷを脱した結果手にした「主人公」とは、こうも忙しいのか。

「本当に男のわたしに跡継ぎが産めるのでしょうか」
「最近は産めるBLもめずらしくないよ」
「それはあなたがいらした世界の話でしょう? わたしの魔力量では、始まりの魔法違いたちに加護を頼まなければかもしれません。魔力源の期限を考えると、念のため一年以内に子を生したほうが安心ですが……」
「期限って?」

 自分の髪を整えていたソーマが、首を傾げる。

「一周目のあなたがおっしゃったんですよ」
「……。申し訳ない。それ、他の王族に魔法諦めてもらうための嘘かも」
「ええっ!?」

 まさかの事実に、跳ね起きた。

「つまり跡継ぎは急がないで、ふたりの時間を愉しめるってことだよ?」
「ですが、兄とステヴァン殿下はずっと『せっくす』お預けですか? こんなに気持ちいいのに……ではなく、何とお伝えすれば」

 ただでさえ、わたしもソーマもこれから何が起こるかもうわからない。波乱の予感だ。未来はいったいどんな頁が増えていくのだろう。

「うーん……もしステヴァンの封印が解かれても、実は戦闘本能で引けを取らないコンスタンティネが尻に敷いてくれるんじゃないかな」
「それならよいのですが……」

 頭を悩ませていたら、私室の扉がごんごん叩かれた。専属護衛のペトルだ。何かとソーマへの当たりが強いのだが、今朝はいつにも増して勢いがある。

「ユーリィ殿下! 周遊中のコンスタンティネ殿下とステヴァン殿下が、国境付近で激しい魔法の応酬痴話喧嘩をしているとの一報が入りました……!」
「何ですって!」
「え、ステヴァン手が早いな。やっぱり攻めだ」

 案の定ではないか。上衣の腰紐をきゅっと締めて対応に駆け出す。
 ……はずが、つい先ほどまで股関節を思いきり左右に開いていたせいで、前に足が出ずよろける。

「おっと。ともあれ、僕が君を守るよ」

 後ろからソーマが支えてくれて、転ばずに済んだ。
 ふたりしっかり手を取り合って「今日」に取り掛かろう。



 この後、ソーマの中に公爵の意識が戻って、脳内であれこれ指南してきたり。

「ううう、理不尽上司のトラウマが。ちょ、えっちで可愛いユーリィは見せないし触らせないよ!? って、そしたら僕がお預けか……ッ」

 創造主として力を盛り返した「始まりの魔法遣いたち」が、わたしたちを彼らの時代まで時間遡行させたり。

「オレの『オシ』、ユーリィの実物! 愛されてる自信でかっわいくなってる~! なあ、オレとコイツのナマモノ書いてよ。死んでるから干物か?」
「ずいぶん手こずったな。へっどらいとに紛れて魔法を発動するために、十回以上も遠隔でそなたを轢く破目になったこちらの身にもなってくれ」

 祖父王たちまで「すろうらいふ」したいと死者蘇生したり。

「自慢の孫の面影がなくなっている……。心穏やかには過ごせぬ……」
「葡萄酒葡萄酒♪ ん? そことそこくっついたの? 蒸留酒♫ 死者蘇生方法ならあるよ。『通電』さ☆」

 無害な平民として市井に戻したニコが男を妊娠させたと大騒ぎになったり、
 他の回のソーマも報われてほしいと召喚を試みた結果「さんぴー3P」になったり、
 「コウシキすぴんおふ」の強制力が影響したり――は、また別の戯曲おはなしにて。


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