出来損ないの誘拐

サッキー(メガネ)

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殺意

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-木崎邸

「貴様ら警察がいながらなんて様だ!」

「申し訳ありませんでした。」

一之瀬は昭蔵に頭を下げていた。

怒るのは当然だ。

50億円を失ったのだから。

しかもそれをライブ中継されたのだから。

会社の評判にも響くだろう。

50億円に火を着けた犯人たちは全員逮捕した。

彼らはネット掲示板を見て犯行に及んだようだ。

掲示板には『あの50億円は偽札です。あの偽札を燃やすことが出来た人には、賞金を差し上げます。』と書いてあった。

よくこんなのを信じたものだ。

掲示板に書いた人物は海外のサーバーを経由しており、特定には時間がかかるようだ。

しかし、まさか50億円を燃やすとは思わなかった。

やはり犯人の目的は金ではなかったのか。

完全に犯人の策略に嵌まった。

警察は見事に犯人に一杯食わされたのだ。


「なんということだ!大損失だ!…園山!園山はいるか!」

昭蔵は運転手兼秘書である園山を呼んだ。

すると、別の社員が入ってきた。

「社長、実はご相談が。」

「なんだ!こんな時に!」

「園山さんなんですが、連絡が取れないんです。」

「なんだと!」

「すいません。園山さんと連絡が取れなくなったのはいつですか。」

一之瀬は社員に聞いた。

「2時間ほど前に自宅に戻って必要なものを取ってくると言って、それから何度も携帯に掛けてるんですが。」

「今すぐ園山の自宅に捜査員を向かわせてくれ。」

一之瀬は部下にそう指示を出した。

…なにか嫌な予感がする。

数分後、部下から連絡があった。

それは、園山俊明が自宅で殺害されているという内容だった。

 

一之瀬は一度署に戻り、園山殺害の状況について資料に目を通していた。

死因はナイフで刺されたことによる出血性ショック死。

現場に荒らされた様子はなく、物取りの犯行では内容だ。

しかし、殺害された園山の部屋から驚くべきものが発見された。

木崎家の家族構成や資産状況、さらには身代金の受け渡し方法について書かれた紙が見つかったのだ。

それだけでなく、彼の預金通帳を見てみると、数ヵ月に1回、何十万と言われるほどの金が入っていた。

調べてみると、彼は数年前から会社の金を密かに横領していたようだ。


園山は木崎昭蔵に不満を持っていた。

昭蔵の尻拭いのために随分とこき使われていたようだ。

園山がよく通う飲み屋で店主に愚痴をこぼしていたようだ。

そんなある日、彼は犯人グループの誰かから話を持ちかけられた。

もちろん誘拐についてだ。

彼はすぐに話に乗った。

園山は犯人に木崎家についての情報を渡した。

そして犯人は身代金の受け渡しについて園山に話した。

園山が持っていた紙を見ると、身代金を燃やすことは園山自身は知らなかったようだ。

彼の携帯には正体不明の人物から電話が入っていた。

飛ばしの携帯のようで、誰からの電話かは分からなかった。

犯人と自宅で会った園山は殺害された。

彼は利用されたのだ。


園山が殺害されたことで、事件はさらに混乱を極めた。

ただひとつ明らかになったのは、犯人の目的は身代金ではないということ。

でなければ園山の殺害などあり得ないからだ。

しかし、だとしたら犯人の目的はなんなのだろうか。

園山の殺害は目的のひとつだったのだろうが、果たしてそれだけなのだろうか。

…園山についてもう少し詳しく調べる必要があるな。

一之瀬は捜査員と共に園山について調べることにした。


動画が配信されてから約10時間。

外はすっかり闇に包まれていた。



-ライブ会場

「ほら、食え。」

俺は工藤からコンビニのおにぎりをもらっていた。

「ありがとうございます。」

俺はおにぎりを一口食べた。

「あの、ひとつ聞きたいんですけど。」

「なんだ。」

「どうしてこんなことしてるんですか?」

俺は工藤に質問した。

この人たちなら、ある程度のことは答えてくれると思ったからだ。

「もちろん金のためさ。」

「そんな人たちが50億円燃やすわけないですよね。」

「…。」

工藤は黙った。

「俺の父親は、木崎ファイナンスに勤めてた。」

工藤は語りだした。

「書類の文字にミスがあった。それだけの理由で会社をクビになった。それからは大変だった。毎日毎日就職セミナーに通って、面接して。けどなかなか雇ってくれるところはなかった。そりゃそうだ。木崎昭蔵が裏で手を回してたんだからな。」

「どうして父はそんなことを。」

「さぁな。よっぽど気に入らなかったんだろうな。俺が家に帰ると親父はクビを吊ってた。それからお袋は体調を崩してそのまま死んだ。他のやつらも似たような目に遭ってる。」

俺は言葉を失った。

父がたくさんの人間をクビにしたことは何となくわかっていた。

けど、ここまでひどいとは思っていなかった。

「…ひとつ、お願いがあります。」


俺は工藤に言った。

「父に電話をさせてください。」

「なに?」

「別に助けを求めるとかじゃありません。父にどうしても言っておきたいことがあります。」

智哉は真剣な眼差しで工藤に頼んだ。

「…いいだろう。ただ、妙なこと言ったらすぐに殺すからな。」

「分かりました。」

俺は覚悟を決めた。

父がバレていないだろうと思っている秘密。

家族が崩壊するかもしれない秘密。

それを打ち明ける決意を。

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