6 / 9
殺意
しおりを挟む
-木崎邸
「貴様ら警察がいながらなんて様だ!」
「申し訳ありませんでした。」
一之瀬は昭蔵に頭を下げていた。
怒るのは当然だ。
50億円を失ったのだから。
しかもそれをライブ中継されたのだから。
会社の評判にも響くだろう。
50億円に火を着けた犯人たちは全員逮捕した。
彼らはネット掲示板を見て犯行に及んだようだ。
掲示板には『あの50億円は偽札です。あの偽札を燃やすことが出来た人には、賞金を差し上げます。』と書いてあった。
よくこんなのを信じたものだ。
掲示板に書いた人物は海外のサーバーを経由しており、特定には時間がかかるようだ。
しかし、まさか50億円を燃やすとは思わなかった。
やはり犯人の目的は金ではなかったのか。
完全に犯人の策略に嵌まった。
警察は見事に犯人に一杯食わされたのだ。
「なんということだ!大損失だ!…園山!園山はいるか!」
昭蔵は運転手兼秘書である園山を呼んだ。
すると、別の社員が入ってきた。
「社長、実はご相談が。」
「なんだ!こんな時に!」
「園山さんなんですが、連絡が取れないんです。」
「なんだと!」
「すいません。園山さんと連絡が取れなくなったのはいつですか。」
一之瀬は社員に聞いた。
「2時間ほど前に自宅に戻って必要なものを取ってくると言って、それから何度も携帯に掛けてるんですが。」
「今すぐ園山の自宅に捜査員を向かわせてくれ。」
一之瀬は部下にそう指示を出した。
…なにか嫌な予感がする。
数分後、部下から連絡があった。
それは、園山俊明が自宅で殺害されているという内容だった。
一之瀬は一度署に戻り、園山殺害の状況について資料に目を通していた。
死因はナイフで刺されたことによる出血性ショック死。
現場に荒らされた様子はなく、物取りの犯行では内容だ。
しかし、殺害された園山の部屋から驚くべきものが発見された。
木崎家の家族構成や資産状況、さらには身代金の受け渡し方法について書かれた紙が見つかったのだ。
それだけでなく、彼の預金通帳を見てみると、数ヵ月に1回、何十万と言われるほどの金が入っていた。
調べてみると、彼は数年前から会社の金を密かに横領していたようだ。
園山は木崎昭蔵に不満を持っていた。
昭蔵の尻拭いのために随分とこき使われていたようだ。
園山がよく通う飲み屋で店主に愚痴をこぼしていたようだ。
そんなある日、彼は犯人グループの誰かから話を持ちかけられた。
もちろん誘拐についてだ。
彼はすぐに話に乗った。
園山は犯人に木崎家についての情報を渡した。
そして犯人は身代金の受け渡しについて園山に話した。
園山が持っていた紙を見ると、身代金を燃やすことは園山自身は知らなかったようだ。
彼の携帯には正体不明の人物から電話が入っていた。
飛ばしの携帯のようで、誰からの電話かは分からなかった。
犯人と自宅で会った園山は殺害された。
彼は利用されたのだ。
園山が殺害されたことで、事件はさらに混乱を極めた。
ただひとつ明らかになったのは、犯人の目的は身代金ではないということ。
でなければ園山の殺害などあり得ないからだ。
しかし、だとしたら犯人の目的はなんなのだろうか。
園山の殺害は目的のひとつだったのだろうが、果たしてそれだけなのだろうか。
…園山についてもう少し詳しく調べる必要があるな。
一之瀬は捜査員と共に園山について調べることにした。
動画が配信されてから約10時間。
外はすっかり闇に包まれていた。
-ライブ会場
「ほら、食え。」
俺は工藤からコンビニのおにぎりをもらっていた。
「ありがとうございます。」
俺はおにぎりを一口食べた。
「あの、ひとつ聞きたいんですけど。」
「なんだ。」
「どうしてこんなことしてるんですか?」
俺は工藤に質問した。
この人たちなら、ある程度のことは答えてくれると思ったからだ。
「もちろん金のためさ。」
「そんな人たちが50億円燃やすわけないですよね。」
「…。」
工藤は黙った。
「俺の父親は、木崎ファイナンスに勤めてた。」
工藤は語りだした。
「書類の文字にミスがあった。それだけの理由で会社をクビになった。それからは大変だった。毎日毎日就職セミナーに通って、面接して。けどなかなか雇ってくれるところはなかった。そりゃそうだ。木崎昭蔵が裏で手を回してたんだからな。」
「どうして父はそんなことを。」
「さぁな。よっぽど気に入らなかったんだろうな。俺が家に帰ると親父はクビを吊ってた。それからお袋は体調を崩してそのまま死んだ。他のやつらも似たような目に遭ってる。」
俺は言葉を失った。
父がたくさんの人間をクビにしたことは何となくわかっていた。
けど、ここまでひどいとは思っていなかった。
「…ひとつ、お願いがあります。」
俺は工藤に言った。
「父に電話をさせてください。」
「なに?」
「別に助けを求めるとかじゃありません。父にどうしても言っておきたいことがあります。」
智哉は真剣な眼差しで工藤に頼んだ。
「…いいだろう。ただ、妙なこと言ったらすぐに殺すからな。」
「分かりました。」
俺は覚悟を決めた。
父がバレていないだろうと思っている秘密。
家族が崩壊するかもしれない秘密。
それを打ち明ける決意を。
「貴様ら警察がいながらなんて様だ!」
「申し訳ありませんでした。」
一之瀬は昭蔵に頭を下げていた。
怒るのは当然だ。
50億円を失ったのだから。
しかもそれをライブ中継されたのだから。
会社の評判にも響くだろう。
50億円に火を着けた犯人たちは全員逮捕した。
彼らはネット掲示板を見て犯行に及んだようだ。
掲示板には『あの50億円は偽札です。あの偽札を燃やすことが出来た人には、賞金を差し上げます。』と書いてあった。
よくこんなのを信じたものだ。
掲示板に書いた人物は海外のサーバーを経由しており、特定には時間がかかるようだ。
しかし、まさか50億円を燃やすとは思わなかった。
やはり犯人の目的は金ではなかったのか。
完全に犯人の策略に嵌まった。
警察は見事に犯人に一杯食わされたのだ。
「なんということだ!大損失だ!…園山!園山はいるか!」
昭蔵は運転手兼秘書である園山を呼んだ。
すると、別の社員が入ってきた。
「社長、実はご相談が。」
「なんだ!こんな時に!」
「園山さんなんですが、連絡が取れないんです。」
「なんだと!」
「すいません。園山さんと連絡が取れなくなったのはいつですか。」
一之瀬は社員に聞いた。
「2時間ほど前に自宅に戻って必要なものを取ってくると言って、それから何度も携帯に掛けてるんですが。」
「今すぐ園山の自宅に捜査員を向かわせてくれ。」
一之瀬は部下にそう指示を出した。
…なにか嫌な予感がする。
数分後、部下から連絡があった。
それは、園山俊明が自宅で殺害されているという内容だった。
一之瀬は一度署に戻り、園山殺害の状況について資料に目を通していた。
死因はナイフで刺されたことによる出血性ショック死。
現場に荒らされた様子はなく、物取りの犯行では内容だ。
しかし、殺害された園山の部屋から驚くべきものが発見された。
木崎家の家族構成や資産状況、さらには身代金の受け渡し方法について書かれた紙が見つかったのだ。
それだけでなく、彼の預金通帳を見てみると、数ヵ月に1回、何十万と言われるほどの金が入っていた。
調べてみると、彼は数年前から会社の金を密かに横領していたようだ。
園山は木崎昭蔵に不満を持っていた。
昭蔵の尻拭いのために随分とこき使われていたようだ。
園山がよく通う飲み屋で店主に愚痴をこぼしていたようだ。
そんなある日、彼は犯人グループの誰かから話を持ちかけられた。
もちろん誘拐についてだ。
彼はすぐに話に乗った。
園山は犯人に木崎家についての情報を渡した。
そして犯人は身代金の受け渡しについて園山に話した。
園山が持っていた紙を見ると、身代金を燃やすことは園山自身は知らなかったようだ。
彼の携帯には正体不明の人物から電話が入っていた。
飛ばしの携帯のようで、誰からの電話かは分からなかった。
犯人と自宅で会った園山は殺害された。
彼は利用されたのだ。
園山が殺害されたことで、事件はさらに混乱を極めた。
ただひとつ明らかになったのは、犯人の目的は身代金ではないということ。
でなければ園山の殺害などあり得ないからだ。
しかし、だとしたら犯人の目的はなんなのだろうか。
園山の殺害は目的のひとつだったのだろうが、果たしてそれだけなのだろうか。
…園山についてもう少し詳しく調べる必要があるな。
一之瀬は捜査員と共に園山について調べることにした。
動画が配信されてから約10時間。
外はすっかり闇に包まれていた。
-ライブ会場
「ほら、食え。」
俺は工藤からコンビニのおにぎりをもらっていた。
「ありがとうございます。」
俺はおにぎりを一口食べた。
「あの、ひとつ聞きたいんですけど。」
「なんだ。」
「どうしてこんなことしてるんですか?」
俺は工藤に質問した。
この人たちなら、ある程度のことは答えてくれると思ったからだ。
「もちろん金のためさ。」
「そんな人たちが50億円燃やすわけないですよね。」
「…。」
工藤は黙った。
「俺の父親は、木崎ファイナンスに勤めてた。」
工藤は語りだした。
「書類の文字にミスがあった。それだけの理由で会社をクビになった。それからは大変だった。毎日毎日就職セミナーに通って、面接して。けどなかなか雇ってくれるところはなかった。そりゃそうだ。木崎昭蔵が裏で手を回してたんだからな。」
「どうして父はそんなことを。」
「さぁな。よっぽど気に入らなかったんだろうな。俺が家に帰ると親父はクビを吊ってた。それからお袋は体調を崩してそのまま死んだ。他のやつらも似たような目に遭ってる。」
俺は言葉を失った。
父がたくさんの人間をクビにしたことは何となくわかっていた。
けど、ここまでひどいとは思っていなかった。
「…ひとつ、お願いがあります。」
俺は工藤に言った。
「父に電話をさせてください。」
「なに?」
「別に助けを求めるとかじゃありません。父にどうしても言っておきたいことがあります。」
智哉は真剣な眼差しで工藤に頼んだ。
「…いいだろう。ただ、妙なこと言ったらすぐに殺すからな。」
「分かりました。」
俺は覚悟を決めた。
父がバレていないだろうと思っている秘密。
家族が崩壊するかもしれない秘密。
それを打ち明ける決意を。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
私の優しいお父さん
有箱
ミステリー
昔、何かがあって、目の見えなくなった私。そんな私を、お父さんは守ってくれる。
少し過保護だと思うこともあるけれど、全部、私の為なんだって。
昔、私に何があったんだろう。
お母さんは、どうしちゃったんだろう。
お父さんは教えてくれない。でも、それも私の為だって言う。
いつか、思い出す日が来るのかな。
思い出したら、私はどうなっちゃうのかな。
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる